超昂大戦SS短編集【調査報告書】エスカチーム × 新たなる超昂戦士たち   作:環 藍河

6 / 7

※2022年12月開催イベント「笑顔の聖夜と天秤の魔女」のストーリー、および登場キャラである魔女フタバに関するネタバレを含みます。


Case.6 天秤を継ぐ魔女たち 〜友情は時を越えて

「双葉…三ツ葉…。

あんたたちは、どちらも欠けてはならない、美しく釣り合った友達だ…。

これからもずっと、互いを大切にして、補い合っておくれ…。

 

でも…忘れちゃならないよ。

天秤には…支点が必ず要るのさ。あんたたちの強い調和も…、支える誰かがいてこそ、なんだよ…。

神様に召されるのは怖くないが…、あんたたちの支点になる人を…導き、励まし、寄り添ってくれる生涯の友を…見届けたかったねえ…!」

 

床に伏し、今際の刻を迎えんとする魔女・幻ノ川紅葉は、最愛の孫・双葉と、そのドッペルゲンガー・三ツ葉に語りかけた。

 

生涯を懸けて魔力を御する祝福器を研究した天才錬金術師でもあり、魔女と人とを別け隔てなく幸せにしたいと願った紅葉は、自作の祝福器・魂の天秤アストラを手に、心の闇に囚われ均衡を失いかけた市井の人々を…とりわけ河川敷や高架下、スラムの人々を救済し続けた。

その力を惜しみなく、貧しき者、病める者に捧げた紅葉は…、聖者となって神の元へ旅立った。

 

 

…時は流れ。

 

「先日はご招待、ありがとうございました。」

「私たち庶民なんで、お返しもこれが精一杯なんだー。ゴメンねっ。」

「ほっほっほっ、いいんじゃ、いいんじゃよお。気は心と言うてなあ。」

 

瀟洒な洋館を訪れた幻ノ川双葉・三ツ葉が差し出すのは、馴染みの洋菓子店で買った、ご贈答用のロールケーキ。

(や…やっぱり、せめてデパ地下とかで買うべきだったのかなあ…?)

(双葉、それだって対価の半返しにもならないの。きっぱり割り切るっ!)

 

少女たちの、若いなりの精一杯の義理立てに目を細めるのは、この館の主の祖母、エリザベス・雅・雪城。

「それより…エリーやアカリちゃんたちとの一夜はどうじゃった? 湯浴みで裸のお付き合い、寝食を共にしてこそ、語らい、話せることもあるからのう?」

 

「…あのねえ、おばーちゃん?

だから何で…、

たかがパジャマパーティーに!

別荘なんか手配するのよおおおーーっ!」

 

「なっ…? なぜ怒るのじゃ?

新たな友との語らいの一夜…思い出深〜い一夜にふさわしい演出と、メモリアルな舞台装置が必要不可欠じゃろう?

そう思って、エリーも絶対に気に入るところを厳選したのじゃぞ?」

 

「んもーっ!! 三ツ葉は『うひゃあああっ! スイートルームだあああっ!』ってはしゃいで舞い上がるし、双葉なんか『い…一泊いくらするんだろう…?』ってソワソワしっぱなしで、落ち着かせるの大変だったんだからねっ!!」

「あははっ、庶民でサーセンっ!」

「あ…あんな凄いお宿、初めてでしたから…。」

 

「よよよ…つれないのお。旧友のお孫さんと、儂の可愛い孫の、初めてのお泊りじゃぞお。ここでもてなさずに、いつもてなせと云うのじゃあ?」

 

雅と紅葉はかつて、同じ師のもとで魔法の修行をした。奔放な雅と堅物の紅葉は、時に衝突、時に魔女の在り方と行く末を喧々囂々語り合い、そして…互いへの敬意と絆が生まれた。

 

だが…祝福器アストラを御し、人の不幸を除くのだと動く紅葉を、あれは人と魔女の手に余る、封印せよと雅が諫めたことで、2人はすれ違う。

ひとたび狂ってしまった均衡は、もとに戻ることはなく…別離はそのまま、死別という形で終わってしまった。

 

(儂らの友誼は、道をたがえてしもうた。

ならばせめて、その孫同士、わだかまり無く語らえたなら…。)

 

そんな願いあっての雅の別荘手配だったが、いささか前のめりだったらしい。

 

「…そりゃあ、いいお宿、だったけど…。」

「あ…あのっ、雅さん。

改めて、ありがとうございました!」

「そだねー。雅さんのお心遣い、サンキュです!」

 

