『『魔剣鍛造』『神剣鍛造』』
背後から迫っていた月の大剣と、槍を構えた天使が突如として現れた武器に弾き飛ばされる。
幻でなく、確かにその存在がここにいることをこの場にいる全員が知覚した。
『久しぶり、だな。ツアー。』
懐かしい声がする。
あぁ、こんなにも、こんなにも近くにいたのか。
私の願いの始まり。最高の友人。
『行こうぜ、ツアー。俺もこの世界が大好きなんだ。絶対に勝つぞ』
「あぁ…勿論だ!」
男が指を鳴らすと、周囲に落下した武器が再び浮かび上がる。
元を正せば、この武器達の力の原点は全て彼に帰結する。本来の持ち主の手に戻った力は、その輝きを増す。
そしてその切先が天使達に向かい、飛翔した。
「o,aaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」
人には意味を認識できない叫び声を天使達があげる。
手に持った武器で飛翔する武器を弾き飛ばし、その優れた身体能力で攻撃を避け続けるが、空間全体を埋め尽くさん量の攻撃に対処し切れず、体に次々と武器が突き刺さる。
『「『
一際巨大な、白金製の鍬が地面を耕す。
土壌の中からは地の精霊が湧き出し、それらが次々と突き刺さった武器に付着する。
『「弾けろ!」』
天使の体に突き刺さった武器達は次々と爆発し、天使達の体を揺らす。
『期待してるぜ?』
「任せろ」
一言、そう言って彼の姿は薄れて消えた。
いち早く衝撃から抜け出した勝利を司る金星の天使が、その手に持った神器に酸を纏わらせ、それをツアー目掛けて叩きつける。
瞬間、一陣の風が吹いた。
『『イージス』『ウォールズ・オブ・ジェリコ』『
酸を纏った棍と、光を纏った大剣と盾がぶつかり合い、完全に受け止められる。
『500年以上ぶり、かな?』
衝撃は光と熱を持って体を揺らす。
溢れた光の中から、3人の影が飛び出す。
「『海神顕現』」「『ビックバン・スマイト」「『スーパーノヴァ』」
三叉槍を構えた水の神が、大波と豪雷を持って天使達にその権能を振るい、火の神が創世の火を模した一撃を放つ。
地の神が、二人の放ったエネルギーを練り上げ生成した擬似太陽を暴走させ、終焉のエネルギーを溢れさせる。
『よっと。『カウンタースラッシュ』』
金星の天使が苦し紛れに放った一撃をひらりと回避し、カウンターの一撃を叩き込んだのは、白い鎧を纏い、ビーム状の羽を背中に持つ青髪の男。
現在まで続く六大神信仰における風の神。
『スルシャーナやアーラ達は元気にしてるか?』
「勿論だよ、ねこにゃん…いやまぁ色々あったというか種族変わってるし性別変わってるというかなんというか…ハイ。」
『はは、見てたから知ってる。』
「この野郎!」
全身に炎を纏って突進してきた天使を、一人と一匹が息を合わせて打ち返す。
滅茶苦茶な軌道で回転しながら空へ舞った天使は、体勢を立て直す暇もなく地面に落下し、頭から大地に突き刺さる。
『ツアー、法国を、人間を、この世界を頼んだぞ?あ、あとスルシャーナ泣かせたら承知しないからな!』
「おい待てそれどういう意味…」
そう言い残して、四人の神々の姿は薄れて消えた。
『こんにゃろ!私抜きで同窓会してんじゃ無いわよ!『鉄拳聖裁』『気爆掌』』
次に現れたのは武闘家風の女だった。
拳を握りしめ、最も近くにいた天使の腹に重い打撃を叩き込む。
「いや、リーちゃん同窓会って、それは無いだろう…」
『似たようなもんだし平気よ平気!あんまり気負い過ぎないぐらいが丁度いい!別に深く考える必要なんてないのよ!『輝龍昇天撃』』
光り輝く龍の形をした気の波動が、十体の天使全てを貫き、そのまま天へと登る。
体を貫かれながらも鈍ることのない動きで、2体の天使が左右から挟撃する。片方の天使を武闘家が蹴り飛ばし、もう片方を竜神の尾が薙ぎ払う。
『んじゃま、あとは任せたわよ!ツアー!』
その小さな掌でハイタッチをして、女の姿は虚空へと消える。
嘗ての友人達が、現れては消え、天使達へ襲いかかった。その輝きは、あの日みた星降る夜の様で。
「…ありえない。あり得るはずがない、あり得る筈が無いのだ!ここは現実だ、奇跡など起きはしない…奇跡は人を愛さない!なのに…何故だ、何故だ!」
