そう言った描写が苦手な方はご注意ください。
「《
第三位階魔法《
始原の魔法によるバックアップを受け、耐性能力を貫通して発動した魔法は、白銀の英雄をヤルダバオトの元へ転送する。
(さぁ、何が出るか…)
白金の竜神『ツァインドルクス=ヴァイシオン』の操作鎧である偽りの英雄は思考する。
最も嬉しいパターンは、本拠地へ直接飛んでくれることだが、そこまで馬鹿ではないだろう。次に嬉しいパターンは──
(きた。当たりだ。)
本拠地ではないが、敵の主力が待ち構えているパターン。
転移魔法が発動した瞬間、四方八方から攻撃が放たれる。
そのどれもが高難易度ダンジョンに仕掛けられているような即死級のトラップ。
そしてその大半が酸や電撃、そして音波のような、金属系生物が弱点に持っていることが多い属性。
「『構築・無敵要塞』『
体をドーム状に覆うように盾を何十重にも展開する。
嘗て神竜の攻撃を受け止めた絶対的な防御。しかしながら、電撃という、
表層の盾が完全に破壊されたことを知覚する。
(やっぱり向こうは予測してくれていたみたいだね…本当、賢い相手はやりやすくて助かるよ)
攻撃が止んだタイミングで、周囲全体を切り払うように風を纏った太刀を振り払い、極光を秘めた投擲槍を地面に叩きつける。
斬撃の軌跡をなぞるように竜巻が発生し、投擲槍の着弾地点から光の礫が四方八方へ放たれる。
「『イージス』『アタックパリィ』『カウンターアタック』死に晒せ、下等生物が!」
太刀の一撃を受け流したのは漆黒の全身鎧を纏う女騎士。
受け流した威力を破壊力に転化し、手に持ったハルバードを振り下ろす。
「くっ!武器よ!」
大上段から振り下ろされた一撃。
それをツアーは周囲に浮いていた大剣と刀を十字に重ね合わせ防御しようとするが、女騎士の武器が白金製の武器に触れた瞬間、粉々になって砕け散る。
(…はぁ!?あれ、下位とはいえ聖遺物級の装備だよ!?まぁあれぐらい在庫は数百あるしいいけどさ…)
防御を貫いて振り下ろされたハルバードをあえて体を掠めるようにして回避して、長柄武器が不利な超至近距離まで距離を詰める。
「『
自分の胴体よりも分厚いガントレットが右の拳に出現し、女騎士を殴り飛ばす。
難度240程度の相手なら即死させるほどの威力を受けながらも、体勢を崩すことなく、翼をはためかせ後ろへ着地する。
ここまでで転移してから数秒も経っていない。ほんの数秒にも満たない攻防を終え、ツアーはようやく周囲の状況を把握する。
空や周囲の環境を見るに、ここはおそらくアベリオン丘隆の何処か。
そして周囲には全員が全員難度300の化け物。
ヤルダバオトだけでなく、ここまでの数の強者を釣れるとは…幸運というべきか不幸というべきか。
深紅の鎧を纏った吸血鬼。
ライトブルーの外骨格を持つ二足歩行の蟲。
周囲に魔獣を引き連れたダークエルフの少n…いや少女か?
