巨蟲列島   作:ダーク・シリウス

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生存者合流

織部睦美side

 

Dさんがヘビトンボと戦っている間に非常食と飲料水をカーテンや寝台の布で包んだり鞄に入れたりと準備をする。準備が整えば明朝に出発するけれど外がやけに静かだ・・・・・Dさん、大丈夫かな。

 

「睦美ちゃん睦美ちゃん」

 

「甲斐さん?」

 

「ジガバチの巣から助けた二人だけどさ~、中々手に負えないんだけどどうする? 生餌にされたことがトラウマになってるっしょ」

 

伊能さんと白川さんが対応してくれてるようだけど、やっぱり精神的に話が出来る状態じゃなかったみたい。

 

「俺的にあんな二人も連れていくことは反対だよ。お互い確実に虫の餌食になり兼ねないことを仕出かすかもだから」

 

「・・・・・」

 

「この島の情報ならあの女の人だけでも十分っしょ。今は何とか落ち着いてくれているから連れて行ってもあの二人よりマシ的な意味でいいけどさ」

 

リーダーとしてこの判断をしなくちゃいけない。助けられるなら助けたい。でも、全員は無理なのはわかっているつもりだ。だけど・・・・・。

 

「連れて行きます」

 

「・・・マジで?」

 

「Dさんが放っておくような人とは思えないの。途中で犠牲になってしまったら諦めるしかないけれど」

 

「そっか~。ま、睦美ちゃんとDさんと行動した方が正解だから俺は何が何でもついて行くよ~。俺にできることがあれば、死ぬようなことや無謀なことをされない限りは何でもするつもりだしね」

 

ありがとうございます。甲斐くんに頭を下げて感謝する。頭を上げたところで甲斐さんが違う方へ視線を送っていた。

 

「Dさん、おっ疲れっす。倒してくれました?」

 

「・・・・・支配した」

 

「し、支配?」

 

虫を支配・・・・・? 人が虫を使って虫同士で戦わせる技術はあるけれど、支配だなんて・・・・・。

 

「ヘビトンボを支配して、どうするんですか?」

 

「・・・・・虫同士、戦わせる。囮、する」

 

「うわぉ~・・・・・シビレることをやってくれるねDさん。因みに乗れちゃったりできたり?」

 

「・・・・・できる」

 

この瞬間、不謹慎ながら虫に乗って飛べるというワクワクしてしまった。それに乗った状態から索敵も出来るから生存率がぐんと上がる。

 

「・・・・・そっち、問題」

 

「意識を取り戻した二人が、ここに残るって一点張りっす。睦美ちゃんは連れて行くって判断してますよ」

 

「・・・・・リーダー、望み?」

 

「はい。ダメですか?」

 

「・・・・・構わない」

 

彼は私達から離れ伊能さんと白川さんの方へ歩み寄り、二人の間に入りトラウマを抱えてる二人に対して顔面を掴み、どうやってだかわからないけれどスタンガンみたいに電撃を放って強制的に気絶させた。彼の行動に皆は愕然として場が静まり返った。

 

「睦美ちゃん、Dさんはやっぱり色々な意味で凄いっしょ」

 

「うん、確かに・・・・・街に戻ったら詳しく教えてほしいかな」

 

その後・・・確保した非常食と飲料水を背負う私達の筈が、今の内に次の避難場所へ移動する私達が外へ出ると大きな幾つものの瓶の中身を食べ終え、満足そうなヘビトンボとその上に乗っているDさんがいた。

 

「む、虫がいやがるじゃねぇかよっ!? どうして殺してねぇんだ!!」

 

「・・・・・支配、従わせた」

 

「Dさんがこの虫を俺達に襲えなくしたんだってさ。いやー凄いっしょ!」

 

「それ、本当に言ってるのか? とても信じられないぞ」

 

半信半疑な皆の気持ちを一つにさせるにはどうすればいいか。Dさんはそれを知っていた。私に向かって手を伸ばした。私は彼を信じることで手に取り、ヘビトンボの身体の上に乗ってDさんの前に座った。凄い、こんなにまともに巨大化した蟲を触ったのは初めてだ。

 

「・・・・・飛ぶ」

 

短い命令でもヘビトンボは四枚の翅を羽ばたかせ、Dさんの指示に従って私達を乗せたまま宙に浮いて空へと飛ぶ。す、凄い・・・・・っ!

