織部睦美side
基地局へ飛んで行ったDさん達を待って十分以上経った。周辺は月明りでしか見えない建物ばかりで山側の方までは見えない。船も船内でしか明かりを点けれないのは当然だとして、少し気になることが船に起きている。それを忍者のように増えたDさんの一人に言って調べてもらったところ。
「・・・・・船底、大量」
大小様々、それも大量にくっついていたフジツボを抱えて海中から戻ってきたDさんがそう言う。まずい、船体が気にしないと分からないほど傾かせているフジツボがくっついていたなんて。
「Dさん、フジツボの駆除をお願いできますか?」
「・・・・・わかった」
海中に戻るDさんを見送ったらすれ違うように、夜空の向こうから飛んでくるDさん達が!
「ただいま~」
「お帰りなさい! どうでした?」
「アンテナは思った通り鳴き声の振動で壊れた個所はあったけど応急処置はしてきたっス。ただ、原因のセミを駆除しない限り現状は変わらないっス」
「そこで虫に詳しい嬢ちゃんの知恵を借りたいのさ」
セミをどうにかしないといけない。だったら一ヵ所に集めないといけない。
「・・・・・セミ、光に集まる? 携帯のライトでセミが来た」
「はい蛾の次に集まる虫なのでハロゲンライトの様に明るさの調整が出来るモノが有効です。現場で調整して最もセミ達に適した明るさを絞り込めるようにしたいです」
Dさんが手の平で光る塊を生み出した。
「・・・・・これぐらい?」
「いえ、もっと弱く・・・もう少し・・・・・はい、そのぐらいです」
光球の明るさの調整を流れで教えてしまった。もしかして一人でセミを・・・・・?
「・・・・・夕食後、セミ取り」
「セミ取り?」
「通信機器の復旧のためにセミを退治するっスね?」
甲斐さんの言葉がDさんを頷かせたところで、おやっさんも話に加わり提案を言い出した。
「なら、この島の島民の知恵を借りるとしようか」
「・・・・・地の利を活かす」
「協力出来ることなら何でもやるで!!」
地元の人の協力は必要不可欠。あのお婆ちゃんが島を愛する想いがあの人達にもあるなら、きっと協力してくれると思う。私達は南雲さん以外の彼等の協力を仰ぎに船内へ移動し、一塊にいてもらっている部屋に入るとセミ獲りの説得した。
「神の御使い様が仰るのであれば、私は協力しますっ。この身と心はすべてあなた様の物ですから」
「・・・・・神の御使い、違う」
すっかり巫女見習いの宮杜刻さんから神の御使いの人だと認識されたDさんだった。
「セミを全部やっつけりゃ他の島との連絡が出来るんだな無雲?」
「せや!! そのためにも一ヵ所に集めんとならんや。お前らも協力してくれや」
「連絡できなくても、この船でさっさと逃げればいいじゃないか」
「他にも取り残された連中はおるんや!! そんなことできへん!! おんし、数日前に来た酷い連中となるんか!?」
無雲さんの説得に協力的じゃない人がそう言われて、不承不承ながら最後は協力してくることになった。
「人数はこれで足りるか?」
「はい、少数での移動は虫からの発見を出来るだけ最小限にしたいので」
「わかった。そんじゃあ、もうひと頑張りするかっ。だが、どうやって捕まえる? それに最大の問題は集めた後にどうするかだ。鳴かれた場合の対処方法は考えてあるのか嬢ちゃん」
それは、と口に出しかけた私より先に見習い漁師、ポニーテールの髪型にしてる仲宗根鏡さんが知恵を出してくれた。
「集めて捕まえるんなら普通に考えて網やろ? 港に大型魚用の強い網があるよ」
「ほんなら集める場所は消防団のグランドがええ!! あそこなら広ぉしコンクリで建物もあるし、ここからじゃ遠いんけど、車で行けば大丈夫なはずや」
無雲さんも知恵を出してくれて、セミを捕まえる場所はソコに決めたところで残る問題は防音対策だけになった。
「残りは・・・・・音対策ですね」
「・・・・・対策した上で、鳴かれる前に倒すだけ」
Dさんが大胆不敵に断言した。傲慢的に聞こえるけどやることは変わらないのは一緒だ。甲斐さんと無雲さんの液体と水、アイス枕の発言で対策に思い付いた。
ということで、山から遠くなく広い敷地がある施設へ放置された荷台があるトラックを、甲斐さんがイケナイ技術でエンジンを掛けたことでおやっさんが運転を、その隣に銃を持ってる京介さんが。それ以外は荷台に乗って移動した。港から大型魚用の網×3を手に入れ、携帯のライトの光量でセミが降りて来た話からライトも確保すれば消防団のグラウンドへ向かった。
「無雲さん。他にも生存者がいるとしたらどの辺りでしょうか」
「船を持っとるモンは他のモンも乗せて海へ出た以外は、避難場所として学校におるはずや」
他にも脱出した人がいるなら、この島の状況が変わっていると思う。でも、変わっていないのは・・・・・。
ドゴンッ!!
