巨蟲列島   作:ダーク・シリウス

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オオスズメバチ

 

茉莉華side

 

 

辰野大島の状況がスタジオのモニターにリアルタイムで放送されている。私達が飛行機に乗る前にはいなかった巨大なスズメバチが人を襲って、島に残った織部さん達はその中で島の人達に必死で助けようとしていた。

 

「すごい大事件だ・・・・・」

 

Dさん以外の人達が映っているけれど、彼も一緒に行動している事は分かった。

 

「えー・・・ここで本日お越しいただいてくれた私立鳳翔高等学園の先生と女子生徒にお話を伺います。茉莉華先生。辰野大島にあのような人を襲う巨大生物がいることを認知していらっしゃいましたか?」

 

「直接見たのは今初めてです。しかし、可能性はあると確信していました」

 

「確信をしていらしたのですか? 理由をお聞かせください」

 

「いま動画には映っておりませんが、巨大生物を誰よりも見つけることに長けた男の子がいると告げたのです。彼の助言と蟲の生態に詳しい織部さんの知識で私達は生き残れました」

 

「では何故、その子達は先生と一緒に帰郷されなかったのですか?」

 

「あの子達の意思です。私はあの子達に託された今までの記録映像を当テレビ局に渡すことを約束しました。でなければ本土から遠く離れた島々の危険を伝えることが出来ません」

 

「ですが、教師として生徒を見殺しにするような・・・・・」

 

言いたいことは分かる。でも、それでも・・・・・! 足を動かして近寄ったテーブルを強く叩いて、見殺しと言った彼に向かって言った。

 

「辰野大島に巨大な蟲達がいることを知っていたのは私達のみでした。誰も信じてもらえない事実を知っていて、知らぬ振りをして何千何万人の島の人の命を見捨てる薄情者ではない子達です!! あなたはあの子達の気持ちを知らず、何を言うのですかっ!? 見殺しをするような行動をした私の気持ちをわかって言ってるのですかっ!? 発言を気を付けてください!!」

 

「も、申し訳ございません・・・・・」

 

委縮して頭を垂らそうと、そんなことしても現状は変わらない。事件は現場で起きているのだから。

 

 

 

首相官邸

 

 

その場に一堂に集まる防衛大臣、内閣総理大臣、外務大臣、官房長官、海上保安庁 長官、統合幕僚長 副総理兼財務大臣。

 

「辰野大島に昆虫と思しき巨大生物の出現はすでに世界各国に報じられている」

 

「ここは自衛隊が出動するしか他ありません。空飛ぶ飛行生物もいるわけですからミサイルで撃ち落とす以外、駆逐できませんぞ」

 

「怪獣映画ではないのだぞ。もっと情報を集めて調べるべきだ」

 

「既に多数の被害者が出ているというのに、現場以外どうやって情報を集めろと言うのだ」

 

「巡視船が二隻も音信不通だった原因、あの巨大生物だったのは本当だったのか・・・・・」

 

「それよりもここ本土にもあのような巨大生物がどこかに潜んでいる可能性は捨てきれませんぞ。もしも本当に実在しているならば市民に未曾有の危機が・・・・・」

 

「今は現に起きている大事件の解決に当たりましょう。とにかく辰野大島に陸上・海上自衛隊を派遣して生存者の救助活動を。海上保安庁の巡視船や可能な限り出航できる船を出すべきです。この事件は日本だけでなく世界にも及ぶ危機。全ての手段と方法を駆使して対処するのです」

 

「現地で今もなお危険も顧みず動いている少女から直接協力を求めよう。織部睦美さんの携帯に通信を」

 

日本のトップ達もこの大事件の危険性を重く受け止め、解決の為に動き始めた。

 

 

織部睦美side

 

私が持っていた携帯にアラームが鳴り震えた。連絡? 誰から? 千歳ちゃんかと思ってたけど、特殊災害準備室と名前が表示されていた。え・・・誰?

 

「もしもし?」

 

『織部睦美くんだね? 突然すまない緊急事態ゆえ特殊な操作で通信している』

 

「あの・・・どちらさまですか?」

 

『こちらは海上幕僚監部の弘原海だ』

 

海上・・・・・涼子さんの上官の人?