死の支配者が叫ぶ。理不尽な目にあった子供の様に。
そして彼は知覚する。自分の創ったNPCが死亡している事を。
「そうだ…お前は司令官系の職業を持っていて、偶々味方がこのタイミングで経験値を獲得した事でレベルアップした、そして新しいスキルを獲得した、それだけ、それだけだ…奇跡など起きる筈はないのだ!」
死の支配者の絶叫に応える様に、十体の天使達が各々の武器を振り上げ、最大の一撃を同時に叩き込む。
海王星が、天王星が、土星が、木星が、火星が、太陽が、金星が、水星が、月が。天に輝く星々と、そして大地たる地球の力が、純粋な攻撃力へと転化され、大地へ一条の光となって突き刺さる。
「『次元断層』『要塞』『重要塞』『不落要塞』…く、ぐぅ…!…………………!」
全ての盾を重ね合わせ、ワールドアイテムさえ防ぎうる防御スキルと、武技の多重発動を持ってこれを迎え撃つ。
しかし、盾は次々と弾け飛び、徐々に、徐々に地面へと体が沈む。
全身に負荷がかかり、皮膚には亀裂が走り、血が溢れる。白金の鱗は真紅へと染まりゆく。眩しすぎる光は、この場にいる全員の視力を奪う。盲目への耐性さえ貫く極光。
『あぁ、そうだ。これは奇跡じゃない。必然だ。』
急に、圧力が弱まった気がした。
一瞬だけ、光の中に8人の王達の姿が見えた気がした。
九重に重なった次元断層が、天使達の最大の一撃を防ぎ切る。
視界が復活した時、目の前には一人の、エルフの軽戦士の姿があった。
『ツアー。俺たちはお前を許す気はないし、許してほしいとも言わない。だが…俺の子孫が戦ってるんだ。俺が出ないわけにもいかないだろう?』
「お前は…!」
『弱くなったな。ツアー。俺たちとやり合った時のお前は、もっと強かったぞ?』
天使達が吠える。
すると、どこからともなく大量の天使が湧き出す。それら全てが70レベルを超える高位の天使達。
それらを何事もないかの様に殲滅した戦士は、ニヤリと笑いながらそう言った。
ワールドチャンピオンの一人。ホウガン家の始祖である最強のエルフ。
八欲王と呼ばれ、後の世では悪として語られることの多い、人間を愛した王様。
『まぁ…なんだ。俺はお前の為に戦うつもりは無い。子供達の為に戦わせてもらう。だから、勝手に合わせろ。』
『「『次元断切』」』
本家本元の、最大威力のワールドブレイク。
竜神や、他の使い手達の使う劣化版のそれとは違い、その一撃は正真正銘世界を断つ。
重なる様に放たれた一撃は、天使の体に深い溝をを作る。
『これは俺達が『私達が繋いだ世界の歴史』』
消えたはずの友達が再び現れる。
『傷つき、もがきながら繋いだこの世界の物語。』
「死の支配者よ…今、お前の目の前にいるのは私だけでは無い!幾万幾億の、過去を生きた人々が、今を生きる人々が紡ぐこの世界の歴史そのものだ!」
「なら…なら俺はそれを否定する!だから…見せてみろ!竜神!俺に、俺が知らない人の輝きとやらを見せつけてみろ!俺はそれを全力で否定する!」
白髪の女戦士と、白黒の髪を持つ女戦士が、その手に持った戦鎌から、時を壊す白黒の一撃を放つ。
三姉妹の忍者が空から苦無を降らせると同時に、年老いた老人が奥義を放つ。
青空と金剛石の竜王が、親子二代でブレスを放ち、天を貫く大樹が地面を薙ぎ払い、内部から魔法が放たれる。
『『
三つ首の龍の背に乗った暗黒の鎧を纏った戦士と、背中に浮遊する剣群を携えた女神官が夜空を刀身に秘めた大剣から無属性の大爆発を発生させ、竜の口から3発の火球が放たれる。
朱色のパワードスーツと、パワードスーツを纏ったゴーレムがその手に持った火器で天使の体を射抜き、二人の天使が、自分よりより高位の天使目掛けて聖属性の魔力を放つ。
今を生きる英雄達が、過去を駆け抜けた英霊達が、一つの戦場に集う。
「『閃光烈斬』!」
「『星の裁き』」
天使の放つ波動と、竜神の放った斬撃が同時に互いの体へぶつかり、互いの体が揺れる。
終わった地球で生まれた死の支配者と、まだ生きていた頃の世界に生きた竜神。
互いに人から異形へ変わった存在。しかし、転生と転移、善と悪。全てが反対、鏡合わせの様に生まれた二人。
で、あれば。初めから殺し合いになることは必然だったのだろうか?
