香取隊の狙撃手   作:デスイーター

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各章解説・及び裏話/9章

 

 

 『第十幕~B級ランク戦ROUND5/Fifth Rank Battle of White Girl』

 

 今回はROUND5の章の解説をやっていきたいと思います。

 

 この試合では対戦相手は影浦隊、東隊というB級上位の中でも特に厄介な二部隊です。

 

 解説に呼んだのは東さん繋がりで月見さん、影浦担当の村上、狙撃手に関する解説役として選ばれた奈良坂です。

 

 この二人の解説は原作の香取隊の最終ラウンドでもあった組み合わせですが、寡黙どころが揃っており真面目な解説だけなら良いのですが必要な事まで口に出さない事もあるので、そこは実況者の手腕が試されます。

 

 まあ、月見さんもそこまで口数が多い方ではないので、あまり効果はなかったですが。

 

 加えて此処で村上を出したのは、この試合後の夜間にあるガロプラ侵攻に出せない分の埋め合わせ、という側面もありました。

 

 作中で説明している通り、原作と異なり今回はB級中位の試合を纏めて夜に回しており、上位の戦力がフルで使えるようにしてあります。

 

 これは迅さんの未来視により襲撃が夜だとほぼ確定した事もありますが、この時点で「樹里の暴走」の未来の可能性があった為、慎重を期した為の対応となります。

 

 言うまでもなく樹里の暴走は避けなければならない事態であり、大規模侵攻の時程致命的ではありませんが、ガロプラ侵攻中に起きれば相応の被害を覚悟しなければなりません。

 

 それこそ、遠征艇を護り切れない未来もあった程です。

 

 だからこそ可能な限りの戦力を投入する為に、B級上位の面子をフルで使える采配をしたワケですね。

 

 その分村上は出番の面で割を食った形になりますが、総合的な戦力では明らかにこっちのが上なのでこうなりました。

 

 また、以前もお話した通り私はこの「香取隊の狙撃手」の中で那須隊を直接描写する気はありませんでした。

 

 彼女達を使用可能な状態にすると流石に使わない采配は有り得ないので、こうする事で自然と縛りを達成した上でやりたい描写とやれない描写を切り分ける事が出来たのです。

 

 こういう感じで「特定のキャラを此処で使いたくない」場合には、そのキャラが出て来れないケースはどうやれば発生するかを逆算し、イベントスケジュール等を調整すればどうとでもなります。

 

 たとえば、「このキャラが出て来ちゃうと他のキャラの見せ場を奪ってしまう」「このキャラが出て来るとそもそも苦戦する展開を書けない」といった時に有効です。

 

 なるべくならそのキャラの落ち度ではなく、何らかの仕方のない事情であれば尚良いです。

 

 勿論あからさまにやり過ぎるのはアレですが、必要になるタイミングは結構ある筈なので覚えておいて損はないです。

 

 では、試合の解説に戻りますがその前に今回戦う二部隊についてお話しましょう。

 

 まず、東隊ですがこの部隊を描く上で必要なポイントは二つ。

 

 一つは言うまでもなく、「東さんの立ち回り」です。

 

 東春秋はこれまで何度か言及した通り、狙撃手の特異点のような存在です。

 

 位置を割れても「東さんなら」平然と姿を晦ましてもおかしくはなく、攻撃手に詰められても「東さんなら」逃げ切っても不思議ではない。

 

 そういった例外枠として扱われる25歳、それが東さんです。

 

 なので、基本的に東さんはよっぽどの事がなければ落とす描写をしてはいけません。

 

 何せ、あのランバネインからも逃げ切ったキャラです。

 

 生半可な展開で落ちるのは、まず納得されないでしょう。

 

 ですから前作では東さんを落とす際には「他の駒を全て排除した上で那須隊の総力で挑んで相打ち」という描写を行い、格を保ったまま撃破に繋げました。

 

 狙撃手というポジションを考えれば一人で一部隊を全滅させた上での脱落なら充分以上に仕事はこなしていると言えますし、事実上の勝ちと言っても過言ではありません。

 

 そもそも誰を落としても得点は変わらない以上、あれは「格上相手の打倒経験を積む」という独自の目的があったからこそ成立した作戦であり、普通ならあそこまでやりません。

 

 ですが、逆に言えば東さんを一部隊で落とすならあれくらいはやらなきゃ駄目だという事です。

 

 今回はそういった目的がなかった為、東さんに「撤退して貰う」という方向性で終始しました。

 

 こちらの場合、難易度はそこまで高いというワケではありません。

 

 東さんが撤退する条件は、大きく分けて二つ。

 

 一つは、小荒井と奥寺が脱落もしくは撤退を決めている事。

 

 東さんの目的は彼等の教導なので、彼等が諦めていない限りは試合を続けようとします。

 

 逆に言えば、その二人が撤退を選べば東さんは追従します。

 

 基本的に東さんは己を「教導官」として振舞っているので、必要な指導を行いつつ最終的には二人の選択を尊重します。

 

