『第八幕~B級ランク戦ROUND3/Third Rank Battle of White Girl』
タイトル通り、ROUND3の章です。英題はその通りなので割愛します。
今回の章では今作主人公チームである香取隊と原作主人公チームである玉狛第二が、ランク戦という舞台で初めてぶつかる章です。
とはいえ、ヒュース加入前で尚且つ千佳も人を撃てない問題を克服していないので、現時点では色々足りない部分が多いチームでもあるのでこちらが樹里が追加されてエース二枚看板となった分、単純戦力では香取隊に劣る部分も多いです。
だからこそ、修は「猛吹雪」というとんでもない一手を用いて下剋上を狙ったワケです。
今回のMAP選択は先日の香取隊との協定により、香取隊が指定したMAPを選んでいます。
これは修がヒュース加入というメリットの為に呑み込んだ代償ではありますが、実のところ彼は「最悪この試合を勝てずとも後にヒュースを入隊させる事が出来るなら帳尻は合わせられる」と判断した結果でもあります。
修は自分達の部隊に様々な穴がある事を、しっかりと理解しています。
まず、この時点の玉狛第二には「まともな」戦闘員が遊真一人しかいません。
修は工夫や策謀を巡らせる事は出来ますが直接的な戦闘力は著しく低いですし、千佳は狙撃手にとってある種致命的な「人を直接狙えない」という弱点を抱えています。
原作でも指摘されていましたが、千佳の砲撃は目立ちます。
なので一度撃ってしまうと普通は位置がモロバレなので、即座に刺客を送られます。
しかも、そこまでのリスクを背負いながら千佳の狙撃は「絶対に点を直接獲れない」んです。
現時点彼女に出来るのは地形破壊による味方のサポートであり、ポジションとしてはかつての鳩原に近いです。
但し彼女のような技術お化けではないし経験値も少ないので、いち戦闘員としてまともに扱う事が出来るかと言われれば疑問符を浮かべるしかありません。
基本はレイジさんの教導もあってしっかりと出来ているのですが、彼女単体ではさして怖くない駒であるとも言えるんですよね。
ある程度機転は利くものの、人を撃てないというのが点取り合戦であるランク戦では割と致命的なんです。
普通に人を撃ててトリオン強者な樹里がどれだけの脅威かを見て貰えれば分かる通り、トリオンの高い狙撃手というのは普通あそこまで恐ろしいものなんです。
ですが千佳はその強みを完全に潰しているので、幾らトリオンが規格外だろうが相手からしてみるとそこまで脅威とはならないんですね。
だからこそ修は、一計を案じました。
それが、この猛吹雪という天候です。
一面銀世界、どころか視界全てが白く染まるレベルのブリザード。
実際に経験した事のある身からすると、マジで視界が利きません。
辛うじて車のライトが見えるくらいで、周囲の景色は白一色。
建物や人影はなんとか輪郭が見える程度で、かなり近付かないとそれがなんなのかはよく分かりません。
このような環境ですので、千佳の派手な砲撃でも普段より位置がバレ難くなっています。
修はこの性質を利用して、置き千佳オラ作戦を考案します。
知っての通り、千佳のメテオラは馬鹿みたいな威力です。
ショッピングモールのような巨大な建造物を一発で半壊させるあの威力は、生半可なものではありません。
それを視界の利かない状態で罠として設置し、起爆させる。
こうする事で千佳が
当真が原作で言っていたように直接人を狙えないだけで点を取る助けは迷いなくやってるので、このくらいであれば彼女のアウトラインは超えないでしょう。
勿論わざわざ巨大なトリオンキューブを各地に設置する、なんて真似をやれば普通は一発でバレて目論見は潰れます。
しかし、今回の天候は一寸先も見えない猛吹雪。
どれだけデカイ置物を設置しても、目の前でやられでもしない限り早々バレません。
加えて、これまでの試合では千佳は砲撃の派手な威力を散々とアピールして来ました。
なので、敵からすると下手に潜伏すればその場所ごと吹き飛ばされる、という懸念があり間接的に敵チームの隠密行動を制限させる効果がありました。
幾ら千佳本人が直接人を撃てないとはいえ、そこに人がいると認識しなければ隠れている場所に普通に砲撃を撃ち込まれてそれに巻き込まれて落とされかねません。