食事も、美味しいものを少な目に。

ホスピタリティも、出しゃばらず。

ゲストの語らいを引き出すよう、さり気ない配慮を雅から仰せつかっていたスタッフのおかげで、双葉たちとエリーたちは、まるで旧友のように語り明かすことができた。

 

「ほほっ。それでは折角じゃ、頂き物は美味しくこの場で分け合うとしよう。エリー、このロールケーキ、イレーナとレヴィの分も入れて六等分に。お茶も頼むぞい。」

「えっ…? それならイレーナを呼んで頼めば…?」

「ホスト手ずから切り分けるのが、親友へのおもてなしじゃろ? 行きなさい。」

「…は〜い…。」

(…ぜ〜ったい、私を追い払って、あれこれ聞くんだ…。)

ケーキの包みをうやうやしく手に取り、エリーが外へ。

 

……

「…エリーは2人に心を許しておるのう。あの子は距離をおく相手には『ちゃん』付けじゃからな。」

((あっ……!!))

「ふふっ、2人がエリーに遠慮せず、心の内を包み隠さず接してくれるからじゃよ。ありがとう。」

 

「…でも、少し驚いています、私。」

「ん?」

「エリーさんって、箱船のリーダー…魔女を、エリザベス派を導く方なのに…。その…私たちみたいな下々の魔女に接するのに、フランクで、心のガードが緩くて…」

「うん、それ、私も思った! もっと威厳とか、心のバリアがっちりかなー、って思ってて…。

いい方に、裏切られた!」

 

「…それは、エリーにとっても最近のことじゃよ。」

((…??))

 

「お主らが言う通り、以前のエリーはのう、【恋人】のアルカナメンバーとして、利害の複雑な魔女を束ねる、天秤の要であろうとして…。

誰に対しても、必要以上に親しくなろうとはせなんだ。イレーナのような近侍は別として、仲間は作っても、友達は…のう。

 

…それが、ダイビートに来て。

トキサダ殿に愛情を注いでいただき。

最初は距離を置いたアカリちゃんに、それでも真っすぐ迫られて…。ヒビキちゃんにも、うららちゃんにもじゃな。」

 

……

エリーがダイビートに合流し、エスカ・アメイズとなった当初。

ダイビートの正邪を疑問視する魔女も、そもそも一般人との協調・融和路線をまかりならんと唱える魔女もおり、むしろエリーの動きはスタンドプレー扱いだった。

…かくして、魔女の存在や、ましてや箱船のことは秘中の秘だった。

 

(…言えない、なあ…。

『はーい、実は私、世界に広がる魔女たちのリーダーさんなのでしたー! あなたたちダイビートが我々と手を組むにふさわしいか、テスト中なのでーす! ダメだと判断したら、ソッコーで手のひら返しちゃうから、あしからず〜。』

…な〜んて、ねえ…。)

 

エスカチームでチームメイトとの絆を日増しに深めていくエリーは、隠し事をしている罪悪感にも日増しに酷く苛まれる。

アカリ、ヒビキ、うらら…大切な仲間に言えない真実が、こんなにも胸を締め付ける。

 

でも…エスカチームは、そんなエリーを信じてくれた。

「エリーちゃんが護りたい人…私も、長官も…、絶対に護るよ!」

「来るべき時が来たら、話してくれればいい。」

「あんたにしかできない事なんでしょ?!

なら、ムリに話さなくていい!

ここは私に、どーんと任せなさいっ!!」

 

だから…幻魔が遂に尻尾を出し、ダイビートが幻魔に対抗し、箱船と共闘しうると確定したとき。

 

「アカリ…私、もう隠し事、何もないから!」

「エリーちゃん…? 私の呼び方…!」

「私、友達は呼び捨てって決めてるの。

いいよね?」

「…うん! うん!

やったあ! エリーちゃんと、友達だあっ!!」

 

それはエリーが生涯で初めて、自分の全てを晒せる親友を手に入れた瞬間だった。

 

……

「だから…あの子の、エリーの奔放さは、トキサダ殿やアカリちゃんたちに貰ったものじゃな。

そして…今度はお主たちに返したい、と張り切っているのやも知れぬのう。」

「「えっ…?!」」

 

「お主らに、自分を重ねておるのじゃよ。

大義の為に、祖母の志を継ぐために、ありのままの自分でいることを止めた…。

そんな双葉ちゃんと三ツ葉ちゃんの来し方が、かつての自分に似ておると感じておるのじゃ。」

 

((あっ…!!))

