白金の竜王に転生した人間の日記   作:美味しいラムネ

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八王の八冊目

100000日目

 

十万日目である。270年以上この日記を書き続けた事になる。これだけ使っても壊れないペン。凄まじいな。

 

今日、今回の百年の揺り返しに備えて、元々交易やら何やらで交流のあった比較的まともな竜王と一時的に同盟を結んだ。

七彩の変態のいる陣営と同盟を組むのは嫌だが、領地の為だ…と覚悟の決まった顔をしていた。いや別に私は竜の尻を追いかける趣味はないが?

 

とはいえ、必ずしも良い関係が築ける相手が転移してくるとも限らない。それに備えて、糞蜥蜴どもとは違って、同盟を組むに値する竜王と同盟を組めたのはいいことだ。実際、まともな竜王ほど戦闘力は高い。領民を弾丸としか見ていない糞蜥蜴とは違い、始原の魔法を乱発できない為、その分物理戦闘力だったり、少ない回数で敵を仕留めるために始原の魔法の威力や質が高い傾向にあるのだ。

しかし、まともな竜王が全体の2割以下とは…糞蜥蜴ども全員死んでくれないかな?

 

 

100134日目

 

私は回復魔法を使えない。とはいえ、回復手段が無いままにしておくのは流石に問題である。

リジェネ系を自分にかけることは出来るがそれだと回復量が少ない。そんなこともあってここ数十年は、自分の生来高かった自然治癒力を高めようとしていたが、ついにそれが極まった感覚がある。今や部位の切断ぐらいなら回数制限はあるものの一瞬で回復できる。ナメック星人か私は。

 

 

104290日目

 

星が降っている。

私がこの世界に生まれた日も、こんな星空だった。

雲ひとつない、満天の星。

 

友と肩を寄せ合って空を見上げる。

隣に、友がいる事を、ポッターがいる日常を嬉しく思う。

知らない異世界で、仲間が寿命で死んでいく中、残って戦い続けるスルシャーナと、この世界に縛られることを選んだアーラの事を眩しく思う。

 

今回の揺り返しも、乗り切れるといいなぁ。

星々の間に、彼の影を見た気がした。

 

 

 

109510日目

 

そろそろいつプレイヤーが転移してきてもおかしくはない。

しかし、全く発見されたと言う情報はないし、交戦も確認されていない。

 

いつでも対応できるように備えだけは怠らないようにしなければ。

 

 

109537日目

 

今回転移してきたプレイヤーの情報が、今日に至るまで全く広まらなかった理由がわかった。

彼らは転移してきて一瞬で、転移地点近辺の竜王の集団を殺し尽くした。あまりにも一瞬だった為、周辺の集団が気づかず、その為発見が遅れたのだ。

 

あまりにも静かすぎる隣の領地を妙に思った竜王が様子を見に行ってようやく事態が発覚した。

それを知った私はすぐさま鎧を派遣したが、取りつく島もなく破壊され、コンタクトを取ることは叶わなかった。

私が竜である、それだけで相当な悪意をぶつけてきた。…いや、それも仕方のない事なのだろう。

 

そして転移してきたプレイヤーたちは、この世界の全ての竜王に対して、「人間へのこの様な非人道的な行為は看過できない」として宣戦布告したのだ。

 

そしてたった1週間で周辺の竜王全てを駆逐した。

百を超える数の竜をたった1週間で殺し尽くした。

 

生き残りの話によると、彼らは天に浮かぶ城から現れ、8人の恐ろしく強い戦士と、30人の同じだけの強さを持つ部下を率いて瞬く間に周辺領地を征服したそうだ。

竜の方もやられっぱなしという訳ではなかった様で、数十匹がかりで確実に何回かは殺したそうだが、蘇ってくるので勝負にならなかったと言っている。

 

…私は、どうするべきなのだろうか。彼らを支援するべきなのだろうか。糞蜥蜴の行為は看過できないというか言い分はわかるし、激しく同意できる。竜王の支配する時代が終わるのは喜ばしいことだ。しかし、今回転移してきた者たちはいささか好戦的すぎる気がする。それに、そもそも彼らは私たちの陣営が協力を申し出たとしても、それを断るだろう。そんな予感がする。

 

 

今入手できた全ての情報を同盟内で共有した。

そして、かなり不味い事実が発覚した。

 

スルシャーナとポッター曰く、彼らは上位ギルドの一つ、アースガルズの天空城を拠点に持つギルドの可能性が高いとのこと。

しかも、その8人全員が、それぞれの世界における最強の称号を持つ戦士だったそうだ。

 

…敵対するにせよしないにせよ、何としてもコンタクトだけは取らなくては不味いな。

 

 

109539日目

 

あぁ、私は今回のプレイヤーとは仲良くできないな。

 

一度、私は単騎で天空城へ行った。

一切の攻撃もせず、対話を求めたこともあり、いきなり攻撃されることはなかったが、少し会話して、そのまま追い返された。

 

そしてそのほんの少しの会話で、私は彼らと相容れないことがわかった。

誰が呼び出したか知らないが、八王という呼び名が世界中に広まった彼ら。あまりにも人間種贔屓がすぎる。糞蜥蜴を殺すのならばわかる。

だが彼らは、人を救い、その勢力を広げることはしても、その手が亜人や異形に差し伸べられることはなかった。

 

それどころが彼らは異形狩りを始めた。竜だけでなく、亜人や異形とも戦争を始めた。いや、あれは戦争などではない。殺戮だ。竜とくらべ力のない彼らは、ただ殺されることしかできない。糞蜥蜴には弾として使われ、プレイヤーには狩られる、そんな彼らの一部は私たちの同盟の勢力圏まで亡命してきている。

 

彼らの思想、確実に私たちとは相容れない。私たちを滅さんと彼らはいつか攻めてくる。

いや、下手したら同じ人間種国家であるスレイン法国や、同じプレイヤーであるはずのポッターやスルシャーナにも危険が及ぶかもしれない。

 

いっそのこと、その前に彼らを──

 

 

109590日目

 

世界が、変わった。

 

 

八王、奴らやりやがった!

