超昂大戦SS短編集【調査報告書】エスカチーム × 新たなる超昂戦士たち 作:環 藍河
「接続者(コントラクター)…」
「トキサダさんっ!」
「頭領、頭領、とーりょーっ!!」
護衛対象者に詰め寄る、ダイビート自慢のガーディアンズ3人(うち一人、そのタマゴ含む)。
「私たち3人のうち」
「いちばん護衛されたい人は」
「【『誰(…?)(です?)(ですかっ!?)』】」
…
……
敵襲など考えられないくらい閑かな、ある日のダイビート基地食堂。
満席御礼の昼食タイムゆえ、珍しい相席となった3人。
その、ふとした一言が、冒頭のバトルの口火を切った。
「し〜っかり食べて、午後もトキサダさんをお護りする元気、チャージしなくちゃ! いっただっき、ま〜…」
「…護るのは私、貴女はカロリー過多…」
A定食(ごはん大盛り)を目の前に前口上を唱える、天界要人警護役、九の護銃・メイファール。
そのひとり言を捉えたのは、箱船アルカナメンバーの一人にして要人警護担当・剛毅のレヴィ。
…
レヴィに悪意は全く無かった。ゴーレムの魔力因子を持つ影響か、あるいは生来の性格か、彼女の言葉はしばしば、事象を正しく切り取らない。
あるときは起承転結が繋がらず、あるときは比喩が飛びすぎる。
いずれにせよ、単に、
(長官護衛のために、昼食を大盛りにする必要は無いのでは?)
と言いたかったらしい。
だが。
かちゃっ。
「…レヴィさん、その心は…?
わたくしがトキサダさんにとって不要とでも…?」
誇り高き天界神騎の守護者・メイファールには、レヴィの言葉は挑発、あるいは宣戦布告とも取れた。手にした箸を置き、真意を問う。
「接続者は独立自尊…。」
【意訳】要不要はトキサダが決めること
(自分もトキサダに要らないと言われないよう頑張る。貴女も頑張って。)
「鳩の巣に、燕が同居…。」
【意訳】戦型の異なる者同士でダブルガードした方が、よりトキサダを堅牢に護れる
(貴女と二人で接続者を護れたら嬉しい。)
レヴィなりに、メイファールへの敬意を込めた言葉だったのだが。
「…なるほど。どうやら貴方は、自分が必ずトキサダさんから選ばれる確信をお持ちだと。
鳩は巣箱一つに一羽しか入りませんからね。あぶれる私は、とっとと出ていけ、と…!」
…温厚で人間大好き、慈愛に満ちた九大神騎のメイファールが、今や激おこ。
「いいでしょうっ! レヴィさん、貴女の挑戦、受けて立ちます! どちらがトキサダさん(の護衛)に相応しいか、白黒つけましょうっ!!」
「…パンダの紅白歌合戦…?」
…この時点で、既に滅茶苦茶ややこしくなっているのだが。
「ちょーーっと、待ったあーーっ!!」
同席の3人目、閃忍・花のチルカ。若くして想破七閃に名を連ねる、リトルわんこ系忠臣くノ一。
「頭領を…頭領をお護りする一番槍は、今までもこれからも、このチルカなんです! おはようからおやすみまで頭領を見つめ、頭領の望む全てに応える、それがチルカの務め! これだけは他の誰にも譲れないんですっ!!」
「…シルクハットから、雀も飛び出た…」
「いいでしょうっ、九の護銃の名に賭け、三つ巴だろうと勝ち抜いてみせますっ!」
安閑とした食堂は、もはや混沌の渦中にあった。
…
「第1回っ、ダイビート3陣営対抗・最強ガーディアン決定戦ーっ!」
先程の一触即発ピリピリムードが一転。
談話室はゆる〜く深夜バラエティのノリで生配信が始まってしまった。
「実況は毎度のわたくし、【勝手に】ダイビート【公式チャンネル】フェリニちゃん。解説はエスカチームの皆さんでーっす!」
「チルカはわかり易い奴だが、閃忍の背景含めて可能な限り解説しよう。よろしく。」
「い…一応あたしが、神騎解説代表、なのよね…メイファールさんのこと、ちゃんと言えるかな…?」
「んー、レヴィのことなら、私より適任の解説、兼通訳がいるから、横で発言させていい?」
「お嬢様の命とあらば。レヴィの通訳、お任せください。」
レヴィの幼なじみ・独眼竜メイドさんこと、イレーナ・キッシュであった。
フェリニ、もちろん快諾。…と言うより、イレーナがいないとこの企画、ただの勘違いシチュエーションコントになってしまう。
「あはは…私、あぶれちゃったかな…?」
戦士代表がいないため、アカリはほぼフリーのコメンテーターで同席。
「それでは、勝負の種目を、大会コミッショナー・ユーノさんから発表いただきます!」
司令室に映像が切り替わる。
『えー、その前に。実は配信開始前に、もう3人の武力対決が始まっちゃったの。』
「…えっ? ユーノさん、その割には、三人とも負傷の様子が全く見られませんよっ!?」
「…エスカルゴが、おたまじゃくしの幻で冬眠…ハブも泥酔…」
…?
