巨蟲列島   作:ダーク・シリウス

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巨大化した蟲がいる島でサバイバル?

保護してくれた異世界の兵藤一誠と別れ、元の世界へ戻されるのかと薄れる意識が再び覚醒したようにはっきりとした時―――。

 

「あっ、起きましたか」

 

黒髪の黒瞳の女性がこちらを覗き込むように見下ろしていた。不思議げに左目を瞬きし、起き上がると彼女以外にも数人の男女達がこちらを見ていた。

 

「・・・・・誰」

 

「私は中城茉莉華。あなたはここの島民?」

 

「・・・・・島民・・・・・?」

 

改めて見渡せば周囲は木々しか見当たらない。・・・・・本当に元の世界に戻ったのか?

 

「・・・・・違う、島?」

 

「私達、突然の飛行機の事故で生きている人は皆ここに流れ着いたみたいなの」

 

「・・・・・全員?」

 

「私達以外にも、多分この島のどこかにいるかもしれない。だけど、得体の知れない昆虫たちが巣くっています」

 

得体の知れない虫?

 

「・・・・・具体的」

 

「人の身長より超える巨大な昆虫です。空から突然現れた信じられない昆虫だったのです・・・・・」

 

空・・・・・高いところから見れば島の全体が見渡せる。脚に力を込めて一気に空へと跳躍、再び重力に従って地上へ落ちる前に見たものを目と記憶に焼き付けて―――他にも人間がいる方角も確認して地上に戻った。おっかなびっくりする者達を気にせずに近くにあった枝を拾って大きくこの島の絵を描いた。

 

「・・・・・いま、現在、ここ」

 

「あの高さまで跳んだ上に現在位置を調べたの?」

 

「・・・・・他生存者、数人、民家、建物、この辺り」

 

「そこまで正確に・・・・・本当にあったのね?」

 

「・・・・・ただし、島民の影、無し」

 

「俺たちだけ、なのかこの島にいる人間が」

 

大柄な男も話に加わって来たから頷く。

 

「・・・・・島民、人探しは無意味、同じ境遇の人間と合流、建物へ避難、どっち」

 

「他にもこの島に人がいるなら、合流して情報を共有するべきでしょう野沢先生」

 

「私は建物の所へ行かせてもらうわよ」

 

眼鏡をかけた癖毛がある大人の女が意見を分けたことで二分と化した。

 

「なっ、他にも生存者がいるなら早急に合流するべきでは」

 

「それが本当なのか、私は信用できないんでねぇ~~~。あんな高くジャンプしただけで把握できるなんてあり得ないでしょ。」

 

「・・・・・独自の判断、二手に分かれる。救助、多分船、何日?」

 

「多分、三日以降よ」

 

三日・・・・・人間を襲う得体の知れない昆虫がいる島の中でのサバイバル生活を強いられることになろうとは・・・・・。

 

「・・・・・他の生存者、会う。一緒に来る?」

 

「・・・・・皆さんはどうします。建物の方へ向かうか、他の生存者の所へ行くか、私と野沢先生は強制をしません。今すぐ決めてください」

 

「今ですか!?」

 

「すぐに行動した方がいいからです。モタモタしていると、また得体の知れない昆虫が現れて私たちを襲ってきます。安全を確保するチームと他の生存者と合流するチームに分かれましょう。あなた、ここから建物までの距離は分かりますか?」

 

「・・・・・大体、10km、数時間以内」

 

「い、意外と遠くないところにあるのね。じゃ、じゃあ私は建物の所に・・・・・」

 

一人がそう決めると他の者たちも建物の所へ行く方が9割、生存者と合流する残り一割は中城茉莉華と一人の女子生徒になった。

 

「・・・・・行く」

 

「行くって、待ちなさい。この担ぎ方は・・・・・」

 

「お、降ろしなさい! 早く降ろし―――!」

 

聞く耳持たず、生存者がいる方角へバッタのように跳躍しながらうるさい悲鳴を無視して移動すると、別の悲鳴が聞こえた。その声に―――一人の少女に群がる四匹の巨大な蝶が肉眼で捕らえ、蝶たちは空から現れた奇襲に気付かず燃える炎を纏う脚で蹴り飛ばす。横凪ぎに払い炎を飛ばして全ての蝶を燃やす。

 

「足が、燃えて・・・・・っ!?」

 

「あなた、一体何者・・・・・っ」

 

「・・・・・名乗る名、無い」

 

 

???side

 

親友の悲鳴が聞こえ、海辺で偶然出会ったソフト部の松岡歩美さんとうっそうとした森の中を駆け、開けた場所へ出た途端。空から長い赤髪に右眼に眼帯を付けた男性が、四匹のアゲハ蝶を炎を纏う足で蹴り飛ばして燃やした瞬間に出くわした。あれは、私の知ってるサイズじゃないけどミヤマカラスアゲハ? あの男性といいあのアゲハといい、こ・・・これ現実なの・・・・・?

