「おい!!何もないぞ!私の愛機はどうした?」
カビくっさい匂いが染みついた、古ぼけた納屋の真ん中でヘルムートは叫んだ。
「ピーピーうるさいわね、ふぅ、あるわけないじゃないの、戦闘機なんて。瀕死のあなたを担ぎこむので精一杯だったんですもの」
ゆっくりと煙草をふかしながらヨアヒムが言った。
「じゃあどうするんだ?機体がなければワルキューレもただの人だぞ」
「ないなら作るしかない、必要は発明の母ってことでね」
そういうとヨアヒムは床に皮のような質感の分厚い模造紙のようなものを広げる。
「感魔紙かよ!まさか一から設計しろと?」
「そのまさかよ、ハイこれ!魔法の杖でアブラカタブラと感魔紙に描けば私たち魔女はなんだって作れる。コルドロンで霊薬が作れるようにね」
ヨアヒムが得意げに杖で椅子を描くと床から木の椅子が出現した。それに座ると今度は紅茶をすすり始める。
「やだよ、やりたくない。設計は子供の手遊びじゃない手投げのおもちゃなら作れるけど」
ヘルムートは手早く空中に線を描くと手投げの飛行機を作り、紙飛行機のようにさっと飛ばした。
「あらあら、うまいじゃない。力学の演算や重心の算出は私がやってあげるから好きに描いてみなさいな」
そういうとヨアヒムは紅茶を飲み切り、魔方陣をいくつも展開し演算を始める。感魔紙の表面や空間にグリッドと座標が現れる。
「使える材料は?」
ヨアヒムが左腕の義手をいじりながら聞いた。
「リストに書いてあるわここから作りましょう、ささっと機体を完成させて、出撃~なんてね」
両手を広げて飛行機の真似をするヨアヒム。
「航空ベニヤか、まぁ軽くていいかもな」
そう言いながらヘルムートは次々に線を引いていく。やがてそれら交わり飛行機の骨組みが組みあがっていく。
「あら、ずいぶん小さいのね。まさかこの納屋で組み立てるつもり?」
「そのまさかだ、まえと同じような機体を作っても、前と同じように墜とされるだけだ」
線と線を繋げ面にし、飛行機の形にしていくヘルムート。
「重心の計算と強度解析を頼む。胴体と主翼は木製で、調達できるエンジンは?」
手を止めるとポケットから紙巻を取り出し一服するヘルムート。
「はいはい、重心位置、強度ともに問題ないわ。エンジンはねぇダイムラーベンツを用意できたわ!どう?うれしい?」
にやにやしながら感魔紙からダイムラーベンツ605エンジン召喚する。
「最新型じゃないか!いったいどんな魔法を使ったんだ?」
新しい靴を送られた少年のようにヘルムートは目を輝かせる。
「秘密よ、気に入った?」
「もちろんだこんな即席の機体にはもったいないな!」
「あらもうできたの?早いじゃない」
「ああシミュレートしてくれ」
「高速ね、滑走距離もすごく短いわね、見たことないわね、こんな機体向きが逆みたい」
ヨアヒムは完成した機体に数値を入力すると諸元を算出し言った。
「先尾翼な水平尾翼が前にあるから効率よく早く飛び上がれるんだ。それに機体は木製にする。軽い分速度が出るし、機体強度はそれ十分だ」
ヘルムートは完成した機体のモデルをぐりぐりと動かしながら語る。
「よし、いけそうだな。出力するぞ」
「まかせて!エロイム!エッサイム!それバランカ!バランカ」
トンチキな呪文を唱えだすヨアヒム
「魔力込めるだけなんだから黙ってやれよ!!出力安定!問題ないな!」
悪態をつきながらヘルムートは集中する。
「よし完成だ!何分かかった?」
「58分」
「じゃあ機体名はMINUTESにしよう。5minutesで飛びたち!10minutesで敵を倒す」
「アメリカのミニッツメンみたいねやられるのに一分とかからないといいんだけど」
「こいつは戦局を変える。といいんだがな」
「どんな兵器も使い方次第よ」
「そうだな。ひとまずこいつの試運転と行くか」
「仕事熱心だこと、私は昼寝でもしてるから、くれぐれも死なないように」
余った資材でソファを呼び出すとヨアヒムは寝てしまった。
「おい!手伝ってくれよ」
「シャドウ手伝ってあげて」
ヨアヒムがそういつと影から作業服を着た男が5人出てくる。
「よし!押してくれ」
ゆっくりと機体が進みエンジンがスタートする。ヘルムートの新たな再出発は見捨てられた農場で始まる、力強く確かな翼で。
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