香取隊の狙撃手   作:デスイーター

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各章解説・及び裏話/最終章

 

 

『最終幕~ニューワールドオーダー/Dawn of the White Girl』

 

 遂に最終章、「ニューワールドオーダー」の解説となります。

 

 英題は「白の少女と夜明け」であり、文字通り樹里の夜明けが訪れるか否かを決める最後の戦いとなります。

 

 「ニューワールドオーダー」は「新世界秩序」、つまり新しい世界のルールの適用、戦争終結後の新しい世界を意味するワードとして章題としました。

 

 イメージとしてはこれまで白の星骸に縛られていた樹里の運命を打破し、新しい世界で生きて行く為の決着の章となります。

 

 まず、最初に変貌した樹里が出て来ます。

 

 これは言うなれば第一形態であり、名は機巧兵(イムノス)

 

 樹里を始めとした十数体しか存在しない、ククロセアトロの研究成果の最大の「成功例」です。

 

 以前出した通り、樹里の検体番号は「128954」。

 

 つまり、12万8954人目の被検体です。

 

 この頃になると機能代替(オルタナティブ)トリガーの性能もかなり上がっており、内蔵された傀儡糸(クローステール)を操作する操作回路(シデロ)の機能も相応に上昇しています。

 

 ちなみにシデロは「鉄」、もしくは「アイロン」のギリシャ語です。

 

 意味合いとしては前者が近く、操作「回路」なので機械的なイメージからこの名前としました。

 

 「イムノス」の方はギリシャ語で「讃美歌」を意味しており、ククロセアトロの兵士は基本天使モチーフなので、ククロセアトロの歪な技術を賛美する存在としてこの名を着けました。

 

 この状態の樹里の攻撃方法はアームによる物理攻撃の他、狙撃砲による狙撃、ハウンドを模した射撃攻撃、糸による瓦礫操作、そして最大火力の熱線となります。

 

 真鍮瞳(コンプタドーラ)は義眼型のトリガーですが、その真価は解析能力にあります。

 

 その真鍮の眼で見た対象を分析し、リソースさえあれば模倣品を作り出せる。

 

 精密な分析力と、糸を用いた物質の再構築。

 

 それこそが、この機能代替(オルタナティブ)トリガーの真髄なのです。

 

 この時点で樹里のセットしていたトリガーは粗方模倣済みであり、当然ながらシールドも装備しています。

 

 但し劇中で見抜かれた通り、ノーマルトリガーを模した攻撃は一度に二つまでしか使用出来ず、シールドを使用した場合自動的に両防御(フルガード)の状態になってしまいます。

 

 糸を利用した瓦礫操作攻撃はこの枠から外れますが、逆に言えばシールドを張っている間は攻撃手段はこの一本のみに絞られます。

 

 加えて母トリガーからの供給がないにも関わらず出力を節約するという概念がないので、燃費度外視の熱線を使ってしまうとすぐにガス欠になってしまうという欠陥仕様です。

 

 この状態であれば、ボーダー側が揃えた戦力を駆使すれば最終的には危なげなく鎮圧出来たでしょう。

 

 ですが最悪な事に、ククロセアトロの本星が玄界に近付いてしまい、検体が近くで戦闘中である事を察知した本星のAIが支援を決定。

 

 結果として(ゲート)を繋がれ、樹里はククロセアトロに向かってしまいます。

 

 この門は星間航路(ヒュポノモス)の技術が使われたものであり、隠蔽機能が高く開くその瞬間までボーダーに察知させませんでした。

 

 あのままだと基本的に負け確だった機巧兵(イムノス)は、ククロセアトロの本星の支援を得てあちらに帰還してしまったワケですね。

 

 ククロセアトロは基本的に、あのアフトクラトルの侵攻の際に母トリガーの「神」が死亡し、人が生きられる星としては死にました。

 

 ですがククロセアトロに遺された人工知能は生きた人間がいなくなったのであれば、人類の生存を考慮せずに星を稼働させれば溜め込んだ人的資源(リソース)を使い潰す事でまだ航行が可能であると判断し、実行しました。

 

 結果としてククロセアトロは人を生存可能とする機能の全てをカットし、星の運行に必要なエネルギーを廃人化した人間の群れ(リソース)から少しずつ抽出する事で航行を継続していました。

 

 その目的は「放出した検体の稼働補助」であり、乱星国家であったククロセアトロの性質を利用し、もしも星の向かった先で検体が稼働していればその能力を十全に活かす為の支援を行うつもりで死した星を動かしていたのです。

 

 とはいえ、莫大なリソースを溜め込んでいたとしても無限ではありません。

 

 このままでは遠からず星は本当の滅びを迎えていたでしょうが、そのタイムリミットを迎える前に樹里の暴走とかち合ってしまったのです。

 

