乙女たちにジュラルミンの翼を   作:社畜新兵

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新しい挑戦、オリジナルの小説です。短いですがよろしければどうぞ。


クーゲル

「こちらアテナイ。クーゲル応答して」

耳元に無線を通して、澄んだ声が聞こえてくる。聞きなれた心地よい声だ。

「こちらクーゲル!感度良好」

短く、はっきりと答える。

「よろしい。オストマルクの戦爆連合はベルリンに向けて飛行中。会敵予想時刻ネクストゼロフォー」

アテナイが攻撃目標を正確に指示した。

「クーゲル!了解した!大猟を期待してくれ!」

クーゲルはそういうと無線を切り替え呼びかける。

「クーゲルから各機へ!会敵次第編隊を解除して攻撃にかかるぞ! 護衛機は無視して爆撃機だけを確実に落とす! いいか! 護衛機にはかまうなよ! 墜とすのは爆撃機だ!」

「「Jawohl!!」」

スロットルを上げ、一気に高度を上げる。エンジンがうなりを上げ、機体は太陽光を浴び銀色に輝く。乙女たちを祝福しているかのように。

「敵爆撃機を発見!編隊解除!!! 一撃離脱を徹底しろ!! かかれぇ!!!」

クーゲルの号令を合図に、雲の切れ間から銀翼を携えた戦闘機が一斉に降下する。その姿は、終末のラッパを鳴らす天使たちによく似ていた。

Ziki!Ziki!Ziki!クーゲルが機銃のスイッチを押し、機関砲弾が重爆のエンジンを撃ちぬく、ボワッ!と炎が上がる。クーゲルはその燃え上がったエンジンのすぐ前をするりとツバメのように潜り抜けていった。

「一機目!!」

クーゲルが叫ぶ。降下して出た速度をそのままに、操縦桿を素早く引く。体が座席に押し付けられ、視界は暗く、意識が持っていかれそうになる。

「ウッ!グッ!!」クーゲルは必死にいきんで意識をとどめた。

「ARROW!! 発射用意!!」クーゲルが叫ぶと、主翼の下に光の矢が生成される。

「RANGE!ON!」

グルーゲルの網膜に映る、4機の爆撃機と2機の戦闘機の照準が合う。そしてヴォオン!と低いうなり声をあげながら、光の矢が一斉に振動をはじめる。狩りの準備が完了した合図だ。

「FEUER!!!」

号令とともに、6本の光の矢がBoW!BoW!BoW!と音を立てて一斉に放たれる。放たれた矢は獲物を追いかけるオオカミのように、正確に目標を追尾し、射抜いた。矢に貫かれた機体の翼はあっけなく引きちぎられ、6機はきりもみをしながらハエのように落ちていった。

「よし!!ドイツの土を腹いっぱい味わうんだな!!」クーゲルが歓喜し悪態をつく。

オストマルクの編隊は大きく崩れ散り散りになっていく。

「ブレイク!!ブレイク!!」オストマルクの指揮官が急いで命じるが、時すでに遅し。

「ケーキが切れたぞ!俺たちも突っ込むぞ!」

クーゲル隊が切り開いた活路を、上空で機をうかがっていたビースト隊が突き進む。一機、また一機とオストマルクの爆撃機は火を噴き、墜ちていく。これこそが、ドイツ空軍が要撃で使っていた新しい戦法であった。

最初に「奇跡」を起こす「ワルキューレ」と呼ばれる特殊なパイロットが率いる強襲隊が、切り込み隊として編隊に突貫し突き崩す。次に編隊が崩れ散り散りになった敵機を戦闘機隊が各個撃破していく。「ワルキューレ」に導かれ敵を確実にあの世に送るこの戦法は、「ヴァルハラ戦法」と呼ばれていた。

「これで最後だ!」クーゲルが機関砲を発射し、重爆の翼を貫いた。あっけなく翼がへし折れ、螺旋を描きながら機体後墜ちていく。パイロットたちが悲鳴を上げた。最後の爆撃機が墜とされると、護衛の戦闘機隊は一斉に退却をはじめた。

「よし!全機集まれ!引き上げるぞ!」

クーゲルが号令をかけ、編隊を組みなおす。

「よお!久しぶりの大戦果だな!何機墜とした?クーゲル!?」

ビーストがクーゲルの横に機体をつけ、軽口をたたいた。

「ビースト、編隊を崩すな。10機墜とした」

「さすがだな!俺は5機墜としたぞ!新記録だ!!」

「フッ!クーゲルからアテナイ!聞こえるか?」

「アテナイ、感度良好です」アテナイが穏やかに答える。

「敵戦爆連合の撃退に成功、クーゲル、ビースト両隊、これより帰還する」

淡々とクーゲルが報告する。

「お疲れ様、気を付けて帰ってきてね」

「ああ、祝杯を準備して待っていてくれ!」

クーゲルがご機嫌に通信を終える。しかし、専用の早期警戒機で作戦空域を監視していたアテナイが異変に気付く。

「クーゲル!! ビースト!!敵の追跡機(チェイサー)がついています!! すぐに散開して!!!」

アテナイが自分の奇跡「戦略眼」でクーゲルたちの編隊すぐ後ろについた追跡機の存在を捉え、叫んだ。

「ん?敵機なんてついてきてないぞ?見間違いじゃないのか?」

クーゲルが周囲を警戒するが、敵の姿は見えない。

「こっちもだ!敵機を確認できない!」

ビーストも同様の返事をした。次の瞬間、ビースト隊の戦闘機が一機、突然に燃え上がり爆発する。

「Achtung!!Achtung!!散開しろ!!」

クーゲルが叫ぶ。先刻まで狩人だったクーゲルたちは、オオカミにかられる哀れな子羊に成り下がったのだ。

「くそ!敵を発見できない!!!そっちはどうだ!クーゲル!!」

ビーストが叫ぶ。そうしている間にも次々と、戦闘機が燃え上がり、墜ちていった。

「敵機を確認した!真っ黒な機体!!ワルキューレだ!!間違いない!!」

その漆黒の戦闘機は、悪魔のように俊敏で、神出鬼没だった。

「俺は逃げる!勝てっこない!」

怯えたビーストが反転降下し、逃げようとする。

「まて!そっちに行くな!」

クーゲルが叫ぶが、遅かった。待ち伏せていた追跡機(チェイサー)の機銃掃射を受け、機体が木端微塵に吹き飛ばされる。

「Ahhhh!!」ビーストが豚のような叫び声をあげる。

「くそ!くそ!アテナイ!敵の能力はなんだ!!解析してくれ!」

「駄目よ!クーゲル!!生き残っているのはあなただけ!すぐに逃げて!」

「しっぽ巻いて逃げられるか!もういい!私だけで墜とす!」

頭に血が上ったクーゲルが追跡機(チェイサー)を追い詰める。

「とらえた!!墜ちろ!!!」

20mm機関砲を発射し、追跡機(チェイサー)を貫く。しかし、手ごたえはなかった。機体は煙のように消えたのだ。

「なに!」

あっけにとられたクーゲルを衝撃が襲う。BASYU!BASYU!BASYU!翼に機関砲弾を食らった。いつの間にかクーゲルの背後にあの追跡機(チェイサー)がいたのだ。

「ばかな!」

クーゲルがそう叫んだが、何もかもが遅かった、右翼が燃え上がり機体が木の葉ように墜ちていく。もはや脱出はかなわないだろう。視界が暗く失われていく。暗転、暗転、暗転、彼女は負けた。

 




気が向いたら続きかきます
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