 

 

・・・・・生存者、全員集まった。

 

「あ、あなたたちも・・・・・無事だったのね」

 

「中城茉莉華先生!! それにあなたは確か青山さんだったわね」

 

「一体どこから現れたんですか?」

 

「・・・・・彼に担がれてここまで」

 

こっちに視線が集まってくることすら気にせず、死んだ蝶を触れて調べることに専念する。

 

「(・・・・・硬い感触、巨大化になるとここまで硬くなる? 他にも巨大化した虫がいるとなると・・・・・)」

 

これは、色々と面倒になる。確定した。この世界は、生まれた世界じゃない。

 

「ね、ねぇ・・・」

 

「・・・・・」

 

「えっと、助けてくれて、ありがとね?」

 

ポニーテールの少女がぎこちなくお礼を言ってくる。気にするなと感じに手を振った時、重低音、ヘリコプターのような断続的に聞こえる音が耳に入る。音がした方へ振り返れば、眼鏡をかけたおさげの少女を捕らえた虫がそこにいた。帽子をかぶった少女が必死な声で虫に連れ去られる少女の名を言いながら手を伸ばす。でも、からぶった。

 

「あ、あれです! 私たちが見た得体の知れない昆虫!」

 

中城茉莉華が空高く得物を連れ去る昆虫、ハチに向かって言う。スズメバチじゃないなら、まだ希望がある?

 

「・・・・・助ける?」

 

「はあっ!? お前バカか今の見たろ!! あんなバケモン相手に何ができるってんだよっ!?」

 

「・・・・・いや、さっき普通にバケモノの蝶たちを一人で倒したからできるっしょ倒すの」

 

ドレッドヘアーの少年が、先の光景を思い返させる言葉に一同は沈黙を貫く。帽子をかぶった少女へ尋ねる。連れ去られた少女の親しい関係らしいから。

 

「・・・・・助ける?」

 

「は、はい。千歳ちゃんを助けます! 今ならまだ間に合います! 千歳ちゃんを連れ去ったのはジガバチの仲間っ!! 千歳ちゃんに産み付けられた卵がふ化して食べられちゃう前に巣を探して助け出さないと!!」

 

「・・・・・あっち」

 

「え、わかるんですか?」

 

頷き、先歩く。まだ時間があるなら問題ない。でも、問題は別だったようだ。

 

「待て待て、行かせねぇよ。どうせ死ぬ奴なら助けるだけ無駄だろ。それに俺たちが分裂すると生き残る確率が低くなんだろぉ」

 

角刈りの不良のみたいな少年が立ち塞がる。人間同士の問題が起きてしまった。

 

「・・・・・知識、力が無いならそう」

 

「だろう? だからここは頭である俺の言うことを聞いてもらおうか?」

 

「・・・・・坊主頭?」

 

「ちげぇよッ! ア・タ・マッ! リーダーだリーダーッ!」

 

一部、面白いからか吹いて笑いに堪える。何が面白いのか理解できない。それ以上に・・・・・。

 

「・・・・・興味ない」

 

「あ?」

 

「・・・・・何の知識もないでしゃばりな無能、山猿の大将に従う、確実に死ぬのがオチ」

 

「んだと・・・・・」

 

元より他の生存者と合流する目的は達した。誰かに従う道理、あるはずがない。

 

「・・・・・話の平行線、無意味な時間、邪魔」

 

「俺は頭として皆を危険な目にあわせられない・・・・・そうだろ?」

 

「・・・・・仲間を見捨て続けて、最後死ぬ、違う?」

 

「違う!」

 

「・・・・・なら、助ける。じゃなきゃ、どく」

 

「だから委員長は―――」

 