 本星に帰還した機巧兵(イムノス)はかつての玉座、つまり母トリガーの直上まで移動し、(クラウン)トリガーの中枢である中枢糸(フォリヤ)と接続。

 

 リソースを組み上げて、変貌の準備に取り掛かります。

 

 フォリヤは「多幸感、土地が肥えている状態」を指しており、数多の人間の尊厳と命を犠牲に肥え太るククロセアトロを象徴する代物なので、こういうネーミングになりました。

 

 此処で出て来た骸兵蟲(プロニムフィ)は、元々星の内部に保管していた捕食型トリオン兵の因子を組み上げ、造産し直したものです。

 

 ククロセアトロはラービットの情報を手にした後何とかその再現をしようと試みましたが、結局黒トリガー由来のキューブ化機能は再現出来ず、接触した対象を即座にトリオンに変換する捕食能力で妥協する事になりました。

 

 プロニムフィはギリシャ語で「幼虫」の意味であり、まさに羽化する前の幼体でありながらその物量で圧殺する悍ましい雑兵の群れとして設計しました。

 

 この骸兵蟲(プロニムフィ)は寸動の百足のような姿であり、他のククロセアトロ産の兵器に比べて最も普通のトリオン兵に近い外観をしています。

 

 一個体の戦闘能力はドグ以下ですが、その最大の脅威は無尽蔵の物量です。

 

 加えてバッグワームを模倣した能力と地下を穿孔する能力が備わっているので、初見殺し要素も高いです。

 

 かつて不幸にもこの星の骸に訪れてしまった他の星の人間はこの捕食型の群れに襲われ、星の死骸を動かす為のリソースとなりました。

 

 このような「死んだ星」に訪れるのは余裕のない属国の人間が多く、それらの人間はククロセアトロの脅威を人伝で聴いていたのみで真の恐ろしさや醜悪さを知らず、「もしかしたらアフトクラトルに反抗出来るような技術が眠っているかもしれない」と欲をかき、星の骸の餌となったワケですね。

 

 この骸兵蟲(プロニムフィ)は独立したトリオン兵ではなく樹里の操る触手、つまりラジコンと同じです。

 

 彼等が捕食で得たトリオンは即座に本体である樹里に送られ、リソースとして還元されます。

 

 なので一体一体を潰しても他の捕食型によって摂食されてリソースを還元、そのリソースを用いて新たな兵隊が産み出される、という文字通り無尽の群れでした。

 

 故に骸兵蟲(プロニムフィ)相手にただ斬ったり撃ったりでは根本的な解決にはならず、根絶には丸ごと消し飛ばすような火力が必須となります。

 

 二宮さんと千佳の射撃はこれに当たり、初手で最適解を引いた事になりますね。

 

 救出部隊になったメンバーは風間隊の三人に小南、レイジ、遊真、ヒュース、香取、佐鳥、そして自ら志願した木虎の7名となります。

 

 烏丸や影浦も候補としてはあったのですが、前者はガイストを使った後のリカバリーが不可能な場所に赴かせる事が危険極まりない点、後者は正直香取隊との直接の関わりが薄いので没案になりました。

 

 木虎は参加させるか迷ったのですが、作戦の内情を聞けば木虎は自分がより適しているであろう場所へ向かわせるよう上申するだろうなと考え、こうなりました。

 

 風間さんも木虎の上申の内容が筋の通ったものであった為問題なく通しましたが、木虎の本心としてはチームメイトの佐鳥と、なんだかんだ腐れ縁になっている香取や樹里が心配で仕方なかったという事情があります。

 

 チームメイトである佐鳥は勿論、香取や樹里とも浅からぬ付き合いがあったので、口では色々言いつつも気にかけてはいたので居てもたってもいられず志願した、という流れです。

 

 城戸さん達の方も少し描写しましたが、風間達がククロセアトロへ出発した時点でこちらは忍田さんを含めた面子を(ゲート)の傍に待機させていました。

 

 万が一向こうからトリオン兵の大群がやって来た際に即応する為、というのが表向きの理由ですが、忍田であれば必要に応じて援軍としても使えるだろうという裏の判断もありました。

 

 戦場が近界である以上どんな予想外(イレギュラー)が起こっても不思議ではなく、念には念を入れて過ぎるという事はありません。

 

 ククロセアトロの悪辣さ、質の悪さを知った今となっては当然の配慮と言えましょう。

 

 それに迅ほど替えの利かない存在ではなくとも、ククロセアトロに向かったのは精鋭と言えるメンバー揃いです。

 

 もしもその一部であっても未帰還となればボーダーの受けるダメージは計り知れない為、人的損失だけは何が何でも抑えたいというのが本音でした。

 