「ああ、なめくじと蛙と蛇、三すくみで動けなかった、と言ってます。」
イレーナ、なぜ解る。
だが、確かに。
近距離戦闘防御型のレヴィ、中距離アタッカーのチルカ、遠距離結界タンクのメイファール…。
この三すくみでは、下手すると千日戦争。
「さ…最初に動いた人の、負けでしたっ…!」
「に…人間も、やりますわね…!」
『よって、第ゼロラウンドは、ノーサイド!』
…ユーノさん、ノーカウントのことでは…?
…
……
『第1ラウンドは、名付けて【ボディガードは奪い合い・トキサダ綱引き対決】。警護対象者トキサダ、聞こえてる?』
ざわっ。ざわざわっ。
映像替わって、別のスタジオのトキサダは。
某ライダー(初代)の改造手術シーンのごとく、胴と手足を手術台のようなベッドに括り付けられていた。
「や…やめろジョッカー! ぶっ飛ばすぞお!」
うららのアテレコはさておき。
「最近トキサダ、基地内外のベンチで寝落ちしちゃうのよねえ。この前も、心配されて部屋まで連れ込まれて介抱されてたし。」
誰かのキャラクターストーリーも、さておき。
『ルールは簡単。3人がトキサダの手足を引っぱり合い、他の二人を振り払って、最後にトキサダを独り占めにした人の勝利よ。』
「…手足を3人で、引っ張る?
…トキサダさんの手足は4本ありますよね?」
『そうね。だから、アンカー役を一人、お願いしているわ。』
ざざっ。
「長官の右腕は、決して放さない。よろしく。」
久世七暴、鋼のジェレミー。生まれつき無痛覚の彼女は、スラムから戦場まで、何をも恐れず吶喊するペインレスファイター。
「長官…私はキミの痛みも、わからないかもしれない。だけど…頑張る。」
「大丈夫よ〜ん、筋肉断裂から再接合まで、私とセラフィールちゃんで万全だから〜。」
トキサダ治療担当のユユエルは…これからこっ酷い複雑断裂を治せることに、ワクテカしていた。
(ちょ…ちょっと、ユーノさああん! 全世界配信で四肢断裂はマズいですよおおっ!)
(大丈夫、3人とも、趣旨は理解してるみたいよ。)
『さあ、挑戦者は隣のスタジオへ進んでね。』
鍛えたトキサダでも、痛いだけで済むはずがない。
その場の誰もが、中世の魔女審判よろしく、八つ裂き拷問を想起した。
が。
「ダメです…、チルカには…頭領が悶え苦しむのが明らかなのに、手を引くなんて…ムリですううっ!」
「トキサダさん…、私には…、最後までお護りできないようです…!」
「馬謖とタマネギ…私は、斬れない…」
誰一人、スタジオへ移ろうとはしなかった。
『3人とも、正解っ!』
ユーノのナレーションと、クイズ番組らしき正解ジングルが響く。
『もし勝つために、トキサダの手足がちぎれるまで引き続ける参加者がいたら、神罰を落として即失格だったわ。』
…何だこれ。
「…ユーノさん、昨日、時代劇の再放送、観てましたよね?」
場の重い空気を破り、ヒビキがジト目で指摘。
我こそ真の母親だと幼子を奪い合う二人に、ならば両腕を引き合い、息子を力づくで奪えと命じるお奉行様。
果たして、引き合いの手を放した女に「痛がる息子に心を痛めるそなたの愛情、しかと見た。其方こそ、真の母親!」と一件落着。
「バレてた? うふふ、やってみたかったの。」
『…ユーノ。君の茶番で、俺が危うく八つ裂きになるところだったのだが。』
「だってトキサダ、いつも私が止めても、アカリちゃんとか護るために、ひょいひょい前線出ちゃうんだもの。たまには私がトキサダをピンチにしても、バチは当たらないわよ、ね?」
『うっ…! …自重する。可能な限り。』
…やはり、ダイビート最恐はユーノさんだった。
…
……
「さあ、最終第2ラウンドを前に、ここまでの各陣営は一直線の横並びですねえっ!」
…フェリニ、三すくみと茶番で、差がつく方がおかしい。