車が通りすぎた家から何かがコンクリートの壁を壊して出てきた。すれ違いになって私達は襲われなかったけれど今の角は・・・・・。
「え、今のカブトムシ?」
「車の音に反応して!?」
それからも道路に巨大なカブトムシが前方から現れて車の行く道を阻もうとする。
「くそったれ!! 道のど真ん中にいるな!! 激しく揺れるぞ、しっかり掴まってろ!!」
運転するおやっさんの叫びがその通りになった。蛇行運転するようになって荷台に乗ってる私達は、身体を固定する物がないから激しく揺さぶられて振り落とされそうになる。撮影のためカメラを片手に持っている伊織さんは、Dさんに守られている最中に発砲音が聞こえる。はっとその音に釣られて立って荷台から前方を見ると、撃たれた思うカブトムシの頭部はひとつも凹んですらいない。
「チッ! やっぱり銃弾は通用しないかっ」
「カブトムシの甲殻は硬い鎧のようなもので、戦車ぐらいのものでないと倒せませんっ!」
「どれだけ硬いんだよ!?」
「・・・・・戦車並み」
「うへぇ・・・・・そりゃ冗談キッツいっしょ」
でも、当たっている例えだ。だからそんな虫と真正面に立ってはいけないし近づいてはいけないのに―――! 車が不意に停止した。その理由は・・・。ッ!?
「まずい、カブトが道を封鎖してやがる。引き返して別の道に行けねぇか」
「あるにはあるが・・・・・後ろからも来てるぜ」
そんな話し声が聞こえてくる。反対車線の道路から行こうとも、車の音とライトで集まってきたらいしカブトムシ達が私達を徐々に囲い込みよう現れてる。
「Dさん、なんとかなりませんか?」
「・・・・・どかす」
荷台から降りたDさんが距離を縮めるカブトムシの真正面から近づき、あろうことかカブトムシの身体の真下に滑り込み、そしてどれだけ重量があるかわからないけれど、巨大化した身体を地面から持ち上げ、別のカブトムシの方へ放り投げた。
「もしかして軽いッスかね?」
「わかりません。兎に角あそこへ向かうべきです!」
「坊主が作ってくれた道だ。通らないわけにはいかねぇな!」
発進する車はDが作ってくれた道へ進み、すれ違い様に伸ばしていた甲斐さんの手を掴むDさんの回収ができた。
「Dさん、カブトムシの重さはどうでした?」
「・・・・・数百㎏?」
「なるほど、それぐらいあるってことっすか。・・・・・え?」
「さすが御使い様・・・・・!!」
いま信じられない事実を気づいてしまった気がする。甲斐さんと無言で視線を交わし、深く考えないようと頷き合った。
辰野神島消防団―――。
カブトムシの遭遇を乗り越えて目的地に到着。全員でグラウンドに網を張った長い鉄棒を綱で三方に突っ立てて罠の設置が完了した。ハロゲンライトの光で誘き寄せる準備が、織部睦美は音対策にベストの裏に針金でしっかりと保冷剤を固定した他、水を吸わせた紙オムツを全員に装着させて万全の態勢を整えた。
「完成やああっ!!」
「本当にこんなんでセミが来るのか?」
「やってみないとわからないだろっ!!」
疑問は最も。虫の特性と特徴を熟知していなければこんな行動は誰も取らなかった、取らないことを織部睦美はした。彼女の知識を信じるのみだ。
「そろそろやっ!」
「はい。点灯します!」
ライトの調節器を操作する織部睦美により、三つの罠に設置したライトが呼応して点灯した。闇夜のグラウンドが明るく照らされ、山中からでもこの光が見えるだろう。
「お願い、来て・・・!」
来なければ通信機器が復旧できない。織部睦美の切な願いは・・・・・どうだ?
