超昂大戦SS短編集【調査報告書】エスカチーム × 新たなる超昂戦士たち   作:環 藍河

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※1話完結型短編小説の不定期連載となります。
※原作第2部序盤登場の、魔女クルルに関するネタバレがあります。キャラクターストーリーを読んでからご覧いただくと、より楽しめます。
逆に、未入手の方からは一部ネタバレと受け取られる表現が含まれている可能性もございます。


Case 1. エスカチーム解散!? 絆に触れた天井裏の魔女

「アカリさぁ〜ん…、ウチのせいで…皆さんが…エスカチームが、解散しちゃったら、ウチ…ウチっ…うわあああ〜〜んっ!」

「クルルちゃん?! クルルちゃん!!」

 

ダイビート本部の談話室。号泣が止まらないクルルに、差し向かいでオレンジジュースを差し出すアカリ。

「んくっ、ひぐっ、ふくっ、えくっ…」

喉を鳴らしてはむせび泣き、また飲んでは鼻をすする無限ループ。アカリには、ストローから運ばれる液体が、そのままクルルの喉か鼻で濾過されて、目からこぼれるイリュージョンのように見えた。

 

箱船・ジークフリート師団諜報員、クルル・センテネラ。

宝石を額に抱く伝承上の生物・カーバンクルの魔女因子を持つ少女は、かつて額の宝石を狙う賊に幾度も狙われた苦い過去から、対人コミュニケーションを極度に恐れ、心を許せる相手と確信を持てるまで、徹底したストーキング……もといリサーチを幾重にも怠らない。

 

そんな彼女の登場により。

エスカチームの絆は、風前の灯であった。

 

……

 

「トパーズ! 今日は言わせて貰うぞ!」

 

旧ジークフリート派、皇帝・ファブニル率いる魔女師団は、エリザベス派を導く若き才媛・雪城エリーの旗振りで、今後は段階的にダイビートの傘下部隊に移行して、これまで以上の活躍を期待されることとなった。

そのさなか、先行して派遣されたクルルは、魔女師団とダイビートの協力形態を探るため、エスカチームに編入。2日間の合同ミッションを課された。

 

その初日ミッションの帰投直後、色をなすサファイア。

 

「…あによー、どーせアレでしょ、スタンドプレー禁止ー。はいはい。」

「ああそうだ。クルルがいるからって、自分のファイティングスタイルを崩すな! チーム全体のためにすべきことを考えろ!」

「…は、はあーーっ!? クルルは関係ないわよーーっ! サファイア、こんだけ長くチーム組んでて、まあーだあたしのこと、わかってないの? 信じらんない!」

 

サファイアとトパーズの、戦略の相違が本番で露見。戦果への影響こそ最小限に収まったものの、そのギャップが二人の火種となった。

 

「とにかく、明日もこの5人でミッションだ。トパーズ、飛び出したら承知しないぞ!」

「あーうっさい! サファイアこそ、明日何があっても、またクルルのせいになんかしたら、絶対許さないからね!」

……

 

「ウチ…ウチなんかが、あのオルタナスタインを打ち倒し、世界中の全魔女を救ったエスカチームに亀裂を入れるなんて…な、なんて詫びたらいいか…!」

「だ、大丈夫だよ。そんな、クルルちゃんは何も悪くないから…!」

はい、クルル、いっこも悪くありません。

回想部分直前『クルル参上! エスカチームの絆・風前の灯火』…の表現は、ここで訂正しておきます。

 

「アカリさんは…何でお二人を止めなかったんですか…?! このままじゃ明日のミッションどころか、エスカチームが空中分解ですぅ…!」

 

「う〜ん、何で、と聞かれても…、ヒビキちゃんとうららちゃんは仲がいいから、かな。チーム解散なんて、ぜーったい無いから。」

「あ…あんな喧嘩腰で? 別れ際だって、あんな啖呵を切って…ですか?!」

アカリの呑気な返しに、食い気味に返すクルル。

 

「信じられません…ウチ、ジークフリート師団の誰かにあんなこと言われたら、もう金輪際、話もされないし口もきいてもらえない、永久絶交宣言だと思います…! 逆にどうして、仲が良い同士で、あんな激しく言えるんですか?」