 

「涼子さん・・・海上保安官の識森涼子さんの上官の人ですか」

 

『海上保安庁“巡視船みの”の乗員だね。同じ乗員の猟友会の識森さんからキミ達の話は伺っていた。まず謝罪をさせてほしい。今までキミ達の救助を遅れて・・・。辰野神島に同型の巡視船を派遣したがそれきり連絡が途絶えて音信不通だったためにキミ達よりも巡視船の調査をしていた』

 

「いえ、そんな・・・・・」

 

『その結果が我々、海上保安庁のみしか情報を得ていない・・・巨大飛行生物の存在が明らかになった。そして調査のために派遣した船と乗員が襲撃を受け死者が出た』

 

・・・・・。

 

『すまない。今そんな話をしている場合ではないね。織部睦美くん。きみは巨大生物の知識があると伺っている。テレビではきみの先生と生存者の女の子が出演していて辰野大島の状況を見ている』

 

茉莉華先生と伊織さん・・・・・!!

 

『まずその島にいる生存者と巨大生物の情報を知りたい。可能な限り今知っている情報を提供してほしい』

 

「わかりました。お伝えします」

 

巨大化した昆虫のことはどう伝えればいいだろう。巨大化の原因もまだハッキリと解明したわけじゃないから・・・・・。それでも知っている事は全て話した私の携帯越しで弘原海さんは短く「そうか」と言った。

 

『確認だが・・・その巨大化になった昆虫は繁殖を繰り返すことは可能か』

 

「確実に増えます。そしてオオスズメバチのような長く遠くに飛行して移動できる昆虫は、日本だけでなく世界中にも進出することも可能です」

 

『世界の危機にも発展しうるか。早急に害虫駆除をしなければならない、ということなのだね』

 

「はい。辰野大島の住民の方々も昼夜問わず蟲に襲われて全滅するのも時間の問題です。鉄やコンクリートほどの硬度の建物を破壊する力を秘めておりますので、自衛隊の武器ではないと倒せません」

 

『わかった。こちらも何とか早急に動く。命の危険なのは承知の上だが、きみ達も可能な限りの生存者を守り安全な場所へ避難させて欲しい』

 

「長く時間は掛けられません。さらに数日を掛けると更に成長した蟲達の種類が増えて脱出が困難になります」

 

『まだ、増え続けると言うのか』

 

肯定の言葉で相槌を打って、早急な対応を乞うた。

 

「空からの救助活動はオオスズメバチが反応して襲い掛かります。ヘリコプターでの救助活動は危険すぎるので控えてもらえないでしょうか」

 

『そうなのか。船からなら大丈夫かね』

 

「船でも危険は伴いますが、人の姿が外から見えないよう隠れながらならば・・・・・」

 

『わかった。情報提供を感謝する。織部睦美くん。今どこで何をしているか教えてくれ』

 

「今はバスに乗っている人達と一緒に別の車でシンメイ製薬の研究施設に向かっています。そこを避難所としています」

 

『そうか。すまないがこのまま通信を切らずに現状の報告をしてほしい。出来得るならばテレビ電話に切り替えられるだろうか』

 

弘原海さんの要望に応えてテレビ電話に切り替えて、携帯のカメラを見ながら話す。

 

「これでいいですか?」

 

『感謝する。織部睦美くん。これからキミ達はどう動くつもりか教えてくれ』

 

「生存者を救出しつつ、脱出を試みます。その際、出来る限りですが巨蟲との遭遇の際は撃退・撃滅をするつもりです。すでに無人と化していた東ノ小島と辰野神島と違い、たくさんの人達がいるこの島の人達を助けたいです」

 

『無謀なことだと承知の上でか』

 

「私一人ではありません。皆もいます。協力し合って救助が来るまで頑張ります」

 

『くれぐれも気を付けてくれ。今は若いきみ達だけが頼りだ』

 

頼りにされている・・・・・私達が・・・・・頑張らないとっ。

 

「やっと着いた~! 一息付けたい~!」

 

ジュリアさんの声でシンメイ製薬の研究施設に着いたことが気付く。

 

「・・・・・織部睦美、小休止?」

 

「はいDさん。今もこの状況が放送されているなら島の人達は家の中で避難していると思います。ですが、救助するにも難しいと思います」

 