 なので風間には「最悪の場合は木岐坂隊員を切り捨ててでも生還しろ」と言い含めており、風間もそれを承知していました。

 

 ですが忍田さんを待機させていた事からも分かる通り可能であれば救出に成功して欲しいとも願っており、組織の長として妥協できる分水嶺がここだった、という話ですね。

 

 追加戦力として二宮隊に応援を願ったワケですが、そこでユズルが偶然いて影浦隊も参戦となったのは迅の采配です。

 

 もしもただ命令を下して二宮隊を動かしていればユズルを含めた影浦隊は不参加となり、防衛組の未帰還率が上がっていました。

 

 上層部としても部下のしでかした事とはいえ不可抗力で降格となった二宮隊と異なり、組織幹部に暴力行為を行った影浦隊を信用する材料はなく、なし崩しでなければ参加メンバーに入る事はなかったでしょう。

 

 なので迅さんは一計を案じ、敢えて香取と佐鳥に二宮隊への助力を頼みに行かせる事でユズルを巻き込み、影浦隊参戦へと繋げたのです。

 

 影浦隊参戦によって索敵能力を持った影浦のお陰で防衛組の被弾率が下がり、ユズルという友人を同道出来たお陰で千佳の精神的な負担が幾らかやわらぎました。

 

 この影響は無視出来るものではないので、わざわざこうした手間を取った、というワケですね。

 

 決戦前の影浦と犬飼のいざこざですが、遠征試験編で実は言う程鳩原の事を引きずっていないワケではないというのが暗示された犬飼なら、こういう面も見せるだろうなと描写しました。

 

 氷見さんによって言い含められただけで、仮にもチームメイトだった一人が自分達を裏切って密航なんてしでかした事を気にしていない筈もなかったんですね。

 

 だから「いなくなった後どうするの」なんて台詞をあんな顔で言ったんでしょうし、「カゲ相手には本音で接するようにしてる」って事はそれだけ素の自分を曝け出してしまっているのでしょうし、問答無用で本心が伝わってしまう影浦を相手にすると平常心でいられなくなるのも相性の悪さを加速させていたんでしょう。

 

 ですが今の影浦はユズルの意気込みを買ってやる気MAXな状態であり、そんな犬飼の内心を見抜いて「今だけはわだかまりを忘れて協力しろ(意訳)」と告げて犬飼のメンタルを立て直したんですね。

 

 犬飼がユズルに突っかかっていたのは鳩原の一件を良く知りもせずに二宮さんにヘイトを向けていた事に加え、真実を知った後妙に二宮さんに厚遇されていたのが気に入らなかった、というのもあります。

 

 飄々としているようで結構センチメンタルなようなので若干面倒くさい状態になっていましたが、「よりにもよってカゲに言われた」という事で立て直しに成功します。

 

 要は冷や水をぶっかけられて冷静になったワケであり、ユズルの成長を通じて影浦の心境の変化がなければこうはならなかったでしょうね。

 

 そして遂に全員がククロセアトロに降り立ち、最終決戦が開始されます。

 

 修が提案した「エスクード足場作戦」は骸兵蟲(プロニムフィ)の穿孔攻撃を脅威と見た結果、「千佳のエスクードなら解決出来るんじゃないか」と考え上申した結果です。

 

 更にスパイダーを織り交ぜてワイヤー地帯を作り上げる事で敵の襲撃への対応力も上げているので、初動としては文句のないものだったでしょう。

 

 エスクードの足場があるとないとでは明確に奇襲への対処の難度が違う為、序盤の消耗を抑えた修の策の齎した成果は大きいです。

 

 何せ相手は無尽蔵の雑兵なので、スタミナ切れはどう考えてもこちらが先な以上、消耗を抑えるのは必須でしたからね。

 

 一方樹里を包んでいた繭、千変鎧糸(ククリ)によってその変貌が始まっていました。

 

 この千変鎧糸(ククリ)はギリシャ語でまんま「繭」を意味しており、内部に取り込んだ対象を覆う外殻を改造、肥大化させる機能があります。

 

 根本的な出力の向上や武装の追加に加え、余分なリソースを回す事で骸兵蟲(プロニムフィ)の造産も並行して行っていました。

 

 骸兵蟲(プロニムフィ)は全て糸でこの本体と繋がっており、糸を通じた改造も自由自在です。

 

 数体の骸兵蟲を利用して作り出した骸翅蟲(エフィメロプテラ)は、その一環です。

 

 エフィメロプテラはギリシャ語で「蜻蛉」を指しており、「一日限りの命」の意味も持ちます。

 

 この個体は飛行能力と加速力を得た代わりに非常に短命であり、稼動限界は3分以下です。

 

