香取隊の狙撃手   作:デスイーター

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各章解説・及び裏話/第零章

 

 

 『第零幕~白の記憶/Memory of Boy Meets White Girl』

 

 今回はこの物語の前日譚にあたる第零章、「白の少女邂逅編」について解説していきます。

 

 英題は「白の少女(じゅり)少年(さとり)の出会いの記録」であり、文字通り佐鳥が樹里とボーイミーツガールする始まりの章です。

 

 この章ではこれまで敢えて伏せ続けて来た樹里の過去、佐鳥との出会いについてしっかりと描写しました。

 

 佐鳥は本編より一年前のとある日、警戒区域を歩いていた時に偶然樹里の入ったポッドと遭遇し、少女と邂逅します。

 

 この時樹里が入っていたのは言うまでもなくククロセアトロの脱出ポッドであり、彼の国の崩壊時に研究者達が放流した検体のうちの一つです。

 

 彼女が入っていたポッドには内部の生命体の生命維持機能に加え、研究者達が手を加えた事で記憶の封鎖機能も備わっていました。

 

 これにより樹里は記憶を忘却しており、生きる上で必須な常識や身体に染み付いた動作記憶を除き、真っ白な状態にありました。

 

 ポッドの機能で封鎖されていたのは主にエピソード記憶であり、「自分が何処で何をしていたか」「自分が何者か」は分からなくなっていますが、「常識はこういうものだ」「こういう時は普通こうなるだろう」という生活に必要な記憶に関しては、殆ど手が加わっていません。

 

 こうなったのはそういった記憶まで封鎖してしまうと検体の戦闘機能に支障を来す可能性があるとして、ククロセアトロの研究者が調整していた為です。

 

 エピソード記憶を封鎖したのはククロセアトロにいた頃の記憶を覚えたままだとまともに動かない廃人同然のままなので、戦闘に使うどころではないと判断されたからです。

 

 ククロセアトロが検体を放流したのはある程度人の眼がある状態でその戦闘機能を披露し、自分達の研究成果を何らかの形で「使って」貰う為です。

 

 但し、彼等には「限度」や「後先を考える」という思考が一切存在しない為、臨界状態となって暴れた場合周囲に甚大な被害を齎した結果検体の性能を評価する者がいなくなる、といった部分にまで考えが及んでいません。

 

 というよりも、「作成したものが稼働すればそれで良い」というのがククロセアトロの研究者達の性質なので、そもそも考える事自体をしないのです。

 

 優れた性能の成果物を見せる事が出来ればそれでククロセアトロ的には目標は達成しているので、その後検体の暴走(かどう)に巻き込まれた者達がどうなるかは考慮の外というワケです。

 

 ポッドの中に満たされていた液体は検体の生命維持と意識封鎖の為のものであり、それが排出された事で樹里は目を覚ましました。

 

 彼女からしてみれば自分が何者かすら分からない状況で親身になって話を聞いてくれた佐鳥の好感度は瞬時に天元突破しており、刷り込みに近い形で好意を抱いています。

 

 佐鳥が思春期男子の性から逃れられず胸等に視線を向けてしまい慌てて逸らした時も、微笑ましさと自分を見てくれた嬉しさが上回り、もう全部が好感度に変換される勢いでした。

 

 もしも佐鳥が事務的な対応に終始していたり、逆に下心全開で接して来ていたりしたら、こうはならなかったでしょう。

 

 佐鳥の紳士的な面と年相応な面が最高の具合で噛み合い、樹里の心を掴む事に成功したのです。

 

 ポッドから現れた謎の美少女とのボーイミーツガールという事で、この章では佐鳥の主人公度が半端ないです。

 

 中学生時代という事で今よりも未熟な面も描くようにしていますし、社会に揉まれている最中でまだ発展途上、青春的な要素もこれでもかと詰め込んでいます。

 

 ちなみに樹里のポッド出現をボーダーが察知出来なかったのは、ポッド自体に隠蔽機能が施されていたからです。

 

 最終章で出て来る特殊な(ゲート)星間航路(ヒュポノモス)の技術が使われており、その簡易版のようなものと考えて貰えれば結構です。

 

 風間さん達が出て来たのはポッドの隠蔽が解除され、ボーダー未登録のトリオン反応である樹里が発見されたからです。

 

 ボーダーにしてみれば何の前触れもなく未登録のトリオン反応が出て来た形なので、慌てて風間隊を急行させたワケですね。

 