「最終ラウンドはズバリ【心の護衛・ダイビートポエマー対決】。3人がトキサダを護りたい、その想いの丈をポエムで語ってもらって、オーディエンスがもっとも共感したものが優勝よ。頑張ってね。」
もはやノリは学校祭の定番企画・ベストカップルコンテストか、屋上から中高生が叫ぶ、青年の主張である。
まずはチルカ。
冬に耐え、春の陽の下、膨らむつぼみ。
三日で散りゆく定めなれども。
咲かせてみせます、大輪の花。
朝も夕も、花冷えの月夜も。
この身果てようと、この想いは永遠に貴方に。
続いて、レヴィ…のポエムを、
イレーナが翻訳したもの。
私…ゴーレムだから、ずっと、ずっとそばに。
夏は接続者のベッドで、大理石の涼しさを。
冬は煉瓦の暖炉になって、焚火の温もりを。
たとえいつか、別れの時が来ても、
私はあなたの墓標になって、そばにいたい。
しんがりは、メイファール。
貴方への敵意全てを討つ、勇気の力を右手に。
貴方の心曇らせる全てを防ぐ、愛の力を左手に。
たとえ、銃弾尽きようとも、
その抜き身の銃で。この身体すべてで。
私は、貴方の未来を拓く、一筋の光になりたい。
…
……
「す、凄いよ! チルカちゃんもレヴィさんも、メイファールさんもこんなに長官思いの人だったんだ!」
「こんな3人に護られるトキサダさんの幸せっぷり、ごちそうさまでございます! 視聴者の皆さんの投票フォームは、画面下のボタンをクリックして下さいね〜。」
「うわ〜、長官くんってば、罪作り〜。」
「これは…優劣つけること自体、野暮なのでは…?」
「さんせー! 護衛が複数いたって、いいじゃないのよっ。ヒーローのサポートロボだって、1クール終わりやクリスマス前に増えていくものだし、ねっ!」
…あれ?
「だ…ダメですっ!! そもそも始まりは、レヴィさんが私を排除しようと挑発を…!」
「…達磨に手足が生えれば、最強…。」
?
「ああ、メイファールさん。レヴィは、『自分は拠点専守防衛の達磨だから、貴女のような、攻撃力も機動力もある守護者とタッグを組めたらいいなあ』って言っています。」
…
その後、最初に食堂ですれ違いを起こした一言一句を、イレーナが通訳。
「じゃ…じゃあ最初っから、レヴィさんは私と一緒にトキサダさんをお護りしたい、っておっしゃっていた、と…? …はうっ…!」
一人相撲の徒労感に襲われ、メイファール、脱力。
「はいっはいっ、はーいっ!! チルカもチルカも、頭領お護り隊、切り込み隊長、やりまーす! バックアップなら、お二人にぜひお任せしたいですっ!」
「チルカちゃん…!」
「だってだって、頭領を大事に思う気持ちが、こ〜んなに同じだってわかって、チルカはいま、お二人と三位一体感でい~っぱいなんです!」
疲れる対決だったが、結果としては守護者3人の結束を深め、上々の成果を収め、幕を閉じた。
…
……が、ちょっとだけ続く。
「長官、失礼します!」
深夜、トキサダの部屋に呼ばれたアカリ。
「…今日のガーディアン対決、アカリはどう思った?」
「はい、みんな凄いな、って。長官にこんなに自分を捧げられる人たちばかりなんだ、って、感動しちゃいました!」
…だが、トキサダの表情は冴えない。
「ああ…だが今日、思ったよ。
望みが叶うなら、俺は彼女たちをクビにしたい。」
…?
「チルカ達だけじゃない。ユーノも、エスカチームも…もちろんアカリ、君もクビだ。」
…。
……?
「え…? えええええっっ!!?」
クビ…まさかの最低評価?!
「あ…あわわ…長官…なんで…?」
アカリの予想通りの反応に、してやったりと微笑むトキサダ。
「俺たちダイビートが目指すのは、その先…、護衛なんか必要ない、平和な世界の実現だろ? ダイビートを解散させ、みんなで喜んで失業する日を…俺は迎えたい。」
「あっ…! …あ、そういう意味ですか…。」
はああ…っ。
安堵のため息をつく、アカリだが。
…
……!!