・・・・・ジジジ。
しばらく待った時、空からセミの鳴き声が聞こえて来た。夜空を見上げれば少なくない数のアブラゼミが光に吸い込まれるようグラウンドに集まって来て設置した網に止まり始めた。
「集まってきました」
「ほんとや・・・ほんとに集まって来よったわ!」
「信じられねぇ・・・・・」
「どんどん来るぜ!」
「ど、どんだけいるんだよ!」
作戦は成功。けれど、全部が全部網に止まるわけではなかった。地上に降り立った個体のセミもいる。そいつらは俺が直接相手をする。鳴かれる前に、逃げられる前に―――巫女から借りた刀で気を纏い一刀両断。セミの体の内部も綺麗に割かれ臓器が窺える。
「・・・・・織部睦美」
「今ですっ! 鏡さんっ!! 電源を切って綱を倒してください!!」
「よっしゃっ!!」
この好機を逃がさず、疾呼する織部睦美の指示に待機していた仲宗根鏡が、持っていた斧を振り上げて勢いよく打ち下ろし綱を切ってもらった。それが支えとなっていたトラップが地面に倒れて止まっていたセミの動きを封じ一網打尽にできた。その後でもライトの明かりに吸い寄せられて倒れた網の上に集まってくれる。それをもう二回も繰り返すと網にかかったアブラゼミが大量に捕獲できた。
「Dさん、今ですっ!!」
大きいタンクに詰まっている洗剤を混ぜた水を放射。これで溺死するのだというのだから、武器がなくとも身近なもので巨蟲と戦えることが出来るのは凄いと思う。
「・・・マジで倒しちまいやがった」
「あたしらが手も足も出せなかったってのに、アイツら・・・・・」
これで一通りセミを殺した。通信機器の復旧も成しただろう。例え後からアブラゼミではない、クマゼミが現れても氷結の魔法で凍らして解決したから。だが・・・・・一難去ってまた一難だったかもしれない。水たまりに波紋が生じた。巨大な何かがここへ接近している音がそれを表している。それは―――ここへ来る道中に遭遇したカブトムシよりもさらに一回りも二回りも大きいカブトムシだ。マイクロバス並み、ゾウを彷彿させる巨体を動かして木々を押し退け倒しながら現れた。
「デ、デカイっしょ!?」
「何だってんだ、どうなってんだよ!?」
「・・・・・あ」
「Dさん、何か知っているんですか?」
おそらく、森の中で見つけた脱皮の個体? いくつかセミの死骸の回収をしながら織部睦美に対して首肯する。
「・・・・・カブトムシ、脱皮した抜け殻、森の中にあった。それ、あのカブトムシだと思う」
「っ!!?」
「なんだ、虫が脱皮するんのはおかしいのか」
京介の疑問に俺も同意見。織部睦美の中では俺達の予想より遥かに大変らしく、絶句している。
「通常、カブトムシは脱皮してカニやエビみたいに脱皮はしないんです。カブトムシは“完全変態”する昆虫です。完全変態では幼虫と成虫の形が全く異なるためサナギになる時に薄皮の外皮しか作りません。そんな弱い薄皮で出来ているサナギを護るため地中で硬い
小学生でも知っているカブトムシの幼虫から成虫に至る経緯。
「つまりこのサナギが脱皮して成虫になる時には抜け殻はボロボロに壊れてしまうんです」
「・・・・・少しも壊れていなかった。あれ、どういうこと?」
「それは不完全変態の昆虫の抜け殻・・・古い外骨格を脱ぎ捨て新たな外骨格を成形した時に残る―――硬い抜け殻と同じなんですっ!」
「どういうことや?」
無雲も理解できないと聞き返した。
「この島のカブトムシは完全変態で成長しきった後も更に脱皮して巨大化してるってコトですっ!!」
