白金の竜王に転生した人間の日記   作:美味しいラムネ

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別れの四冊目

5047日目

 

異世界のドラゴンだからなのか、オーちゃんは位階魔法をバンバン使っていて羨ましい。ただ、頼むから巣の中で火の玉を打ち出すのはやめて欲しい。巣が火事になるだろ!?

ポッター曰くこの魔法は第三位階魔法の《火球》というモノらしい。う、羨ましい…

私は未だに第ゼロ位階魔法しか使えない。砂糖と塩、白金以外に胡椒も出せるようになったんだぞ!だからどうした…

 

ちなみに飛ぶ斬撃は3本になった。三連空斬!指輪を使えば4本になるぞ!あと浄化っぽい光が武技に宿るようになった。見えないから強かったのに、飛ぶ斬撃に色がついてどうするんだよ…まぁ浄化っぽい光は消そうと思えば消せるんだが。

 

 

5101日目

 

砂糖を出そうとしたら魔力の矢が出てきたぞ!?何が起きた!?何が起きた!?

明らかに同時に4本ぐらい出てきていた気がする。本当に何が起きた!?

 

…何だがとても頭が痛い。割れるように痛い。確実にやってはいけないやらかしをしてしまったようなきg

 

 

5476日目

 

…どうやら一年近く眠ってしまっていたらしい。頭痛はすっかり治ったが記憶がかなり混濁している。

一年眠っていた間、ポッターやじゃがいも馬鹿が領地を守ってくれていたそうだ。オーちゃんも忍び込んで私を殺そうとした若竜をバリバリ食べていたらしい。成長期…

一年も眠っていた所為なのか、体がおかしい気がする。魂のあり方そのものが変わったような感覚。

長いこと眠っていたにしては、能力も落ちていないし、それどころか上がっている気さえする。何が起きているんだ…?

 

一年の間に私の巣はじゃがいも馬鹿の手によって緑溢れる姿へと変えられていた。私の巣が自然に飲み込まれているだと…!?

 

領民を守ってくれて、ありがとう。

 

 

5490日目

 

私の体に何が起きているかがわかった。

箇条書きにすると

・第四位階までの位階魔法が行使可能になった

・始原の魔法のコストが増加した

・全体的に能力が向上した

 

こんな所だろうか?始原の魔法のコストが増大したところでどうせ元々使わないし、自分の体力で打てるような低位の魔法はコストが増えたところで大した差はないから問題ないな。

 

ポッター曰く、彼らの世界の竜は、種族的特性として最大限まで成長すると、自然に第四位階魔法までは使用可能になるそうだ。

ひょっとすると何かの拍子に彼らの世界の竜とこの世界の竜の中間のような存在になった結果が此れなのでは?多分きっかけは、魔力の矢を打ち出したアレだろう。

何となくこうなる気はしていたが、少し時間がかかると思っていた。魂が慣れ切っていないのに変質した結果一年も眠ってしまったのだろう。

 

…竜基準だと一年寝るのはよくあることとか言ってはいけない。

 

じゃがいも馬鹿は祝いだと言って口に中にじゃがいもを放り込んできた。

それ、私の巣で育てていたやつだろう。

 

 

5618日目

 

最近は今まで以上に毎日が楽しい。どんどん使える魔法も増えていく。今や第八位階を超えて第九に届きそうだ。

ちなみに使える魔法をポッターに見てもらったところ、どれも信仰系魔法だそうだ。…別に何も信仰してなどいないのだがな。そのせいか、信仰系魔法の代名詞である回復魔法は一切使えないし、回復魔法を使える存在の召喚もできない。回復系の短杖や巻物は使えるが、蘇生はどう足掻いても使えなかった。自己に対して継続回復系の魔法を使う場合は別だが。

その代わりに、超攻撃的な魔法を多く修めている。召喚できるモンスターも基本攻撃特化だし、使えるバフも攻撃に特化している。どうしてこうなった。回復に特化した天ちゃんとは真逆である。

 

難度を測れる領民に測定してもらったところ、280だと言われた。あまり上がっていない。

魔法を使えるようになっていく中で、空の器の中に何かが注がれていく感覚があった。武技の時は、器そのものが大きくなっていく感覚があるのに。

ゲーム的にいえば、武技の訓練の時は経験値を獲得していて、魔法の時は、今までの魔法の訓練で獲得した経験値を使って、レベルを上げている、そんな感じなのだろう。

 

じゃがいも馬鹿が杖をプレゼントしてくれた。残念だけど私の竜の手じゃそれ持てないんだ…いや、鎧の様に周囲に浮かべればいけるか…?

 

 

5630日目

 

なんかいけた。鎧だけではなく武器も遠隔操作可能になった。これで攻撃力がさらに上がった!これ以上火力を上げてどうするつもりなんだ私は

…そういえば今まで鎧には素手以外に攻撃手段がなかったわけだな。馬鹿なんじゃないか私は!?

 

じゃがいも馬鹿との悪ノリで武器を明らかに使いきれない量作ってしまった。大剣、ハンマー、槍、刀だけの予定だったが、盾に大斧、鞭に鎖鎌にブーメランに…と無駄に大量に作ってしまった。短剣なんて形は違うが50本近くあるぞ!?

