巨蟲列島   作:ダーク・シリウス

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アリの襲来

 

 

織部睦美side

 

 

私にカメラを持たせたDさんが・・・・・光に包まれて天使の姿になるのかと思っていた私の考えは、遥かに覆した。人の形を崩しながら巨大化していって、長い尾と二対四枚の翼を生やす巨大な別の生物と化した。これが、Dさん・・・・・?

 

「Dさん、ですか?」

 

『・・・・・肯定』

 

「その姿は一体・・・・・」

 

『・・・・・ドラゴン』

 

ドラ、ゴン・・・・・? あの、ドラゴン・・・・・? 困惑する私の体が勝手に地面から離れて浮き始め、巨大な手の上に載せられてもう片方の手で山の斜面をひっかくように削り始めた。程なくして氷の塊が露出してきて、削る幅をさらに広げたことでオオスズメバチの巣の全容が明らかになった。

 

「凄い、こんなに大きく巣を作っていたなんて・・・・・・」

 

『・・・・・数も多い』

 

氷漬けのオオスズメバチ達の姿がそのまま残っていた。蜂の子も含めて想像以上に多く、大きく成長していた。

 

『・・・・・戻る?』

 

「念のために女王バチの確認をします」

 

『・・・・・わかった』

 

私を氷の巣に置いてくれて探した。滑って転ばないように歩きいなかったら上下の巣の層に運んでもらった。そして懸念していた氷漬けの女王バチの存在は見つかったのでこれ以の繁殖はないと安堵した。

 

「見つかりました!」

 

『・・・・・戻る』

 

後は自衛隊に任せても問題はないでしょう。頭の上に乗せられたまま私はDさんと空高く飛んだ。この機に私は尋ねた。

 

「Dさん、あなたは一体何者なんですか?」

 

『・・・・・ドラゴンに転生した元人間。異世界から来た存在。信じなくていい』

 

「異世界・・・・・」

 

信じられない話だけれど、私は今、ドラゴンの姿になった彼の体の上にいる。この現実は決して夢でも幻覚でもない。海洋生物研究施設にはあっという間に着いて私を降ろしてくれた。

 

『・・・・・元の世界、いずれ帰る。いつか、別れる』

 

「・・・今までありがとうございました。Dさんのおかげで今の私達がいます」

 

『・・・・・貴重な体験』

 

確かに。お互い凄い体験をしましたね。

 

「―――な、なんスかこの生き物っ!?」

 

「あ、甲斐さん。Dさんですよ」

 

「え、Dさんっ? こんな姿にもなれるっスか!?」

 

「お、大きい・・・・・っ」

 

「―――――」

 

甲斐さんと真美さん、峰岸さんが外に出てきては今のDさんにびっくりしている。Dさんも元の人の姿に戻った。

 

「・・・・・ハチ、まだいる?」

 

「餌を求めて狩りに出ているオオスズメバチは少なくありませんが、もうこれ以上は増えることなく寿命で死滅します。どれぐらい生き続けるのか断定できませんが・・・・・」

 

「結構な距離を飛ぶんっスよね。まだ生きてる蜂を見つけ出すのは困難っしょ」

 

「もしも外国の方にまで飛んで行ったら探しようはないよね」

 

二人の言う通りです。だから他の蜂の捜索は自衛隊に任せるしかありません。

 

「しかし、空の脅威はもうないとも言えます。残りは地上の・・・巨大化した蟲達の方です」

 

「・・・・・G県、シンメイ製薬研究施設」

 

「本当に本土にも巨大化した蟲がいるのかな・・・」

 

「動画にUPされてた以上、間違いないっしょ。睦美ちゃんは本土に戻ったらどうする? やっぱり行くっスか」

 

戻ったら・・・私は・・・・・もしかしたらあの人も・・・・・。

 

バラバラバラバラ・・・・・!!