 実は攻撃さえ通ればトリオン体を麻痺させる毒を撃ち込む事が出来たのですが、全て迎撃されたのでそれも意味のないものとなりました。

 

 その骸翅蟲(エフィメロプテラ)による攻撃も目立った成果を挙げられなかったので、敵は本格的に樹里の「羽化」を最優先として動き始めます。

 

 そして樹里は「至天機巧(アポストロス)」として新生し、本当の最終決戦が始まりました。

 

 アポストロスはギリシャ語で「神の使徒」を意味しており、ククロセアトロという狂気の星の御使いとして生まれ変わった機巧兵(イムノス)の最終形態となります。

 

 これが出た事でサブタイトルもエヴァみを一切隠さなくなり、「酷薄な天使のテーゼ」はその第一フェーズにあたります。

 

 これらは当然エヴァに関する曲をもじった名前であり、何の曲を元にしているのかは見れば分かると思います。

 

 酷薄は「告白」とも読め、樹里の内面の告白やそれを直接伝えられない無情さも表しています。

 

 この至天機巧(アポストロス)、通称女神像は骸糸結柱(アネモミロス)という三柱のシールド発生装置によって守られており、まずこれをどうにかしないと攻撃は通りません。

 

 アネモミロスはギリシャ語で「風車」の意味であり、これは完全にイメージというか、三つ並んで役割を果たす絵面からのインスピレーションで付けた名前ですね。

 

 香取が指摘した通りこれは三つの内二つ以上が残っていればシールドを継続出来ますが、二つが破壊された時点でシールド発生機能は使えず、大規模に破壊された場合修復には多くの時間とリソースが必要となります。

 

 これは準備段階でふんだんにリソースを使っていたが為にあの防御力を実現出来ていたので、一度壊されると修繕はそう簡単にはいかなかったんですね。

 

 同時に出て来た女神像の玉座である偽骸玉座(スロノス)は、言うなれば地下の母トリガーからの供給を受ける中継地点となります。

 

 馬鹿正直にケーブルや触手を地下に伸ばしているのが見られるとそこを狙われるので、それをカバーする為に強固な外殻が必要になったワケです。

 

 ちなみにスロノスはギリシャ語でまんま「玉座」の意味で、見た目通りの名付けです。

 

 肝心の女神像本体ですが、この女神像は樹里を閉じ込めたクリスタルが最も硬く構築されており、時点で熱線を放つ装置である翼が堅く作られています。

 

 それ以外の部分はほぼ全てが傀儡糸(クローステール)を紡いで作り上げた糸の集合体であり、こちらを破壊しても再生は容易どころか根本的にダメージを与えられはしません。

 

 腹部はその内部に骸兵蟲(プロニムフィ)を生み出す造産工場となる人工胎盤が格納されている為、こちらは他の部位よりも多くリソースを注ぎ込んでいるので破壊されると再生はしますがリソースを多く消費する上に内部で造産・格納されている兵隊を直接攻撃出来るので、女神像の身体の中では翼や胸部クリスタルと並んで攻撃する意味のある場所です。

 

 ダークなSFみを持たせるのであれば子宮、胎盤といった要素のカリカチュアは必須だろうという考えはエヴァの影響ですねはい。

 

 腹部から突き出た狙撃銃は内部に格納した廃人化した人間の脳を使って稼働させており、思考力は勿論なくなっているので複雑な挙動は出来ず、一発撃てばそれまでです。

 

 偽骸玉座(スロノス)は地下の母トリガーや人的資源(いけにえ)の貯蔵庫と繋がっており、必要に応じてそこからトリオンや人体(しげん)を組み上げ、適宜利用していました。

 

 次に出て来た皇骸煌鋼蟲(スカラヴェオス)は、作り上げたは良いものの稼働するには他のリソースを全て投げ捨てるレベルのトリオンが必要となる上に一度稼働させれば停止させる事が出来ないので、地下で死蔵されていたトリオン兵です。

 

 スカラヴェオスはギリシャ語で「黄金虫」の意味であり、見た目もほぼ超絶巨大になった黄金虫そのものです。

 

 この超巨大トリオン兵には稼働に際し人体に有害な気体を周囲に撒き散らすので、生きた人間がいた頃のククロセアトロではまず使えませんでした。

 

 染み出た気体は人体に吸収されると血栓と似たような症状を起こし、最終的には死に至らしめます。

 

 言うまでもなくこの皇骸煌鋼蟲(スカラヴェオス)が稼働した段階でこの気体が撒き散らされており、周辺では生身に戻った時点でほぼ死亡が確定するような環境に変わっていました。

 