無駄、そう判断した。不良の腹をえぐり込む拳。身体を丸めで悶絶する無防備な背中を思いっきり踏みつけて地面に這いつくばらせ、横っ腹を蹴って近くの木にぶつける。

 

「・・・・・邪魔」

 

『―――ッッ』

 

物理的に黙らす。場が沈黙・・・・・聞き忘れた。

 

「・・・・・中城茉莉華、生存者と合流する、達成、どうする?」

 

「・・・・・連れ去られた生徒が、まだ助かる見込みがあるなら助けに行きます。あなたなら、それができますね?」

 

肯定、頷く。

 

「・・・・・望むなら、案内」

 

「わ、わかりました!」

 

「私も行こう! えっと、よろしくお願いします!」

 

「青山さん、行きますよ」

 

「は、はいっ」

 

他は置き去りにする形でジガバチの仲間に連れ去られた生徒の救助に向かう。一緒に行動するつもりがないなら、いるだけ足手纏い・・・・・。

 

 

 

「ね、ねぇ・・・どうする? 先生たちが行っちゃうよ」

 

「虫の知識がありそうな織部ちゃんと、先生も信用してる虫を倒したか~なり強そうな男、これってこの島で生きるに絶対必要でしょ」

 

「そんな奴らと俺たちが上条の言う通りになったら生存率が下がるって話だよな」

 

「う、うん・・・・・」

 

「・・・・・僕は行くよ。助けてくれた恩があるし」

 

「リーダー気取る奴もあのザマじゃあ、こいつについていったらアタシらが助かる見込みもないってことになるな」

 

「・・・・・」

 

未だ激痛に苛まれて動けない上条と言う男に肩を貸して起き上がらせ、置いてけぼりにされた一同は生き残って街へ帰る為に五人を追いかける。

 

 

 

 

「あの、自己紹介がまだでしたね。私は織部睦美です。あなたの名前は?」

 

「・・・・・名乗る名、ない」

 

「えっと・・・どう呼べばいいのか他の皆も困るので教えてもらえませんか?」

 

後から追いかけ合流してきた八人の殿をする少女からの指摘。嫌悪する姓名で呼ばれたくない。どう呼ばれようと好きにすればいい・・・・・が。

 

「・・・・・偽名、D」

 

「Dさんですね」

 

殿(しんがり)が彼女なら、先頭は俺になった。左右には体力がある者が戦闘のサポートを行う。中央には聴覚に優れた者を配置し異音を警戒する。中央の左右が先頭の3人の死角を補う。殿の彼女は後方と陣形全体の異変を監視する―――これが今いるメンバーで出来る最善の陣形だという。

 

全く興味のない陣形だろうと・・・・・非力な人間が出来る最大限の警戒網。

 

「なんでこんとトコ歩いてんだ? そこに綺麗な道があるっしょ!!」

 

ドレッドヘアーの少年がもっともなことを言うに対して、織部睦美はこう言う。

 

「蟲はうっそうと繋がった場所にいるイメージがあるけど本当は開けた場所の方が沢山いるんです」

 

「・・・・・好み?」

 

「はい、こういう木々の中と開けた場所の気温と湿度の変化に蟲たちはとても敏感です。私たちも熱さと寒さ、温かさを感じるように」

 

「それって爬虫類もそうだよね? まさかだけど他の種類の生物も巨大化とか・・・・・」

 

「すみません。今は断言できません。巨大化した昆虫の突然変異はまだ誰も知られていない謎ですから」

 

・・・・・解明したところで今更どうしようもない話。この島だけでなく、世界規模ならば最悪の未来の想像が簡単に思い浮かべる。

 

「・・・・・巨大化、昆虫、何が厄介」

 

「そう、ですね・・・・単体でも群れでも人間にとって全部厄介です。巨大化した甲虫の中には恐らく銃弾も弾く強度になっていると思いますから」

 

「そんな蟲がいるの!? 自衛隊でも対処できないじゃんか!」

 

「・・・・・方法はいくらでもある」

 

うっそうとした草木の中から開けた場所と共に複数の民家が出迎えた。後ろにいる一行も民家を見ても安堵の色を浮かべない。

 

「民家だ・・・・・人が住んでるのか?」

 

ジャージ姿の少女の言葉を引き継ぐ中城茉莉華。

 

「Dさん、人の気配を感じますか」

 

「・・・・・どっちも」

 

「どっちも? ということは・・・・・」

 