 

―――この音は。私達は空を見上げた。Dさん達も聞こえてくる音に釣られて空から降下してくる金属の飛行物体を視界に入れた。

 

「巨大な、蝶・・・じゃないよね?」

 

「今度は正真正銘の・・・ヘリコプターっスね」

 

「はい―――自衛隊が来てくれました」

 

でも、安心していいか分からない。飛行機墜落事故の生存者ではなく、人でもないDさんが拘束されてもおかしくない。私達の目の前で着陸したヘリコプターの扉が開き、迷彩服の防具と武器と装備を身に包んだ自衛隊の人達が出て来た。私達の方へ真剣な眼差しで近寄り―――。

 

「要救助者を発見。これより保護します」

 

保護・・・・・ふぅ、よかった。

 

「織部睦美さんだね。よく今まで頑張ってくれた。あとは自衛隊に任せてほしい」

 

「お願いします。オオスズメバチの巣は完全に凍り付いているので、これ以上の増殖はありません」

 

「凍り付いて・・・?」

 

まだそこまで情報が伝わっていない? 不思議に思った私を違う自衛隊の人が催促の言葉を掛けてきた。

 

「さぁ、ヘリに乗ってください」

 

「え、もう?」

 

「はい。あなた方は重要参考人・・・これまで未確認巨大生物と戦ってきた生存者です。政府からあなた方を優先的に発見・保護するよう要請を受けました」

 

自衛隊の人達は私達を囲み、ヘリコプターに乗ることを促して来た。涼子さん達と一言でも話をさせてほしかったのに・・・・・。後ろ髪を引かれる思いで私は甲斐さん達と一緒に乗せられ―――。

 

「・・・・・待て」

 

「えっ?」

 

Dさんの声に思わず動きを止めた瞬間。手の平サイズの動く蟲が私の足元に居て、それを鷲掴みしたDさんに見せつけられた。

 

「なんスかこの蟲?」

 

「アリっぽい?」

 

見せつけられるその蟲はまさしくアリでした。だけど、ただのアリではなく―――あり得ない、こんな所にこの蟲がいるなんて・・・っ!!

 

「サスライアリ!! 獲物を集団で狩りする南米に棲息しているグンタイアリの仲間です!!」

 

「グンタイアリの仲間って? 下を見たらたまに見掛けるあの黒いアリみたいな蟲でしょ?」

 

「このアリはただのアリではありません。毒を持っているアリなんです! 巨蟲化となった今・・・毒性も強まっていると思った方がいいです。一度にたくさん刺されると死ぬ可能性もあります!」

 

「毒っ!?」

 

驚く峰岸さん。でも、それ以上にとても大変なことがあるんですっ。

 

「施設へ逃げましょう! ここは危ないです! ここにすぐ数十万か百万という数のアリの群れが来てしまいます!」

 

「待ちなさい。私達の指示に従って―――」

 

「・・・・・予想、的中」

 

自衛隊の制止の言葉を遮ったDさんが見るヘリコプターの陰から現れた無数のサスライアリの仲間、ヒメサスライアリが私達の視界に入って来た。

 

「う、撃てっ!!」

 

自衛隊の一人の言葉に他の数名の自衛隊の人達が銃を乱射。でも・・・何百何千の相手に効果は薄く・・・・・!!

 

「うああああっ!?」

 

「た、助け・・・ぎゃあああああ!!?」

 

あっという間にヒメサスライアリに呑み込まれて自衛隊の人達が死んでしまった。悲しむ暇もなく逃げる私達はDさんが作ってくれた炎の壁によって守られ、研究施設へと避難した。それでも全部は足止めできず、施設内に入る私達をヒメサスライアリが追いかけて来た。

 

「嬢ちゃんどうすればいい!? あんな蜘蛛みたいに集団で襲われたら助からないぞ!!」

 

「とにかく今は施設に避難している人達に危険を知らせないと!!」

 

「その後は!?」

 

甲斐さんが不安げに訪ねて来た。

 

「Dさんの力で施設の外へ脱出したいところですが・・・ヒメサスライアリは本来、他のアリの巣に侵入して餌を確保し、逆にそれ以外の餌はほとんど狙わないアリなんです」

 

「今さっき滅茶苦茶人を襲ってたスけど?」

 

その疑問は最もです。私も人を襲う光景を見るまでは・・・・・。

 

「体が大きくなってしまったために、他のアリを餌にするには小さすぎて確保できなくなったのかもしれません。なのでアリ以外のエサを求めて移動してきたのだと思います」

 

「・・・・・数、数十、百万、事実?」

 

グンタイアリを例えとして言わせてもらうしかありません。

 

「はい、数十万から百万匹はいます。しかもグンタイアリのようにサスライアリは、お互いの身体を繋ぎ合わせて架橋や梯子として仲間のアリの移動の手助けとなったり、即席の巣を作ってしまう凄さを有しています」