それこそ原作ROUND7のように、巻き込まれて蒸発する、なんてシチュエーションは普通に有り得るでしょう。
更に、修に時間を与えるとそこら中にワイヤーを張り巡らされる結果となる為、千佳と並んで放置出来ない駒となっています。
二人共直接的な戦闘はからっきしですが、かといって放置すれば確実に詰ませに来るという性質の駒なので、遮二無二になって探しに来ます。
彼等を放置した結果大敗したのが前回の柿崎隊と鈴鳴なので、当然その試合を見ていた香取隊は何が何でも二人を探し出して落とそうとするだろうと、修は考えました。
なので遊真を吹雪に紛れさせた遊撃要員として扱い、敵チームを千佳オラの起爆範囲へ誘い込みました。
本来はあそこで香取隊を吊り上げるつもりでしたが、香取隊の動きがやや想定外であった為、弓場隊にターゲットを切り替えた形です。
香取隊、というより香取は修に対し一切の油断をしません。
「こいつはヤバい奴だ」認定しており、本人が弱くともチームを勝利に導く能力は高いと理解している為、全力で頭を回しました。
その結果、「必ず何か初見殺しを仕掛けて来る」と確信するに至り、修が仕掛けて来るであろう「地雷」を弓場隊に踏ませる作戦を考案します。
なので修の想定とは異なり、最初は隠密に徹する香取隊という構図が出来上がったワケです。
修にとって香取の印象はほぼヒュースの件での会談の時のものがメインであり、かつて樹里に師事しようとして絡まれた件は既にどうでもいい事柄として気にしていませんし、黒トリガー争奪戦に至っては秘密裏に樹里が参戦した程度で勿論その事も知らないという状況なのです。
故に修にとって香取は「ヒュースの件での取引相手」「時々声をかけて来る先輩」でしかなく、その彼女に最大限警戒されているとは夢にも思っていないのです。
この認識の差が、この結果に顕れたとも言えますね。
そして、香取は一切の容赦をしませんでした。
樹里の爆撃を利用してわざと二部隊のエースが揃っている所に突っ込み、乱戦を演じます。
この行動は王子にも不審に思われていましたが、その狙いは「香取が突っ込んで遊真の動きを止めている間に三浦と若村が千佳を探し出そうとしている」と判断させ、千佳を急かして注意散漫にさせ、罠に引っかけるのが本当の狙いでした。
香取は「修ならこちらの狙いに気付くだろう」と考え、敢えて遊真と弓場さんの間に突っ込んだんです。
こうすれば修は千佳を逃がそうとすると考察し、それを実行に移して見事嵌まったワケですね。
修は千佳に対しては庇護者としての目線が強いので、彼女が窮地に陥ると真っ先に逃がそうとする傾向があります。
麟児から頼まれた事も関係しているようですが、原作でもその傾向は随所に見られました。
修の計算を狂わせるには、千佳を利用するのが最も手っ取り早いんですね。
その千佳を仕留めたワイヤーメテオラですが、これがあまり使われていないのには理由があると推察出来ます。
まず、スパイダーという「単体では武器にならない玄人向き装備」をセットしなければならない事が、まず一点。
これだけで、大分母数は減ると思います。
それから、スパイダーを使うような隊員はトリオンに余裕がないケースが多い点。
修がそうですが、「少ないトリオンでどうチームに貢献出来るか」を考えた結果、スパイダーを選択するというケースが作中では見られました。
このワイヤーメテオラは、その名の通り射撃トリガーのメテオラの採用が必須です。
修のようなトリオン弱者がスパイダーの他に燃費が良いとは言えないメテオラまで採用する理由があるか、これが二点目。
そして三つ目の理由が、「スパイダーの性質と真っ向に反する特性」です。
スパイダーは作中で見て分かる通り、閉所に仕掛け敵を絡め取り、戦況を優位に進める為のトリガーです。
「ワイヤー陣」という言葉がある通り、使用者はこのトリガーを使って「巣」を張り、そこに相手を誘い込みます。
さて、このワイヤーメテオラの何が問題なのか。
それは、「一度使えば折角作った陣地を自ら放棄してしまう」点にあります。
要するに、
通常スパイダーは切断されない限り何度でも使える機構ですが、このワイヤーメテオラを仕掛けるとその場の仕掛けは一回こっきりの使い捨てになってしまうんですね。
