(ふむ。予想通り。…いや、それ以上の化け物だな。)
白金の竜王と、死の支配者が操る十体の天使。
大地を裂き、空を割る。そんな例えが相応しい戦い。
死の支配者は、結界の中から白金の竜神を観察する。
(メインの攻撃手段は武技、そして周囲に浮遊する武器による攻撃。耐性は… 聖属性への完全耐性、酸、冷気、音波と風への半減耐性。弱点は、『なし』、か…ワールドエネミー特有のチート耐性が!糞、これあらゆる攻撃への微弱な耐性も入ってるんじゃないか!?)
相手の動きを観察する。
十天使達には、「可能な限り相手にダメージを与えろ。被害は考えない。死んでもいい」と伝えてある。
(攻撃の合間に時々自分の体に武器を突き刺している場面がある…回復アイテムか?いや、奴の修めている職業に、力の信奉者は絶対あると思っていたが違う?それともこの世界特有の技術?)
結界の中でも、あらかじめ発動していた魔法の効果は持続する。《魔力の精髄》や《生命の精髄》によりツアーの能力を見極めようとしたが、流石に対策済みなのか、明らかに嘘であると言った様子の滅茶苦茶な動きをするデータしか見えない。
とはいえ、味方である十天使の方を見ることで、相手の大体の攻撃力は予測できる。
(うん。これ俺が食らったら即死してもおかしく無いな。)
相手の観察を続ける。
一度わざと負けて、2回目で勝つ戦法が取れない、後のない一発勝負。
楽々PK術からは考えられない愚行。しかし、それでも勝たなければならない。そのために、大量の策を講じた。これはその中の一つ。そして、最大の策でもある。これが失敗に終われば勝ち目はない。
自身の腹に浮かぶ宝珠を撫でる。
知恵の実が元ネタのワールドアイテム。通称モモンガ玉。
しかし、アインズはその二つのワールドアイテムによる強化プロセスを、
それにより、八階層のあれらのさらなる強化が可能になる。
永劫の蛇の指輪、諸王の玉座、モモンガ玉。
三つのワールドアイテムによるNPCの強化。これにより、八階層のあれらは、ワールドエネミーと化す。
もし仮に永劫の蛇の指輪で初めから十体のワールドエネミーを使役しようとしていたら、流石に不可能か、よくて暴走に終わっていただろう。だからこそ、複数のワールドアイテムで雁字搦めにするという安全策を取った。
だが、まだ使う時ではない。
これを発動した瞬間、死んでいた天使は全員復活する。ロンギヌスを使われていようとも、だ。
それを利用する。捨て身の攻撃で、ワールドエネミーとしての真の力を解放する前に少しでも竜神の体力を削る。
(さて、少しでも削ってくれればいいが…厳しそうだな)
─────────────────────────────────
弱い。想像よりも圧倒的に弱い。ツアーが抱いた感想はそれだ。
セフィロトの樹を象った彫像から現れた10体の天使。かつて1500人のプレイヤーを撃退した、ワールドエネミーの模造品。
カンストプレイヤーを圧倒する能力値に多彩な能力。確かに強い。一般プレイヤー程度であれば最も容易く殲滅できるだろう。
この世界に、こいつとまともに戦えるのはほんのひと握り、そして勝利を収めることができる存在はいないだろう。
しかし、それでも私に対する切り札としては弱過ぎる。
「『疾風走破』『流水加速』『四光連斬』」
月の石で作られたラッパを持つ天使の腹に、爪による一撃を叩き込む。
その傷を抉るように白金製の長剣が殺到する。
反撃としてラッパから衝撃波が放たれるが、それが地面に着弾した瞬間にはツアーは既に背後に周り、強烈なテールアタックを放つ。
全速力。それに全ての天使は追いつけていない。
いや、それも仕方がないことだろう。現在のツアーのレベルは160を越える。幾ら100レベルを越えた時点でレベル差によるダメージ減衰や基礎能力の上昇が鈍るとはいえ、それでもその能力はワールドエネミー級、否。ワールドエネミーさえ超えているかもしれない。
最低でも上の上、本当のガチプレイヤー40人によるレギオン。そのレベルの集団でなければ勝負の土俵にすら立てない存在。