 佐鳥はいきなり出て来たボディスーツ姿の少女が記憶喪失という状況を鑑みて、既に彼女が近界に攫われていた人間ではないかと当たりを着けており、そのあたりを全て推測として伝えた上で穏当な対処を望みました。

 

 これが修なら組織のTPOを弁えずに初手で匿う、或いは誤魔化して連れ出すくらいはするかもしれませんが、佐鳥はきちんと組織の一員としての自覚があったので、悪いようにはならないと考えて情報を全て打ち明けたワケですね。

 

 修は本編序盤で色々独断専行でやらかしてますが、本来ああいうタイプの人間は組織内に許容出来ません。

 

 組織というのは内に属する人間が組織内の規範に準じる事を前提に回るものなので、それを無視する修が即刻除隊されそうになったのは当然の事です。

 

 迅さんの介入がなければ、あの時点で修は除隊を免れなかったでしょう。

 

 言うなれば未来視の介入というバックボーンの下で成り立った特例措置であり、他の者が同じ事をすれば容赦なく除隊処分されるのは想像に難くありません。

 

 一方佐鳥は広報部隊としてしっかりと社会に揉まれているので、「組織人としての在り方」をきちんと学んでいます。

 

 なので現状の情報をきちんと伝えれば少なくとも「保護」という形で樹里の身柄を安全な場所に置く事が出来、危害を加えられたりする事はないだろうという打算も働いて報連相をしっかりと行ったワケですね。

 

 結果として佐鳥の思惑通りに樹里はボーダーに保護される事になり、その身元も明らかになりました。

 

 行方不明者の家族から被害者のDNA提供して貰っているのはオリジナル設定ですが、このくらいはやっていてもおかしくないだろうと思います。

 

 実際、ボーダー園という被災者受け入れ施設を作ったりもしているワケですし、被災者救済の面でも行方不明者の手がかりを求めるのは自然な事ですし、何よりも「いなくなった人達の捜索に力を尽くしています」というアピールにもなります。

 

 とはいえ近界から自力で帰って来れた者など皆無だったので、対応が全く間に合っていなかったワケですね。

 

 医務室で樹里が発狂したのは、身体に染み付いた白い部屋=実験室の記憶がフラッシュバックしかけたからです。

 

 ククロセアトロの記憶封鎖は完全ではなく、強い刺激を受ければ解除されかける事があります。

 

 彼の国の記憶封鎖は文字通り記憶を強引に「押し込める」ものなので、許容範囲以上の衝撃を受ければ蓋が取れて中の記憶が漏れ出てしまうのです。

 

 樹里にとって白い部屋というのは耐え難い苦痛を受け続けた地獄そのものであり、白に包まれた部屋というだけで彼女にとってはタブーです。

 

 医務室の場合薬品の匂い等もあって刺激が強く、この時点での樹里は一人で医務室に類する部屋に入れば即座に発狂します。

 

 佐鳥が手を握った事でそれが収まったのは、彼女が佐鳥に対し並々ならぬ信頼を寄せていた為、「この人の温もりがあるなら大丈夫」として精神が安定したからです。

 

 ククロセアトロの記憶封鎖は力技なので、当人の精神が安定すればそれに同調してフラッシュバックは収束します。

 

 というよりも一定以上の閾値の感情の発露がなければ、まず記憶封鎖の解除=暴走には至りません。

 

 これはより大きい感情の発露と同時に臨界状態となった方がより高い出力での戦闘行動が行えるだろうとして、研究者達が設定したものです。

 

 この時の樹里は佐鳥というカンフル剤の存在によって精神はギリギリで安定し、どうにか暴走を抑止している状態でした。

 

 勿論これは外部の者には分かる筈もないので、樹里は文字通りブラックボックスの塊です。

 

 城戸さん達上層部としては「何が埋め込まれているか分からない帰還者」という立場の樹里に対して、その境遇に人道的な怒りを覚えつつも組織人としてリスクヘッジをしっかりと行わなければならない、という立場でした。

 

 明らかに近界製であるポッドに入れられて送り込まれた帰還者、というだけでも相当怪しいのに、体内には正体不明の機械まで埋め込まれている。

 

 これで警戒するなというのは、無理があります。

 

 下手をすればどんな被害が齎されるか分からない以上、慎重になるのは当然でしょう。

 

 林道さんはそのあたりをしっかりと分かっていて、ああいう風に発言したワケですね。

 

 城戸さんとしても警戒は緩める事は出来ないがそれはそれとして折角帰還した少女には可能な限り便宜を図りたいという思惑もありましたし、両者の立場を慮って敢えてああいう態度を取ったのです。

 

 そのあたりの塩梅は、しっかりと出来る人でしょうから。

 