確かに初見殺しの要素はありますが、戦闘経験豊富な隊員であれば起爆するまでの一瞬でシールドを張る事は充分可能です。
なのでこのワイヤーメテオラの標的は概ね自然と戦闘経験の少ない対応力の低い隊員となるのですが、そんな相手であればワイヤー陣に誘い込み詰め殺せば事足りる事が多いです。
加えてスパイダーの「視認が難しい」という性質を、メテオラのトリオンキューブという目立つオブジェクトを組み合わせる事で台無しにしているという点も見逃せません。
巧くトリオンキューブを隠せるような場所であれば良いですが、そうでない場合は地面にそのまま無造作にキューブを置く事になり目敏い隊員にはバレ易いです。
なのでこのワイヤーメテオラが有効な相手は千佳のように「経験が少ないが隠密を旨とする狙撃手であり、尚且つ何がなんでも落としておきたい駒である」という限定的な条件が必要になるワケです。
これが私の考察する、ワイヤーメテオラがあまり使われない理由です。
原作でレイジが使った時のような大規模な爆発を起こすには相応の数のキューブと豊富なトリオンが必須であり、そういう意味でも使い手が少ない理由に成り得ると思います。
そもそも高いトリオンを持っているのならば、直接射撃して猛威を振るえば良いだけですから。
今回は「猛吹雪で視界がほぼゼロであり相当に気付き難かった」「千佳が自分が狙われていると知って焦り、足元に注意を向けていなかった」「そもそも誰かに見付かっているワケでもない状況でワイヤーに足を引っかけても特に致命傷にはならないという考えもあった」事から、巧く千佳の盲点を突けた形ですね。
ちなみにこの猛吹雪という天候は原作では出ていないオリジナル天候になるワケですが、前作でも実装はしています。
ですが、使われる事は滅多にない天候でもあります。
作中で説明している通り、「隊員にかかる負荷が大き過ぎて活用し難い」のが理由ですね。
この天候にしてしまうと視界はほぼゼロになり、雪に足が取られるので移動にも制限がかかります。
影浦のような
なので明確な戦術プランなしにこれを採用すると、試合を無駄に長引かせるだけの結果になりがちなんですね。
前作で実装した砂嵐も同様の性質があり、かなり特殊なケースでなければまず採用されない天候と言えるでしょう。
ちなみにこの二つの天候についても、使いたい方がいれば使って頂いて結構です。
ある意味で性質は分かり易いですし、試合にアクセントを加えるにも丁度良いですからね。
さて、試合の話に戻りますが遊真が帯島ちゃんを撃破、その後は遊真と弓場さんが戦っている所に若村が介入しました。
作中で説明している通り、実力者同士のタイマンに実力の劣る駒が介入して何か出来る事があるのかという事ですが、当然あります。
まず、若村が銃手である点が大きいです。
銃手の最大のメリットは、その即応性です。
引き金を引くだけで弾をバラ撒けるので、攻撃までのタイムラグがありません。
なので相手に姿が見えている状況でも対応がやり易く、ただでさえ油断ならない相手と戦闘している最中に横から弾が飛んで来るのは相当に鬱陶しいです。
加えて少し離れた場所で香取もチャンスを伺っている状態であり、集中を乱すという点だけでも若村の行動には価値があります。
銃手は本来こういった「いやらしい」対応が出来るかどうかが肝であり、性格の悪い戦術が取れるか否かが重要となります。
今作での若村はそれを理解出来た為、こういった立ち回りが可能になったワケです。
それから起爆による混乱を狙った修を、別動隊の三浦が撃破しました。
これは作中での説明通り、香取が修の行動を看破した結果ですね。
香取はこの状況なら修は必ず三度目の爆破から戦況を動かそうとすると考え、メテオラのキューブの場所を探らせていました。
キューブを発見した後はそこに三浦を待機させ、修が来るのを待った、という形になります。
これまでの経緯から千佳が仕掛けられたキューブの数はそう多くはない事が推測出来ており、発見出来たキューブを狙って来る可能性が高いと踏んだのも待機を命じた理由です。
闇雲に別のキューブを探すよりは、そっちの方が効率的だったというのもあります。
これは香取が修を強烈に意識するようになった結果、思考トレースに成功したのが理由です。