 

「・・・・・リーダー、騎乗」

 

「わ、私でも従わせることが出来るんですか?」

 

「・・・・・誰でも。でも、俺から遠ざけない、支配、解ける」

 

それでもとても凄いことだ。蟲の力を意のままに行使できるなら脱出も夢じゃない。問題があるとすればヘビトンボ以上に巨大化した蟲との遭遇だけれど、私の知識とDさんの戦闘力があれば何とかなる!

 

皆のところへ戻り、私達の無事を認識させヘビトンボは私達の言うことを利いてくれる状態だと話を伝え、私が騎乗することも納得してくれた。ただ、他の皆も従わせることは言えなかった。Dさんに釘を刺されたからだ。ヘビトンボを使ってこの島から脱出しようとする人がいてもおかしくない、その先の未来が自滅故に。その後。Dさんの不思議な格納庫に入れてもらったおかげで当初の移動速度の懸念が解消された。

 

そして私個人的に嬉しい事が起きた。それは朝日が昇り始めた頃。

 

「睦美・・・・・」

 

「千歳ちゃんっ!」

 

意識を失っていた私の親友が、目を覚ました!

 

「痛えよ、おいっ、ブラザー」

 

「ア、アキラァアアアアアアアアアッッ!!!」

 

上条君の友達もレウコクロリディウムに寄生されたままだったら、ヘビトンボの餌食になって死んでいた。Dさんのおかげで上条君は大事な友達を失わずに済んだ。

 

「・・・・・行く」

 

「はいっ!」

 

私達は必ず生きて帰ってみせる!

 

 

 

 

ヘビトンボの襲来で医療施設を後にする前。

 

「みなさん―――これだけは絶対に守ってください。生水や火の通ってない現地調達食糧は口にしないでください。アキラさんはレウコクロリディウムに寄生されていました。生水や木の実の表皮から体内に入ったと思われます。絶対に口にしないでくださいお願いします」

 

「え、マジかよ。確かに生水飲んだけど寄生されていたのか俺」

 

「嘘言ってんじゃねぇぞ虫女っ!?」

 

「それが嘘じゃないんだよねぇ~。Dさんが寄生虫を取り除いてくれなかったら確実に死んでたね」

 

「うん、君が生理食塩水を取りに行っていた間にDさんが寄生虫の存在をいち早く気付いたんだよ。取り除いた方法は・・・・・アレだったけど」

 

あの場にいた全員が自分達が証人であることを告げ、坊主頭は居た堪れない感じになった。

 

「あんたが? だったらマジ感謝だわ。巨大バチから救ってくれたのはアキラだとしてもよ」

 

「・・・・・坊主頭、感謝」

 

「そりゃあ勿論だ。何んせアキラとはブラザーだからな」

 

「・・・・・兄弟?」

 

「血の繋がってない友情的な意味でな」

 

そう言う意味の兄弟・・・・・珍しい。ならば、あの二人も・・・・・?

 

「・・・・・友情的な、姉妹」

 

「違いますよDさん。千歳ちゃんとは親友の関係です」

 

「ま、仮に本当の姉妹だったら私がお姉ちゃんだろうね」

 

・・・・・似合わない。

 

「・・・・・リーダー、注意事項、終わり?」

 

「あ、えとっ。これから私達は再び山の中を歩きます。もしも虫と遭遇しても絶対に一人で逃げないでください、私とDさんからも決して離れず逃げず固まっていてください。でないと生き残れる確率がぐんと下がってしまいます」

 

「・・・・・そうした奴、助けない、勝手に虫の餌、身代わり」

 

俺も付け加えさせてもらうと、坊主頭が言い出す。

 

「ひでぇ奴だな。堂々と俺達を見殺しにする発言を言いやがったぜ」

 

「いや、俺も自分が生き残るなら見捨てるね」

 

ドレッドヘアーが同意することを言う。我が身が可愛い人間はいない筈がない。

 

「しかも、これまで二人の活躍を間近で見ていて知っているのに、大量の蟲の襲撃に恐れなして勝手に逃げる奴の方が大馬鹿っしょ。睦美ちゃんとDさんのツーコンビと行動していれば確実に生き残れる方法を伝授してくれるのにねぇ~」

 

「・・・・・話し、終わり、他の生存者、合流、その後、最後の避難場所」

 

以降、山の中を歩いて行動を開始。ヘビトンボを飛ばして上から先導する織部睦美。巨大昆虫の羽音と存在は他の蟲にも伝え、遠ざけ、警戒させる。

 