・・・・・ただ、無事、ではないだろう。二階建ての窓を見れば明らかに人の手で加えたものではない物があるからだ。

 

「助かったの?」

 

「おぉ~い!!」

 

縋りつきたい希望に声を上げる。

 

「待って・・・・二階建ての窓に注目してください」

 

全員、泥か何かで作られた瓢箪の口のような穴を見た。

 

「・・・・・説明」

 

「あそこが多分ジガバチの巣です。Dさん、どっちに千歳ちゃんがいますか?」

 

「・・・・・奥、目の前、どうする」

 

指して導く。どっちも人の気配は感じるからだ。友人を助けるか、見知らぬ人を助けるかどちらを選択する。

 

「千歳ちゃんはまだ連れ去られて卵を産み付けられたばかりだと思います。人の気配があるなら、助けられる可能性があるなら手前の家から行きましょう」

 

助ける余裕がある。だから見知らぬ者から助けるという彼女に告げる。

 

「・・・・・ジガバチ、ハチの仲間?」

 

「え? は、はい、昆虫網膜翅目ですから仲間でもあります」

 

「・・・・・はちのこ」

 

「ああ、クロスズメバチなどの蜂の幼虫、他にも蛹、成虫を食べる地域もありますね。日本では長野県・岐阜県をはじめ、愛知県・静岡県・山梨県・栃木県・岡山県・宮崎県などの山間部を中心に日本各地で食用とされて古い時代には貴重な蛋白源として常食されたとも」

 

・・・・・饒舌になった少女の言葉を聞き、食せる可能性が浮上した。

 

「・・・・・幼虫、捕獲、非常食他、他の蟲の餌、囮」

 

「あのジガバチの大きさだと、幼虫もかなり大きいと思いますよ」

 

「・・・・・問題ない」

 

いないならばいい、いるなら捕獲。それだけ。

 

「・・・今、非常食って()ったよな・・・・・」

 

「む、蟲を食べさせられるの・・・!?」

 

「アタシは絶対に食わねぇ、絶対に食わないぞッ・・・!」

 

・・・・・甘い連中。

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

手前の民家から入る。全員で悪臭漂う中に顔を顰めた。

 

「・・・・・二手に分かれる」

 

「何でよ。こんなところで別々になる必要ないでしょ」

 

ツインテールの少女の意見に呆れる。当たり前な事を何故分からないんだと。

 

「・・・・・時間の効率、使える物を探す、人間の救助」

 

「確かに・・・これだけ人数がいるのですからそれが妥当でしょう。幸い、あのハチも睦美さんの話通りなら一度産卵すると2度と巣には戻らないですね?」

 

「はい、間違いないです」

 

「では、Dさんの言う通りに二手に分かれましょう。危険が無い場所なら意味なく怯える必要もありません。いいですね?」

 

教師の言うことを従う面々。

 

「・・・・・二階、三人で十分。中城茉莉華は生徒の引率」

 

「探索が終われば私たちも二階に向かいます。いいですね」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

織部睦美、ジャージ姿の松岡歩美と二階へ移動。踏めば軋む音が立ち古い建物だと把握し、狭い家の中で蟲との戦いになれば確実に倒壊する危険性が浮上する。

 

ゴトン。

 

二階へ続く階段のすぐ手前の襖の部屋から音が聞こえる。音の原因を調べに近づき襖を開けた次の瞬間。・・・・・何とも言えない臭いが充満した部屋の中も泥で覆われた空間、ジガバチの幼虫らしき無数の虫が数人の男女の身体に群がり餌として喰らっていた。彼等彼女等以外にも食べ尽くされた複数の人骨が転がっている。

 

「ああああ」

 

「ああ・・・・・」

 

「ああああ」

 

下半身がほぼ喰らわれて人肉の肉片が付いた骨の状態、今は上半身、臓器と人肉を喰らっている。なのに、人間たちは恍惚の表情を浮かべ逃げようとしない以前に死んでいないのが摩訶不思議だった。

 

「何でこの人達は逃げないんだ」

 

「・・・・・」

 

織部睦美も信じられない目の前の光景に息を呑み口を開く。

 

「私も人がこんな風になるなんて思っても見なかったけど・・・・・最後まで生かして食べるため痛みと恐怖を忘れる快楽物質を幼虫から与えられてるんだと思う」

 

