巨蟲列島   作:ダーク・シリウス

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脱出2

うっそうとした森の中を横断して一時間が経過しようとしていた。歩いていた足を停めて反射的に明後日の方へ振り返った。俺の反応に一同が釣られて足を停めた。

 

「坊主・・・どうした?」

 

「・・・・・殺気、巨大な気配、感じる」

 

「巨大な気配って、どのぐらいなんだ? 大きさ的によ」

 

「・・・・・数十メートル」

 

ざわめつく織部睦美達。そんな巨大な虫なんている筈が無いと誰も言わない。

 

「Dさん、ジグモが何かに怯えてるみたいで震えています!」

 

「・・・・・確証、織部睦美、降りる」

 

パニックを起こすわけにはいかない。別の場所に繋げた空間を、元の住処へジグモを送り返して支配を解き空間も閉じた。

 

「それで、巨大な虫ってのは? こっちに向かってるのか?」

 

「・・・・・海、向かってる」

 

「・・・・・不味いな。坊主たち、急ぐぞ」

 

おやっさんが催促する。走る俺たち。胸の中で不安が過っている一同は最悪な未来を迎えないでほしいと祈っているかもしれない・・・・・だが、一時間が経過した頃に発砲音が聞こえだした。

 

「・・・・・巨大な気配、横」

 

「だ、大丈夫なのかよっ!?」

 

「猟銃の発砲音に反応しているから私たちには気付かれない!!」

 

巨大な気配はもう港に着いている。巡視船の乗員たちがその蟲と一方的な蹂躙を受けている。そのことをおやっさんに告げると奥歯を噛みしめた。

 

「・・・・・。急げ・・・」

 

焦燥に駆られるおやっさん。眼鏡を掛けた男性も同じ気持ちで焦燥の色を浮かべている。GPSを見ながら走る涼子が言い出す。

 

「もうすぐ森を抜けます!!」

 

開ける景色。問題なければ何事もない湾と海の光景が待ち構えているはず。なのだが、直ぐ真横から巨大な気配の足が見え隠れしていたのを俺達の目に入ってしまった。

 

「・・・・・ムカデ?」

 

「脚の数は・・・・・1・2・3・・20・・・・・。顎肢を合わせて脚が21対・・・・・・」

 

脚の数を数える織部睦美の視線が上に向くにつれ、木々より高い虫の姿が見えその全容が明らかになった。

 

「42本ある・・・・・」

 

「・・・・・ムカデだけじゃない」

 

鳴瀬千歳が湾の方へ青ざめた顔色で視線を送っていた。

 

「シオマネキの群れも、いるわ・・・・・」

 

海から陸に上がり続ける巨大蟹の大群。猟友会のメンバーが主にイノシシ弾でオオムカデとシオマネキの相手をしているが、オオムカデには通用せずシオマネキも強固な甲殻の身体ゆえに効いていない。よって、本当に人間側が一方的な蹂躙を受けている。だけども、それ以上にとんでもない光景を目の当たりにした。

 

「・・・・・・ふ、船にオオムカデが巻き付いたッ」

 

シオマネキを襲うつもりが無いのか、何故だか巡視船に纏わりつき、万力のごとく最上甲板・・・・・操舵室ごと巻き込んで捻じ曲げる。

 

「・・・・・オオムカデ、巨大」

 

「Dさん?」

 

「・・・・・巨大過ぎる、巨大化、変化、リミッター、DNAの改変?」

 

「いまそんなことを考える時じゃないっしょ。これからどうすればいいっすか」

 

・・・・・作戦を考える時でもない。

 

「・・・・・駆逐」

 

「で、出来るんですか・・・・・あの数を相手に・・・・・」

 

「・・・・・やる、それだけ」

 

見よう見まね。意味のない両手で印を組んで俺を分裂、俺と言う存在を増やす。織部睦美たちは驚愕する。

 

「に、忍者ぁっ!?」

 

「Dさん、そろそろ教えてほしいんだけどもう本当に色々とさ!!」

 

「アンタは忍者の末裔かなにかかよっ!?」

 

「・・・・・秘密」

 

2人だけこの場に残し、他は湾を跋扈する蟹と虫の駆逐に駆ける。オオムカデ、必ず氷漬けにする。

 

 

 

織部睦美side

 

増えたDさん達を残して悉く湾にいるシオマネキ達を一方的に、凄い勢いで死を振り回っている。巡視船に巻き付いているオオムカデをシオマネキの死骸で投げつけ、自分の存在をアピールするDさんに気付き、船から離れてDさんを襲い掛かって行った。早く動いている物に反応するオオムカデも速過ぎるDさんに捉えられないでいる。寧ろオオムカデの身体を数人がかりで蹴り飛ばして湾から遠ざけている。

 

「・・・・・行く」

 

「え?」

 

「・・・・・船」

 

「坊主たちが湾にいる蟹の数を減らしている今なら船に乗り込めれるってことだな」

 

DさんじゃないDさんが肯定するように頷いた。

 

「睦美」

 

千歳ちゃんも賛成だと視線を送ってくる他の皆さんも、覚悟を決めた表情で私の指示を待っていた。

 

「Dさん、船までの誘導をお願いします」

 