「・・・・・ハチ、夜、蟲、町に現れる」

 

「そうです。これから自衛隊の人がこの島に駆け付けてくれる話ですが、それまであのオオスズメバチをどうかしないと犠牲者が・・・・・」

 

ふむ、と顎に手をやって考え込むDさん。何を考えているのか待っていたら、遅れて車から降りた。

 

「・・・・・巣、捜索」

 

「私も協力します!」

 

とにかく今は休憩をしないと。島の地図も手に入れなくちゃ。

 

「あ、Dさん。茉莉華先生と伊織さんが行動してくれたようです。私達の行動を見守ってくれているみたいですよ」

 

「・・・・・ん」

 

親指を立てるDさん。先生達に向けてよくやったってことかな?

 

 

真美side

 

 

「よく無事に戻って来てくれたよ! キミたちの活躍はテレビで見ていた。生存者の救出なんてすごいじゃないか!」

 

凄く私達を褒める天宮さんに迎えられて、自分のことのように喜ぶ彼にバスの人達の保護を頼む織部さんに快く引き受けてくれた。

 

「食事はどうだい? 疲れただろうからゆっくり休むといいよ」

 

「ありがとうございます。小休止後、また動きますので休ませていただきます」

 

「偉いな~・・・・・そんなキミ達の行動に僕は感動したよ! 生存者の人達は僕達に任せてほしい!」

 

なんか怪しいわね・・・・・。ここの施設の責任者だから頼るしかないから疑っちゃあいけないけれど。ここまで避難してきた人達と宛がわれた部屋で休むことになった私達は、同じ部屋に集まってこれからの事を話し合った。織部さんから聞かされた話にはビックリされちゃった。

 

「あの巨大なスズメバチの巣を見つけるって、難しいっしょ」

 

「いえ、一応方法はあるのです。あるのですが・・・・・あの大きさだとかなり危険になってしまいます」

 

「小さいなら危険じゃないってこと?」

 

「ハチの巣を見つけるにはハチの習性を利用するんです。巣に帰るハチを捕まえて身体に人の眼でも追いかけられる目印として布を巻きつけるんです」

 

本当に小さいハチだからできる方法なのね。いまこの島に飛んでいるハチは大型バス並みにの大きさだから・・・・・捕まえる前提の方法は命懸けの危険だわ。

 

「眠らせる方法はないんか?」

 

「そういった方法はありません。ハチや巣の駆除の際は殺虫効果がある燻煙剤で使って駆除するんです。しかしそれでは見つけれませんので・・・・・」

 

そもそも蟲を眠らせる薬ってあるの? って思っちゃう。織部さんが知らないなら打つ手なしじゃない。でも彼は思い出してた。

 

「・・・・・気絶」

 

「気絶? ・・・あっ、ヤゴの時のことですか?」

 

「・・・・・捕獲、セミ取り」

 

「なるほど! あの方法なら確かにハチを捕まえることが可能です! 辰野大島にも漁業で使う大型魚専用の網もあるはずです!」

 

私と甲斐君も、ああっと納得できた。ハチを地面に誘き寄せたら張った網の罠を落とせば捕まえられる。一匹だけでもいいなら十分効果的じゃない。

 

「なら船におるお兄達に網を用意してもらったる。それぐらいはしてくれるやろうから」

 

葵ちゃんが携帯を取り出して船にいる人達に連絡を取った。彼女が親指を立てて協力してくれることが判った私達はすぐに行動を取った。

 

「ところで睦美ちゃん。どうしてさっきから携帯を持っているっスか」

 

「あ、えっと・・・涼子さんの上官の人とテレビカメラで繋がっている状態です。私達の様子と状況を伝えることになっていて」

 

「上官って海上保安庁の? 車の中で誰かと話していたのは聞こえていたっスけど今も?」

 

頷く織部さん。

 

「今この瞬間も日本だけじゃなく世界各国にもDさんが持ってきているカメラで生放送されていることから、協力を求められました。おそらく日本政府の方達も辰野大島の現状を知っていると思います」

 

え、それってもしかしなくても・・・・・。

 

「本当に自衛隊が来てくれるの?」

 

「おおっ、喜ぶのは早いけど期待が持てるっスね」

 

