白金の竜王に転生した人間の日記   作:美味しいラムネ

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初投稿です


英雄の十四冊目

219002日目

 

魔神討伐をしている一行に加わることになった。

難度200以上の危険な奴らは殆ど倒したし、丁度いい機会なのかもしれない。

 

…それに、私たちが倒すよりも、魔神となった彼らはこの世界の人間に倒された方がいいのかもしれない。

 

少し前に戦ったあいつ。1人だけ、消滅する寸前に正気を取り戻した魔神がいた。

ネコさま大王国の中でも一番強かった猫。スルシャーナは彼女に、「何故嘗ての破滅の竜王のように無差別に暴れ回らなかったのか」と問いかけた。

「それはマスターの最後の命令が、「この世界を守れ」と言うものだったから。だからせめて、正気を失い狂った私達は、この世界の人間に殺されることで経験値となることで世界を守ろうとした」と言うものだった。

 

…本当に、何故彼女らが魔神となってしまったのだろうか?

 

 

219003日目

 

なんとなくだが、一団の面々の立ち位置がわかってきた気がする。

リーダー、と呼ばれる彼。まぁ十中八九プレイヤーだろう。その隣の、リーダーからは「相棒」と、それ以外からは「暗黒騎士」と呼ばれる彼もそうだろう。悪魔と人間の間に子が生まれることはこの世界では基本的にない…筈だ。異形種と人間種との間には子は生まれない。一部例外もあるが。

ただ、プレイヤーにしては弱いな。初心者プレイヤーだったのか?オンゲっぽいしあり得るだろう。

 

あとはあの老人…明らかにニンジャだな。アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?

野生の忍者は初めて見たな。忍法を見せてくれとせがんだら分身してくれた。うん。ニンジャだ。御庭番衆もあの技使ってたし。

 

 

219021日目

 

今日はアゼルリシア山脈なる山の中に出没した魔神を討伐した。

土でできたゴーレムみたいなやつだった。これは多分異世界からきた奴だな。暴れ回ってたし。というか猫じゃないし。

 

何体かいた為手分けして討伐したのだが、そこで愉快な男と出会った。

ドワーフの王様、「ルーン工王」と呼ばれる彼。私の鎧を見た途端に大声を上げてひっくり返っていたぞ。

ルーン工王と呼ばれるぐらいだから、私の鎧に刻まれたルーンが気になったのだろう。どうだ!神位文字と裏文字の合わせ技だぞ!

 

「その存在しないはずのルーンが、あり得ない数刻まれた鎧…まさか、伝説のルーンドラゴン、この世に存在するルーンが全て刻まれているとされる神話の竜王、『白金の竜神』の関係者か!?」と叫んでいたが、別に白金の竜神は伝説になる程立派な竜じゃないぞ。ただの一般人だよ。なんでも私の本体を見ることは世界中のルーン工匠にとって憧れらしい。たしかにルーンはいっぱい刻まれているが…

 

…やばい、こいつから私の正体がバレたかもしれない。まだ一行に入って1ヶ月経ってないぞ!?

 

 

一応、「彼から依頼されて魔神を討伐している騎士だ」と誤魔化したが…

 

多分あのおばs…『死者使い』のリグリットにはバレているな。というかバレていた。

口止め料よこせと笑いながら言われたよ。この婆さ…リグリット、なかなか強かである。とりあえずどこぞの糞蜥蜴の素材のあまりで作ったこの「死の宝珠マークII」でも渡しておこう。死霊系魔法を強化する宝珠である。負のエネルギーが溜まれば死の騎士ぐらいなら呼べるんじゃないか?インテリジェンスな部分は省いたからあの糞蜥蜴が復活することもないし上手く作れたと思う。

 

そういえば、山脈から出るときに、オラサーダルクとかいう霜の竜に出会ったっけな。

その竜は種族的強さにかまけて自力で強くなろうとはしていなかった。よし、糞蜥蜴ではない「新世代の」竜族っぽいし、ここは一つ職業レベルの重要さと装備の重要さを教えてやろう。まぁ普通の竜は鎧も武器も装備できず、装飾品しか装備できないんだがな。

 

 

219023日目

 

本体のことはリグリット以外にはバレていないと思っていたが他のメンバーにもバレていた。というか全員にバレていた。全部キーノが私の自慢をしていたとかでそこ繋がりでバレたらしい。というか最初からバレていたらしい。スルシャーナはバレていないのに。スーラって言う偽名を皆んな信じてるのに。

 

キーノ。今度一緒に情報の秘匿の重要性についてお勉強だな。というか自慢ってどんな話をしたんだ。おい。

 