 なので樹里に懐かれている佐鳥に護衛を頼む傍ら、風間隊に監視させていました。

 

 佐鳥は組織人としてのTPOはしっかりと弁えていますが、まだ若く感情に流される事もあります。

 

 なので感情に流されず任務を遂行可能な風間隊が、監視兼護衛として配置されたのです。

 

 この時菊地原は強化聴覚で結構二人の会話を聞いており、「なんでこんな風に隠れながら馬鹿みたいな惚気を聞かなきゃいけないの」と不満たらたらでした。

 

 監視中の菊地原は歌川に大量のブラックコーヒーを用意するよう要求しており、その原因は明らかですね。

 

 その事を後々菊地原から恨み節たっぷりに伝えられた際には、佐鳥が土下座しながらその内容を広めないよう頼んだのは言うまでもありません。

 

 それから樹里の住んでいたマンションをボーダーが所有していたのは、完全に流れに依るものです。

 

 警戒区域の境界線上にある物件という事で、いざという時被害が起きてもボーダーの物件であればリカバリーがし易い上に、有事の際には高層マンションに狙撃手を配置して迎撃拠点にも出来るという事で、立地上需要が皆無で捨て値に近い値段で売られていたマンションを買い取ったワケです。

 

 そこに樹里を住まわせるよう采配したのは、迅の思惑もありますが上層部との利害の一致の結果でもあります。

 

 迅が「樹里を本部に常駐させるのは不味い」と断言した事で上層部も樹里に対する警戒度を上げていたので、「本人の住まいだった」マンションが丁度手元にあった為にそれを利用して万が一の時に備えたのです。

 

 警戒区域の境界線上という立地なので周囲には人が全く住んでおらず、市街地側も凡そ数百メートル程度の範囲には有人の建物は存在しません。

 

 なので万一マンションの内部が何かが起こっても隠蔽が容易で、マンション自体壊れてもそこまで痛手というワケでもないという事から、樹里をこのマンションに住まわせる決定を下しました。

 

 しかし外出を制限している以上世話をする人間は必要で、それが出来るのは彼女から無上の信頼を獲得している佐鳥以外にはおらず、止むを得ず彼に任せた形です。

 

 これには根付さんも大分苦い顔をしましたが代案もなく、仕方なく許可を出しました。

 

 近界からの帰還者という立場の樹里が世間の目に晒されればどうなるか分からない根付さんではないので、苦渋の決断をしたワケです。

 

 樹里の検査に際して女性のオペレーターが必要という事で綾辻さんが抜擢されましたが、この時点で彼女は樹里の内情に関して一切知らされていません。

 

 忍田さんからは「何も聞かず鬼怒田さんに協力してくれ」と言われており、綾辻さんも文句ひとつなくそれを受諾した形です。

 

 樹里の素性は何に於いても秘されなければならないものであり、軽々に明かす事は出来ません。

 

 綾辻は「万一漏れても大丈夫だろう人間」として選ばれていますが、それでも無用なリスクを冒すワケにはいかないと情報開示はされていなかったのです。

 

 それでも彼女が引き受けたのは持ち前の善性もありますが、何より佐鳥が関わっている美少女、という事で興味が勝ったからです。

 

 八方美人に見えて公衆の面前でのキャラと身内相手の個人的な関わりで明確に対応が違うのが明らかになっている彼女ですが、当然今まで女っ気のなかった佐鳥が謎の美少女にぞっこん(綾辻評)なのですから興味を持たないワケがありません。

 

 なので樹里に対して優しく接しているのはあくまでも佐鳥のフォローであり、この時点ではそこまで彼女に入れ込んでいるワケではないのです。

 

 それでも仕事であるからには内実で公私混同しつつもしっかりとやっているので、仕事ぶりは満点でした。

 

 佐鳥としても「良く知る相手が傍にいる」というのは精神的な安定にも繋がっていたので、綾辻さんが冗談交じりにからかって来るのも良い息抜きとなったでしょう。

 

 本編で描写した通り樹里にほぼ一目惚れした佐鳥ですが、だからこそ見栄を張っている部分もあり、精神的には結構疲れてはいました。

 

 その点で、肩ひじ張らずに済む相手が近くにいる、というのは割と有難かったでしょう。

 

 マンションでの同居開始後、樹里から要請を受けて彼女の「幼馴染」を探す事になる佐鳥ですが、もしこれが成功して香取に樹里の生存を明かした場合、その過程で「臨界」が発生していました。

 

