乙女たちにジュラルミンの翼を   作:社畜新兵

6 / 14
短めの1000文字ちょっとです。


まっくらな道

「あれにワルキューレが乗っているんですか?本当に?」

 頭上を悠々と飛行するアインデッカーを眺めながら、青い瞳をした青年がつぶやく。

「ああ、本当に乗っている。呑み込みが早くてな、一人で操縦しているんだ」

 シュタイナーはハンナが操縦するアインデッカーを見上げたまま、青年の質問に答えた。

「歳はいくつです?彼女」

 青年がシュタイナーに視線を戻し質問する。

「14歳だよ、名前はハンナ・ラーデンバーという」シュタイナーが答える。

「14! 幼すぎます! もっと大きなワルキューレもいたでしょう!」

 ハンナの年齢に青年は驚きを隠せない。14歳はワルキューレとしても幼すぎたからだ。

「クルツ、クルツ・フォン・ハウザー大尉、幼いからいいんだよ。あの子は純粋だ」

 シュタイナーはわずかに笑みを浮かべ、再びアインデッカーを見上げる。

「純粋だから、染まりやすい」

 クルツは目を細め、空を仰いだ。彼の癖だった。ととのった目鼻立ちに美しい金髪と青い瞳のクルツは、貴族出身者のこともあってワルキューレからも人気のエースだった。

「君の仕事はあの子を人殺しのマシンに育て上げることだ。私と一緒にね」

 シュタイナーはくわえタバコに火をつけ、ゆっくりと吹かした。

「いやな仕事だ」

 クルツはため息交じりにぽつりとつぶやいた。

「いやなら原隊に帰ればいい」

 シュタイナーがクルツの愚痴を聞き逃さず言う。

「原隊? 俺の原隊はもうない! あいつに墜とされた! 誰一人生き残れなかった!」

 突然、クルツは怒りをあらわにし、叫ぶ。彼の指揮する戦闘機隊は、イギリス空軍のワルキューレ「ブリッツ」の最初の戦果になった。

「そうか、そうだったな」

 少しも悪びれることなく、シュタイナーは煙草をふかしている。

「あいつを! 「ブリッツ」を殺せるなら! 俺はなんだってやりますよ! 悪魔とだって握手してやる!!」クルツは歯を食いしばり、こぶしを握りこんだ。

「いいぞ、憎しみこそ力だ! 一緒に血と泥にまみれた。真っ暗な道を歩こうじゃないか!」

 シュタイナーは煙草を左足で踏みつぶすと、右手を差し出しクルツに握手を求める。

「もとより地獄に落ちる覚悟です。その時は、必ずあのあばずれも道ずれにしてやります」

 差し出された右手をクルツは力強く握り返す。

「見ろ!あの子が降りてくるぞ。出迎えてやろうじゃないか!」

「そうですね、われらがワルキューレのご尊顔を拝みに行きましょう!」

 青々とした草原にゆっくりとアインデッカーが着陸する。エンジンが停止し、コクピットから小さな少女が元気よく降りてきた。ふたりは少女をあたたかくむかえた。胸にどす黒い野望を抱えたまま。

 




気が向いたらまた書きます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。