とはいえ、八階層のあれらは、たとえガチプレイヤーだったとしても100人は殲滅できる存在。それがガチプレイヤー40人であれば僅かとはいえ勝つ可能性が現れる相手に子供扱いされているのか。
その理由は簡単。ユグドラシルのシステム的な問題だ。ユグドラシルは、格上は格下に対して圧倒的に有利な仕組みとなっている。
100レベルの存在であれば最大で90レベル台の存在10人を相手にできてしまう。それと同じ様に、八階層のアレらはプレイヤーより圧倒的に格上。その為、1500のプレイヤーでさえ簡単に殲滅できた。ガチプレイヤーであっても、一体あたり10人を相手にできる。
しかし、格上相手になるとどうか。本当のワールドエネミーであれば40人からなる軍団を殲滅出来てしまう。
数だけ見れば、八階層のあれら全体で100人に対して、ツアー一体は40人。八階層のあれらの方が見かけ上の強さは上に見える。しかし、あれら一体当たりならツアーの4分の一と、圧倒的に劣っている。個々の強さであれば格下なのだ。そして、格下が幾ら数を揃えたところで格上には勝てないのがユグドラシルの仕組み。ゲームとしての理不尽。
「何故だ、何故だ!セフィラーの十天使でさえ届かないというのか!」
死の支配者が、結界の中から叫ぶ。
十天使が倒されない限り今のアインズは無敵。とはいえ、魔法による支援をしてこない様子を見る限り、向こうから此方への干渉も不可能な様だが
「嘘だね。君の魂には一切の焦りが見えない。どうせ本当の切り札を隠しているんだろう?」
もちろんブラフだ。世界の守りに守られた相手の魂を覗くことはできない。
しかし、どうせ本当の切り札を隠しているんだろう、という考えは本当だ。幾らなんでもあの戦いを見てこの戦力で勝てると思うほど相手は愚かではないだろう。
本当の切り札に備えて、回数制限のあるスキルと魔法は使わずに、武技と武装、身体能力だけで敵を穿つ。
「『
身を切り裂く吹雪を纏った槍が天使の体を美しい氷像へと変え、渦巻く混沌のエネルギーが、七色に輝くナイフから放たれる。
凍り付いた天使の体を、二重に分かれた灼熱の大剣が断ち切り、混沌のエネルギーは、逆回転する無色のエネルギーと激突し、挟まれた天使の翼を粉々にする。
荘厳な音を立てながら振るわれた大剣を、幾重にも重ねた盾の守りで防ぎ、お返しに純白のブレスを放つ。
本家本元の浄化のブレス。10体の天使全員が当たり前のように纏っていた力場の結界を貫通し、その体の表面を溶かし、剥がす。
弱い…とはいえ、私以外が相手であれば確実に勝利できるだけの力。
それだけではない。今までの戦いを見れば、死の支配者はとてつもない量の財を、力を持っていたのがわかる。
最初から守りを捨てて、狂ったように攻撃を続ける天使達に薄気味悪さを感じながらも、ツアーは攻撃を続ける。
(さて…どのタイミングで相手は仕掛けてくるか。仕掛ける前に削り切りたいが流石にこの量のHPを一瞬で削り切るのは厳しいね…)
地面を引き剥がして、そのまま天使に向けて投擲する。
種族的能力として、触れただけで魔力を纏った岩石が、散弾のように天使に振りそそぐ。
「なぁ、死の支配者…アインズ・ウール・ゴウン。どうして君はそこまでの力を持ちながら、まだ奪おうとするんだい?」
ツアーの問いかけに、アインズがなんともないように答える。
「生きるため。」
短いが、単純な答え。
あらゆる生命が根底に持つ思考。あまりにも単純な答えに、一瞬思考が停止しかける。
それを隙と見做して突撃してきた天使を、振り返ることもなく蹴り飛ばす。
「では、逆に聞くが…竜神よ、お前は何のために戦う?」
「勿論、決まっている!友を、この美しい世界を、魂の輝きを守るためだ。」
死の支配者は不思議そうに自らの顎を撫でながら問う。
「魂の輝き、ねぇ…なぁ竜神。この世界は本当に美しいのか?」
「この世界は理不尽だ。生まれつき持つものと持たざるものは決まっている。権力を持つ愚鈍な豚が、必死に日常を生きる持たざるものを虐げる。お前が見ている魂の輝きなど、嘘っぱちに過ぎないんだよ。」