本体が動けないのは絶対に漏らせない重要な理由があるから許してくれ…

 

そういったら冗談みたいなノリで頭を叩かれながら「ドラゴンなんだし貴重なマジックアイテム持ってるんだろ!」と強請られた。

しょうがないにゃあ…全員分の装備作ってやるから待ってなさい。

 

 

219025日目

 

ギガントバジリスクと死闘を繰り広げている一行を見て思ったが、やはりあのリーダーと呼ばれる男と暗黒騎士だけ成長速度が速いな。つい1週間前までは難度60程度だったのがもう80ほどまで上がっている。

 

あ、ドワーフが乱入してきた猪に吹き飛ばされた。

おいまて。ルーン工王が付いてきているが、王様が国を離れて大丈夫なのか?

あぁ、政治はほぼしていなかったと。宰相からも戦力としてしか見られてなかったし大丈夫だと。

 

私とほぼ同じ状況じゃないか!

 

 

219101日目

 

平原でケルベロスと死闘を繰り広げている最中に、オッドアイのエルフの少女と出会った。この辺りのエルフは大森林から出たがらないと聞いていたが珍しい。

この少女、子供でありながらその実力は相当高く、難度150以上はあった。強いな。とはいえ格上のケルベロス相手は荷が重かったのか苦戦していたので久しぶりに私とスルシャーナの出番が回ってきた。いつもは取り巻きの処理や危ない場面のサポート、スルシャーナは少し使える支援魔法でのサポートぐらいなんだがな。一度だけスルシャーナが《第10位階死者召喚》を使う機会があったが。あの戦いは大変だったな…ゲーミング頭蓋骨が大活躍していた。

 

やけに強い彼女はエルフの王族らしい。ホウガン、と呼んでくれと言っていた。なんでそんな重要人物がここに?

なんでも、エルフの王国から、「魔神を討伐して偉大なエルフの力を知らしめてこい!」と父親に言われて外へ出てきたとのこと。

 

ひどい親だな、と思ったが彼女は首を振って否定していた。

「自分から志願したことだし。それに父さんは別に悪い人じゃないんだ…すごく優しいし。いざ外に出る、ってなった時はとても心配してくれたし、秘宝も貸し出してくれた。ドラゴンにトラウマがあるのか知らないけど、ドラゴンに気をつけろとしつこく言ってくるのが玉に瑕だけど」とのこと。

ドラゴンにトラウマか。何処ぞの真なる竜王にでも襲われたか?

そういえばあの装備どこかで見覚えあるんだよな…何処だっけな…?

 

 

219113日目

 

別に寝る必要はないので、野営地で空を眺めていると、何やらリーダーと暗黒騎士がヒソヒソ話しているのが聞こえた。

 

「ツアーってさ、あいつ多分『私が魔神の親玉だったのだー!』とか言いながら真の姿表して裏切るパターンじゃね?」

 

「お決まりだけど、俺は逆に『まさか魔神王の強さがここまでだったとは…仕方がない、私の真の力を見せてやる!いざ活目せよ!』みたいな感じで敵の親玉を一回追い詰めるパターンじゃないか?」

 

…すっごくくだらない内容だった。とはいえムカつくので気配を消して後ろから驚かせてやった。私の気配遮断術を舐めるな!まぁあのニンジャ…イジャニーヤには見抜かれるんだがな。

 

 

219130日目

 

旅の途中で、ミノタウロスの国に立ち寄った。

その国には、『口だけの賢者』なる存在がいるらしいと聞いていたので一度寄って見たかったのだ。

 

口だけの賢者が考案したというマジックアイテムがいくつも売られていたので購入してみたが、どれも明らかに前世の地球で見たことのあるものばかりである。

電子レンジっぽいものに蛇口っぽいものに…これは扇風機だな。なんだこれは?柔らかい板?たまげたなぁ…

ただ、どれも未来っぽい見た目をしていたので地球から流れてきたものではないだろう。まさか未来の地球な訳あるまい。

 

 

で、まぁ、その…口だけの賢者に出会えたのだが。案の定彼はプレイヤーだった。それも難度300ある強者だ。手には斧を持っていたが、あれは多分ワールドアイテムだろう。

国から離れる気はないらしいが、悪い奴でも無さそうだったし問題ないな。ただ、肉が苦手らしく、肉が主食のこの国ではあまり食事が出来なくてやつれている様子だったので我が領地の野菜をプレゼントしたら喜んで転げ回っていた。ベジタリアンのミノタウロス誕生の瞬間である。