「なぁ、虫を支配できるなら襲ってくる虫全部、支配すればいいんじゃねぇのかよ」

 

「・・・・・虎の威を借りる狐」

 

「言い換えれば、虫の威を借りる人っしょ」

 

「確かに・・・あんな強そうな虫は他の虫が避けそうだわ」

 

「こ、これで僕達に襲ってこないんだよね?」

 

・・・・・絶対ではない。断言できない。恐れない虫も必ずいる筈、上空からの索敵できる目が出来ただけで襲われない理由にはならない。

 

「あの、Dさん」

 

鳴瀬千歳、織部睦美の親友が話しかけてくる。

 

「どうして虫が巨大化したと思います?」

 

「・・・・・医療施設、地下、ホルマリン漬けの巨大生物、人工的」

 

「人工的、人の手で意図的に巨大化されたと?」

 

「俺とDさんの間では今のところそう結論してるんだよね。化学薬品か何かで虫達が巨大化したんじゃないかって。そんで、それに政府が関わっているかもしれないと」

 

信じられないと目を張る鳴瀬千歳。

 

「政府が、どうして?」

 

「理由が判ってもどうしようもないっしょ。相手は絶大的な権力を持つ大人達、まだ未成年の俺達の言動なんて子供の妄想だと片づけられるだけ。―――そう、口だけだったらねぇ~~~?」

 

地下で得た物的証拠、ドレッドヘアーと共に探して回収した。これからも回収し続け救助船が来たら日本へ持ち帰る。

 

「・・・・・」

 

人の気配。

 

「・・・・・他の生存者」

 

「え、どこ?」

 

「・・・・・遠い、近づいてくる」

 

「このまま移動すれば会えるってことですね?」

 

首肯する。上空からヘビトンボが降りて来る。織部睦美が3分ごとに降りて来る決まりを守った。

 

「Dさん、問題は?」

 

「・・・・・遠い、他の生存者」

 

「どこにいますか?」

 

いる方向に指す。彼女は一足早くヘビトンボで先に向かって行った。・・・・・怖がらせる、気づいてない?

 

「野沢先生達が近づいていますか?」

 

「・・・・・二人、少女」

 

「生徒だけこの危ない島の中を? なにを考えて・・・・・」

 

「・・・・・食料探し」

 

「生水や火が通ってない現地調達食糧は危険だという、織部さんの話が本当だったら彼女達も寄生中に寄生されてしまう恐れがあるんですよね」

 

生水はともかく、生で食べなければ逆に問題ないという話。

焼いてから食べるつもりなら寄生されないだろう。それでも危険が迫っているのは変わらない。

 

「・・・・・少し、速度、上げる」

 

「わかりました。皆さん、移動の速度を速めます。気絶している人の運搬は別の人に代わってもらいなさい」

 

この中で遅れそうな小太りとツインテールの少女を脇に抱え、行進の速度を速める。

 

「おいアツシ、代わってやろうか。疲れてるだろ」

 

「うっせっ! 病み上がりは置いて行かれねぇことだけ考えてろ!」

 

「毎回毎回、アタシに荷物運びさせやがってっ」

 

「しょうがないだろ。起き上がったばかりの鳴瀬は任せれない。私とお前ぐらいしか背負えないのだから文句を言うな。それにあの人は両腕で二人を抱えてるんだぞ」

 

それなりに早く行動して時間がしばらく経った。三人がいる気配を感じる場所へ移動中に黒い大きな影が上を通り過ぎた。

 

「い、今のはっ!?」

 

「・・・・・アゲハ」

 

キャアアアアアアアッ!!!

 

悲鳴が上がり、声も直ぐ近く。中城茉莉華へ視線を送り、意図を察してくれたので更に行動を速める。うっそうとした草木の中を駆け、抜け出すとヘビトンボを駆使する織部睦美と彼女に守られてる一日ぶりの再会した二人の少女。更に彼女達を群がる別個体の3匹のミヤマカラスアゲハ。脇に抱えてた二人を置いて燃える足でミヤマカラスアゲハへ飛び掛かり、一匹を燃やしもう一匹はヘビトンボの大あごで両断されたことで身の危険を覚えた最後の一匹は逃げた。

 

「Dさんっ!」

 

「・・・・・お疲れ」

 

「いえ、この子が相手になってくれたので」

 

ミヤマカラスアゲハの体液をすするヘビトンボへ視線を送る織部睦美。後からここに集ってくる中城茉莉華達の姿に救われた二人は感涙する。

 