「そうだな…たとえば王国。何も成さない貴族が何の権利があって必死に生きる人々から奪う?例えば法国。仮に神々も、お前も居なければ、彼らは自分たちの圧倒的な力に任せて亜人を虐殺し、他の国々を影から操るような人間種至上主義国家になっていたのではないか?いま、輝いているように見えるのは我々という共通の敵があるからに過ぎない。これが終われば再び人は醜くなるだろう。」
「力のあるものが、無いものから奪う。人という生き物は、そうやって生きる生物だ。人は奪い合い、互いに殺し合い、憎み合う。もっと欲しい、もっと欲しいと他者から奪う。そこのどこに輝きなどというものがある?我々と何の違いがある?」
「それどころか、人間は「生きるためには仕方なかった」だの、「社会の仕組み」だのと言い訳をする。まだ自己を悪だと言う我々の方がマシでは無いかね?」
空いた口が塞がらない。
何の気無しに問いかけた問いへの、思いもよらない返答。
「お前に、お前に人の何が分かる!人の心は確かに弱い、でも、だからこそ!心を通わせ合い、助け合い、生きてきた!時に失敗しても、その度に立ち上がり、発展を繰り返してきた!ただ生きるために貪るお前とは違う!」
「分かるさ。私も昔は人間だったからな。…お前は分からないかもしれないがな、こことは違う別の星…『地球』という星はな、人の手によって滅んだんだよ。」
「その星は、此処よりも高度な文明を築いていた。あらゆる神霊はただの物理法則へ堕とされ、あらゆる娯楽が揃っていた。ある国では、飢える者はなく、殆どの病気が過去のものとなっていた…らしい。」
「けど、そんな進んだ文明でも、格差は無くならなかった。争いは無くならなかった。人は星を貪り尽くし、最後には自らの技術で美しかった星を死の星へ変えた。」
「分かるか?人に、あるがままに任せた結果起こるのは、星を巻き込んだ集団自殺なんだよ。自然という敵を失った人間は、最後に自らの手で死ぬことになるんだよ」
「この星だって何れそうなる。お前は、人のあるがままに任せているようだが、いつか破綻するぞ。」
「だが私はそうはしない。そうはさせない」
「私が成すのは、世界征服。永遠の時を生きる我々によって統制された社会。思考を捨てさせ、甘い幸福という蜜に浸した理想社会。そこには格差も差別も存在しない」
「社会に歯車として、大切な肉親を擦り潰される、そんな不幸な子供が産まれることも無くなるのだ…!」
最後の言葉にだけは、力が篭っていた気がした。
その言葉に呼応するように、天使達がその手に持った武器で、その魔力で竜神へと攻撃を放つ。
「だから…だからなんだ!人間は過ちを犯す生物?そんなの百も承知だ!人が過ちを犯すたびに、何度だって導いてやればいい!お前のいう理想社会は、唯の家畜小屋だ!」
それを振り払うように、竜神は翼をはためかせる。
生じた暴風は魔法を逸らし、その爪から放たれた斬撃が武器と衝突し、凄まじい衝撃を発する。
「家畜小屋?それがどうした!人間は、生物は自分で考えて上手くいくようには出来ていない!」
王冠を抱く天使の胸から、金剛石でできた大槌が放たれる。
それは溶岩を纏った大槌と衝突し、爆散する。
「「お前に何が分かる!」」
美を体現した姿の天使から、光の奔流が放たれる。
それは竜神の口から放たれた、炎と毒、そして浄化の吐息とぶつかり合い、そして奔流は霧散し、吐息によって天使は蝕まれる。
「『雨霰』ッ!」
空から万を超える数の白金製の武器が現れる。それらが雨よりも早く大地へと降り注ぐ。
その全てに二重の魔法がかかっているのか、同数の半透明の武器がそれに追随するように降り注ぐ。
竜神の怒りを体現したかのような暴虐の嵐。
全ての罪を精算する時が来たと言わんばかりに、氷刃が、熱波が、砂塵が、極光が、暗影が降り注ぐ。
天使の体が引き裂かれ、翼はもがれ、地に堕ちる。
その中でも、王冠を司る天使だけが攻撃を耐え抜く。
そして、生き残った天使めがけて歪んだ槍が放たれた瞬間。
「セフィラーの十天使よ!その真の力を現せ!」
───────────────────────────────
天使の肉体が、ふわり、と浮き上がる。