巨大な蟲に通用する武器を持っているならこの島は助かるかもしれない。その手助けになれるなら私も頑張らなきゃ。

 

「それじゃあ行くっスか」

 

「はい!」

 

「ええ、ハチの巣を早く見つけましょう!」

 

「辰野神島の二の舞にはさせへん!」

 

「・・・・・ん」

 

部屋を後にして今まで乗ってきた車じゃなくてバスで行くことにした。運転はバスの運転手さんにお願いして漁港へ出発した。涼子さんとおやっさん達の他にもジュリアさんと迫田さんも誘うかと話が挙がったけど、私達と積極的に行動するような人じゃないと思う、休ませようと言うDさんの言葉に誰も反対しなかった。代わりに峰岸さんを誘った。

 

「あの大型のハチを捕まえるだって!?」

 

「はい。最も効率的な方法はそれしかないんです」

 

「捕獲する方法は・・・・・あるから向かっているんだなどこかに」

 

「漁港に向かい大型魚専用の網を使って罠を作ります。オオスズメバチの真上から網を落とせば捕まえることが出来ます」

 

「それをする場所の目星は決めているのかい」

 

「まだですが、前回と同じ場所で試みるつもりです。その為にもバスの運転手さんに案内をお願いしてもらったんです」

 

正直、断られると思っていた。けれど協力してくれるなんて驚きだった。

 

「ありがとうございます。運転してくれて」

 

「君達がいなければ僕達は公民館で蟲の餌食になるところだったんだ。命の恩人でもある君達が僕達の島を何とかしようとしているなら、協力しなくちゃならないよ」

 

「・・・・・他者にいいこと、自分にもいいこと」

 

助けたらこっちにも助けてくれるって言いたいのかなDさん。でも、今までそうしてきたのだからこれからも何とかなるわよね。

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

漁港にバスが着いた。蟲はここまで来ていなかった。町の方と比べて安全だった。巡視船の近くに止めたバスから降りる。

 

「お兄ー!」

 

「おお、葵が来たで!」

 

船の甲板から無雲等が顔を出して船から降りてくる。

 

「網は用意できたん?」

 

「めっちゃ探したけどや、ちゃんと用意したで。セミみたいに捕まえるんならわしも手伝うぞ」

 

「私もや!」

 

「うん、ありがとう!」

 

協力者、二人追加。京介達も来た。

 

「状況は?」

 

「・・・・・辰野神島、二の舞、途中。自衛隊、来る」

 

「自衛隊、だと・・・・・」

 

・・・・・? なんか、ヤバいと表情になった。肩に担いでいるカメラを見てそうなった。他の人達も似た感じ。

 

「それは、生放送しているのか?」

 

「・・・・・多分、映っている」

 

 

首相官邸

 

 

「なんだ彼らは。銃を持っているじゃないか! どこの所属の者達だ!?」

 

「今まで音信不通だった“海上保安庁みの”の艦橋が、何かに巻き付かれたようにひしゃげているぞ」

 

「よもや、あそこまでできる蟲が巨大化しているとなればこれは一大事ですぞっ・・・!」

 

「可及的速やかに自衛隊を出動させるのだ。一刻の猶予もないと見るべきだ」

 

「はっ!」

 

 

 

 

「・・・・・網、収納」

 

「終わったっスよ。次は睦美ちゃん」

 

「ハチを誘き寄せるエサの準備です。特に甘い匂いがハチを誘うことができますが、これは私達にも危険が伴う作業です」

 

「・・・・・囮、ついで、エサ、やる」

 

「Dさん・・・・・ありがとうございます」

 

「エサか・・・・・。用意するのはいいが金はあるのか嬢ちゃんたち」

 

「「「・・・・・」」」

 

「・・・・・もらった。天宮、小遣い」

 

「よし、あるなら問題ないな。大人の俺達がいる前で堂々と盗みはさせねぇからな」

 

「かと言う俺達も金を持ってきてないから無一文だったぜおやっさん」

 

「そうですね。Dさんのおかげで助かりました。・・・・・今もスーパーが開いていなければ買えるものは買えませんが」

 

「「「「あっ」」」」

 

「4人とも、気づかなかったん!?」

 

・・・・・人がいる島のスーパー、初めて。盲点だった。

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