死んだセミが掛かった網に圧し掛かるように動くカブトムシを見ながら織部睦美の説明に耳を傾ける。
「この島で巨大なカブトムシを見てずっと疑問でした。あんな巨大なカブトムシが蛹化するコトが出来るような場所がこの島の一体どこにあるのかと・・・・・」
確かに言えている。大きな穴があってもおかしくない筈だ。山狩りすれば何時か見つかるだろうが・・・。
「しかし今全てが納得出来ました。ある程度まで育ったカブトムシは、最初は完全変態で成虫になりその後は不完全変態の昆虫と同じ方法、いえ・・・エビやカニと同じ方法で巨大化していったんです」
「そんなことが出来るんか?」
「そう考えるのが一番納得いきます。環境適応力が高い昆虫が先祖返りすることで、つまり自分の中に眠っていたDNAがかつて捨てた不完全変態の能力を目覚めさせたんですっ!!」
この島のカブトムシが全部それなのか・・・・・? もしいるとすればクワガタムシも例外ではない話になる。もしかして、今までの昆虫もそうだったのか?
「それは・・・カブトが無限に大きゅうなるってことかっ!?」
「限界は有るでしょうが大きくなります。ですが本当に怖いのはソコじゃありません。この島で新たな生態系が生まれてきてるというコトです。強い外骨格で守られたカブトムシ・・・この島にいるというトンボの仲間・・・・・食物連鎖の順位が極端に入れ替わっているんですっ!」
虫の餌に成り下がる人類か・・・ゾッとしない話だ。
「この結果がどうなるかは私でも想像つきませんが、でも私達には知恵と行動力、勇気がありますっ!」
話している間でもカブトムシはセミの死骸を餌として認識しているようで啜るように食べ始め出した。・・・・・あれ、欲しい。そう思っているのは俺だけではないらしい。
「Dさん、あのカブトムシも支配しますか?」
「・・・・・する、連れて行かない」
「あの鈍重な巨体じゃあ空を飛ぶ事すら難しいと思うっス」
そう言う事。
「・・・・・船に帰る」
「はい。食べることに夢中になっている間に逃げましょう。次は私達を狙う恐れがあります」
監視用に分身体を密かに作り起きして、消防団のグラウンドを車で後にする。そのまま基地局へ向かい到着すると通信機器が復旧したか試みる。
「ほんなら大島の役所へ電話してみる」
「その次は私も海保に連絡させてください」
何もすることなく車の屋根の上で腰を落として周辺の警戒をする。船への状況を分身体から確認中に銃を持った京介という男がベストを着た少年と女と来た。
「お前、一体何者なんだ?」
「・・・・・秘密、成り行きで協力している」
「そうかよ。お前とあの虫ハカセがいりゃあ俺達は助かるんだな」
「・・・・・違う、全員の協力が必要不可欠」
「本当にそう思っているのかよ」
胡散臭そうに女が胡乱気な眼差しを送ってくる。本当だと首肯する。
「・・・・・独断行動、死ぬ。集団での協力、生存率高い。前にいた島もそうした」
「話は聞いたぜ。お前と虫博士が中心にして脱出したんだってな」
「・・・・・今後もそうなる。辰野神島の人間、協力」
「なら、こっちも協力してもらおうか。俺達以外にもまだ仲間がいて待っているんだ」
否が応でもそうしないといけない、か・・・・・。
「・・・・・元からそうするつもり」
「よろしく頼むぜ。今回の件でお前達を信用することにしたからな」
基地局から織部睦美達が出て来た。連絡は? 問うと大島と海保との連絡が出来たそうだ。
「これから辰野神島の他の巡視船が来てくれるようになった。そこで今までの経緯を説明することになるが、坊主も飛行機墜落事故の人として事情聴取に従って貰えるか?」