「ちょ…長官、ひどいですっ! 私のことクビだなんて、ヒドい言い回しでわざと驚かせて、からかったんですかあっ!?」
赤らめたアカリの頬が、ぷうっと膨らむ。
「も、もーっ! 長官のバカーーっ!!」
「はははっ、申し訳なかった。」
拗ねるアカリに謝るトキサダ。
「じゃあ、私も一つ言っておきます。長官のその願いは、ぜーったい、叶いませんっ!」
「なっ…アカリ、それはっ?!」
平和は、来ない、ということか…?
それを言うのが、よりによって正義感の塊のアカリ…!?
ちゅうっ。
「うくっ、…?!」
狼狽えるトキサダに、唇のサプライズアタック。
ぷはっ。
「たとえダイビートのみんなですっごーく頑張って、すっごーく平和な時代が来ても。」
トキサダに正対し、瞳をまっすぐ見据えて。
「私は絶対に、『もう私はいりませんね、じゃあ長官、さよーならー』なんて、ぜーったいに、言わないからですっ!」
カウンターアタックに成功しながらも、アカリの表情が、どこか暗い。
「大体、長官は巻き込まれ体質なんですよ! 自分から火種を作って、いつも狙われて…!
私たちがどんなに平和な時代を作っても、長官は絶対、別の争いに首を突っ込んで、苦しむ人を護って動いて、また敵を作っちゃうんです!」
「…アカリ…?」
「でも、もう覚悟しました。
長官を護らなくてもよくなる日がホントに来ても、私が長官を護りたい日は、今日も明日も、きっと、ず〜っと、続くんだって…!」
あっ。
「長官のことを護りたいのは、チルカちゃんやレヴィさん、メイファールさんだけじゃ、ないんですよ…!」
潤むアカリの瞳は、恒久の誓いの眼差し。
「ダイビートが解散したって、長官からクビにされたって、私は、これからもず〜〜っと、長官を護らせてもらいます!」
もう一度、唇を重ねるアカリ。
今夜はリードされっ放しのトキサダだが…
(…悪くないものだな…。)
護られる喜びの片鱗を感じ、胸を震わせるトキサダだった。
おばんです、作者の環藍河です。
エスカチームと他の超昂戦士の交流ストーリー、第2弾はトキサダ護衛SPくくりの3戦士・レヴィ、メイファール、チルカでお届けします。
特に、今週水曜から原作ピックアップガチャにも登場するチルカ。人気キャラなので見せ場をもっと作れればよかったのですが…読者諸兄、物足りなかったらスミマセン。
環の着想スタイルは「テーマ(このキャラが○○をする)が先」と「書きたいエピローグが先」パターンがあり、今作は前者でした。正直、テーマ先行だとオチが弱くなり、また淡泊なストーリーになることが多い環なのですが、執筆の最後ギリギリで2つくらいアイディアが降臨して、ラストは強引に、安定のアカリ推しスタイルで締めました。主役特権&作者(環)の俺得特権、あしからず。
続いて、原作とその周辺のお話。
環のダイビート東北支部辺境出張所では、つい10日前まで69名運用だったところ、2週間足らずで84名運用に。なんでこうなった。
・過去イベント常設化でRキャラ5人一挙お迎え
・8月2日の24時間限定・SSR倍増ガチャで無料石全放出
・つぼみ2000個突破したので、前から欲しかったSSRを1人お迎え(1000個は、是が非でも欲しいキャラの新実装時のため保留。…限界突破に使ったら、レイドとか楽になるのになぁ…)
結果。一気に15人も大量採用となり、今までろくに消費せずキープしていたG愛情が枯渇。好感度は課金であまり解決しないですし、時間が解決してくれるのを待つだけ…?
原作が2日連続ランキング1位を獲ったり、コミケ周辺で公式アイテムも同人アイテムも増えてくれたり、嬉しい限りです。このまま盛り上がってほしいですし、もっと2次創作、増えてほしい!
…いや、公式のハイクオリティの2次創作(アンソロジーとか外伝とかASMRとか)はタマ数が限られるので、量を補う個人制作モノも増えてくださると嬉しいのですぅ。
環もロートル新人なので、恥をかいてナンボで突撃の日々ですが、「うおっ、こう来たかああっ!」な刺激が読者の皆様に届きましたらこれ幸い。
さて次回。
おそらく2~3話構成のシリアスものが先に出せるかと思います。
その他のストックネタのうち、書き始めているのは、ギャグ方面で1本。
始めに明言しておきますが、後者はかな~り読者おいてきぼりの俺得ギャグです。永久封印が吉、ってな位の代物です。
夏の終わり頃にコレが出てきたら、「あっ環ってネタ尽きたんだな」と笑ってくださいませ。
皆様の超昂大戦ライフに、ジェネリックなひとときをお届けできましたなら幸いです。それでは、また次回作で!