乙女たちにジュラルミンの翼を   作:社畜新兵

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二人で食事をとるだけの話


朝食

薄暗い階段をゆっくりと、のっしのっしとヘルムートは降りていく。朝日に包まれた食卓にたどり着き、目を細める。

「おはようムート、相変わらず朝食には間に合うのね、顔くらい洗ってらっしゃいな」

 目をこすりながらヘルムートは答える。

「おはようござい、ラジオつけてくれるか?」

「はいはい」

 水で顔を軽く洗うと、タオルでそっとぬぐう。ラジオのニュースにヘルムートは眉をひそめた。それはオストマルク帝国がべネルクス三国を占領し、フランス侵攻の足掛かりを手に入れたことを伝えていた。

「はい、あなたの分朝食はちゃんと食べて。約束でしょう?」

 ヨアヒムはトーストとオムレツ、付け合わせのトマトが乗ったモーニングプレートをヘルムートの前に置き、ラジオのボリュームを下げた。

「戦ってるのは?何人だ?」

 ヘルムートは戦況をしつこく聞いた。

「食事中に仕事の話はなし。左手、動かすのうまくなったじゃない?」

 ヘルムートはあえて左の義手を利き手にして、朝食をとる。

「いつまでも傷病人ではいられない、それで私はいつ空に戻れる?」

 トーストをほおばり朝食を流し込むとヘルムートはそう言った。

「もう少しゆっくり味わって食べてよ。せっかく作ったんだから」

 ヨアヒムは毒づく。

「新しい機体と基地のめどは立ったのか?どうなんだ」

 朝食を平らげたヘルムートがヨアヒムに問い詰める。

「しばらくは無理ね。急あつらえの機体なら用意できるけど、あなたは満足しないでしょう?」

「当たり前だ!もっと早く、機動力のある機体がいい!あいつを倒せるような!」

「ワルキューレとは戦わせないわ、勝ち目がない。戦い方を変えましょう!」

 ヨアヒムが落ち着いた声で、しかしはっきりと答えた。

「戦い方を変える?どう変える!私たちの祖国は帝国に飲み込まれ、同胞たちは前線で戦ってるんだぞ!あの男の野望のために!!」

 ヘルムート怒りをあらわにする。

「大きな敵と戦うには小さな私たちは力不足よ。だからまともには戦わない」

 優雅に紅茶をすするとゆっくりとヨアヒムは言った。

「戦わない?しっぽ巻いて逃げるっていうのか?どこにだ、イングランドか?ロシアか?」

 机から身を乗り出しヘルムートが食いつく。

「いいえ、逃げないわ、戦い方を変える。正面からは戦わないってだけ」

「いいだろうそれで?新しい作戦は?」

「ブリーフィングは格納庫で行うわ。でもあなたきっと怒るわよ」

 ヨアヒムは不敵な笑みを浮かべながら言う。

「なんだそれ?まぁいい。早く行こう私は気が短いんだ!知っているだろう」

 二人は急ぎ納屋に向かうさびれた農場のパルチザンの小さな基地が二人に与えられた小さな抵抗の灯だった。

 

 

 

 

 

 




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