「ま、茉莉華先生!」

 

「宮園さん、鈴木さん!」

 

青山望も二人と交じり抱擁する。坊主頭が知らない顔だと風に問う。

 

「誰だアイツら」

 

「片方は俺と柘、青山さんと同じクラスの宮園恵美子さんだ」

 

「もう一人は僕と白川さんと同じクラスの鈴木香代ちゃんだよ。ねぇ、キミ達は2人だけなの?」

 

ドレッドヘアーとポニーテールが同じクラスメートだといい、ポニーテールの質問に中城茉莉華は否と答える。

 

「他にも居ます。ですが何故あなた達は別行動をしているのです」

 

「私達・・・陸上部で足が速いから食糧を探しに出たんです」

 

「そうですか。ですが、もうその必要はありません。食料は私達が見つけました」

 

「本当ですか!?」

 

「じゃあ野沢先生達と合流しましょう!」

 

否と答える理由がない。二人の他にも居る生存者達がいる所へと案内してもらうと、ジガバチが巣にしていた別の民家の場所に辿り着き、その内の一軒家へ向かった。

 

「コッチです」

 

「みんなっ! 帰って来たよ!」

 

民家に向かって叫ぶ宮園恵美子の声から直ぐ扉が開き、中から数人の男女が出て来た。昨日、初めて出会ったメンバーが一人も欠けずにここで避難していた様子。

 

「先生、宮園も無事だったか」

 

「箕輪くん!」

 

生存者の中で巨躯を誇る男子と青山が喜びを分かち合う。次にこっちを見て来る。

 

「アンタも無事だったんだな」

 

「私達がここにいるのは大半が彼のおかげです。箕輪くん、私達が彼を信用しているように彼を信用する私達に信用してください」

 

「わかりました」

 

箕輪、と呼ばれた男子から改めて握手を求められた。それに応じてると。

 

「ねぇ、お食事は見つかったのかしら?」

 

「へぇ、可愛い子がいっぱいになったねぇ」

 

そう言う男女に坊主頭が呆れた風に吐露した。

 

「なんだこのシャバイ連中は~? よくこれで生き残ってこれたな~」

 

「ホントだよ」

 

・・・・・実際、同感だ。どこかお嬢様風な感じを伺わず女子が坊主頭に向かって指した。

 

「この馬鹿を連れてきたの誰? 食べられそうにありませんけど」

 

「てめぇ!! 誰に向かって言ってんだ」

 

「五月蝿いわねぇ。静かにしなさいよお前達」

 

民家から最後の1人、もう1人の教師が出てきた。中城茉莉華を見るなり口の端を吊り上げた。

 

「これはこれは中城先生じゃないか。よくご無事でいたもんだね」

 

「それはこちらの台詞です。彼の言う通りにこの場所を見つけたのですね」

 

「どうやらそっちも生存者を多く見つけたみたいだね。あの時の言葉は本当だったとはねぇ~」

 

俺を一瞥、青山望に蛇のごとく視線を注いだあと、食糧を探しに行っていた2人へ寄る。

 

「で、食糧を見つけずにのこのこと中城先生達と帰ってきたわけだ?」

 

「それは違うわ。野沢先生達と次の避難先へ行くために案内してもらったのです。Dさん、彼女達に食糧を。私達もしばらくここで休憩しましょう」

 

亜空間から非常食と飲料水を詰めた鞄を取り出して箕輪剛に渡す。

 

「わぁっ! 食糧と水がこんなに!」

 

「どこでこんなに見つけたので?」

 

「俺達は医療施設に避難していたんだ。そこから大量に見つけたんだよ」

 

「ほー? さぞかし立派な建物だったんだろうな。でもなんでそこから離れたんだよ?」

 

「そりゃ、虫が壁に突っ込んできて施設が壊れたんだよ」

 

嘘を言っていない坊主頭の発言から顎に手をやって考え込む仕草をする野沢という女性は、次にこう言い出した。

 

「一部だけしか壊れてないならその施設はまだ使えるってことになるな」

 

「とても人の手では穴を塞ぐことはできない大きな風穴ですよ野沢先生」

 

「施設にあるもん全部積み上げていけば問題ないだろーう? こんなに男手がいるし、何より箕輪くんがいる。自動販売機があるならそれで塞げばいい。小さな穴は布か何かで詰めれば小さな虫も入ってこれないでしょ」

 

一利はある。・・・・・でも、首を横に振る俺と織部睦美も否定的に首を振った。

 