「・・・・・無理、信用してくれない」
「だろうな。背中に翼を生やす人間なんて直接見るまでは信じられない話だ。さて、坊主の扱いをどうっすかだな。前の島もこの島の住民ではないことなんざ調べれば直ぐにバレる。坊主が不法入国者か何かでとっ捕まるなこりゃあ」
「・・・・・隠れる」
「ああ、ほとぼりが冷めるまでそうする他ない。行く当ても帰る当てもないなら俺の養子にしてやらぁ。なんなら涼子と結婚して家庭を持ってみるのも手だぞ」
・・・・・しばらく過ごしても元の世界に帰れなかったら、選択の一つにしよう。
「・・・・・考えておく」
まだいる生存者との合流は一夜を明けてからすることにした。
翌日―――AM5:30
小休止で軽く仮眠と食事を済ませた。島の生存者の救出・合流をする時間となり南雲達と話し合いをする。
「この島にも自然災害に対する避難場所があるはずだ。そこはどこだ?」
「そんなら人がよぅ集まれる学校と公民館や。いるかわからんが、避難するとなればそこや」
「俺達の仲間も落ち合う合図を待っている」
島の地図を囲いながら港から学校と公民館までの距離と場所を把握し、次は虫の話。
「・・・・・昔から見かける虫は? 覚えている範囲、言う」
「何でそんなこと言うんだ」
「巨大化している可能性があるからです。もしもしていたら、という考慮から対策が考えられます。ですので皆さんの生きた情報がとても重要なんですっ!」
俺と織部睦美の深意を知った南雲達は知っている範囲の虫を教えてくれた。地図の地形と場所に潜む虫を考慮し、現れるだろう注意する虫の名前を挙げた。
「姿を隠す擬態の能力を持っているカマキリがいると思います。遭遇したら獲物を捕らえるカマキリの鎌には絶対気を付けてください。でないと余程のことではない限り、決して放さず獲物を捕食し続けます」
「殺す方法は?」
「カマキリは動く物は何でも獲物だと認識します。ですから戦いを避けたい時は決して動かないのが一番です。そして攻撃する場所はカマキリのお腹です。それと足の間接も狙えるなら機動力を奪えます」
次は行動するメンバーを決める。
「虫博士の嬢ちゃんとDくんを分けるか」
「知識と戦闘力が別々になんて反対だよ。どんな巨大な虫がいるのかわかりゃしない!!」
「そうやそうや!」
・・・・・困った。合理的ではない。でも分からなくはない。
「・・・・・それでも、二手に分かれた方が早い」
「お前一人で私達を守れんのか!?」
「あの、他の人達と落ち合う場所はどこなんですか?」
「ここ辺りだ」
指した場所は、カマキリが居そうな広い原っぱだった。口元に指を添え考え込む織部睦美の提案はこうだった。
「・・・だとしたら、街中にある公民館よりは比較的危険が高いです。無雲さん達から一人から三人までDさんと行動できませんか?」
「なんでそうなるんやっ!?」
異を唱える少年に、彼女はたじろぎつつも理由を述べる。
「大人数で行動するのはとても危険です。虫からすればエサが集団で縄張りに入ってきたようなものなんです。そして大体の虫は物理的な攻撃は、昨夜カブトムシで効かないことを知ったはずです。私の知識は虫に対する抵抗力であって、殺すためのものではありません」
正直、カマキリと遭遇しても倒す準備をしなければ逃げることしか精一杯です。と、言う織部睦美だった。
「それに公民館までの案内はこちらも必要です。土地勘がある人の同行をしてくれないと、虫から逃げられることもできません」