 アフトクラトルが攻めて来た時に出さなかったのは残ったリソース的に他の検体との併用が出来なかった為、あちらを優先した結果です。

 

 加えて本来皇骸煌鋼蟲(スカラヴェオス)の稼働にはクセロ主任を含む数名の認証が必須であり、最高権威者が死亡した時点で起動の判断を下せなかったのです。

 

 ですが人工知能が支配者に成り代わったククロセアトロの星骸では全ての決定権は人工知能にあり、問題なく稼働出来たというワケです。

 

 皇骸煌鋼蟲(スカラヴェオス)が展開したシールドは強固ですが、千佳の砲撃を完全に防げるレベルではありません。

 

 なので角度を調整し砲撃を少しだけ「逸らす」事で被害を最小限に留め、後は再生力でゴリ押す戦術を取ったワケです。

 

 ですが当然トリオン消費も馬鹿にならないので、スカラヴェオス本体が狙われた時に自動的に展開される仕組みになっていたので、そこを突かれて足元を狙われ時間を稼がれたという事です。

 

 女神像本体は強固なバリアである糸天宮壁(バシレイオン)で身を護り、一方的に射撃で蹂躙。

 

 皇骸煌鋼蟲(スカラヴェオス)による質量の暴力で敵陣地の陥落を狙う、というのが今のところの敵の目論見です。

 

 ちなみにバシレイオンはギリシャ語で「王、君主、宮殿」を意味します。

 

 星の中心である人工知能が移植された中枢を護る宮殿、そのイメージですね。

 

 第一結柱(プロートス)第二結柱(デウテロス)はギリシャ語でぞれぞれ「一番目、二番目」の意味です。

 

 これは文字通りですね。

 

 ノーマルトリガーを模倣した模倣武装(カスレフティス)はギリシャ語で「鏡」を意味しており、鏡のように性質を写し取った武装、という意味です。

 

 出力こそ母トリガーからの供給で大幅に上がってはいますが、性質はボーダーのトリガーそのままなので弱点もそれに準拠しています。

 

 射撃トリガーは射出までタイムラグがありますし、狙撃は再装填(リロード)を挟まないと行えない、といった具合です。

 

 それから戦闘中に偶然見つけた死骸が重なった地下施設は廃人化した検体の貯蔵庫の一つであり、使い物にならなくなった検体を此処に放棄していました。

 

 この施設にあるのは殆どが内蔵をトリオンに変換されたり血液や脳髄を資材として抜き取られたりした抜け殻であり、「資源」を絞り尽くされた残骸の廃棄場です。

 

 残った抜け殻も有事に使えば僅かなトリオンに変換出来ますがそこまでの量は確保出来ないので、ほぼ死蔵されていました。

 

 それが攻撃によって偶然垣間見えた事で、改めてククロセアトロという星の質の悪さを見せつけた形です。

 

 それから樹里の回想で攫われた当時の事が語られていますが、元々彼女は「強化視覚」にあたる副作用(サイドエフェクト)は持っていました。

 

 しかしそれは現在のような強力無比なものではなく、精々が「物の動きが繊細に見える」というどちらかといえば動体視力の強化が主な作用でした。

 

 ですがそこに眼を着けたククロセアトロの研究者が彼女の眼球を改造し機能代替(オルタナティブ)トリガーとした事で、今のような法外な能力に変換されたのです。

 

 樹里の意識が浮上しかけた時に妨害したのは、真鍮瞳(コンプタドーラ)に備わった検体の意識封鎖機能です。

 

 これは稼働時に障害となる検体の意識を文字通り封鎖する機能であり、万が一にも検体に躯体のコントロールが奪われる可能性を排除する為のものです。

 

 この機能には常に一定以上のトリオンを用いる必要があり、樹里がポッドに押し込まれていた時に記憶を忘却したのもこの機能の一部です。

 

 とはいえ至天機巧(アポストロス)として新生した時点で女神像の制御権の殆どは人工知能側が握っており、樹里が目を覚ましたとしても「僅かに動きが鈍る」程度だろうという判断結果の下、「リソースに余裕があるから行っているがいざとなれば削減しても構わない機能」として人工知能に判断されていました。

 

 それが後に、効いて来るワケですが。

 

 女神像の熱線を拡散させる為の空中のリングは、無印ゾイドでデスザウラーが惑星中に荷電粒子法を拡散させたヘイローをイメージして頂ければ分かり易いと思います。

 

 実際、あのイメージで作ったのでそもそも熱線も荷電粒子法がモチーフですし。

 

 天輪粛焔(アクティノヴォロー)が熱線の名称、万糸天輪(エクソドス)が砲身であるリングの名称です。

 

