乙女たちにジュラルミンの翼を   作:社畜新兵

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二人の会話がまた続きます


乾杯しよう

「初等訓練は何とか終わったな。ようやく明日から戦闘訓練に入れる」

 シュタイナーは汗だくになりながら、なんとか飛行服を脱いでいる。

「厳しくやりすぎたんじゃないですか? 形になったとは言え不安が残りますよ」

 クルツは手慣れた手つきでさっさと着替え終え、椅子に腰かけ一服し始める。

「手伝いましょうか?」

「いや、どうもこのモコモコした飛行服は脱ぎにくい。よっと! ふう!」

 ようやくシュタイナーは着替えを終えた。

「よし、ここで状況を整理しよう」

 飛行服をハンガーにかけると、シュタイナーは机に訓練生たちの資料を広げる。

「ワルキューレが4人でしたね。全員脱落もせず。よく頑張りましたよ」

 少女たちの資料をクルツは一人ずつ丁寧に確認した。

「これでハンナが帰ってくれば、わが隊は世界初のワルキューレ戦闘飛行隊となる。活躍できれば歴史に残るぞ」椅子にゆったりと腰かけてシュタイナーはくつろぎだす。

「そのハンナはいつ帰ってくるんです?」

 クルツは資料に入念に目を通し、細かく訓練飛行で得た知見をペンで書き足していく。

「明日だ、なんでも模擬空戦の最中にRAFの新型戦闘機を墜としたらしい。その聞き取りだの、恩給の受け取りだので遅くなるらしいぞ」

 シュタイナーは煙草の煙をゆっくりと吐き出すと、得意げにそういった。

「ほう、それはすごい。帰ってきたらたっぷりと話を聞きたいですね。新型の戦闘機について」一瞬手を止め、クルツも笑みを浮かべる。

「あまり空戦の話ばかりすると、またすねるぞ。あいつは空戦が好きというより、俺たちに褒めてもらうために、戦っている節がある。戦って勝つことにこだわりはないみたいだ」

「俺たち? あなたに褒めてもらいたいから頑張っているんですよ。あの子は」

「まだそんなことを言っているのか? あの子一人を特別扱いするわけにはいかん。俺たちはこの子たちの父親になり、兄となる必要があるんだ。愛によって縛り、愛のために戦わせる」

 シュタイナーは黒板に少女たちの写真を一枚ずつ張り付けると、Liebe(愛)と大きく文字を書き込みその単語に、アンダーラインを引き強調する。

「少佐! あんたは、あの子たちを子犬か何かだと思っているんですか?」

 クルツはシュタイナーの考えが理解できなかった。戦争に勝つために、この男は何をするつもりなのか。疑問と怒りがわいてくる。ほかの指揮官のように少女たちを戦争の道具として暴力しばりつけ奴隷のように使うわけではなく、あたたかい寝床と食事を用意し、訓練でミスを犯したとき時は叱り、指示通りうまくやってのけた時はよく褒めた。まるで父親のように、少女たちに愛情を注いでいたのだ。かといってあの子たちが死に尽くしても、この男は悲しまないだろう。得体のしれない、気味の悪さがこの男からは漂っていた。

「大尉、君は正義感が強すぎる。これは新しい試みだ。実験だよ」

「実験?」クルツは眉をひそめる。

「ワルキューレを主力とした戦闘機隊はまだこのヨーロッパにはない。私はこの部隊を成功させたい、あの子たちに戦局を覆すような活躍をさせたいんだ」

「そのための実験と? 戦闘機隊だけで戦局を覆せるとでも?」

「例えばこいつを沈められれば?」

 シュタイナーはまた資料を広げ始める、海図と設計図だった。

「ドレットノート? ロイヤルネイビーの象徴を、たった五人で沈められるとでも? 夢物語だ」クルツは呆れかえる。

「いまはそうだ。だがもし実現出来たらどうだ? 最強の戦艦がたった五機の戦闘機に沈められたら? ジョンブルどもはさぞ動揺するだろうよ。そして我らがカイザーはライヒスタークからこう演説するのさ。「わが帝国の優秀な乙女たちが憎きイングランドの巨大戦艦を藻屑に変えた! イングランドの軍艦はこれから毎日ドーバー海峡のそこに消えるだろう! われらの勝利の日は近い!!」とな」

 シュタイナーはお得意の演説を披露し、それを飽き飽きした様子でクルツは見ていた。

「あんたは本気で思っているのか? それでこの戦争に勝てると?」

 冷たい視線を向けるクルツ。

「まさか、そこまで馬鹿じゃないさ。アメリカが参戦した。我が国の敗北は時間の問題だな。俺たちにできることは、敗北をましな敗北にすることだけだ。イングランド人がもう千人ばかし余計に死んでくれれば、我が国は有利な要件で講和を結べるかもしれない」

 そっと紙巻きたばこに火をつけ椅子にふんぞり返る。

「死体の山を積み上げても、戦争は終わりませんよ、怨嗟の声が連なるばかりだ」

「そうかもしれないが、そうじゃないかもしれない。やってみる価値はあるさ」

 シュタイナーはグラスを二つ取り出すと、ウィスキーを注ぐ。

「それは詐欺師の言うことですよ」

「なら引き下がるか?」

「まさか、望むところです。「ブリッツ」を墜とせるなら、この列車からは降りませんよ」

 クルツはグラスを手に取り、立ち上がる。

「そうか、この腐った戦争と!疲れ切った我がドイツに!」

「穴だらけの計画と! 勇猛果敢支離滅裂な司令官に!」

「「Prosit(乾杯)!!!」

 二人の野望と意地を知らずに、少女たちはあたたかいベッドですやすやと眠っている、「親の心子知らず」知らない方が幸せなのだ、知らなければ、子供でいられるのだから。

 

 

 

 




物語が!進まねぇ~
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