執事服を着た竜人。
漆黒の鎧を着た女淫魔。
そして──その腹に赤黒い宝珠を浮かべた超越者。
それに加えて、女淫魔と似た雰囲気を感じるが、システム自体が違うとさえ感じさせる真っ赤なドレスをきた少女。
(超越者、オーバーロード…じゃがいも馬鹿の残した百科事典だと…氷河城の副ギルドマスターか、大墳墓のギルドマスター、あたりが有名どころかな?彼一人だけ装備の質も、魂の質も違う…プレイヤー、だね?それよりもあのドレスをきた少女が気になる…)
「これはこれは…随分と仰々しいお出迎えだね。私には勿体無いよ。」
致死の戦場へ誘い込まれたというのに、全く問題ないといった雰囲気でツアーは死の支配者へ語りかける。
会話に答えてくれるなどとは思っていないが、少しでも情報を引き出せたのなら儲けものだろう。
「あぁ、本当に、貴様のような屑相手には勿体ない待遇だよ。…貴様のようなクズにはなぁ!!私の、私の大切な仲間の子供達に手を出し、あまつさえ殺しかけるなどと…絶対に許せん、許すものか!さて、白銀よ。死ぬ覚悟は出来ているんだろうな」
その声の節々から怒気を漲らせながら死の支配者は応える。いや…本当に、怒っているのだろうか。
あの怒りは本物だが…まさかこいつ。
(バフ魔法を自分達にかけながら話しているな。確かにあの台詞の裏で戦闘準備をしているなどとは思わないだろうが…)
「はは。それを貴様が言うか…道化師が。消えて滅びろ。『世界断絶障壁』『世界湾曲障壁』《次元封鎖》《転位遅延》《物理移動阻害》」
ツアーが各種結界を展開したのを合図に、化け物たちがツアー目掛けて襲いかかる。
「さぁこい化け物共!私は逃げはしない!『雷槌』」
────────────────────────
アインズ・ウール・ゴウン。大墳墓の主人である彼は、守護者たちによる蹂躙を見守っていた。
あの白銀という存在、確かに強い。集団戦に向かないため置いてきたガルガンチュアやマーレ、そもそも外に出せないヴィクテムを除いた守護者相手に何とか食らい付いている。
「『一刀両断』『マカブル・スマイト・フロストバーン』ッ!シャルティアッ!」
コキュートスは2本の腕で握った大太刀── 斬神刀皇で目の前に迫る長剣を切り飛ばし、切り返しで白銀の腕を切り落とそうとする。
「《魔法最強化・朱の新星》!」
凍てつく氷河の一撃を燃え盛る大剣で受け止め、魔法は刀で切り飛ばす。
しかし抑えきれなかったエネルギーで白銀の鎧に細かい傷がつく。
本来なら今の一撃で腕の一本でも持っていくつもりだったが、ほとんど無傷で抑えられた事実にシャルティアは思わず顔を顰める。
コキュートスはそれも予想内と言わんばかりに手に持ったハルバードで追撃を加える。
白金と白銀のハルバードがぶつかり合い、甲高い金属音が響く。
「『レインアロー・天河の一射』」
丁度ハルバードを振り下ろしたタイミングを見計らい、アウラが手に持った弓から矢を放つ。
アダマンタイト級冒険者の頭部でさえ簡単に破裂させる一射は白銀の超人的な反応速度で防がれる。
「『魔剣乱舞』滅びろ!」
白銀の周囲に浮いていた武器の中から禍々しいオーラを纏った武器が飛び出して、高速で回転しながら守護者たちを薙ぎ払う。
アウラのような防御力の低い相手への攻撃はアルベドが全て受け止め、技の撃ち終わりのタイミングで滑るように移動したセバスが、腰を深く落とし、白銀の鎧の胸目掛けて拳を放つ。
音速を優に超える一撃は白銀の鎧についにヒビを作る。
アインズはここまでの戦いを見て、僅かな違和感を抱いていた。
デミウルゴスを除いた全員にはレベル80までに習得できる上位職のスキルまでで抑えるように命令している。とはいえ、装備は本気の戦闘用、バフもかけ、戦場には我々に優位になるようなフィールドエフェクトを掛けている。
こちらがイニシアチブを取れるような戦場で、数的優位も取った。
全てが想定通りに進んでいる。
しかし、どうも無機質というか、機械的に戦闘が進んでいる印象を受ける。
とはいえ、ここまでの戦いでバフを除けば私は一切手を出していないし、いざというときに備えてルベドも連れてきている。
多少の想定外であれば対応できる。
それにいざという時に備えてシモベを待機させている。
負けるような要素はないように思えるが、それでも、モモンガという廃ゲーマーとしての勘が撤退するべきだと囁く。
だが、目の前の敵への憎悪が瞳を曇らせる。
白銀が腕を振り下ろすと、空から隕石が雨のように降り注ぎ、大地は、突き刺さった小太刀を中心に凍りつく。
アウラの放った矢を白銀の周囲を守るようにうねる蛇腹剣が全て叩き落とし、扇子が開かれると暴風雨を伴った嵐が発生する。
(…一貫性のない能力の数々。言うなれば『武器使い』とでもいうべき戦闘スタイルだな。ユグドラシルにはなかったな…やはり危険だ。その全てをここで暴かせてもらう。無防備にやってきたんだ。この好機は逃さない…!)