 アクティノヴォローはギリシャ語で「照らす、発光する、輝く、放射する」という意味で、エクソドスはギリシャ語で「出力」の意味で、まあまんまですね。

 

 この熱線は母トリガーの供給下でのみ十全の威力を発揮出来る代物であり、トリオンをそのまま熱波に替えて放射しているので弾体をカバーで包んでいるボーダー製の射撃トリガーとは根本的に異なります。

 

 その分消費は劣悪であり、エスクードを100本作った方がまだマシである、と言えばどれ程かも分かるでしょう。

 

 威力は強力無比ではあれど、母トリガーからの供給という前提の下でしか真価を発揮出来ない局所的過ぎる平気で普通ならそんな真似は論外である以上浪漫兵器であるとさえ言えます。

 

 ある意味ククロセアトロの大艦巨砲主義の象徴のような武装ですが、ラスボスはこれくらい派手な攻撃をしなければならないでしょう、という理由もあるので思いっきり盛った結果でもありますが。

 

 後から出て来た骸蟲騎兵(テラペウテース)は廃人となった後期型の検体を骸兵蟲(プロニムフィ)と合成し、機動力と装甲を強化した骸肢兵(ネクロス)の発展型です。

 

 蜘蛛や百足等の機動力や装甲を付与した上で、トリガーによる攻撃を行える事が最大のメリットとなっています。

 

 当然人間的には既に死んでいるも同然ですが、ククロセアトロの技術は脳の原型が残っていればそこから出力をする事が出来るので、こちらも死体を利用した兵隊である事に変わりはありません。

 

 テラペウテースはギリシャ語で「仕える者、奉仕する者」を意味しており、意思なき奴隷が如き兵隊の名前として選びました。

 

 それから熱線によって(マザー)トリガーの姿が露呈しますが、そこで出て来た糸片創核(カルディア)というのは台座や隔壁を含めた(クラウン)トリガー全体の名称です。

 

 中枢糸(フォリヤ)はその中でも台座部分の機能を指しており、正確には傀儡糸(クローステール)の生産機能を担っている部位です。

 

 傀儡糸はトリオンを消費する事によって無尽に増やす事が出来るので、その生産元を止めなければ意味がありません。

 

 また、別個体に内蔵した傀儡糸は宿主のトリオンを消費する事で自己増殖もするので、僅かな糸さえ内部に仕込んでおけば後は勝手に造産される、という事です。

 

 勿論その核である糸片創核(カルディア)は母トリガーを内包した最重要施設なので、相応に防衛機能はあります。

 

 骸糸衛兵(ネウロン)はそんな施設に備わった防衛機構であり、質量を活かした攻撃しか行えませんが閉鎖空間では充分な脅威です。

 

 もっともすぐ傍に母トリガーがあるので大出力の遠距離攻撃は守るべき対象を危険に晒してしまう危険もあるので、実装出来なかったというのが実のところですが。

 

 ネウロンはギリシャ語で「神経」の意味であり、糸片創核(カルディア)という重要機関を護る神経の一つ、という感じでネーミングしました。

 

 そんなこんなで激闘を続けるボーダーのメンバーですが、そこに思いもしない闖入者が現れます。

 

 勿論、ヴィザ翁の事です。

 

 ちなみに「異邦のシ者」は勿論ヴィザの事であり、「最後のシ者」のもじりですね。

 

 翁はヒュースの想像通りロドクルーンで「監査」を行った帰りであり、先日露見したアラフニの一件で散々絞って来た後です。

 

 ヴィザとしてはあの日ククロセアトロの終わりを見た者としてこの国の技術が祖国に持ち帰られる事態だけは何が何でも防ぎたいというのが本心だったので、偶然発見した星の骸に意気揚々と乗り込んだらボーダー組とかち合った、というのが真相です。

 

 実は「ヴィザ翁と共闘する」というのは一度描いてみたかった展開であり、今回はククロセアトロの脅威と彼の国対するアフトクラトル側の嫌悪感を散々描いた後だったので、説得力も出るだろうという事で実行に踏み切りました。

 

 最初はピンチの時にすかさず現れて助力する形も考えていましたが、いきなりボーダー側に全面協力するのは違うだろうと、修に矢面に立って貰いました。

 

 修は社会経験はありませんが、その分近界民二人と普段から交流し「向こうの価値観」というのも知っています。

 

 なのであの場では最もヴィザ翁相手の交渉役としては向いており、冷静にそれを判断しつつ自ら前に出ました。

 

 当然二宮から制止が入りますが、二宮さんもなんだかんだ修の事は買っているので「勝算がある」と分かれば任せるのも吝かではなかったワケです。

 

 大人として「責任を取るのが仕事である」と分かってもいるので、失敗したら失敗したで即座にフォローに回る予定でした。

 