香取はそもそも地頭が相当に良く、ちゃんとやる気を出せば発想力や行動力もかなり高いです。
なので何らかの理由で強烈に意識する相手が出来れば、この程度の事は可能だという事です。
更にその後はメテオラの起爆を香取隊の任意のタイミングで実行し、混乱の隙を突いて遊真を仕留めます。
後は猛吹雪という天候で軌道を隠した
普通ならばこのハウンドも遠くの相手に狙いを付けるのは至難の業ですが、弓場さんの傍には若村がいて彼の視界を通して標的の位置を見定めました。
徹底して玉狛の仕掛けた悪天候を利用し尽くした結果の、勝利となります。
この勝利は、ROUND2での失敗からの反省、及び前章での敵情視察がなければ実現出来ませんでした。
若村と樹里がしっかりと連携が可能になった上で、玉狛の初見殺し要素をその眼で確認し修の思考をトレースする。
それが出来て初めて、この勝利は成し得たと言えるでしょう。
しかし修にとってこの敗戦は、王子の言う通り価値あるものと言えます。
何故なら修はこの時点では、ランク戦で明確な「失敗」を経験していなかったからです。
今回の香取隊を見れば分かる通り、一度失敗を経た事で彼等の戦術はより磨かれました。
成功するに越した事はないのですが、失敗という経験はそれはそれで得難いものです。
そういう意味では王子の言葉通り、良い経験になったと言えるでしょう。
弓場隊は二部隊の思惑に挟まれた結果完全に被害者サイドとなってしまいますが、それでも玉狛の初見殺し要素や現在の香取隊の脅威を知る事が出来たので、確実に次の糧として来るでしょう。
それが出来ないようなら、B級上位にいれるワケがありませんから。
ちなみにその後の話で佐鳥がこの試合を見ていた事を言及していますが、彼は樹里の出る試合は全てチェックしています。
仕事が忙しくリアルタイムで見れない場合でも、きちんとログはチェックする徹底ぶりです。
監視役としての仕事という側面もありますが、ちゃんと彼女の試合は見ておきたいという考えもあってのものです。
そんな姿を木虎にも見られているので、聴こえる愚痴が増えたのは言うまでもありませんが。
更に次の対戦相手が決まり、香取隊は生駒隊と鈴鳴と戦う事になります。
生駒隊は既に散々戦った事のある相手ですが、香取隊は今の鈴鳴についてあまり知りません。
なので香取は偶然会った修を誘い、情報交換を提案します。
修にとっても悪くない提案だったのでそれに応じて香取隊の隊室に向かったワケですが、これがかなり大きな転換点となりました。
樹里が、千佳に「人を撃てない理由」を尋ねたからですね。
原作を見て分かる通り、千佳は第三者から純粋な疑問として自分の撃てない理由を追求されないと自身の内面を見詰めようとはしません。
無意識にその事を避けているので、彼女が己の撃てない理由を知る為にはこういった追及が必須でした。
樹里からすると純粋な疑問として提示しただけなのですが、ここで大規模侵攻での千佳の経験が活きて来ます。
大規模侵攻に於いて千佳は仕方が無いとはいえ戦局に一切貢献出来ず、沈黙を余儀なくされています。
その上で、「戦場のど真ん中でトリオン体を解除する」という馬鹿な真似をしでかした修の姿を見る事になりました。
実際に負傷をしたワケではないとはいえ、彼女としてかなり肝の冷える光景だった事は言うまでもありません。
修もあの時、千佳に説明するという手間を挟んではいませんからね。
彼にとってはあくまでもあの場で最適な戦術の提案であり、千佳の心境を慮るような余分はなかった筈です。
その経験があった為、「自分が何も出来ない所為で大切な人を失いたくない」という気持ちが千佳に芽生えていました。
だからこそ樹里の指摘を切っ掛けに、自分の内面を見詰め直す事になったワケですね。
更に樹里が意図せず千佳の負い目をフォローした事で、明確に前を向く切っ掛けにもなりました。
樹里のノンデリ発言が、意図せずして最高の成果を叩き出した形ですね。
当然後で香取にバレて大目玉を喰らうワケですが、これが玉狛の明確な強化に繋がるのですね。
その後千佳はヒュースの後押しもありチームメイトの前で人を撃つ宣言をしたワケですが、その結果どうなるかは今後の話となって来ます。
これで今回の解説は終わり、次回はROUND4の章の解説となります。