デミウルゴスが、ありったけの憎悪を込めて白銀にダブルスレッジハンマーをお見舞いする。
みしりと嫌な音を立てて白銀の鎧の装甲の一部が剥がれる。
そして、未知に包まれていた白銀の鎧。その中身がついに暴かれる。
「空洞…だと…!?」
白銀の纏う空気が変わった気がした。
不味い。よくわからないが…とにかく不味い!逃げるべきだと、自身の下腹部に収まる宝珠が囁く。
何故だかわからないが、逃げるべきだと本能が囁く。
客観的に見れば、負ける要素などないのに。
(…いや、あの白銀の放つ、俺でも感じ取れるレベルの殺気がそう錯覚させるんだろうな…)
「ここで貴様らは滅びる運命にある。」
鎧がふわりと浮かび上がる。
無防備に浮かび上がった白銀目掛けて魔法が、射撃が、斬撃が次々と放たれるが、何処から出てきたのかと思わせる数の大量の武器がそれを阻む。
両手を何かを受け入れるように広げると、今まで使用してきた武器の数十倍の大きさの武器が4本突き刺さり、それらを結ぶようにして魔法陣が展開される。
その間にも妨害は続けられるが、その全てを防ぎ、時には全身で浴びながらも白銀の動作は止まらない。
「『軍荼利明王撃』!」
コキュートスの背後に現れた軍荼利明王から放たれた蛇が白銀の体を縛るが、それを力任せに引きちぎりながら白銀は腕を動かす。
そして白銀はその両手を、竜の顎門のように組み──
「糞っ!《結界破壊》《異空間侵入》《空間阻害突破》《自由》《束縛突破》《集団上位転移》…失敗か!《魔法三重化・骸骨壁》《魔法三重化・力の聖域》」
今から大技を出しますよとあからさまに伝えている白銀の動きに危機感を覚えたアインズは、一旦転移で回避した後に反撃をしようと複数の魔法を組み合わせて転移しようとするが、まるで対象の中の数人が条件を満たさなかったような反応とともに失敗に終わる。
次にすぐさま防御へ思考を切り替え、複数の防御魔法を発動する。
それに釣られてシャルティアが《石壁》を始めとした防御魔法を発動し、他の守護者もそれに倣おうとした瞬間、
「《魔法上昇》」
白銀の腕から一条の光が放たれる。
『白金龍陣』
超位魔法のその先、第十二階魔法とでもいうべき魔法。
世界そのものを変えうる最大の一撃。魔法上昇と超位魔法を併用することで使用可能になる、鎧状態で放てる最大の一撃。
その一撃は、本体の攻撃力を参照して放たれる性質上、生半可な防御は一瞬で蒸発させる。
全ての防御魔法を貫き、極光が守護者たちへ降り注ぐ。
地面を舐める光は、文字通り全てを分解する。大陸を消してもあまりあるエネルギーは、世界から隔離されたこの空間だからこそ全力で発動することができる。
アインズの視界が真っ白に染まり──
「先に逝くのを、お許しください─『イージス』『マジックパリィ』。起動「真なる無」」
アルベドの手に握られていたハルバードが綻び、そこから巨大な裂け目が生まれる。
北欧神話における、世界創造の前から存在していたとされる裂け目が光を飲み込み──しかし収まりきらずに漏れ出す。
ワールドアイテム『真なる無』。対物最強であるこのワールドアイテム。
何かを破壊することに特化し、同時に不壊属性を活かして盾に使うこともできるこの武器だが、そもそもこのように圧倒的攻撃を受け止めるようには設計されていない。何より、第十二位階魔法など、ユグドラシルのシステムでは想定されていないのだ。
溢れた光がアルベドの体を焼く。
「アインズ、さま…!」
歪んだ愛と忠誠心を胸に、今にも崩れ落ちそうな体を必死に支える。
体が沈み、地面が陥没する。