また一体、また一体と天使達がその身を散らせてゆく。
魔法使いが杖を振るうと、6発の《現断》が天使の体を咲き、背中合わせの骸骨と戦乙女が槍と鎌を構え、天使の体を引き裂き、その体に正と負のエネルギーを流し込む。
至高天の天使が両手を広げると、天を引き裂き大量に天使が現れ、その中心に立つ光が、最後の審判を下す。
次々とセフィラの果実は地へと堕ち、最後に残ったのはKeter。王冠だけ。
海王星を象徴する第一のセフィラ。
同時に、竜神ももうこれ以上力を引き出す余力が殆ど残っていない事を知覚する。
互いに後がない、次が最後の激突になるだろう。
(…超位魔法のクールダウンは後30秒。これさえ耐えれば…!)
「《魔法三重化・第十位階天使召喚》!」
同時に、白黒の髪の毛をした戦士の鎌から根源の時の精霊が、赤いマントを纏った白髪のエルフから根源の土の精霊が現れる。
そして、残った武器達を天使に向かわせる。
召喚した天使達が潰れ、精霊は散らされ、武器は、弾かれ、折られ、壊される。
「最後のセフィラーよ!奴を、竜神を殺せ!」
殴打を、斬撃を、刺突をギリギリのところで避け続ける。
光は肌を裂き、風は鱗を捲る。しかし、残った気力と体力を使い、ギリギリのところで致命傷だけは避ける。
爪で体を引っ掻き、至近距離で自分もろともブレスを喰らわせる。残った魔力で天使の足を縫いとめ、視界を防ぐ。
体力はもう残り1割もない。
だが──時はきた。
「起動──《二重》!」
最後の最後まで取っておいたスキルを発動する。
本来なら武器に付与する魔法である二重を、鎧に付与したもの。そして、ツアーにとって鎧とは体の一部と同じ。
これにより、自分の半分ほどの強さを持った分身を生み出す。さらにツアー本来の能力により性能を引き上げられたそれは、6割ほどの力を持った分身を生み出す事を可能にした。
ワールドチャンピオンの6割の力を持った分身、それは奇しくも強化前の八階層のあれらの強さと一致していた。
これであれば、10秒は稼げる。
生み出された分身と、天使が激突する。
組み伏せられた天使と分身は、地面を転がりながら互いの拳をぶつけ合う。
「さぁ終わりの時だ!穿て──『白金龍陣』!」
この世界の人類が作り出した技術である《魔法上昇》、そして異世界の技術である《超位魔法》。
その二つがここで合わさり、そして最強の一撃となって最後のセフィラの体を貫いた。
ツアーの目は、HPが尽きたのを捉えた。
だが。
「がッ…!」
背中から鋭い痛みが走る。
灼熱が全身に広がる。心臓を貫かれた。
自身の胸を見る。
そこから、一本の刃が生えていた。
生きていた。ほんの僅か。小突けば死ぬ程度でしかない体力で、敵は生きていた。
竜神のHPが尽きる。
もう蘇生スキルは残っていない。一つを除いて。これが本当に最後の切り札。
《
ギリギリのところで踏みとどまったツアーは、数本だけ残った《魔法蓄積》の付与された短剣を使用し、中に秘められた《大治癒》で少しだけHPを回復させる。
僅かしかないHP、だが、死にかけの天使と死の支配者を殺すには十分すぎる!
死の支配者が、何かを──驚きだろうか?──呟いた気がした。
体を剣で辛い抜いた後、後方へ飛び抜いた天使めがけて、加速する。前へ、前へ。
力を引き出せるのは後一回。それも最高位のものは不可能。
「力を貸してくれ、スルシャーナ!『清浄投擲槍』ッ!」
ツアーの右腕から、勢いよく光の槍が射出され──それをツアーは掴み、天使の心臓へ突き刺した。
胸に空いた大きな穴から光が溢れる。四方八方を照らす奇妙な光はそのまま膨張し、絶叫と共に破裂した。
最後のセフィラが落ち、死の支配者の無敵が解除される。
「これで終わりだ…………っ!?」
死の支配者の背後。
そこに浮かび上がるは金色の時計。その針は既にXIを指していた。
選択した魔法はなんだ。《嘆きの妖精の絶叫》?それとも《真なる死》?前者であれば問題はないが後者であれば…
っ、時間がない、流石に後コンマ数秒で殺せるほど甘い相手ではッ!
玉座に座っていた死の支配者が立ち上がる。
それを頭上から見下ろすのは白金の鎧。
感想、評価などありがとうございます!励みになります!
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
ということでここからが本当の最終決戦。次回からはアインズvs鎧ツアー
勝者こそが正義となる。