 なので二人が試合を諦めていない限りは自分だけで撤退を選ぶ事はないので、東さんに撤退して貰うには二人の脱落は必須条件です。

 

 その上で、「普通にやればジリ貧になる」状況に持ち込む事です。

 

 東さんの個人技を含めれば実のところ一人からでも逆転は可能までありますが、あくまでも教導する側である東さんとしては自分の活躍「だけ」で勝った試合にはしたくないのです。

 

 ですので「普通の狙撃手なら撤退する」状況を作れば、東さんは退いてくれます。

 

 東さんが重視するのは部下の教導であり勝ち負けではないので、そこを理解して描写するようにしましょう。

 

 次に、影浦隊についてです。

 

 影浦隊を描写する上で大切なのは、「影浦にどう攻撃を当てるか」です。

 

 知っての通り、影浦には感情受信体質という副作用(サイドエフェクト)があります。

 

 これがある限り奇襲や狙撃は基本的に通用せず、本人の近接戦闘技能も馬鹿高いという狙撃手殺しなキャラです。

 

 彼をランク戦で描く上では、この副作用の性質をしっかりと把握しておく必要があります。

 

 前作では七海という攻撃を察知する副作用を持つキャラクターを主人公として描きましたが、あちらで描いた欠点の幾つかは影浦とも重複しますが細かな差異があります。

 

 まず、「自分が相手から視認された上で攻撃対象にならなければ攻撃感知は出来ない」という事です。

 

 要するに、自分に向けられた攻撃は避ける事が出来ますが、自分以外を狙われた場合この能力は発動しません。

 

 なので味方を護る為には攻撃の射線上に立つ必要があり、何もかも万能というワケではありません。

 

 また、カゲさんの副作用(サイドエフェクト)はあくまでも相手の「感情」を察知しているという点も重要です。

 

 ですので相手がこちらを視認しても殺気がない場合、或いはこちらをそもそも視認しておらず、「偶然」攻撃に巻き込んでしまった。

 

 この場合、カゲさんの副作用は発動しません。

 

 前作主人公の七海はメテオラの爆撃範囲まで正確に把握していましたが、カゲさんの場合これは出来ません。

 

 カゲさんが感じているのは相手が攻撃を通す()()()()()()軌道であり、相手がそもそもその攻撃範囲を認識していない場合、それらを全て把握する事は出来ません。

 

 ですが炸裂弾(メテオラ)の爆破範囲は相手のトリオン量からある程度逆算出来るので、ゾエさんの適当メテオラは大まかな着弾地点から範囲を予測して動いているのだと思います。

 

 また、「同じ軌道に続けて攻撃が来る」場合も察知が遅れます。

 

 これは二種類の攻撃の軌道を同一にするという高等技術が必要となりますが、こうする事でカゲさんの副作用(サイドエフェクト)には「此処に攻撃が来る」事は読めても「次弾が来る」事までは直前まで分からないと思います。

 

 この場合相手の感情は「攻撃を当てる」という敵意だと思うので、間を置かず次弾が来る場合はその感情は統一化され、カゲさんといえど判別は難しいと思います。

 

 原作ROUND7でヒュースの弾丸を喰らったのは、恐らくこの所為でしょう。

 

 カゲさんは攻撃を自動で感知する副作用を持っているので回避は能力を前提にしたものが多いのですが、あそこには殺気を出さずに攻撃可能な遊真がいました。

 

 自然とカゲさんの意識は能力で攻撃を感知出来ない遊真に向けられる事になり、ヒュースの次弾まで意識を回す余裕はなかったと思います。

 

 そもそも最初の攻撃を躱した時点で「攻撃は終わった」と思った筈なので、意識から外れていた事も要因でしょう。

 

 カゲさんに関する注意点は、こんな所ですかね。

 

 では試合の方ですが、MAPは市街地B、天候は雪となります。

 

 これは言うまでもなく原作ROUND4のオマージュであり、二宮隊がいない以外はそのまんまでもあります。

 

 雪という天候は地味に見えて、意外と影響が大きいです。

 

 まず、積雪で足を取られる為地上での機動戦が難しくなり、グラスホッパーを持たない隊員は逃げる事が難しくなります。

 

 加えて一面銀世界になるので白色の迷彩が有効であり、那須隊のように元々隊服が白い隊員であればバッグワームを白く染めれば環境迷彩の出来上がりです。

 

 これはMAPを選んだ側の特権ですが、トリガーの色を変える程度の変更であればB級でも自由に出来るので、使わない手はありません。

 

 また、隠れ易くもなるので狙撃手にとっては都合の良い天候でもあります。

 

 とはいえ市街地Dのようにほぼ屋内戦闘が前提となるMAPでは意味が薄くなるので、市街地Aや市街地Bで使うのが最も適当でしょうね。

 

 試合が始まり適当メテオラが定石通り放たれますが、これを利用して影浦が待ち伏せ戦術を敢行します。

 

 今の影浦隊はユズルの要請を受けて遠征に選ばれる為に気合いを入れているので、こういった頭脳プレイも使って来たワケです。

 