 まあ、この時点でボーダー組はかなり消耗していたので、いざヴィザ翁と戦闘になってしまうと勝率は0%を上回る事はないので修が成功しなければ詰んでいましたが。

 

 だからこそヒュースの話を聞いてヴィザ翁の狙いを見抜き、共闘を取り付ける事に成功した修がMVPであると言っても過言ではないでしょう。

 

 実際、ヴィザによって今までどうしようもなかった皇骸煌鋼蟲(スカラヴェオス)は瞬殺され、最後の詰めの段階でも彼がいなければ熱線は止められなかったでしょうから。

 

 また、ヴィザ翁が現れた事で敵の最優先排除目標が一瞬で切り替わり、他が楽を出来るようになりました。

 

 まあ、この星に集ったボーダーの全戦力よりもヴィザ翁一人の方が脅威でしょうから言うまでもありませんが、そういう意味でも彼を味方に出来たのは大きいのです。

 

 これにより攻撃へ転じる事が出来るようになり、熱線の冷却装置である両翼、蛇腔導翼(ロビネス)破壊に成功します。

 

 蛇腔導翼(ロビネス)はギリシャ語で「蛇口」の意味であり、熱線をひねり出す蛇口、という意味で付けました。

 

 この翼の主な役割は「砲身の冷却」であり、熱線はチャージ時間が殆どかからず撃つ事が出来ますが、一度撃つとこの翼で冷却を行わなければ次に撃った時に砲身が熱に耐え切れずに焼き切れます。

 

 蛇膣導翼はその為の機構が詰め込まれており、一度破損すると再生までに時間とリソースを消費します。

 

 そういう意味で、翼を狙った選択はベストだったと言えるでしょう。

 

 その後一瞬でも佐鳥の声が樹里に届いたのは、翼を修復しようとリソースを大幅に使った至天機巧(アポストロス)の隙を突いた形です。

 

 此処で樹里が目覚める切っ掛けを作らなければ、後の救出には繋がらなかったでしょう。

 

 香取にその樹里の想いが届いだのは、傀儡糸(クローステール)を通じて僅かな思念を届ける事が出来たからです。

 

 女神像本体が翼破損の混乱から立ち直るまでの隙を突いたからこそ出来た事であり、なくてはならない道程でした。

 

 その後香取達による決死の特攻で、どうにか「神」の残骸に刃を届かせる事に成功します。

 

 カルディアは台座そのものが動き防衛機構としての役割を果たす他、母トリガーの内部には糸片創核(カルディア)が生成した大量の傀儡糸(クローステール)が蠢いており、これに捕まれば母トリガーに取り込まれ、動力の一部となるのみです。

 

 ですが「神」は母トリガーにおける生命線なので、この「糸」を使うのは本当の最終手段であり、あそこまで肉薄されなければ糸を紡いで盾にしたりする用途で使ったでしょうが、「攻撃を加えようとしたものを自動的に絡め取り吸収する」という防衛機構の仕様の所為で防御よりも対象への「攻撃」が優先されてしまい、そこを突かれた形です。

 

 この時貫いた「神」は以前説明したククロセアトロ最後の王妃であり、人間としては既に死亡していましたがその遺骸を「神」の核として搾取されていました。

 

 無尽の生け贄からの供給で何とか人の形を保っていましたがそこに魂はなく、文字通り聖遺物のように死体のみを利用されていたのです。

 

 なので漸く終わりを迎えられた事を安堵した結果、香取へ感謝の念を伝えたのかもしれません。

 

 ククロセアトロの母トリガーは傀儡糸(クローステール)によるトリオンの搾取で出力を上げていましたが、「神」がいなければ十全な稼働は行えないという原則自体は変わらない上、至天機巧(アポストロス)がかなり無茶な規模の出力を振るっていたので、「神」の死と同時にその反動が一気に襲い掛かる事になり、星の滅びへと直結しました。

 

 それでも戦闘実験を継続せんと人工知能は可能な限り星の滅びを遅らせつつ暴威を振るいますが、どうにか遊真とヒュースが作り上げた突破口をこじ開け、樹里救出へ至ります。

 

 とはいえ彼女の暴走の元凶である左目、真鍮瞳(コンプタドーラ)が再び制御を取り戻そうとしますが、即断で樹里が左目の破壊を願った事で香取が精密な一撃で左目のみを抉り出し、事なきを得ます。

 

 あのまま放置すると再び警戒区域で見せた第一形態が現れる所だったので、間一髪ですね。

 

 一年前と異なり千変鎧糸(ククリ)の内部で多くの改造を受けた事で生身とトリオン体の機能代替(オルタナティブ)トリガーがほぼ同一化していた為、ここでの破壊が生身のそれにまで及び樹里の内部に埋め込まれていた地雷は完全に撤去完了となりました。