 

巨蟲化した蟲の中では極めて危険な一種の蟲が、巨大化の影響を受けていたなんて・・・・・。

 

「待って、それじゃあまだ生存している街の人達まで危険じゃ!」

 

「・・・はい、逆に家の中で引き籠っていても襲われる可能性が高いです。だから・・・!」

 

肩に担いでいるDさんのカメラに向かって叫んだ。

 

「島の皆さん。どうか可能な限り家の外と繋がっている穴や隙間などがあったら塞いでください! もしくは窓をしっかり閉じて車の中で避難してください! 自衛隊の皆さんは銃ではなく火炎放射器などのような武器が推奨です!」

 

 

海洋生物研究所―――屋上 PM12:00

 

 

「こんなところでのんびりとタバコ吸ってていいんすかねぇ」

 

「どうしようもないんだからしょうがないだろう。どうせ俺達は救助されるのは後だろうからよ」

 

「リーダーも人使いが荒い。こんな時にでも仕事を続けろと言うんだからな」

 

「もう頓挫したような計画をまだ諦めないのも何となくわかるがな」

 

「あんなに巨大化したカニを見たら、研究を続ける価値があるって。・・・ん? うわっ!?」

 

「どうした? 何を驚いて―――。なっ!?」

 

「な、なんだこの蟲はっ!? 何時の間に屋上に集まって!?」

 

「ヤバい、逃げるぞっ!!」

 

「ま、待ってくれぇ!?」

 

「う、うわあああああああああああああ!!」

 

 

 

甲斐side

 

Dさんの別々の空間を繋げる不思議な力で、施設に避難している人達のところへ瞬間移動した。おやっさん達に外の状況を説明したら案の定騒ぎになった。

 

「睦美ちゃん。あのアリの大群をやり過ごす方法とかないスか?」

 

「アリは視界が殆んど見えていないので、お互いに放つフェロモンというもので情報を共有します」

 

「フェロモン? それをどうにかできれば何とかなるの?」

 

「はい。私達で言う臭いなので、その臭いを消せればアリの動きを鈍くすることができます」

 

臭いを消すか・・・・・。

 

「臭いなら水でもOKスか?」

 

「大丈夫です。何か考えが?」

 

と言うより、他力本願っスね。Dさんを視界に入れ俺を見て、睦美ちゃん達も納得した。

 

「Dさん。アリ達を水で何とかできるっスか?」

 

「・・・・・可能」

 

困った時はDさんに頼るのが一番っスねぇー。

 

「織部さん。それでアリの脅威はなんとかなりそう? ハチみたいに巣を壊したら?」

 

「ヒメサスライアリは軍隊のように特定の巣を持たないのです。ハチのように簡単には・・・・・」

 

「ってことは、移動しながら数を増やすアリの倒す方法はないってことっスか?」

 

睦美ちゃんは難しい顔で、一つだけあると言った。

 

「巣を持たないと、先程も言いましたヒメサスライアリは即席の巣を作ります。その瞬間を狙えば女王アリも倒せて数も増やせなくすることができます」

 

数十万以上もいるアリの巣をっスか・・・・・。

 

「Dさん。一撃でヒメサスライアリを凍らせること可能ですか?」

 

「・・・・・一塊、可能」

 

おおっ、希望が見えた! なら、まずこれからとるべき行動は―――。

 

「・・・・・異常事態」

 

「え?」

 

「・・・・・屋上、アリ、侵入」

 

Dさんが突然いま最も最悪な展開になっていることを告げた。屋上からアリが侵入!?

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「そんなっ、じゃあここはもう安全な場所じゃなくなったってことだよね!?」

 

「完全に俺達はアリに囲まれた餌になったっス・・・・・」

 

「ここには生存者も多数いるぞ。蟲の餌食になってしまう」

 

せめての救いは、アリが天井や壁、床下から穴を開けて入って来られないことだけ。さて、これからどうする?