 

これで確実に竜王の治世が終わる。彼らはこの世の生きとし生ける全ての命に魔法をもたらした。

彼らは、どうやったのかは不明だが、竜王の世界への接続の一部を強制的に奪い取り、それを位階魔法という形で世界に齎した。そして世界が歪み、竜王の権能は弱体化した

 

 

実際、私の領地でも一部の種族が位階魔法に目覚めていた。

…だが、これを彼らがもたらしたというのは心情的に複雑だな。

 

 

109593日目

 

慈母(クソババア)をはじめとする竜王の中でも最強格の面々がこの事態を重く見て、全ての竜王の集団による大同盟を結成するよう呼びかけた。

実際に全ての竜王による大同盟を組むことは出来なかったようだが、かなりの規模の集団が結成()()()らしく、昨日、その全軍による一斉攻撃が、天空城へ仕掛けられたそうだ。

 

同時に、私の同盟を始めとした、参加しなかった領地にも八王の手によって大量のモンスターによって構成された軍隊が差し向けられた。援軍を恐れたのだろう。

大半が不死者や天使、悪魔だった事を考えると、軍隊を構成していたのは《不死の軍勢》や《最終戦争・悪》《最終戦争・善》によって召喚されたモンスターだろう。実際、仲間割れを常に起こしていた。統率も取れておらず、ただひたすらに暴れ回るだけであった。

 

それでも充分領民にとっては脅威であった。しかも、中には一部統率の取れたそこそこ強力なモンスターの一団もあり、軍勢の対応をポッターやスーちゃんたちに任せて無視することができなかった。

私は軍勢への対応に追われることになり、自身の領地に釘付けにされてしまった。同盟内の他の領地にも同じ軍勢が差し向けられたこともあり、早々に対処できた私と七彩の竜王が支援に追われることとなった。

また、スルシャーナのスレイン法国には、その軍勢とは別に、天空城のギルドNPCと思われる強力な戦士が1人だけ差し向けられていた。撃破することはできたが、全てが終わる頃には、プレイヤーと竜王の決戦も終わっていた。

 

 

そして、大同盟は壊滅した。現存する竜王の6割による大同盟、それは彼らの全力の抵抗により壊滅し、敗走することとなった。

何度倒しても蘇る八王、そしてその手下。特級のマジックアイテムの数々。そして彼ら自身の実力が、全員難度300クラスと、大半の竜王を大幅に上回る者だった。何より、八王は自身の技によって、竜王の切り札たる始原の魔法を無効化していた。それが1番の敗因だろう。

 

そもそも、一般竜王の難度が160-180程度、強者と呼ばれる者で240やそこら、盟主クラスが270-300と、竜王の間にも相当な実力差があった。この状態で優先して盟主クラスが殲滅されればそのまま集団は崩壊し、烏合の衆と化す。そのようにして崩壊したのだろう。

 

ただ、この戦いで判明したことがある。

8人のプレイヤーは、復活するたびに少しずつ弱体化していったらしい。

 

それだけではない、大同盟はなによりも貴重な、『情報』を残していった。8人の戦闘スタイル、30体のNPCの戦闘スタイル。全てが分かった訳ではないが、アドバンテージは完全にこちらにある。そして蘇生に使用されているマジックアイテムも特定した。

…八王は、大陸の西半分を完全に征服し、中央部も大半が彼らに征服された。私たちの同盟は全員東側か、中央部であっても異様に立地が悪いところにしかいない為、まだ被害は少ない。

手を出してこないのであればこちらから攻めることはないと警告しているが、八王が私たちの領地へ侵略してくるのは時間の問題だろう。

 

大同盟との決戦が終了した後、八王は大都市を築き上げ、そこを中心に防衛拠点を築いてるらしい。

彼らがそこで止まればいいが、竜のように強欲になり、我々に手を出すのであれば、こちらも最終的解決手段を取らなければならなくなる。

 

 

109597日目

 

ついに彼らは私の領地へと手を出した。

プレイヤーが1、そしてNPCが4、それに大量のモンスターの軍勢。

 

私たちの全力を持って殺し尽くした。やはり彼らの指輪を噛み砕けば蘇れない。魂を捉えれば蘇生もできない。

いや、こんな事を記している場合ではない、何が起きている、だめだ、間に合わない、だめだ、これは陽動だ。クソが、クソッタレが!ク、クズがぁあああああ!!

 

 

 

 

間に合え、間に合え!

やはり彼らの目当ては私の領地ではなかった。

 

「『能力向上』『能力超向上』『疾風走破』『疾風超走破』」

 

あの時、スレイン法国にだけ差し向けられたNPC。

あれはスルシャーナの実力を測るために送られたものだったのだろう。

 

「『限界突破』『限界完全突破』『脳力完全解放』『肉体強化』《自己時間加速(タイム・アクセラレーター)》《加速(ヘイスト)》」

 

彼の国へと転移できない。

近くまで転移したところで弾かれた。モンスターが集ってくるが無理矢理突き進む。

少しでも速く、手遅れになる前に。

 

私が見たのは、砂漠化した大地と、首に剣を振り下ろされる直前の、死神の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








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八欲王編(序盤)
原作より八欲王は現時点で相当ダメージを受けています。ハーレムを大々的に築く余裕が無いぐらいには
次回あたりで憑依ツアーのクラス構成設定公開します

原作キャラの(ある意味)TS

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