「せやな。片方だけ偏んのはいかん。京介、生き残った人達の説得もせんとあかん。島の外の人じゃあ聞かんもんもおる。二手に分かれて公民館と学校におる人達の助ける確率を高くせんと」
仲宗根鏡も二手に動く賛成派として口を開いたことで京介は折れたが。
「・・・仲間と合流する上で虫を倒すだけの力がほしい。これだけは譲らない。いいな」
「はい。では、京介さんとDさんは学校に。公民館は私と無雲さん達の誰かとお願いします」
他、涼子と巫女の人と京介とつるんでいる女が俺達と来ることになった。少年もこっち側に来ようとしたが、拒絶した。
「なんでだよ!?」
「・・・・・カマキリに力負けする。人数のバランス。通信機器が復旧した以上、連絡係も必要」
「それ言ったら刻さんもやろう!」
「御使い様の言うこと聞けへんの?」
鞘から刃を少し抜いて、ドスの声で少年をビビらした。最初の印象はどこに・・・・・。織部睦美達も絶句してる。
「・・・・・気弱?」
「あんな刻さんは始めて見た・・・・・」
「こ、こえぇっ・・・・・」
身内でも信じられないそうだ。結局少年は織部睦美達と同行することになった。
「では参りましょう御使い様」
「・・・・・行こう」
優しい女は怒らせたらいけない。その教えがようやく現実味を感じた・・・・・。
AM7:45
外が明るくなった頃に空を我が物顔で飛行するトンボ―――ヤンマを見て透明になれるマントが必要だと
織部睦美が言った。念のために分身体も同行してもらったから大丈夫だろう。こっちは他の荷台がある車を見つけて京介が途中まで運転する。山中まで車は走れない。京介達の行き先には昨日来たばかりの社だ。びぃびぃ、この島では老婆の意味らしい。老婆の様子を見に来たようで、元気な姿な彼女と少し話をしてから社を経由して山を降りる。
「御使い様、虫はおるん?」
「・・・・・人の気配、五人。近くに別の気配。虫がいる」
「虫博士の言っていた、人間と虫の気配を感じるって本当なのかよ?」
「・・・・・信じられへん?」
「おい待て、刀を抜こうとするなっ!」
「静かにしろ。本当か嘘かなんざ、生きて脱出できるならどっちでもいい。刻さんは無雲達と密に状況と虫博士から情報を聞き出したくれ」
連絡係として刀と一緒に携帯を持っている巫女は頷く。山にいる間は虫との遭遇はなく、原っぱに問題なく着いたら京介が銃を取り出して真上に撃った。
「フレアガンだ。これがここで落ち合う合図にしてる。虫の気配を感じるってんならすぐに見つけてくれよ」
じゃあそうさせてもらう。果実を実らせてる木のところへ寄り、伸ばした手で無造作になにかを掴んで引きずり落としたそれは・・・・・人並みの大きさのカマキリ。カマで俺の肩を挟み大きな口を開けて迫ってくるカマキリに、その顔を掴んで握り潰した。
「・・・・・倒した」
「そ、そうか・・・・・それで、それをこっちに持ってくるのはなんでだ」
「・・・・・手持ちの武器、試す」
「何言ってんだ。軍用のナイフでこんなの―――」
見ていろと言動で伝える女が倒したカマキリの背中にナイフを突き立てるが、刺すまでは敵わなかった。
「さっ・・・・・刺さらへんっ!?」
「・・・・・こういうこと」
「調べることは大切ってことか。効率よく蟲を倒せることが判ればいいんだな」
頷く。だけどそうする時間はないようだ。
「・・・・・人の気配、来る。虫も来る」
「ってことは、あいつらは追いかけられているん!?」
女の言葉が真実である事を窺わせる出来事が向こうからやってきた。殺したカマキリとは別の個体が今度は複数もこっちに走って来る五人の男女を追いかけてきている。肩が抉れている怪我人もいる?