体が徐々に光のなかへ溶けていく。意識が今にも消えそうな中。背中を誰かが支えてくれた感覚がした。
「『不浄衝撃盾』っ!くっ…アルベド、踏ん張るわよ…!」
間違った廓言葉をいう余裕もないほどに全力で力を込めてシャルティアはアルベドを支える。
同じ者を愛す者同士、何か通じ合うものでもあったのだろうか。一体になったかのように、攻撃を受け止める。
「追撃と行こうか…《失墜する天空》」
どこかから超位魔法が、クールタイムをスキップして放たれ、さらにかかる重圧が重くなる。
ぴしり、と何かが割れた音がした。
「『不動明王撃』『降三世明王撃』『大威徳明王撃』『軍茶利明王撃』『金剛夜叉明王撃』『素戔嗚』!ウオォオオオオオ!」
このままでは不味い、そう思ったコキュートスが、主人からの言いつけを破り、全力を出して白銀の体へ連続攻撃をお見舞いする。
全身を光で焼き、下半身が焼失しながらも、5体の不動明王、そして最期の最大の一撃で鎧を破壊することに成功し、しかしすぐに突撃してきた謎の巨体に弾き飛ばされ、消滅する。
光が消失し、なんとか耐え切った守護者たちは巨体を見上げる。
最強の種族の一つである竜。
全身の装甲には紋様が走り、その背中には巨大な光輪を背負う。
神々しいまでの殺意を全身にみなぎらせた竜王。
その周囲には清浄なる空気が満ち、輝かしい光を放っている。
それはまさしく神話。この世界最強の存在。
白金の竜神 『ツァインドルクス=ヴァイシオン』。
その本体が、ついに姿を現した。
──────────────────────
次に死んだのは、デミウルゴスだった。
「『ドラゴンブレス・浄化』『ドラゴンブレス・火炎』『ドラゴンブレス・刺毒』」
三種のブレスを戦場全体へ降り注がせ、息も絶え絶えな守護者たち全員の命を削る。
全体の中でも特にダメージの少なかったセバスがなんとか竜神の体へ拳を叩きつけ──しかし、強烈なテールアタックを喰らい、弾き飛ばされる。
地面に叩きつけられ、血を吐きながらもセバスは真の姿を解放して、デミウルゴスへ迫る竜神を止めようとするが、一歩間に合わず。
「『六光連斬』『五連空斬』『次元断切』」
「わーるど、ちゃんぴおん…」
自失呆然と言った様子で、アインズがポツリと呟く。
世界を断つ一撃を、30発もその身に受け、デミウルゴスが細切れになる。
「敵性生物、危険度最大と設定。撤退を進言。プログラムに従い、事前命令を破棄。自動戦闘へ移行します。」
その余波を受け、両腕が断たれたセバスが、全身に大量の武器が突き刺さり、消滅する。
しかし、それにより稼がれた数秒。その間にルベドが起動する。
本来ならアインズの命令なしには絶対に動かないNPCが、危機を察知して自動で戦闘へ移行する。
その全身でブレスを受けながらも突撃は全く衰えることなく竜神の体を殴りつけ、体の下へ滑り込みその腹目掛けてラッシュを叩き込む。
反撃とばかりに叩き込まれる踏みつけを全て回避し、降り注ぐ武器をなんとか迎撃する。
ナザリックが外部でも運用可能なNPCの中で最強の存在。
ナザリック最強の存在である八階層のあれら。セフィロトの樹を司る十天使のうちの一つ。その贋作であるルベドは、それこそプレイヤー三人以上を相手にして勝利できるスペックを持っていた。
これであればあの竜神の暴虐を止めてくれる、そうアインズは想像した。しかし──相手が悪かった。
ルベドがワールドエネミーの紛い物だとすれば、白金の竜神は、まさしくワールドエネミーそのもの。
一瞬拮抗したように見えた戦闘だが、徐々に、徐々にルベドの体に傷が増えていく。