 ですが、この状況は香取隊にとって好都合でした。

 

 何故なら、樹里の天敵とも言えるカゲさんの位置が確定し、彼女を自由に使えるようになったのですから。

 

 影浦の副作用(サイドエフェクト)は相手の感情を察知するものであり、その効果は相手から視認された時点で発動します。

 

 つまり、狙撃手がスコープ越しに影浦を見た時点でその位置が看破される事になり、カゲさんを相手にする場合狙撃手は何が何でも彼の視認だけは避けなければいけないのです。

 

 特に強化視覚によって視認範囲がとんでもない事になっている樹里にとっては迂闊に周囲を見回すだけでも危険であり、カゲさんが何処にいるか分からない状況では自由に動けませんでした。

 

 実際奥寺達はそれを見越して動いていたワケですが、そのカゲさんの位置が確定し、香取というエース級とやり合っているとなれば話は変わります。

 

 位置が分かっているのですからそこを避けて索敵すれば良い話であり、加えて万一位置がバレてもカゲさんは香取と戦闘中なのでそれを放置する事も出来ません。

 

 それを失念していたばかりに、奥寺は香取隊に発見され奇襲を受けます。

 

 刺客として放たれた若村ですが、初手で機動力を削いだ事で着実に追い詰めていきます。

 

 奥寺のようなスピードタイプは機動力で敵を翻弄出来る反面、機動力が削がれれば一気に苦しくなります。

 

 村上のようなどっしり構えるタイプや太刀川のような規格外であればまだしも、単独での戦闘力はB級上位の中では高いとは言えない奥寺では足が削れた時点でほぼ戦力外です。

 

 奥寺、小荒井を追い詰めるにはどちらかを各個撃破するのが最も手っ取り早いですが、足を削るだけでも実質無力化は出来ます。

 

 なので若村は最優先で足を狙うよう厳命されており、見事目論見通りに進んだワケです。

 

 そこから香取隊の目的を察して小荒井との連携で得点を狙ったのは流石ですが、それでもリカバリーをやり切る事は叶いませんでした。

 

 小荒井は三浦の幻踊で仕留められ、奥寺は若村ごとユズルに撃ち抜かれてしまいます。

 

 平然と二枚抜きをしたユズルですが、これは彼だから出来た事であり、他の狙撃手では中々出来ないでしょう。

 

 ユズルは狙撃技術に関しては二宮からも認められているので、そこはきちんと描写するべきです。

 

 壁抜き狙撃等の荒業も躊躇なくこなせる胆力と命中精度は原作でもしっかりと描写されているので、ユズルを描く時は技術方面を上積みで描くように意識しましょう。

 

 ユズルは現在当真に師事している状態なので。狙撃手らしいクレバーさはしっかりと備わっており、いけると思えばリスクを抱えてでも点を取りに行くので、そのあたりが逸って落とされがちな半崎との違いになります。

 

 基本的にユズルは狙撃手としては本当に優秀なので、そこは間違えないようにしましょう。

 

 まあ、そのユズルも東さんにカウンター狙撃(スナイプ)されてしまうのですが、相手が東さんなので仕方ないです。

 

 その後は予定通り爆撃を開始し、東さんを撤退に追い込んだ事で残るは影浦隊になります。

 

 対影浦で決定打となった三浦の狙撃ですが、これは作中で説明があった通り「当たれば儲けもの」と考えての策であり、役割としては一瞬でもカゲさんの意識を逸らす事が出来ればそれで充分、という目算でした。

 

 肩に当たったのは本当にラッキーヒットの類でありますが、それがなくても刹那でも隙を見せた以上そこを香取が見逃す事はないでしょう。

 

 総合力や戦闘経験値ではカゲさんに劣る香取ですが、反面爆発力はとんでもないものがあり懐に飛び込む胆力も相応にあります。

 

 なので隙さえ作れればそこから香取がどうとでもする、というのが概ねの作戦であり、実際それで何とかなるあたり彼女の潜在能力(ポテンシャル)の馬鹿高さが伺えるでしょう。

 

 ただ、今回影浦隊はユズルの願いを聞いた影響もあって少々勇み足というか、得点を貪欲に狙い過ぎた面はあります。

 

 原作ROUND7でもありましたがカゲさんは後輩の期待に応えようとすると「真面目にやんねぇと」と考えて普段の動きが出来なくなる傾向があるので、ある種のデバフがかかった状態だったと言っても過言ではないでしょう。

 

 本来各々が自由にやった結果強い、というのが影浦隊の持ち味なので、そこを活かし切れなかった時点で失敗だったと言えます。

 

 また、この試合での経過を見て樹里が「別の合成弾が欲しい」と思い至る事になり、後の誘導貫通弾(モスキート)習得に繋がります。

 

 そういう意味でも、この試合は重要な意味がありました。

 

 そして、次章はガロプラ侵攻の章となります。

 

 途中からオリジナルの要素が強く出て来る章でもあるので、色々な意味で転換点になる章です。

 

 では、次回もお楽しみに。

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