「・・・・・医療に持って来い物質、麻酔替わり」

 

「そんなこと言っている場合か!!」

 

・・・・・確かに、幼虫がいる、捕獲する。手短な幼虫から手掴みで捕まえ、空間に穴を開けた亜空間へ放り投げる。

 

「Dさん・・・・・この穴は?」

 

「・・・・・保管庫」

 

「この不思議な穴が保管庫・・・・・?」

 

「・・・・・手伝う」

 

・・・・・大量に手に入る俺達の生存を助けるための物。二人も手伝うことで下から中城茉莉華達が上がってくる前には全ての幼虫を回収できて、生餌にされた男女三人だけとなった。

 

「な、なぁ・・・この人達はどうする? 一応、生きているんだよな」

 

「与えられてた快楽物質の効果が切れたら・・・・・すぐに死にます」

 

「・・・・・この島、島民がいた?」

 

「はい、この島は廃島じゃない、人が住んでいたんだと思います」

 

・・・・・そんな島に巨大化した虫が一斉に人間を襲って廃島と化した原因・・・・・。自然に起きた現象? 人為的な結果?

 

「・・・・・死人に口なし、でも、まだ生きてる、情報が分かる・・・・・?」

 

「Dさん何を・・・この人達はもう」

 

・・・・・異世界で得た、複製した聖書の神のシステムの能力の一つ、聖杯を具現化させて不思議な液体を生み出す。二人からの奇異な視線を気にせずこれから死ぬ三人の口から入れて飲ました瞬間。眩く発光する光に包まれた三人の身体は見る見るうちに復元されていき、喰われる前の状態になった。

 

「う・・・うそ・・・・・」

 

「なにが、どうなって・・・・・夢でも見てるのか」

 

「・・・・・いつか教える。貴重な情報源、運ぶ」

 

大人の女と少年を担ぐ、もう一人の少女は松岡歩美が背負い織部睦美が何かを拾った同時に中城茉莉華達が来た。

 

「生存者がいましたのね」

 

「「・・・・・」」

 

生存者、とは言い難い状態だった。なんて説明をすればいいのか分からない二人は沈黙して返答をしなかった。

 

「・・・・・そっち」

 

「めぼしいものはあまり、ないよりはマシなぐらいの物なら」

 

「・・・・・本題に移る、織部睦美」

 

「っ! はい、千歳ちゃんを助けに向かいましょう!」

 

次は自分の友人を助ける番だと意識を切り替える彼女と共に民家を後にした。

 

その直後。ヘリコプターのようなまたあの羽音が聞こえて来たのだった。

 

「ハチだっ!! おい巣には来ないんじゃなかったのかよっ!?」

 

「多分他の個体が別の獲物を運んでいるだけ。動かなければ気付かないから大丈夫。やりすごせるわ」

 

「・・・・・家の中に戻る」

 

「はいっ、皆さん急いで家の中へ!」

 

別の個体が別の個体の巣を利用するとは思えない考えは、蟲の知識人の彼女も間違いではないと行動で示す。

 

「・・・・・」

 

俺は外でジガバチの行動を観察していた。姿を見せるジガバチはまた人間を獲物にして、織部睦美の友人がいる巣へ運んで行った。羽音が聞こえなくなってから民家に避難した面々が出てくる。

 

「Dさん、別の個体のジガバチは?」

 

「・・・・・お前の友人の所、お前等と同年代、不良っぽい人間、獲物」

 

「俺達の同年代で不良・・・・・? おい、そいつは角刈りしていなかったか」

 

坊主頭が詰め寄って特徴を言う。・・・・・してた、かもしれない。

 

「・・・・・してた」

 

「―――――」

 

愕然と目を見張り、胸倉を掴みかかって来た。

 

「どこに連れていかれた!? アキラは、アキラはどこに連れられたんだ!!」

 

「・・・・・これから行く民家、織部睦美、友人と一緒」

 

「早く案内しやがれ!!」

 

・・・・・親しい友人? 一人で突っ走って死に行きそうな勢い。蹴り飛ばして離れてもらい、担いでいた二人を名も知らない者に代わってもらう。

 

「・・・・・ジガバチ、相手する。二人はその間に救出。それ以外は待機」

 

「わかりました。必ず戻ってくださいね」

 

言われるまでもない。織部睦美、丸坊主を担いで二人の友人がいる巣へと素早く駆ける。

 