 

「う〜ん…」

少し考え、言葉を整理して、アカリが続ける。

「私もヒビキちゃんやうららちゃん、エリーちゃんにも、ちょっとキツイかな〜ってこと、ときどき言うんだ。

その時に私が、何で遠慮しないか、で言うと。」

クルルは、アカリの優しい表情に、真摯さと大きな決意が込められたのを感知し、息を呑む。

 

「仲がいいからこそ、イヤなことも、相手にとって苦いことも含めて、私は自分の本心を正直にぶつけたいんだ。」

アカリが続ける。

「遠慮って、隠し事でもあるから、エスカチームのみんなにはすぐバレちゃうんだ。私らしくない、って。だから私は、いつでも全力の本音でぶつかって、正直な自分をみんなに見せよう、って決めているんだ。たとえ、みんなが聞きたくないことでも。」

 

「ええ…?」

「クルルちゃんにも、そう思える仲間が、絶対にできるよ。そのとき、今日のヒビキちゃんやうららちゃんのことを思い出してみてね。」

 

(アカリさんは、ああ言ったけど…)

クルルの隠密活動、始動。

(これは、明日組むチームメンバーの、メンタルコンディションの、把握です! 必要なタスクなんです! ふんす!)

……

「…私は、未熟だ…」

自室の床で瞑想しながら、ヒビキがつぶやく。

うららが、口ではああ言いながら、クルルのために戦闘スタイルを崩したことは明白だった。

 

前衛のトパーズは、チームメンバーを焚きつけ、勇気を奮い起こす。

時にすばしっこく敵を翻弄し、しかし時に泥臭く、拳をがっつり貰いながらも、決して怯まない。会場をリングも観客席もなく沸かせるプロレスラーさながら、心を震わせるバトルをやってのける。

 

〘クルル! 自由に戦っていいわっ! あんたの全力、見せてみなさいっ!〙

トパーズの選択は、引っ込み思案で遠慮ばかりのクルルに、帰属意識や自信を与えたいがための、単独突撃だった。

 

それでも、サファイアは看過できなかった。

 

トパーズのもくろみが裏目に出たとき、チームの戦線は崩壊する。

この4人チームで貴重な全体攻撃、ブライトネス・エスカレーションを擁するトパーズが深傷を負って撤退したら、自分のブリザード・エスカレーションだけでは撃ち落としきれなくなる。

敵が底なしの増援を投入し、集中攻撃でルビーやアメイズを撃破してきたら、クルルのダイビート初陣は目も当てられない惨敗となりかねない。

 

だからこそサファイアは、確実な勝利の布陣を。後衛で温存したトパーズとサファイアで敵のスタミナを浅く広く削り、アメイズのバジリスク・エスカレーションで足止めを織り交ぜながら、撃ち漏らしたタフな敵はルビーのストライク・エスカレーションで確実にとどめを刺す。

そんないつもの布陣を当然選ぶべきと考えた。

 

トパーズとサファイアの戦略は、一方が完全な正解で、他方が100%の不正解、ではない。

だが、ヒビキの悔恨は。

 

「何故あそこで私は、クルルの名を口にしたのだ…。」

一連の戦略変更の原因がクルルにあるような、ヒビキの一言。

そうだ。うららの怒りも、そこが主眼。

ただでさえ、変に周囲に気を遣いすぎるクルル。その名前をあの場で馬鹿正直に出しては、クルルが自責の念に囚われてしまうことぐらい、わかりきっていたではないか…!