 樹里は大切な幼馴染である香取との再会を内心熱望しており、何の準備もなく出会えばその時点で感情の閾値が基準点を超え、暴走が発生していました。

 

 迅さんはそれを未来視で視た為、早期の樹里と香取の接触だけは何が何でも防いだワケです。

 

 ですがそのままだと佐鳥が納得出来ずに諦めずに香取との接触を図る可能性があったので、ガス抜きとして華との接触による最低限の情報開示は黙認した形となります。

 

 誤算だったのは樹里の強化された視力であり、あの時あの場で佐鳥と華の密会現場を見てしまったのは全くの偶然から起こった出来事であり、迅さんの対応も間に合いませんでした。

 

 あのシーンを樹里に視られた時点で未来のルートはほぼ確定してしまっており、「事後」のリカバリーしか利かない段階になってしまったんですね。

 

 華さんとの接触前に嵐山さんにも相談をしていますが、当然嵐山さんは樹里の背景や佐鳥を取り巻く状況は何一つ知らない状態であり、佐鳥自身も情報を全て明かされているワケではないのでお互い情報不足が重なり、歯車が嚙み合っていませんでした。

 

 樹里のブラックボックスに関しては佐鳥も知らない事だったので、情報格差による認識のズレが起きたのは致し方ない事でした。

 

 ともあれそうして樹里の感情は閾値を超え、暴走に至ります。

 

 記憶の封鎖が解除され、過去の記憶がフラッシュバックして暴走した樹里ですが、その最中出て来た断片的な台詞はそれぞれ。

 

 「機能代替トリガー鋳造の為、眼球の摘出を行います。摘出後、検体の眼球をベースに視覚の強化機能を中心としたトリガーの作成に着手します」

 

 これは樹里の眼球を取り出して機能代替(オルタナティブ)トリガーに替える際の研究者の台詞であり、眼球を摘出された事で樹里は絶叫し、痛みでのたうち回りました。

 

 当然それは辛い記憶として刻まれており、その後の台詞は戦闘実験中の樹里の言葉となります。

 

 機能代替トリガーである真鍮瞳(コンプタドーラ)を埋め込まれた時点で樹里の身体の操作権は奪われており、何一つ自由にならないまま勝手に身体を動かされて戦わされていました。

 

 当然傷を負っても何をしても身体が止まる事はないので、終わりのない地獄の日々が繰り返されました。

 

 「女性機能の成長により性能試験の低迷を確認。投薬により、検体の調整を実行。その後、戦闘試験を」

 

 これは樹里が思春期の女性機能成長により身体機能が低迷した事を「戦闘試験の障害」と見做した研究者が女性機能を封鎖する投薬を実行した際の台詞です。

 

 この時の過剰な投薬で樹里の内面はかなりボロボロになっており、特に女性機能はほぼ麻痺していて、実は月のものなんかも来ていません。

 

 樹里のこの状態はククロセアトロが開発した特殊な薬液が関係しており、玄界の技術ではどうしようもないものです。

 

 あくまでも女性機能の「封鎖」なので適切な処置をすればどうにかなる可能性はありますが、それにはまず使用された薬液についての情報が必要となります。

 

 数年間も過酷な実験に晒されて後遺症なしというのはどうか、という事もあり、こういう形にしました。

 

 特にククロセアトロは人間を生体パーツ程度にしか考えていないので、そこに容赦や躊躇は一切ありません。

 

 こうして樹里は内外共にボロボロの状態になり、今に至るワケです。

 

 ここからサブタイトルはそれぞれ、エヴァのサブタイトルをもじったものを使用しています。

 

 今章から私の趣味及びこの作品のダークなSF風味が前回になっていくので、その証としてこういう形にしています。

 

 ちなみに「瞬間、心、歪めて」は「瞬間、心、重ねて」のもじりですね。

 

 原作ではシンジとアスカが協力して使徒を倒す回ですが、こちらは文字通り二人の関係性が歪み、樹里の心が歪められ姿さえも変えられた事を暗示しています。

 

 この時樹里は臨界状態とはいえ母トリガーへの接続を行えていないので、不完全な臨界状態でもあります。

 

 なので微かに自我が残っており、機械音声に重なるように樹里の叫びが漏れ出ているのはその影響です。

 

 次の「ヒトの造りしモノ」は「人の造りしもの」のもじりであり、ヒトとモノが片仮名になっているのは生物学的には人間であっても精神性が人のそれではないククロセアトロの研究者達が作ったヒトではないモノ、という意味です。

 

