乙女たちにジュラルミンの翼を   作:社畜新兵

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今回も戦闘はなしです。


GOOD HUNTING

「GOOD!!! HUNTING!!!」

 機体を操縦するディルトン大尉は、私がドイツ軍機を撃墜するとそう言ってくれる。

「ありがとう、ギルトン!!」

 彼の突き上げた右こぶしに、私は自分の右こぶしを突き合わせる。ハイタッチのかわりだ。

「十分な戦果だ! 帰投しよう」

「YES Sir!! 警戒を続けます!」

 ブリストルが機体を傾け左旋回、高度を下げつつ帰路につく。今日も私はドイツ軍機を撃ち落とした。自分の雷撃で、何機も何機も。はやくこんな戦争、終わってくれないだろうか。

 ブリストルが基地に着陸する。整備員たちが機体を格納庫に収める。

ディルトン大尉と私は司令室に出頭する。彼が司令室の扉をノックした。

「入れ」

「ディルソン・バーリンガム、イリーナ・ヴェルリッヒ、ただいま帰投しました」

私たちはまっすぐと敬礼する。

「楽にしろ」

 不愛想な指揮官の男がそう言った。初老で細身のこの男の名前は、なんだったか。

「今日の戦果は?」

「アルバトロスを3機撃墜しました! Sir」

「よろしい。速やかに報告書を提出するように、下がってよし」

「YES Sir!」

 ディルトン大尉が素早く敬礼し、指令室を後にする。私はそのまま待機する。指揮官には言いたいことがあるのだ。

「どうした、イリーナ准尉? 君も下がっていいぞ」

「大佐殿、意見具申してもよろしいでしょうか?」

 言ってやる。いい加減我慢ならないんだ。 

「いいぞ、聞いてやる。言ってみろ」

「パイロットとして戦いたいのです! 後部席のガンナーとしてではなく!」

「またか。言ったはずだぞ、その必要はないと、きみは今まで通りやっていればいい。ディルトンの後ろで派手に雷をバリバリと、それにドイツ軍は震え上がる」

 またかだと?それはこっちのセリフだ。私だってやれる。

「私がキャメルを操れば! もっと戦果をあげられます!!」

「新型をご所望か、ずいぶんと図々しいな。しかし君は操縦訓練を受けていないよな」

「操縦はすぐに覚えます! 私は自分の手で! 敵を打ち払いたいのです!」

 私だって、リヒトホーフェンやインメルマンみたいにエースになりたい。

「イリーナ君は自分の役割を理解していないな」

「ウィッチの力を使って敵を打ち払うのが、私の役割です」

「違うイリーナ、ジャンヌダルクの役割は聖母マリアの旗を前線ではためかせることだ。剣をふるうことじゃない。君は派手な雷撃で敵を恐怖させている。それで十分だ」

 いつもそうだ、男どもは私をプロパガンダの道具としか思っていない。

「ジャンヌは自分の足で走り、戦いました! いつまでもディルソンにおんぶされていては、いつかドイツ兵に指をさされて笑われてしまいます!」

「今のところは笑われていない、見てみろ、今朝に記事だ。一面に君のことが書いてある」

「ドイツ軍がウィッチを飛行機に乗せたら? その時のために、私が自ら操縦した方がいいでしょう!」ここで譲ったらだめだ、わがままと言われようが押し通して見せる。

「その時が来たら考えてやる! 下がりたまえ! この話は終わりだ!!」

「しかし大佐!!」

「下がれと言っている。君の変わりはいくらでもいる。忘れたのか?」

「失礼しました」

 ダメだった。あのしなびた老人は何もわかっていない。何もかも嫌になる。空を仰ぐのも嫌になったから、最近は地面ばかり見ている。あざみの花が咲いていた。

「あざみはヴェルリッヒ家の象徴。紋章もあざみ。恰好だけは立派な貧乏貴族って、母さんがよく言ってた」

あのドイツ軍機、私が初めて墜とした紺色の飛行機にはアヤメの花が描かれてた。きれいだったな、私もあざみの花を描いた戦闘機が欲しい。

「家に帰りたい」

 そういうとイリーナはとぼとぼと歩いて行った。孤独だった。大人たちはこの子に関心を示さない、今はまだ。

 

 

 




気が向いたら続きます。
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