そこめがけて武器を放つが、全ては見えない壁に阻まれる。
その肉体を十色の風が覆い、光は肉体を再構築する。
その存在感は数百倍に膨れ上がる。
(魂を砕いても、復活した、か…しかも何十倍にも強くなっているね、これ…)
嫌な汗が流れた気がした。思わず唾を飲みこむ。
自身に大量にバフ魔法を掛ける。周囲に大量に武器を浮遊させる。
濃密な死。その気配を感じてしまった。一対一であれば勝利可能。二体になれば厳しく、5体を超えた時点で勝率は皆無。
自身に近しい存在感を放つ
王冠 知恵 理解 慈悲 峻厳 美 勝利 栄光 基礎 王国
十のセフィラを司るワールドエネミー。
「『海王星の光乱・王冠の思考』」
王冠を司る天使の胸から光が溢れ、それは球体へと変わる。
そして、そこから四方八方へと、完全耐性さえ貫く極寒のレーザーが放たれる。
「『構築・無敵要塞』『要塞』『重要塞』『不落要塞』!『
決して崩れることのなかった守りが崩壊する。
盾を貫いた光線はそのままツアーの体を直撃し、武技の守りさえ突破してその装甲を剥ぐ。
七つ首の竜に分かれた蛇腹剣が、灼熱を纏って天使の体を縛り、創世の雷を纏った三叉槍が轟音を戦場に響かせ、創世記に残る始まりの光を再現した魔剣が、天使の一体とぶつかる。
衝撃を翼で掴み、勢いよく空へ浮かび、天から魔法と斬撃を浴びせる。
「『金星の豪雨・勝利の喝采』」
「『太陽の爆発・永遠の美』」
七色鉱さえも溶かす酸の雨が、炎さえ焦がす絶対的な炎が世界を焦がす。
地面は消え、周囲は熱で歪む。
例え一体を抑えても、他の9体がそれをすり抜けてくる。
「『
終わりの光を湛えた2本の武器は、天使の体を切り裂き、同時に残留したエネルギーは渦を巻く。
そのエネルギーは天へと昇り、それは隕石へと形を変えて落下する。カンストプレイヤーでさえ即死する威力の技。
しかしそれは天使のうち一体が放った斬撃の雨と衝突し、その一体にはダメージを与えたものの、他に影響を与える前に消滅する。
竜が大量の剣を振るえば、誰かがそれを抑えて、残った天使が攻撃を仕掛ける。
「『
両の爪から放たれた、左右30づつの世界を断つ一撃。
起死回生の一撃。それをサポートするように、魔法の数々が放たれ、世界を焼き尽くした火炎が、大地を埋めた大洪水が、全てを断罪する光が武器の形となって放たれる。
「『水星の大鉱石・栄光の歴史』」
両腕を交差した天使が、それをたった一体で防ぎ切ってしまう。
大技の反動として訪れた一瞬の硬直。そこめがけて月の剣が、土星の流星群が、木星の大嵐が竜の体を叩きつけ、引き裂き、捻り切る。
光の雨が、恐ろしい剛力が、苦しいほど眩しい光が。竜の鱗を剥ぎ、その絶対であるはずの装甲を穿ち、皮膜をズタズタに切り裂く。
「『剛腕剛撃』!」
半透明の拳が、実際の拳に追随するように放たれる。
両腕から放たれる乱打。それは天使の体を穿ち、しかし背中から別の天使に攻撃され中断される。
「《魔法三重化・第十位階天使召喚》『竜神の守護者』来い!セレスチャル・ドラゴンロード!」
コンマ1秒でいい、攻撃の時間を稼がせるために耐久に特化した天使と竜王を召喚する。
ほんの一瞬の隙、その間に空に浮かび上がる。
「穿て!『白金龍陣』…っ!?」
焦りすぎた。最大の一撃を放った瞬間、横合いからタックルを受けて照準が僅かにズレる。
十体全てを巻き込むことはできず、範囲内に入れれたのは三体のみ。しかもうち二体は完全に捉え切れたわけではない。うち一体がタンクスキルで全ての攻撃を肩代わりしてしまった。
完全に捉え切れた一体に、全ての武器を、万を超える数の武具の数々をぶつける。
言ってしまえば、数万人の戦士職による一斉攻撃。他の二体へ流れるはずだったダメージも肩代わりし、体力の大半を持ってかれた天使が耐えられるはずもなく、遂に一体が消滅する。
だが、そこまでだった。
反撃として放たれた攻撃。耐性を貫く世界の一撃は、体を壊す。命は削れ、視界は霞む。
「『次元断切』『ドラゴンブレス《火炎》《浄化》《刺毒》』《魔法三重最強化・竜王の咆哮》」
抗う、抗う、抗う。