 

〘クルルはこれからずっと一緒の、大事な仲間じゃない! だから、かばったのに。台無しじゃないのー!〙

 

「長いつきあいの私のこと、わからないの、か…。違いない…!」

 

(ヒ…ヒビキさん、うららさんのこと、こんなふうに…。)

自己嫌悪に沈むヒビキから溢れ出す、一言、二言。

その意味を噛み締め、クルルはヒビキの部屋を後にした。

 

……

ミッションのためリアルタイムで観られなかった、ヤルトラマンNOOBの最新話は、もう3周目のヘビロテ再生。

なのに、ストーリーもバトルも、まるで頭に入ってこない。

「…う〜〜…っ。」

一人の部屋で、苛立ちを隠さないうらら。

 

次の瞬間。

「だあああーーーーーっっ!!」

頭を抱え、のけ反ってベッドへ背面跳び。

「何であたし、もっとうまくやれないのよおーー!!」

 

甘えていた。

自分が前衛で突っ込めば、サファイア達も意図を読み取って、フォローしてくれると思っていた。

だが、前衛の戦術変更は、後衛が全体攻撃をかけるべきタイミングを大きくずらしてしまう。

ブリザード・エスカレーションは、前衛が弱らせた敵をまとめて掃討するのが、ベストの運用。

だが今日は、ルビーとトパーズの狙った敵がしばしば重複。オーバーキルとなり、こちらの手数は増えても、敵が一向に減らない。こんな戦局では、無傷の敵を一撃で沈めるほどの威力がないサファイアの全体攻撃は空砲も同然であり、無用に戦闘時間を浪費する結果であった。

 

〘トパーズ! やるならやるで、ちゃんとそう言え! お前を活かすよう、みんなで動く!〙

 

「…わかってる! わかってんのに!」

(ぴいいっ!?)

一瞬、自分に浴びせられた怒号のように、脊髄反射しそうになるクルル。

それは誰もいない天井へぶつけて自分に跳ね返す、うららの苦悩だった。

 

「…嘘。あたし、わかってなかった。ヒビキの言いたかったこと、ぜんっぜん…!」

ちぐはぐに攻めあぐねる中、ならば自分がよく観察して、逆にサファイアがスタミナを削った敵を狙うよう、動くこともできた。

それをしなかった自分の視野狭窄が。

なまじみんなを引っ張ろうと独断で動いて、その挙げ句の空回りが。

 

「うがあああ〜〜っ!! 何してんのよ、エスカ・トパーズ〜〜っ!!」

自責と羞恥と悔恨に、ベッドでハムスターのぬいぐるみをモフりながら、ごろころ、ゴロゴロ、ひとりローリングクレイドルで悶えぬくうらら。

「…明日、どうしよう…!」

(うららさん…!)

 

クルルは二人の部屋を偵察し、お互いがお互いの苦言を虚心坦懐に飲み込んでいたことを悟った。

(でも…二人はまだすれ違ったままですぅ…! やっぱり…大丈夫なんでしようか…?!)

 

……

「…サファイア。」

翌朝、出撃前のブリーフィングを終えた5人がウォームアップを始める中。

少し重い空気をつんざき、トパーズが口火を切る。

「やっぱり私、今日も前、行くわ。」

「なっ…!」

「ぴいっ!!」

ダメだっ、やっぱり自分のせいで、チームに決定的な亀裂が…!

クルルがギュッと目をつぶった、次の瞬間。

 

「でも、昨日みたいな独り相撲は、絶対しない。サファイアも、ルビーもアメイズも、クルルもちゃんと見ながら、スタンドプレーさせてもらう。後ろ、頼むわよっ。」

(えっ…トパーズさん…!)

 

「…私は、承知した。他の3人も、これでいいか?」

うなずくルビーとアメイズ。

(サ…サファイアさんも…!)

 

「異議はないようだな。トパーズ、絶対にこの5人で勝利しよう。援護は任せろ!」

 

……

「うららさんも、ヒビキさんも、凄いです…!」

出撃直前。

「あんなにガチンコでやり合って、なのに、一晩明けたら、昨日以上に絆を深めて…! アカリさんも、お二人がこうなるって、わかってたんですね!」

(ま…まあ、二人の部屋に忍び込んで話を盗み聞きした、ってところは…スルーかな?)

 

「クルルちゃんも私たちに、何でも言ってね。これからずっと一緒に戦い続ける、仲間だから!」

「ア…アカリさあん…!」

昨日までは謙虚と弱気がこじれて、卑屈となって流したクルルの涙は。

今や、信頼と闘志を秘めた、熱い涙に代わっていた。

 

「あ…あの、それなら、一つ。戦闘前にする話でもないんですけど…。

アカリさん、おととい新しい水着、すごくお似合いのを見つけて、来週までキープしてましたよね? でもアレ、胸囲だけワンサイズ引き締めた方が、見る長官さんにもグッと刺さりますよ! 