 

「坊主。俺達を巡視船に移動させることは?」

 

「・・・・・可能」

 

論より証拠とばかり、巡視船が停泊している漁港の光景を見せる大きな空間の穴ができた。先にDさんが穴の中を潜れることを実演し、俺達も潜ればおやっさん達も潜り、生存者の人達も恐る恐ると潜って漁港に移動した。一先ず安心と思った矢先に―――俺達がいる漁港にも死の行列が迫って来た。

 

「嘘でしょっ、ここまできてたの!?」

 

「急いで船へ乗ってください!!」

 

「・・・・・燃やす」

 

腕を横に振るDさんに呼応して地面が燃えだしてアリ達の進行を遮った。近づけなくなった隙に急いで船に避難して、甲板に飛び乗ったDさんが船を動かして漁港から離れた。

 

「ふぅ・・・これで蟲に襲われる心配は無くなったのだね?」

 

「天宮さん・・・いえ、油断できません。数多のアリの種類の中には集団で水に浮いて別の土地へと移動するアリが存在します」

 

「つまり・・・あのアリも海に浮いて襲ってくると?」

 

「大丈夫です。ヒメサスライアリは出来ません。しかし、警戒するに越したことじゃないんです」

 

巡視船は十分な距離まで離れ、そこで止まった。

 

「・・・・・見て来る」

 

「私も一緒に行かせてください」

 

「俺もだ。撮影させてくれ」

 

「何もできることないだろうけど、私も・・・」

 

睦美ちゃんと真美ちゃんは当然として峰岸さんも同行を求めた。あ、俺もっス。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・数十、百万という数は伊逹ではなかった。辰野大島を呑み込まんとする蟲の気配が鉄砲水の如く動いて街を襲っていた。一つの建物が見えなくなるほどアリに覆われているほどだ。

 

「と、とんでもないっスねコレ・・・・・」

 

「町が呑み込まれて・・・・・悲鳴も聞こえる」

 

「巨蟲達も逃げている・・・・・」

 

アリの数の暴力には敵わない、本能的に感じた蟲達がアリから逃げ惑っている。

 

「こりゃあすげぇ・・・・っ」

 

カメラを構えている峰岸が戦慄しながらもどこか興奮している。俺達は空からその光景を見下ろしていた。織部睦美達には分裂した分身体=四肢型の龍の背中に乗ってもらっている。

 

「・・・・・どうする?」

 

「どうしようも・・・できません。嵐が去るのを待つのと同じです」

 

嵐が去る・・・・・今、嵐が直撃しているような、もの・・・・?

 

「・・・・・嵐と嵐、ぶつけ合う?」

 

「Dさん、それはどういう意味ですか?」

 

「・・・・・天候、操作」

 

ぎょっと目を見開く織部睦美。本当に出来るのかと半信半疑をしているかもしれない。

 

「できる、のですかDさん?」

 

「・・・・・始める」

 

「・・・・・お願いします」

 

一人、宙に浮いていた俺は天使の姿に変身して天に向かって手を衝きだす。晴天の空は次第に灰色の雲に覆い隠され、雷雲が発生、暗くなった辰野大島に―――一滴の雫がポツと落ちたのを呼応して大量の雫が雲から降り注ぎ豪雨と化した。

 

「・・・・・雷雨」

 

次に雨と共に千の雷が辰野大島に落雷。水に濡れた巨蟲達は感電死、感じる気配が急激敵に減少。

 

「・・・・・大竜巻」

 

風の気流を操り、大竜巻を起こす。交通に邪魔な車と主に森の方へ集中させて潜んでいる蟲を巻き込む。車と蟲がぶつけあい倒しておく次いで、巨大な火炎球を作って公民館の方へ投げて隠れていた蜘蛛達を建物ごと焼失。

 

「・・・・・終わり」

 

大量に感じ取れたアリの気配、ほぼ無くなった。操っていた天候を晴天に戻して振り返る。

 

「・・・・・お終い」

 

「は・・・はい・・・・・」

 

「ハハハ・・・・・やっぱ、Dさんについて正解だった」

 

「凄すぎて言葉が出ないわ・・・・・」

 

「・・・・・マジか」

 

濡れないよう結界を張っていたから少しも濡れていない織部睦美達。何故か呆然としていたけど終わりが良ければ全て良し。

 

 

 

首相官邸―――。

 

「天候を、操ったというのか?」

 

「当局にも問い合わせて訊いたところ、異常な気象であるようです」

 

「あの者は一体何者だ・・・・・」

 

「そもそも彼等が乗っている物体も一体何なのだ。総理、対応は如何致します」

 

「民間協力者達に介して話を伺います。下手にこちらから警戒させるような言動をしないよう自衛隊に伝えてください。彼も要救助者の一人として扱います。慎重にお願いします」

 

「はっ」

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