「ダメです。虫は小さな隙間からでも入ってきます」

 

「・・・・・顎の力、強い虫、鉄を切断する」

 

「はぁー?? 私の言うことは間違っているって言いたいのか」

 

・・・・・論より証拠、隠していたヘビトンボを指で鳴らして空飛ぶ巨大な虫の姿を見せつけた。

 

「・・・・・挟む」

 

木に向かって指示を出す俺に従い、降りて一本の木を丸ごと大あごで挟み切断する。

 

「「「「「・・・・・」」」」」

 

「野沢先生の言う通り壁を物で塞ごうとしても、穴が開いている以上はそこから私達の想像を超える力で屋内に侵入して私達を襲ってきます。それでも良いというならば、医療施設へ案内します」

 

木を切断した大顎を持つヘビトンボに恐れ戦き、顔から血が引いている野沢。他生徒も似た表情を浮かべていた。

 

「せ、先生・・・・・襲ってこないんですか・・・・・?」

 

「大丈夫です。Dさんが支配している間は私達の力になってくれています。このヘビトンボに乗って空からの偵察も可能にしてくれてるわ」

 

「ほ、本当ですか?」

 

「ええ、こういうことができるDさんと虫の知識を得ている織部さんがいるからこそ、私達は一人も欠けずに安全な場所と大量の食糧を発見できたのです」

 

自慢話みたいに言われることよりも中城茉莉華の肩を叩く。

 

「・・・・・立ち話、休憩」

 

「そうですね。では、小休止をしましょう」

 

彼女の指示で雰囲気が緩んだ中、幾つものの民家に視線を送る。

 

「・・・・・周囲の民家、調べる」

 

「あっ、僕も手伝いましょうか? 虫がいないなら手分けして探せますよ」

 

「あの、私もいいですか?」

 

ポニーテールと青山望が同行を求めて来る。好きにすればいい、とヘビトンボを休ませる指示をしてから足を運ぶ。近いところから家探し、虫の気配なし、三人で捜索して最初の民家で見つけた物資は縄と古紙程度。

 

「・・・・・縄、使える」

 

「どんな風にです?」

 

投げ縄、と教える。

 

「・・・・・縄より蜘蛛の糸、強度が強い、手に入れてみたい」

 

「きょ、巨大蜘蛛・・・・・いるんですか」

 

「・・・・・不思議ではない」

 

次の民家・・・・・虫の気配なし、隅々、調べた。見つけたのは鉄の棒、大きいスコップ。

 

「・・・・・武器」

 

「ないよりあった方が安心できますね」

 

「僕たち女子に使える武器はないけどねー」

 

次の民家・・・・・虫の気配なし、物資を探した結果、まだ使えそうな方手持ちのカムコーダというビデオカメラと予備のバッテリーに亜麻袋。

 

「ここにビデオカメラがあるなんて、バッテリーってあります?」

 

「・・・・・ある、録画、できる」

 

「じゃあ、この島の出来事を撮影できますね」

 

有力な証拠になるかもしれない。誰かに撮影してもらうとして、

次の民家へ足を向けた・・・・・。

残りの民家の中にあった物資は、めぼしいものは無く皆がいる方へ戻る。

 

「お帰りなさい。何か見つけました?」

 

「・・・・・それなり、これからは?」

 

「はい、医療施設に戻らず当初の目的地に向かうことになりました」

 

「・・・・・注意事項」

 

虫に対する経験がない人間がいる。俺の意図を汲んだ織部睦美は野沢達に伝える。

 

「巨大な虫と遭遇した場合は絶対に動かず叫ばないでください。私達が発する音や声に反応して襲い掛かる虫が沢山います。この島にも必ずいますからどうかお願いします」

 

「巨大化したってたかが虫でしょ? こっちから攻撃すれば簡単に殺せるんじゃない」

 

「・・・・・ヘビトンボ、戦ってみる?」

 

野沢にそう言うと押し黙った。

 

「野沢先生、この島にいる虫は私達を簡単に捕食してしまう虫ばかりです。油断すればあっという間に死にます。ですから虫に刺激を与える言動は絶対にしてはならないのです」

 

「はいはい、わかったわかった。それをしなければいいんだろ。ていうか、そう言うことなら今から港に行って救助を待たないのかよ」

 

山の中より安全なのは否定しない。最悪、海の中に飛び込めば虫も襲われないでいられる。が・・・・・。巨大化した蟹の存在に海中も巨大化した生物がいる懸念が芽生えてる。

 