「損傷率七割を突破。警告。撤退を進言…!」
全身に武装をフルで使い、なんとか押しとどめようとするが、ついに拮抗は崩れ、ルベドの体が地面に叩きつけられる。
そして何百もの武器がルベド一人に降り注ぐ。
ルベドを殺し切るのは時間がかかると判断したのか、白金の竜神はアインズ目掛けて突撃する。
突然周囲に潜んでいたシモベの生き残りが竜神に群がるが、全てが一瞬で蒸発する。
「行け!フェン!クアドラシル!魔獣たち!」
竜神目掛けて四方八方から生き残っていた魔獣が殺到する。
カンストプレイヤーさえ殺しかねない圧倒的数の暴力だが、究極の一には届かない。
降り注ぐ矢は全て装甲に弾かれ、魔獣の牙は通らない。
「行け」
原始の炎が、創世の雷が、冥府の風が、終焉の氷が魔獣を粉砕する。
多種多様な現象が直接叩きつけられ、そして指数関数的に数を増やす武器の雨についに耐えかね、アウラとその魔獣たちが消滅する。
「《魔法三重最強化・聖なる極撃》」
意識を手放しかけ、現実に脳が追いつかない。
しかし、モモンガとしての本能のようなものがアインズの体を勝手に動かす。
適切な魔法を選択して、攻撃を防ぐ。そして反撃の魔法を浴びせかけ、次撃を辛くも回避する。
与えた魔法が齎した結果から勝手に相手の弱点を計算し、勝ち筋を探る。体が勝手に、自分の意思から離れて動き出す。
「アインズさま…!私たちを置いてお逃げください!くぅ…っ!」
真なる無を構えたアルベドが、アインズの頭部を砕こうとしていた竜神の噛みつきをなんとか防ぎ、一瞬だが竜神を硬直させる。
そしてその口腔内目掛けてとにかく大量に魔封じの水晶を放り込み、効果も確認せずに起動させる。
流石に口腔内までは装甲の恩恵がなかったのか、初めて竜神が血を流す。
その隙を狙って、ハルバード──ワールドアイテムでない普通の装備を装甲の隙間から竜神に突き刺す。
しかし、その代償は大きい。
アルベドは体が吹き飛ばされ、しかし意地でも竜神の体に突き刺したハルバードからは手を離さなかった。
「お前さえ、お前さえいなければ、こんなことには…!」
アルベドが憎悪を込めて叫ぶ。
僅かに、竜神の気配が弱まった気がした。
「私さえ、いなければ、か…」
あらんかぎりの力を込めて竜神を殴りつける。
シャルティアが竜神目掛けて魔法を雨霰のように叩きつける。
「たしかに、全てはこの力が始まり…だが。だが…だからといってこの世界の命が死んでいい理由にはならない!」
「被害者だから命を差し出せ!?ふざけるな!今、彼らは、彼女らはこの世界に生きている!」
「これは私がやるべきことだ…身勝手かもしれない、だが、それでも!これが私の、クソッタレな父を持った私の為さねばならない責務!」
「私が世界を守る…そう、私が世界を守るのだ…!」
「さぁこい化け物ども!仮にこの世界で暴虐を為したいというのなら、この世界の命の営みを壊したいというのなら!」
「その力で私を殺して見せろ!この心臓にその悪意を突きさしてみせろ!」
アルベドの体がついに離れ、地面に力なく落下する。
そしてアインズ目掛けてツアーが武器を降り注がせる。
「『トランスポジション』…がっ!」
最後の力を振り絞り、アルベドがアインズの身代わりになって果てる。
そしてその手に持っていたワールドアイテムが転がる。
──シャルティア、あとは任せたわよ。
シャルティアは、アルベドがそう言ったように聞こえた。
「う、うわあああああああああ!『エインヘリヤル』!行け!」
シャルティアは駆け出し、地面に落ちたワールドアイテムを拾う。