 

父母を失い、それでも大好きな祖母・雅の悲痛を癒し、その心を支えようと、幼くして『恋人』のアルカナと、高貴なる者の責務に身を捧げた、エリー。

人と魔女の融和を夢に抱き、神から授かった自分の能力はそのためにあると信じた祖母の遺志を受け継ぎ…。擦り減っても、友に見放されても、孤独に耐えて迷える人々の救済を続けた、双葉と三ツ葉。

 

その決意の強さが、わかるから。

大切な人の笑顔のために、自分が犠牲になることの悲しさが、わかるから。

 

『双葉と三ツ葉は、これからい~っぱい、幸せになるのでした〜! だって、これまでたくさんの人を幸せにしてきたんでしょ? じゃあ、当の本人たちが幸せにならなきゃ、バランス取れないもんね〜?

これを【幸福量保存の法則】と呼びます! テストに出るわよ〜?』

 

パジャマパーティーで冗談めかして語った、エリーの言葉は。

同じ痛みを超えてきた者の、差し伸べる手のひらだった。

 

……

「あ…あの、エリーさん!」

「私たちっ、エリーに会えて良かったって、心底思ってるから!」

「わ…私たちだけじゃなくてっ、エリーさんも幸せにならなきゃ、ダメなんですよ!」

…対をなす性格のはずの2人が、ユニゾンしてエリーをおもんばかるのは、エリーへの思いの強さなのだろう。

 

「…おー、ばー、あー、ちゃ〜ん…?」

「い…いや〜、良い子じゃのう、双葉も三ツ葉も…。」

「私がケーキと紅茶の仕度してる間に、何を2人に吹き込んだのよおーーーっっ!?」

 

そんな4人のでこぼこコメディを、紅茶を注ぐ傍ら、嬉しそうに見つめるイレーナ。

(お嬢様に、また素敵なご友人がお二人…。

アカリ様たちと友誼を結ばれてからは、毎月のように新たな出会いがございますね。)

 

「アゲハ蝶のさなぎが、マトリョーシカ…。」

 

(レヴィ…そうですね。

お嬢様は、ご友人を作られるたびに、ますますお美しく変わられる。喜ばしいことです。)

 

「そ…そうじゃ、ケーキのあとは、少し遅れた初詣としゃれ込まないかえ? 少し歩くが霊験あらたか、良縁祈願にてきめんに効く神社があるのじゃ!」

「…! 行きますっ!」

「行く行くっ! エリーとあたしたちの友情、しっかり祈願したいっ! あっ、ついでにー、双葉に彼氏ができますようにー!」

「ごー、まー、かー、さー、ないのーっっ!!」

 

(…どうかのう、紅葉。見ておるか。

お主の孫たちと、儂の孫。

この3人、存外うまく噛み合って…。

魔女と人類を釣り合わせ、お主の乞い願った幸福な未来をもたらす、天秤の両皿と支点となるやもしれぬぞい。

…お主が早うに身まかった分、儂がつぶさに見守ってやるからのう…)





令和5年、明けましておめでとうございます。
超昂大戦・2次創作SS書き、著者の環藍河よりご挨拶申し上げます。

元旦投稿の新年第1作、この筆者のSSではレアな、エリー主役のストーリーをお届けしました。
…アカリ、開幕投手じゃなくてごめんなさい。前作(絶望世界の超昂戦士・序章含め全10話)でエナジー使い切った…。

この年末にたったの80時間だけ現れた雅さん。
環はガチャ80連で引けず、つぼみお迎えでしたが、キャラストーリーで「うるっ」と来まして…。
そんで3日でイッキに書き上げたのが、このSSとなります。

環のSSが3日で完成するのは超特急仕上げなのですが、エリーの心象を半年前、めちゃくちゃ深掘りして考えていたことが活きました。
※弊社SS「ありがとう、エスカ・ルビー! 星が導く四つの煌めき」第3章の執筆で、アメイズとルビーの友誼を再定義したくて、原作何度もシナリオ読み直して考え抜きました。よろしければ御一読を〜(隠す気ゼロのステマ)。

では、正月休みの後、来週くらいにまた超昂SSでお会い致します。読者および全国のトキサダ様には新年も、ガチャでもストーリーでも、幸せな超昂ライフがございますように…!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。