大丈夫です! 同じお店に同じデザインのベストサイズがあったので、私、仮押さえしてありますから! ふんす!」

 

……

ミッション2日目、トパーズとサファイアは、昨日のガチ喧嘩が嘘のようなコンビネーションで、フーマンとコマンダーを凌駕し圧倒した。

エスカチームの絆に支えられたクルルも、今日はチームに大貢献。カーバンクル・ヴェールで4人を護り、ここぞと言う時は難敵を弱体化してくれた。

ミッションの大目的、ジークフリート師団とダイビートの共闘体勢の模索について、十分すぎる戦果と言えよう。

 

一方。

サファイアが何を言っても、心ここに在らず。

行きあたりばったりに単独突貫をやらかし、トドメを刺しきれず包囲され、ボロボロの肉弾戦、と言うよりグダグダの泥仕合。

なにしろ、唯我独尊のトパーズでさえ、呆れてフォローにたびたび入るほど。

…2日目いちばんのポンコツバトルをやらかしたのは、ルビーだった。

 

「おいっ、ルビー! 昨日のトパーズがよっぽどマシに見えるぞ! 今日は一体…?!」

昨日のトパーズに向けたように、喉まで出かかったサファイアの直言は。

 

「…ちっちゃく、ないもん…

まだまだ成長、するもん…ぐすっ…。」

 

死んだ魚の目をした、ルビーのつぶやきで雲散霧消した。

 

 

「あ…あれっ?」

とんとんっ。

当惑するクルルの肩をたたくアメイズ。

 

「ねーえ、クルル。とりあえず、情報戦で相手の優位に立とうとするのって、味方にはやめようねー。女の子のミステリーを暴いちゃ、

 

ダ  メ  よー?」

 

「ぴ、ぴえええええっっ!!

アメイズさん、ゴメンなさいいいいっっ!!」

エリザベス派の指導者ということを差し引いても、アメイズの静かな憤怒はクルルの直言がいかにギルティか、骨の髄まで理解させるものだった。

 

「んー、謝る相手、間違ってないー?」

「ぴっっ…! はっ、はいいいいっっ!! ルビーさんっ、ルビーさんっ、スミマセンでしたあああっっっ!!!」

クルルの謝罪も耳に入ったか怪しく、夢遊病のようにふわふわと…もとい、ふらふらと大浴場に向かうルビー。

「ルビーさあん、アメイズさああん!! ウチのこと、キライにならないでええええっっっ!!!」

苦い本音を吐露するアメイズも、クルルに信頼を寄せる一人なのだが、クルルにはそれどころではなく、ひたすら水飲み鳥のようにぺこぺこ平身低頭を繰り返すばかりだった。

 




2022年8月2日も、残すところ1時間。
原作「超昂大戦」がエスカレイヤー20周年で盛り上がる当日のさなか、お立ち寄り・ご覧いただき、ありがとうございます。作者の環藍河(たまき あいか)からご挨拶と御礼申し上げます。

今回はシリアス方面に振った、クルルとエスカチームが化学反応するとどうなるかなー、なショートストーリーを投稿いたします。
クルルは第2部でイノリやライカと今後も絡むキャラと愚察されまして、そちらの絡みを今書いてしまうと、後日矛盾が出たとき環が悶絶してしまうので…、今回はルビーやトパーズたちと絡んで動いてもらいました。

ルビーたちとの交流を描きたいキャラはたくさんいます(アルゴルさんのは3話構成になっちゃいましたが)が、ちゃんと両方のキャラが立つエピソードを二次創作するキャパが環にはいっぱいいっぱいのあっぷあっぷでして…(未熟)。
この短編小説スレッドで不定期連載としまして、そんなジェネリック・キャラストーリーが完成次第、1話ずつ追加投下いたします。

この夏、皆さんも超昂大戦を楽しめますように。
そのおそばに、こんなSSでも賑わいを添えることができましたら幸いです。
ではまた、次回作でお会いいたします!
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