その瞬間、真なる無はシャルティアのスポイトランスを包み込み、その能力をより上位のものへ昇華させる。
この瞬間、シャルティアはありえない光景を見た。
本来なら、自分の分身を召喚するはずのスキル、エインヘリヤル。しかし…それにより召喚されたのは、殺された守護者たちの分身。
ユグドラシルの中で終ぞ発見されることのなかった、エインヘリヤルの真の力。
隠しパラメータである友好値が100を超えた自分のパーティメンバーが短期間に三人以上死亡し、一部のエネミーの使うような一定時間蘇生不可状態か、ロンギヌスのようなデータ消去状態である場合のみ発動する効果。
それは、蘇生不可な味方の分身を、自分の分身とともに召喚するという者。
悪意に満ちた化け物とはいえ、内部の繋がりは、絆は設定されたものとはいえ確かであった。
それが起こした結果。分身たちは、竜神へ殺到して、少しでも足止めしようと暴れ回る。
そして、シャルティアはすぐにアインズの元へ飛ぶ。
その中でシャルティアは思考する。先程アインズ様の使った転移魔法が失敗した理由。
仮に、この周辺にワールドアイテムによる結界が貼られていたとしたら、ワールドアイテムを持たない守護者がいたから失敗した、と考えられるのではなかろうか。
「アインズ様、撤退を!」
「あぁ、ぁぁ…もう、もう、辞めてくれ…」
アインズはただ、焦点の合わない目でぶつぶつと何かを呟く。その視線はシャルティアに向いてはいなかった。
シャルティアは気づく。気づいてしまう。
絶対的支配者だと思っていたモモンガ様。それがこんなにも脆いとは。だが──それが忠義を捧げる上でなんの問題になる?
「アインズ様!アインズ様!不敬を承知で言わせていただきます!どうか、どうか!死んでいったアルベドたちの忠義にお応え下さい!」
最後のエインヘリヤルが消滅した音が聞こえた。
同時に、武器群を突破したルベドが再び竜神の前へ立ち塞がる。
「…あとでこの命でお詫びします。だから…申し訳ありません!《集団上位転移》…くっ!単純な位階魔法による妨害が…!アインズ様!」
はっ、としたような表情でアインズが顔を上げる。
そして、何かを考えた後、再びその瞳に光が戻る。
「《結界破壊》《異空間侵入》《空間阻害突破》《自由》《束縛突破》《集団上位転移》」
シャルティアとアインズの体が消える。
同時に、ルベドの体が崩れ落ちる。
「逃した、か……」
竜神は、曇った空を見上げる。
どこまでも、どこまでも広がる曇り空を見つめ続けた。
大墳墓の主人は、よろよろとした足取りで、宝物庫へと進む。
自らの尾を喰らう蛇を象った指輪。しかし、これを使っていいのだろうか?蘇らせたところで、また殺されるだけ…
「魔王…悪役、か……」
「かくて汝、全世界の栄光を我が物とし、暗きものは全て汝より離れ去るだろう。はは…笑えるよな…」
「ごめんなさい、皆さん。私は…私は…!」
───────────────
感想、評価などありがとうございます!励みになります!
感想をもらって嬉しくない人なんていないのさ…
ここから第二部、開始。な感じです。
両陣営の本当の本気、それのぶつけ合いです。ナザリックがそう簡単に滅びる?そんなわけがない。
さぁ、ここからが生と死の神がぶつかる本当の戦いの始まりだ。
それと、2週間ほど更新をお休みします。ちょっとヘロヘロさんになってきます。
年末は忙しいのです…許してください、なんでもしますから。
……今度TSヤンデレメンヘラモモンガさんに愛されすぎで夜も眠れない青薔薇の皆さんでも書いてみようかな…?