「は、速いっ!?」

 

遠くないジガバチの巣の民家の玄関で立ち止まり、二人を降ろしてから先に歩く。真っ直ぐ二階へ向かい直ぐ近くの部屋に繋がる襖を開け放った。

 

「・・・・・お邪魔、します」

 

睥睨してくるハチ目。牙を開閉して今置いたばかりの獲物を横取りに来た不届きモノと思われてる。後ろにいる織部睦美に告げる。

 

「・・・・・ジガバチ、注意事項」

 

「この狭い空間ならジガバチは飛ぶ事はできません。ですが牙と麻酔針に気を付けてください」

 

「・・・・・好都合」

 

前へ駆けだし、侵入者を迎撃するために開いたジガバチの牙を掴み押さえる。

・・・・・意外と力強い。車程度の硬さなら難なく穴を開けたり裂くことも出来るだろう。

 

「・・・・・今」

 

「ありがとうございますっ。千歳ちゃん!!」

 

「アキラッ!!」

 

二手に分かれる二人。アキラと言う男を助ける坊主はすぐに救出に成功して一階へ降りて行った。脚が床に踏ん張っているために使っているなら、大きな尻尾を身体の下に潜らせて針を突き出す動作は出来ない。

 

ババババッ!

 

・・・・・? 翅を羽ばたかせた? 飛べなくても宙に浮くことが・・・・・あっ。

 

 

 

織部睦美side

 

 

二階にはいなかった。じゃあ一階? 千歳ちゃんを見つけたら直ぐにDさんに伝えないとっ。上条君はもうここからいなくなったから私一人で・・・・・!! 急ぐ足で一階に降りて各部屋を探し回っていた時、上から激しい振動が伝わって来た。ここも危ない、早く見つけないと! 

 

「あっ、千歳ちゃん!」

 

お腹にジガバチの卵をくっつけられた親友をやっと見つけれた! 気を失っているみたいけどまだ生きてる! 上に向かって大声で叫ぶ。

 

「Dさんっ!! 千歳ちゃんを見つけました!!」

 

そう言った直後、天井が上から凄い力によって崩壊してジガバチとDさんまでもが落ちて来た!! 一体上でどんな戦闘をしていたの!?

 

「・・・・・状態」

 

「気を失っているだけです!」

 

「・・・・・わかった」

 

そう言ってジガバチに翳した手から雷光が迸り、目の前でジガバチが感電したように電流を浴びせられた後にその場で崩れ落ちた。

 

「・・・・・麻痺状態、また起き上がる」

 

「Dさん・・・」

 

「・・・・・移動」

 

千歳ちゃんを脇に抱え、先行くDさんの背中を追いかける。何か秘密を抱えてるみたいけれど、今は私の知識だけじゃなくこの人の戦闘力が必要だ。今のところ協力的だけど、何を考えてるのか全然わからないのが逆に・・・・・。

 

 

 

・・・・・二人の友人を救助出来た。喜びを分かち合うところだが、現況は何も変わっていない。

寧ろ悪化したと言っていい。

 

「おいっ! アキラは助かるんだろうなっっ!?」

 

「二人とも大丈夫だと思います。でもできるだけ早く生理食塩水かスポーツドリンクを沢山摂取させて毒を体外に排出させないと」

 

「マジだな!? マジでアキラは助かるんだなっ!!」

 

民家の居間、そこで気を失ってる五人を抱え込んでしまったことが移動に際限されてしまった。

 

「・・・・・どうする?」

 

「すぐに医療施設へ行かないとダメです」

 

「・・・・・場所は?」

 

織部睦美は携帯を取り出して画面を見せつけて来る。

 

「医療施設は海岸線にあります。そこへ行けばもしかしたら生理食塩水があるかもしれません」

 

「んだったらすぐに行くぞ!! 何時までもここに居てもアキラは助からねぇっ!!」

 

「ここから離れるってんなら同感だね。この臭い所にはいたくないし」

 

満場一致で医療施設へ移動することとなり、千歳という少女は松岡歩美が背負い、蘇生した三人のうち二人は神野美鈴という女とリーゼント頭が背負い残りの一人はポニーテールが担ぐことになった。

 

・・・・・しかし、これから通り抜けようとする森は厄介極まりない蟲達がいることをまだ気づかなかった。

 

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