「Dさん、どう思いますか?」

 

「・・・・・どこにいようと、危険」

 

「つまり~これから向かう避難先に行く危険も港へ行く危険も変わらないってことっしょ?」

 

肯定と頷く。

 

「・・・・・山中行き来、長時間、二度の虫の危険、安全な場所アリ。・・・・・港へ短時間、一度だけの危険、安全な場所不明、最悪ない、野宿」

 

思い浮かべれる可能性を口にする。一同の賛否両論の声が飛び交う。

 

「の、野宿だけは絶対にしたくないですわ!」

 

「二度も虫に襲われる危険性があるってのもな。一度で済むなら・・・・・」

 

「でも、Dさんと織部さんがいるなら虫に襲われても助けてくれるから、建物がある場所に行きたい」

 

「港にもあるだろう建物。漁業しているならそこに大量の船があるって」

 

「そもそも船なんてあるのかよ? 多くの島民の人達が脱出したのなら残っているとは限らないぜ」

 

「逆に船を持っていても脱出しなかった人間もいるだろう」

 

「船があっても鍵が無いと動かせないんじゃ?」

 

口を開けば賑やかになる。三人寄れば文殊の知恵、それ以上の考察が繰り広げられ収拾がつかなくなる。

 

「・・・・・」

 

思いっきり手を叩いて鳴らした音に、全員が会話を止めた。

 

「・・・・・少人数、調べる。確認したらここに戻る。織部睦美」

 

「はい、私もそれがいいと思います。今度は私が空から港まで―――」

 

「私も行って確認してやるよ」

 

織部睦美の言葉を遮る声。野沢がそう言い出した。

 

「え、野沢先生?」

 

「ずっとここにいるのも暇なんだよ。たまには生徒を指導する教師として動かないと印象が悪いし? 先輩が生徒たちとここまで導いたんだから私もしないとダメって感じがするからねぇ~」

 

「・・・・・」

 

言いたげな表情を浮かべる中城茉莉華の視線を気付いても態度を変えない野沢。

 

「あの虫で行くなら3人ぐらい乗っても大丈夫だよな?」

 

「3人ですって?」

 

「最低でもそのぐらいの人数なら、何かを見つけることが出来る筈だからですよ先輩。何かおかしなことを言ってますかねぇ?」

 

ニヤニヤと相手をからかうような笑い方をする彼女から、俺に視線を送ってくる中城茉莉華。

 

「・・・・・一理ある」

 

「ほうら、私は何もおかしなことは言ってませんよ?」

 

「・・・・・3人目は誰なんです」

 

「青山望」

 

ビクッ、と身体を震わせる少女がいた。

 

「理由は?」

 

「3人目は誰でもいいなら構わないでしょう? 特に深い理由なんてありませんよぉ~」

 

「・・・・・青山さん、Dさんが支配しているからと言えど、危険な虫に乗ることに抵抗はありますか?」

 

中城茉莉華の質問に青山望は気持ちが委縮してる風に述べる。

 

「すみません・・・。織部さん、特にDさんと一緒でないなら怖くて乗れません」

 

「私も同意見です野沢先生。3人目の同行者はDさん以外に認められません。しかし、織部さんとDさんが同時にいなくなってしまえば私達の身の安全の保障しかねません。織部さんと2人でお願いします」

 

「・・・・・わかりました」

 

一瞬・・・・・。ほんの一瞬、彼女は舌打ちした。青山望と何の関係がある・・・・・?

 

それから、二人は港へ確認することになり先へ行く野沢に続く織部睦美の肩を掴んで引き留めた。

 

「・・・・・海から先まで、厳禁、支配、解ける」

 

「分かりました。気を付けます」

 

「・・・・・それと、これ」

 

「ビデオカメラ? ああ、港の現状を撮影するのですね?」

 

理解が早い。撮影を頼んだ少女も外へ出てヘビトンボの背中に乗ってから野沢も乗る。

 

「では、行ってきます」

 

「・・・・・」

 

手を振って空へ飛翔する2人と一匹を見送る俺の背後から中城茉莉華が近づいてくる。心なしか心配してる様子で顔が暗い。

 

「大丈夫でしょうか」

 

「・・・・・どっち?」

 

「2人とも、強いて言えば織部さんです。野沢先生はあまりいい印象を受けないので」

 

個人か全体か、どっちでも興味ない。

 

「・・・・・今は、信じる」

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