 

国を出るときに、口だけの賢者はお礼と言って希少金属を渡してきた。嬉しい、大変嬉しいのだが。これ、私か一部の竜王しか加工できないがどうするつもりだったのだろう。

 

 

219151日目

 

どうやらこの世界には私たちと同じようなことをしている一団が他にもいるらしい。

ジュゲム、という赤竜に乗ったゴブリンをリーダーに据えた一団と出会った。そのメンバーには魔法剣士や聖魔術師、風巨人の戦士がいた。そしてその中にいる大神官。一つ言わせてくれ。

 

お前うちの領地の神官長じゃねえか!?明らかに1人だけオーラが違うよ、というかなに勝手にここまできてるんだよ!?なに?我が神(ロリコン)の魔の手からいたいけな少女を守るため?

おい待て周りの目線が冷たくなっているんだが。おいリグリット、何故お前はキーノを庇う。ホウガン、何故お前はゴミを見るような目で私を見る。

まて、断じて私はロリコンではない。まず私の種族はドラゴンだ!

 

おい待てもっと視線が冷たくなったぞ。おい待て、おい後退りするな、そしてスルシャーナは笑ってないで止めてくれ、待って、逃げるな、逃げるなぁ!

 

 

経緯は正直意味不明なのだが、何故か互いのリーダーが一騎討ちにすることになっていた。神官長、お前マジで覚悟しとけよ。

ギリギリうちのリーダーが勝利していたが、かなりギリギリだったと思う。あのゴブリン相当強かったぞ。まぁうちのリーダーは最強だからな!そのリーダーに冷たい目で見られたわけだが。

 

 

219152日目

 

一騎討ちに勝ったからなのか、ジュゲムがリーダーのチームが我々の一行に合流することになった。

神官長、お前もう船降りろ。

 

今までは一行の中で頼れる切り札的ポジションにいたのに、今ではいじられキャラになってしまった…い、威厳が…スルシャーナが慰めようと私の頭を撫でている。側から見れば優しいお姉さんだが、こいつ多分笑ってるな。おい!目線を合わせてみろ!何故目線を合わせない!

 

…やっぱ笑ってるじゃないか!

スルシャーナは優しいお姉さんポジに収まっている。周辺国家では聖女と呼ばれているらしい。あいつが?冗談だろう。というかスルシャーナお前堕ちてね?まぁ百年単位でTSしてるし当たり前か。

 

219261日目

 

暗黒騎士が、三つ首竜を手懐けていた。

三つ首の魔神なるモンスターがいると聞き、そこへ向かったのだが、戦闘開始早々、「こいつテイムしたい!」と暗黒騎士が言い出したのだ。

別に竜は竜でも糞蜥蜴じゃないし、難度も90程度と一行なら1人でも対処できる程度だったので全部彼に任せたのだがあっさりテイムしていた。なんでもカルカン・ハイグレードなる希少アイテムを使ったそうだ。

 

そういえば、別にそう言ったアイテムを持ってるわけでも無さそうなのに、ジュゲムはどうやって赤竜をテイムしたのだろうか。あの赤竜、私にびびって近寄らないからよく分からないんだよな…というかジュゲムは明らかにプレイヤーっぽいのにプレイヤーじゃないし何者なんだ。私みたいな転生者だったりしないよな?

 

219300日目

 

酒を飲んで酔った席で判明したことなのだが、リーダーはワールドアイテムを持っていて、その効果は「9人の女神を使役する」というものだそうだ。ただ召喚される女神のレベルは90程度だから一般アーティファクトよりは圧倒的に強いけどワールドアイテムとしては弱い部類だ、と愚痴っていた。

あと、暗黒騎士はワールドアイテムを持っていないらしい。リーダーとはかなり前からずっと同じパーティにいるそうだ。

 

仮に転移前から、だとすると相当仲がいいな!仲がいいのはいいことだ!後リーダー、お前私たちしかいない場とはいえ気を抜きすぎだぞ?

 

おいスルシャーナ!お前酔った勢いで私の恥ずかしいエピソードを暴露するなあああああ!毒耐性を切ってまで酔おうとするなああ!