「きょ、京介ぇーっ!!」
「カ、カマキリがあんなに!?」
「御使い様!!」
巫女が刀を突き出してきて、柄を握り鞘から抜きながら駆け出す。
「お前等、伏せろぉっ!!」
京介の疾呼に五人が原っぱに倒れ込んでくれたおかげで標的が見えやすい。刀を水平に右から振るい、手前にいたカマキリを三匹纏めて両断の後、手を翳して雷撃を放ち直撃した残りのカマキリ達を感電死に至らせる。
「・・・・・今、手から雷を出したよな」
「ああ・・・・・本当に何なんだアイツはよ」
気にしたら負けの案件。教えるつもりもない秘密を抱えている。
「・・・・・大丈夫?」
「お、おう・・・助かった。おんしは命の恩人やな」
「・・・・・すぐに動く、まだいる、学校に行く。怪我人、そこで安静」
「早く水嶋を・・・おい、葵にしたようにできないのか!!」
出来るから言っている。死骸の回収もままならない。
「・・・・・落ち着いた場所、殿やる」
「っ・・・行くぞ!!」
水嶋という男を担ぐ京介とガタイのいい男が先に走り出し、三人に続く各々の気配を感じ取りながらさらに複数の個体と大きく成長したカマキリと対峙した。
京介side
「京介、あの子供はなんなん!?」
「島の外から来た他所モンだ。巡視船に乗って来て生き残りの俺達を助けに来た一人だ」
「葵と変わらんような子供がか!?」
「「それより巡視船!? ほんなら今すぐ船に行こうやっ!!」」
水嶋が負傷していなければそうしたい。だけど今は学校へ行って生き残りのモンがいたら助ける話になっている。だから虫と戦えるガキを何が何でもこっちに引き寄せたんだ。
「そっちは船が見つかったか?」
「ぼろ漁船が1隻。いろいろと直さんといかんがのうっ! んが、そんな立派な船が来てくれとったんならあいつは無駄骨やったな」
鶏冠頭の沢田の言う通りだな。巡視船に乗ってみたが、広く狭くトンボのような大きい虫にとって中に入り辛い鉄壁の護りを誇ってた。唯一、何かに万力のよう握りられたようなひしゃげて壊れてる部分はあるが、それでも島を脱出できる条件が十分すぎるほど揃っている。
「そんで、そこんの女もそうだってことか」
「海上保安庁の者です。Dさんと救助に参りました!!」
「おんしも虫と戦えるんけぇ?」
「私は避難の説得をするためです。この島の土地勘はないので京介さん達の協力で同行しています」
今そいつは自ら殿を買って出たほど俺達を逃がしてくれる。まだ追いかけて来ていないようだが喰われちゃいねぇだろうな。
「そろそろ学校や!」
「・・・・・わかった」
「「うわっ!?」」
音もなく、何時の間にいやがったこのガキッ!?
「Dさん、カマキリはっ?」
「・・・・・囮の餌、足止め、怪我人、最優先」
水嶋の為に優先してくれるってのか・・・・・。俺がガキを見て思っていたらガキはこっちに目を向けて来た。
「・・・・・言った。協力不可欠」
「・・・カマキリが来た時は援護してやる」
葵のように水嶋の怪我も完全に治してくれるならな。
織部睦美side
透明マントのおかげで誰一人欠けず、虫との遭遇もなく公民館に着くことが出来た。今のところ公民館には虫がいない。いるとすれば数人の生き残りの人。無雲さんとおやっさんが避難の説得をしている間にDさん達と連絡を。三下ミツオさんが持っている携帯は通信が繋がっている。Dさん達は無事かな。
「刻さん、そっちはどや?」
『ミツオ君。こっちは大丈夫。皆もおるで、学校に避難したところで生き残りの人もおる』
「すみません刻さん。織部睦美です。そっちにどんな蟲と遭遇しました?」
『カマキリですっ。大きなカマキリが出ました。あ、御使い様に代わります』
Dさんの方が詳しいと刻さんは察してくれた。すぐにDさんの声が聞こえた。
『・・・・・小さいカマキリが10匹以上、1匹だけ成長したカマキリ』
「カマキリの特徴とかありますか?」
『・・・・・羽に目のような紋があった』
羽に眼状紋っ!? そんなヤンマと戦えるかもしれない成長を遂げているの!?
「Dさん、できればそのカマキリを捕まえてくれますか」
『・・・・・わかった』
カブトムシ同様、捨てたDNAが甦ったかもしれない。そんなカマキリには、おそらく寄生虫のハリガネムシが・・・・・あっ、Dさんはこのこと知らないっ! 知らせなきゃ―――!