 この時の樹里は真鍮瞳(コンプタドーラ)内に搭載されていた傀儡糸(クローステール)が全身の汗腺から放たれるようになっており、神経に繋がった傀儡糸によって樹里自身の肉体も操作されています。

 

 樹里自身、傀儡糸(クローステール)と共鳴する事でトリオン量が増大する仕掛けが施されており、この時の樹里のトリオンは評価値20を超えています。

 

 もぐら爪(モールクロー)のような攻撃はそのまま瓦礫に傀儡糸を繋いで引きずり出したもので、巨大な蜘蛛脚はその派生です。

 

 傀儡糸(クローステール)は瓦礫を一ヵ所に凝縮させて密度を上げ、硬度を上昇させる事も出来るので、防御性能も高いです。

 

 しかしあくまでも「凝縮」なので、それをすると他の部分の防御が脆くなるので全方位攻撃には弱いです。

 

 なので硬度を上げてもその上から両断出来る小南のような相手は、まさに天敵と言えますね。

 

 小南でなくともイコさんや太刀川なら彼女と渡り合えたでしょうが、イコさんの場合は「果たして生駒隊をこういう面倒事に巻き込む事を生駒さんが了承するか」という点が不明瞭だった事と、流石にA級でも元A級でもなく、近界民が人間である事を知らない相手に協力を頼むのは難しい、として出番はなくなりました。

 

 実は生駒隊は迅さんの要請で最終決戦に駆け付ける案もあったのですが、あちらの翁が出て来た方が面白いと考え、このルートも没となった次第です。

 

 太刀川隊は前作でがっつりスポットライトを当てたので、その分の出番調整という形ですね。

 

 この時小南とレイジが駆けつけたのは勿論迅さんの采配であり、この時点での樹里はこれだけの戦力が揃えばどうにか出来る相手ではあったのです。

 

 熱線を撃った段階でガス欠に近い状態になっていたので、放置しても止まりはしました。

 

 その場合樹里の身体への影響が深刻になるので、タイムアウトは実質ゲームオーバーでしたが。

 

 次話の「未来(いのち)の選択を」はそのまま「命の選択を」のもじりであり、原作では例のバルディエルに寄生された三号機を前に命の選択を迫られる回ですが、こちらは樹里のこれからの未来を選択する分岐点を意味しています。

 

 時間切れになると樹里は自動的に止まりますが、その場合彼女は修復不能のダメージを負う事になり、そのまま植物人間になっていた可能性もありました。

 

 その最悪の未来を超えて彼女の生存に漕ぎ付けられるかの分岐点が、この回となります。

 

 佐鳥は樹里への強い想いから自分が二丁の狙撃銃を選んだ原点を思い出し、作戦を立案してどうにか樹里の暴走の起点である左目に弾丸を撃ち込み停止させる事に成功します。

 

 樹里の左目になっている機能代替(オルタナティブ)トリガー、真鍮瞳(コンプタドーラ)は生身の眼球でもあるのでこれを破壊しさえすれば樹里の暴走は止まるのですが、今回は母トリガーに接続していなかった事で本来の機能を発揮し切れておらず、左眼も殆どがトリオン側になっていたので、完全な破壊には至りませんでした。

 

 母トリガーに接続した本来の臨界駆動であれば生身の部分とトリオン体の部分が完全に融合し、更なる力を引き出す構造になっていました。

 

 今回はそれが良くも悪くも作用した結果ですが、一先ず暴走を止める事は出来ました。

 

 次話の「樹里、記憶の向こうに」は「レイ、心の向こうに」のもじりであり、樹里が記憶を封じられた後の現在に至る始点の話が描かれています。

 

 この時点では樹里は近界に攫われる前までの全ての記憶を思い出しており、再び目覚めた時にククロセアトロにいた時の記憶が蘇れば同じ事が起こりかねませんでした。

 

 なのでボーダーは樹里の「両親の死亡を含むククロセアトロに連れ去られる前後」からこれまでに至る全ての記憶を封じる事で、暴走の芽を摘む手段を取ったワケです。

 

 なので目が覚めた時樹里は幼い頃の記憶は思い出していますが、第一次大規模侵攻前後から今までの記憶は存在しない、という状態でした。

 

 目覚めた時佐鳥を目の前にして涙したのは、無意識の内に彼に対する愛情が湧き出て来て、思わず涙が流れた形です。

 

 佐鳥の「笑えばいいと思うよ」は当然原作エヴァのオマージュであり、過去回想章を締めるには相応しい台詞だとして選びました。

 

 こうして樹里の過去は漸く明らかになり、最終章へ至ります。

 

 次回は最終章の解説となりますので、お楽しみに。

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