まぁ私も一回それやって二日酔いで死にかけたことあるから人のことは言えないのだが。

 

219310日目

 

ついに魔神との戦いも終わるだろう。

ネコさま大王国のNPC以外の魔神。それら全ては一体のモンスターに繋がっていた。

 

神竜。そう呼ばれるドラゴンが使役し、世界に混乱を齎していたことがわかった。

真なる竜王ではない、異世界の竜王。

 

こいつを倒せば、全ては終わる。…この楽しかった旅も終わっちゃうのか。

 

219311日目

 

神竜、なかなか強い。難度210〜240はある気がした。耐久だけ異様に高かったが。

とはいえ私たちの敵ではない!この旅の中で皆成長した。リーダーに至っては、私の白金鎧に迫る勢いで成長し、最終的にはホウガンやジュゲムを抜いて一行で最強格まで上り詰めていた。そう、同じプレイヤーである暗黒騎士さえ抜いていたのだ。

 

まぁ私も活躍したがな!今回は流石に働かなきゃいけない強さだった。途中で同格の竜を数体召喚してきた時は「あ、本気出さないとやばいな」と少し焦ったが、そのうちの一体にとどめを刺すことに成功した神官長がそのタレントの力を発揮して大活躍してなんとかなった。なんだ、私たちがいなくてもやれるじゃ無いか!あぁやはり生ける者の輝きは眩しいなぁ。私なんてもういらないじゃないか!そうだ。私なんかがいらない世の方がよっぽど良いんだ。

 

いやぁ、大変だったがこれで止m…不味い、暗黒騎士避けろっ!

 

 

 

 

 

 

たっ、と暗黒騎士が背中から押される。

神竜の指から放たれた光線。それから暗黒騎士を庇ったのは、白金の鎧だった。

 

「ふははははは!私が今放ったのは『洗脳光線』!暗黒騎士に当てられなかったのは残念だが…お優しい人型どものことだ!仲間を殺すのは辛かろう!さぁやれ!白金の騎士よ!嘗ての仲間を殺せ!」

 

さっきまで瀕死だった神竜が立ち上がり、高らかに笑う。

なんだこの説明口調な竜は。と暗黒騎士は思ったが口に出さない。

 

「あー、その。そいつなんだけど。その白金の鎧なんだけど。」

 

リーダーが申し訳なさそうにいう。

 

「やぁ。」

 

洗脳したはずの白金鎧が手を振っている。

何故だ、何故切り札たる洗脳光線が効かない!おかしい、これは何かの間違いだ!

神竜が心の中で叫ぶ。

 

「えーっと、その…精神対策は必須なのでね。と言うかこの鎧の中身は空だしね。じゃあ死ね。」

 

白金の鎧が腕を振りおろすと、周囲に浮遊していた十数本の槍が光の軌跡を伴って、神竜の体に殺到する。

その全てはアダマンタイトを優に超える硬さの鱗を破壊し、神竜の肉体に突き刺さる。

 

「クソが、クソがぁああああああああああ!」

 

神竜の体が膨張する。

鱗が弾け飛び、肉がブヨブヨと膨張を続ける。

 

「!皆んな気をつけろ!第二形態だ!…はぁ!?レベル90以上!?不味い、おいリーダー!撤退だ!」

 

暗黒騎士が眼鏡のようなアイテムを使いながら叫ぶ。

竜の体は膨張を続け、その体は原型を止めない異形へと変わり、その全長が80mを超えたあたりで止まる。

 

「《集団転移》!発動しない!次元封鎖されてるわよこれ!」

 

「《転移》こっちもだ!」

 

不味い、このままでは全滅するかもしれない。

そんな空気が一行の間に流れた。

 

「なぁ、皆んな。」

 

白金の竜王は、何も恐れることはないと言った具合に堂々と話す。

 

「どうせこれで最後なんだ。最後に

 

 

私の本気は見たくないかい?

 

 

誰かが、「そっちのパターンかぁ!」と叫んでいた。











感想、評価などありがとうございます!励みになります!

なんとか連休中にもう1話書けた…
リクもリクが殺したプレイヤーも死なない世界線。

光が濃ければ濃いほど闇も濃くなりますよね。




Q.エロフ王に何があった?

A.もう少ししたら書かれる。一つ言えるとしたら本質はそこまで変わってないが、極限状態は人を変えるとだけ。

Q.暗黒騎士ってプレイヤー?

A.あくまで考察だけど、悪魔との混血児が現地だとほぼ生まれないだろうし(デミウルゴス牧場によると、基本的に種が違うと子はできない。人間種同士とかなら別)、悪魔との混血児なら寿命は長いだろうに、何故か後の世に武器だけが流れている。わざわざ武器を手放すわけないだろうし殺されたんじゃないか?そういえばリーダーに殺されたプレイヤーがいたなぁ…こいつ暗黒騎士じゃね!?という考え方である。

Q.リーダー、ワールドアイテムなんで使わなかった?

A格好よく使おうとしたらツアーに全部持ってかれた。

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