しかもどれも実用性よりも遊びに傾いているし…かっこいいけど…まぁ浮かせて使うから持ちにくくても関係ないか。

 

ただクワはどうするつもりだったんだ作った時の私たち…!クワでどう戦えと

 

 

6001日目

 

第十位階に届いたあたりで急に成長が鈍り始めた。領民曰く難度297だそうだ

そういえばこの領民も随分と歳をとったな…元々歳をとっていただけあって、いつ死んでもおかしくないな。別れるのは辛い。

 

じゃがいも馬鹿が、貴重なアイテムを使って私の能力を測ってくれた。

じゃがいも馬鹿曰く、私が回復魔法を使えないのは、修めている職業がホーリーロードやホーリーナイトなどの信仰系魔法()使える近接職やホーリーパニッシャーなどの攻撃的な職業ばかり取っている上に、力の信奉者という、回復系魔法が一切使えなくなる代わりに能力が上昇したり、高位の魔法が行使可能になる職業を取っている所為だそうだ。

どうやら私が神を信じていないのに信仰系魔法を使えるのは力を信じているかららしい。

 

…そこまで細かく分けられているのか。そしてアイテムで職業が分かると。多分この職業は社会的な奴じゃなくてゲーム的なアレだよな?

やっぱりこいつらゲームの世界から来ただろ!確定!ここまで来るともうそうじゃ無いと逆におかしいだろう!?

 

 

6004日目

 

一回腹を割って3人で話し合ってみた。

…これ、ゲームの世界から転移してきたキャラクター、ってことなのか?自分の世界がゲームだと気付かずに普通に生活していたら転移してきた感じの。

だったら「お前らの世界はゲームだったんだよ!」とかいうのは禁句だな。流石に空気が読めていなさすぎる。

 

…仮にゲームの世界だとしても、高性能すぎる気がしないでも無いが。私の記憶の中にはそこまで自由にキャラクリできたゲームはない。…未来人とかだったり?そんなわけないか。ラノベの読みすぎだ。

 

 

6307日目

 

今日も我が領地は平和である。

そういえば、昔はたくさんいたジャンボジャンガリアンハムスターがめっきり姿を見せなくなったな。普通に奴らは強いので、領民が狩り尽くした訳ではないだろうが…移動したのか?

あのフォルム、可愛くて好きだったんだがなぁ。目も可愛かったし。領民は、「叡智ある瞳を持ち、強大な力を感じさせる」と言っているが。まぁ力は確かに強いな。

 

 

7305日目

 

今日でポッターがこの世界にきてちょうど20年が経つ…はずだ。星を見る限りはこの世界も365日で一年っぽいし。

…一冊目の日記を読み返して気づいたがこれ1日ズレてるじゃないか!?20年目は昨日だったな…

 

1日ズレてるとはいえ、記念日的なノリで我がフェルンオスト産の食材を使ったケーキをご馳走した。領地一の料理人に依頼して製作してもらったものだ。高かった…とはいえ値段に見合う味であった。砂糖は貴重品だが私が実質無限に生み出せるので私の領地では使い放題である。塩も同じく。

美味しく食べている姿を見ると思わずニヤニヤしてしまうな。

 

ポッターが来てから20年ということは、じゃがいも馬鹿が来てから120年ということになる。死にそうでなかなか死なないし、もうこいつ死なないんじゃないか?というか死なないで欲しい。

 

 

7401日目

 

ついにあの難度を測れる領民が死んだ。寿命である。

本当に、本当によく働いてくれたなぁ。せめて他の竜王に利用されたり、アンデッド化しないように、魂はそのまま大いなる流れへと送った。

人材の代替わりが始まっているのを見ると、そろそろなのかな、と思ってしまう。

覚悟だけはしておかなければ。

 

 

7439日目

 

久しぶりに命知らずの竜が襲撃してきた。

気が立っていたこともあり、たっぷりと位階魔法の実験台になってもらった。ミンチよりひでえや。

肉は美味しくいただいた。

 

ただ、あのじゃがいも馬鹿があまり食べなかったのが気になる。

 

 

7503日目

 

最近じゃがいも馬鹿に元気がない。

天ちゃんやスーちゃんが魔法を使っても、医師や薬師を呼んでも良くなる気配はない。ポッターがアイテムを使って色々しているが、元気がないままだ。

最近はオーちゃんがじゃがいも馬鹿を温めるようにずっと寄り添っている。

 

辛い。

 

 

7599日目

 

頼む、起きてくれ…

 

 

7602日目

 

ついにじゃがいも馬鹿が死んだ。

ポッターが、天使に転生するアイテムを差し出していたが、「俺は人間のまま、人間の誇りを持ったまま死にたい」と言って断り、そのまま死んでいった。格好つけやがって…なんだ、「我が生涯にいっぺんの悔いなし」って。あと石は一緒に埋めてくれってどういうことだ。「フニフニした感触が気に入った?」そうなのか。はは。

 

最後の言葉は、「お前ら、俺のことじゃがいも馬鹿って呼んでるけど、本当の名前は、大根馬鹿なんだ」だった。

馬鹿やろぉ、最後まで締まらない奴め…

最後に大いなる流れへ魂を送る時、何か暖かいモノが体に流れ込んできた感覚があった。

 

絶対に忘れない。じゃがいも馬鹿、お前のことはいつまでも忘れない。

 

 

7603日目

 

 

7604日目

 

 

7618日目

 

 

7632日目

 

 

 

7647日目

 

アヴァターラ。じゃがいも馬鹿に託されたアイテムの中にあった、思い出の化身を作り出すゴーレム。

彼の姿を象ったそれに、彼の装備を着せ、墓標とする。

 

幸い私は造形が得意なため、生前の彼そっくりな墓ができた。

託されたアイテムを使い、傭兵モンスターを数体墓守として召喚する。巣の奥、私を殺さない限りは辿り着けない最奥に安置する。

 

こんなことをしていると、やっぱり引きずっているんだな、と思う。馬鹿なことをしているな、とも思う。

それでも、いつか私がこの気持ちを乗り越えるまで、そこで見守っていて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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