 

 此処で終わらせても良かったのですが、最後には主人公にも花を持たせるべく最期の形態と化した至天機巧(アポストロス)との最後の戦いになります。

 

 この状態の至天機巧(アポストロス)は母トリガーからの供給が望めなくなったが為に供給路をほぼ投げ捨て、移動を可能にした形態となります。

 

 当然ながら出力は各段に落ちており、最も弱い状態と言っても過言ではありません。

 

 ですが核である樹里さえ取り戻せばまだ戦闘継続が出来るので、死に物狂いで奪いに来た結果です。

 

 最後の決戦のサブタイトルである「SHOOT ME TO THE MOON」はエヴァのEDである「FIY ME TO THE MOON」のもじりで、「SHOOT(撃つ)」と題しているのは樹里と佐鳥、二人の一撃で対象を撃ち抜く、という意思表示です。

 

 此処で明らかになった至天機巧(アポストロス)の本質、「その殆どが糸の集合体であり核を撃ち抜かない限り停止しない」というものを見抜き、更に先程までその一部だった樹里の直感で核の位置を探る事が出来たので、どうにか最後の一撃に繋げられました。

 

 ボディスーツ姿のまま狙撃銃を構えるその姿は最終決戦フォームとでも言うべきものであり、ここでのみ使える形態でした。

 

 目立った効果はそれこそ「至天機巧(アポストロス)の核の位置が分かる。出力が上がる」くらいのものですが、ピンポイントでその仕様が刺さった形です。

 

 佐鳥と二人で撃ち抜いた形にしたのは、やっぱりそれが映えるからですね。

 

 主人公とパートナーの共同でのケーキ入刀の如き最後の一撃、皆好きでしょう?

 

 そこからはお約束の脱出フェイズです。

 

 最終決戦の地はラスボス後に崩壊する、お約束ですね。

 

 最後に出て来たラービット擬きはキューブ化機能を再現出来ずに取り敢えず形だけ似せたプロトタイプであり、捕食機能すらなく内部の牙はただそれっぽく整えただけの欠陥品です。

 

 だからこそ至天機巧(アポストロス)から直接接続されてもいなかったので星の崩壊、というよりも検体(じゅり)が逃げようとしているのを察知し、執念で追いかけた来たワケです。

 

 これに捕まると星の崩壊に巻き込まれて終わりなので、文字通り助かるかどうかの瀬戸際でした。

 

 ですが万が一の事を考えて残っていた二宮の徹甲弾(ギムレット)で撃墜され、全員の生還を果たします。

 

 後は待機していた忍田さん達に収容され、最終話になります。

 

 樹里の左目は破壊されてしまったので、生身の状態ではもう強化視覚は使えません。

 

 ですがトリオン体として登録された情報は更新されていないので、少なくともあと数年はトリオン体ならば以前と同じように使えるでしょう。

 

 もっともそれも後数年の話であり、成人したあたりでトリオン体であっても使えなくなります。

 

 元々異常な視力はククロセアトロの改造の結果だったので、元に戻った、と言うべきなんでしょうが。

 

 また、ここで樹里の抱えていた問題、「女性機能の麻痺」が露呈します。

 

 それを聞いた樹里は「このままじゃ将来賢の子供を産めない」と危機感を持ち、身体を治す一縷の望みを懸けて遠征を目指す事になります。

 

 三年にも渡って非人道的な仕打ちを受けて来たのに後遺症が軽いものである筈がないだろうと思ってこうなりましたが、実のところ「仕方のない事だった」で終わらせるやり方も考えてはいました。

 

 ですがこうして希望を示すやり方の方が後味は悪くないだろうと思い、こうなりました。

 

 物語を完結させる以上、後味の良し悪しというのはとても重要ですからね。

 

 最後は佐鳥が晴れて樹里ちゃんと結ばれてエンディングとなりました。

 

 この最終章の反省は、少し冗長だったかもしれない、という事ですね。

 

 ギミックボスとの大規模戦闘という事で色々盛ったのですが、それが冗長さに繋がってしまっていたのではないかと思います。

 

 最終決戦という事で気合いが入り捲った上に趣味全開で書いていたのでその弊害もあるかと思いますが、これを反省として次回はもっと洗練されたものを書きあげる事を誓います。

 

 さて、これで解説と裏話は終わりになります。

 

 次回あたりで主要キャラの紹介と解説を終えたら、アフターストーリーに着手しようと思います。

 

 内容としては最終回後の佐鳥と樹里の関係性や、その周囲の反応。

 

 それから各々がどう過ごしているかを主軸に描いていきたいと思いますので、ご期待下さい。

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