何度防がれようと、再び爪を振るう。星々の一撃と、次元を断つ一撃がぶつかり合い、竜の切り札たる絶対なる吐息は確かに天使にダメージを与えている。
それでも届かない。一対一であれば勝てる相手でも、数が多すぎた。
「『
魔力と魂を纏った二つの相反する属性を持つ大剣が天使の頭上でぶつかり合い、消滅の光となって降り注ぐ。
それは土星の矢とぶつかり合い、激しい熱を伴い消滅する。炎の雨が降り注ぐ。
防ぎ切ることなど、出来るはずもない。
全身が痛い。こちらが一つの行動をする間に、相手は10回の行動を行える。その差が致命的。
一つ、命が溢れる。自動回復スキルや、魔法蓄積による低位の回復魔法では回復が追いつかない。
また、命が潰れる。
「『逆鱗の輝き』ッ!」
竜神としての蘇生スキル。
周囲に超高威力の聖属性による波動を放ちながら7割の体力で復活するスキル。
しかし復活したところで今更どうなるのか。痛い。体がバラバラになったかのようだ。
魔法を、武器を放つ。爪を振り下ろし、天使の胴体へ噛み付く。
引くことはできない。
友のためにも、この世界の為にも負けるわけにはいかない。
「はは、私が負ける?許されるはずがない、私は、こんな私を信じてくれた友のためにも、大切な人のためにも負けるわけには行かないんだ…ッ!」
太陽が体を焼く。酸の雨が体を溶かす。魂さえ凍りつく冷気は爪を鈍らせ、しかし闘志だけは未だに燃え続ける。
前へ、前へ。可能性をたぐり寄せる。覚醒した意識は、僅かな隙間に活路を見出し、死にかけた体を動かす。
攻撃を掻い潜り、未来予知と呼んでいいほどの先読みで反撃と回避を繰り返す。
しかし、体に刻まれた傷は深くなり続ける。
「《世界創造の火炎》」
「《魔法三重最強化・紅の新星》」
ぶつかり合い、弾け、混ざり合う。
大地はとうの昔に崩壊し、粉塵が空を覆い隠す。
勝てない。届かない。負けられない。
「『五連空斬』『四光連斬』《極地の爪》』
斬撃の雨が、極寒の爪が天使の放った光と相殺される。
長い尾を使ったテールアタックは、天使の拳とぶつかり合い、天使の体を弾き飛ばす。
何時間にも感じられる数秒が過ぎた。
遂に、致命的な瞬間が訪れる。避けられない。必中ルートの月の石で構成された大剣が置かれる。防御も間に合わない。
長くて短い戦いの中で、癖を読まれたか。
顔面を大剣が貫き、再び命が潰える。その瞬間、右手につけていた指輪が割れる。
数百年前に別れた、親友から貰った蘇生アイテム。
再び命が復活する。まだ私は戦える。瞬間、頭部を貫き後方へと貫通した大剣と、雷を纏った槍を構えた天使が挟み込むように突撃してくる。
体が動かない。避けようとするが、別の天使が放った冷気により地面に縫いとめられた足は動かない。
『勝って。ツアー。』
肩に暖かい気配が触れる。白黒の髪の毛をした少女に、そう言われた気がした。
死の女神が、至高の天使が、二人のハーフエルフが、嘗ての英雄達が。今も戦っている彼ら。そこから、僅かではあるが魂が流れ込んできた気がした。
魂が、鼓動する。
魂が殻を破る。暖かい何かが全身を駆け巡る。
月の大剣と、天使の突撃が何かに阻まれる。
不思議そうな様子の天使が再び槍を構え、今度は抉るように突撃をする。
スパークを繰り返す槍は、大気を消滅させながら迫り、その速度は雷を超える。
そしてそれがツアーに触れた瞬間、再び轟音と共に停止する。
『『魔剣鍛造』『神剣鍛造』』
背後から迫っていた月の大剣と、槍を構えた天使が突如として現れた武器に弾き飛ばされる。
『久しぶり、だな。ツアー。』
懐かしい声がする。
あぁ、こんなにも、こんなにも近くにいたのか。
『行こうぜ、ツアー。俺もこの世界が大好きなんだ。絶対に勝つぞ』
周囲に落下した武器が再び浮かび上がる。
そしてその切先が天使達に向かい、飛翔した。
感想、評価などありがとうございます!励みになります!
セフィラーの十天使に使ってる技はモデルはナザリックのレイドボスの技。ナザリックのレイドボスの技名的にもやっぱりナザリックとセフィラーの十天使には関係があるんだろうな、って思いました。