「・・・・・守る」

 

よし、行こう! 猟友会の二人が先陣を切ってまた海から現れるシオマネキを警戒しつつ船へ私達を導く。それについて行く私達は巡視船から出てる橋に足を掛けて、念願の船に辿り着くことが出来た。

 

「船のチェックだ! 1分以内に確認するぞ!」

 

「「了解!」」

 

おやっさんたちが私達を船の甲板に待機させる。密室な場所ではいざという時、身軽に動けなくなるからだと言う。一塊になって船が動くその時まで待っていたらオオムカデが氷漬けになった瞬間を見た。

 

「Dさんがオオムカデを倒したぞ!」

 

「そんで、不思議な収納庫に入れるパターンだよね」

 

だけど、そう問屋は卸させてはくれなかった。涼子さん達が私達のところに戻ってきた。とてもいい表情ではない顔で。

 

「どうかしましたか?」

 

「操舵室がオオムカデに巻き付かれてしまった結果、操縦することが不可能なほど破壊されていました。オート機能も使えません」

 

「きゅ、救命艇は? どんな船にも救命艇はありますよね?」

 

「一隻しかない。流石に全員を乗せて救助は出来ない」

 

全員を救助出来ない。そう言われてしまった私達は目の前が真っ暗になった。そこへ神野さんが食って掛かった。

 

「仲間がこの島の周りにいるんだろっ。違う船やヘリとか呼べねぇのかよ」

 

「み・・・・・未知の危険がある以上、本部からの命令があるまで他の艦は動きません」

 

「み・・・・・見殺しにする気なの?」

 

「助かったと思ったのに・・・」

 

絶望しかない結果に私達は今後どうすればいいのか見当もつかない。

 

「本部や他の艦への無線は?」

 

「・・・・・連絡も出来ません」

 

しかも畳みかけるように言われた。

 

「燃料が気化し始めている。いつ爆発してもおかしくない。早く船から離れるべきだ」

 

希望が打ち砕かれたように生きる気力を喪失しかけていたところに、シオマネキが甲板に現れる。

でもすぐに、DさんじゃないDさん達が撃退してくれた後で消失した。

 

「・・・・・船は?」

 

本物のDさんが甲板に来てくれた。私達の様子と涼子さんから説明を聞きDさんも困った顔を浮かべた。

 

「・・・・・解決策、ある?」

 

「ありません。救命艇が一隻分、次の島まで食料を詰め込む必要があります。詰め込まなくてもこの場にいる全員が乗れません」

 

「・・・・・他、連絡」

 

「操舵室が使い物になりません。その際に機器が破壊尽くされてしまってます」

 

頭を残念そうに垂らすDさん。本部からの命令があるまで待つ他なく、それがいつになるのかさらに分からない。無線も通じなくなっている状態だから連絡のやり取りもできないという八方塞がりな状況に陥っている。

 

「Dさん・・・・・何とかなりませんか?」

 

「・・・・・」

 

求めてしまう。今まで私と彼が中心に今日まで生き残ってきたんだ。知恵を振り絞って打開策を考えなければならない。沈黙を貫くDさん。どうしよう・・・・・。そんな時だった。

 

「・・・・・燃料、気化、解決」

 

「どうやってだ?」

 

「・・・・・案内」

 

爆発だけは何とか防ぐことが出来るかもしない、そう言っているDさんはおやっさんに案内してもらってから数分後・・・・・。戻ってきた二人が爆発の心配は無くなったと告げて来た。

 

「どういった方法でしたのかは分からないが燃料の保管室を冷凍庫みたいにしちまいやがった。間近で見た俺も目を疑う光景だぜ」

 

「じゃあ、本当に爆発はしないんだなおやっさん」

 

「しないが、操舵室が滅茶苦茶になって動かせないんじゃあ状況は変わんねぇよ」

 

その通りだ。でも、Dさんは今の状況に気にしない風に口にした。

 

「・・・・・要求、バケツ」

 

「バケツ?」

 

何でバケツ? と思ったら湾に向かって指した。

 

「・・・・・証拠、死体」

 

シオマネキやオオムカデに捕食され、見るも無残な猟友会の人達と海上保安官の人たちの遺体を、この島で起きた証拠を持ち帰ると分かった瞬間。千歳ちゃん達は顔から血の気が引いたのが見ずともわかった。

遺体の回収はDさんがする事が判ると凄く安堵の息を吐くみんなだけど、証拠になる物は遺体でも手に入れようとするDさんに戦慄したのは言うまでもなかった。

 

そしてその様子も伊織さんにカメラを回して、撮影してもらいながら遺体の回収を済ませるとDさんの不思議な力で船が動き出した。

 

「・・・・・場所、案内」

 

「涼子、坊主にこれから向かうべき方向を教えてやれ」

 

「わ、わかりました。他のみなさんは乗員用の部屋でゆっくり休んでいてください」

 

私達はその通りに男女別に海上保安官の船の中で休むことにした。今度こそ、私たちは島を脱出することが出来た。Dさんの不思議な力で船が湾から離れどんどんと島の姿が小さくなっていく光景を、私たちは脱出できた実感と共に視界にいれ続けた。

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