超昂大戦SS短編集【調査報告書】エスカチーム × 新たなる超昂戦士たち   作:環 藍河

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※2023年4月開催イベント「母娘超昂 ~使用人は異世界で主を探す」のネタが含まれます。


Case.7 超昂令嬢の決意と使用人の夢 〜幸せはこの手の中に

「きゃああーーーっ!」

どさっ…どさっ。

 

《メぇネメネメネメネえ〜!》

 

「くう…っ…!」

「ユキノ…っ…」

「こ…コトネ…さま…!」

 

ダイビート基地特設・Bユニバースルーム。

ホログラムとはいえ、リアルデータから再現したウェーブフラストの猛攻に、駆け出し超昂戦士たちは子猫も同然にあしらわれる。

 

(歯が…立たないっ…)

衝撃波に吹き飛ばされ、大の字で高い天井を仰ぐ閃忍ユキノ。

その実力差に…闘志はねじ伏せられ、諦めに心を支配されていく。

 

【コトネーゼ、ユキノ?】

(エ…エリー…さん…!)

【ギブアップ…してもいいのよ?】

「!!」

 

この模擬戦を指示したのは、コーチを買って出たエリー。

そのスピーカー越しの言葉に…

 

ぐぐっ…

「…め、ない…。」

(えっ…?)

「私は…もう…」

 

為す術もなく這いつくばっていた、神騎コトネーゼは。

 

「諦めないって、決めたの…っ!!」

端正な顔を上げ、戦士の闘志を杖に込める。

 

 「ユキノっ、お願い!

  フィールド・オブ・フローラル!」

(ああっ…!?)

立ち上がったコトネーゼから注がれる楽園の恵みが、眼前の敵をはね退ける勇気をユキノに与え…!

(行ける…いや、行くんだっ!)

柄を握る両手に力を滾らせる。

 

 「現世の汚れは…私が祓う!

  ユキノ流お掃除術・彗星!」

 

モップを模したユキノの槍は、ガードを固めるドローンごとウェーブフラストを貫く。

 

 〘メ…ギャアアアーーーッ!!〙

 『セ…精神汚染ガ…拭ワレル〜!!』

 

苦悶の呻きを吐くドローンたち。だが…

 

 《コ…小娘ドモメエ〜〜ッ!!》

 

(き…効いて…ないっ!?)

(そんな…!)

なけなしの全力も、大ボスのウェーブフラストには、一矢報いただけ。

 《許サネエエッ! テメエラノ脳神経、毒電波デゼンブ焼キ尽クシテ、ヨガリ狂ワセテヤルウウーーーッ!!》

(あ…ああっ…!)

この強敵には…やはり届かない…?

 

 「バジリスク・エスカレーション!」

 《メネッ!?》

 割って入った菫の輝光は落雷となり、ウェーブフラストの全身を鞭打つ。

 

 《カハッ…ク…クソッタレッ!

  オ返シダアアアーッ!》

 ビシャーーーッ!

 

 『〘ギャアアアッ!〙』

 《ナ…ナゼエエェェッ!?》

魔蛇に魅了のお株を奪われたウェーブフラストが苦し紛れに放つ電磁波は、サポートドローンを墜とす同士討ちに。

 

 「よくやったわ、コトネーゼ、ユキノ。」

 「ア…アメイズ…さん…?!」

 「あとは任せてっ!」」

  (なっ…!)

 「ストライクー! エスカレーションっ!!」

 

 三人の頭上を、真紅のレーザービームが突き抜け…

 《ショ…ショ〜テ〜〜ンッ!!》

 穢れた敵を一掃した。

 

……

 

「すごい! 最後の雪乃ちゃんの一撃、見違えたよ! 琴音ちゃんのアシストも段違いにパワーアップしてる!」

「ル…ルビーさん…。」

「私たち…全然敵わなかったのに…?」

「ううん、何より2人とも全力ガッツで戦い抜いたから…絶対に、もっともっと強くなる! これからも期待してるよ!」

敢闘を褒めちぎるルビーに当惑する2人。

 

「琴音、雪乃、ゴメンねー。ナイショにしてたんだけどー。」

「…アメイズ…さん?」

「実はね、今回のウェーブフラスト、わざと今の2人じゃ勝てない強さでぶつけたんだ。」

「え…えええっ!?」

つまり…今日のBユニバースは、アメイズが2人に課した試練だった。

 

「実戦で出くわした敵がこの実力なら、すぐ救援要請するのよ。いい?」

「で…では…撤退しなかった私たちは、判断を間違えたのですか…?」

青ざめるユキノに、首を左右に振って応えるルビー。

「ううん、実戦だと、市民の避難がまだとか、それでも撤退できないときの方が多いんだ。だから2人の判断、間違いなんかじゃないよ。」

 

アメイズが真意を告げる。

「今回はね、ギリギリまで追い込まれた琴音と雪乃が…心が折れそうなときでも対処できるかを試したんだ。黙ってたのは、ホントにゴメンね。」

(うっ…!)

雪乃は自らを恥じ、視線を落とす。

(私は…挫けてしまった…。

琴音様は、諦めなかったのに…

使用人の私が、先に音を上げるなんて…!)

 

「…雪乃ちゃん?」

「はっ…はいっ! すみません!」

「ひえっ?! ど…どうしたの?」

「…え?」

「この後の料理特訓、大丈夫かなって聞きたかっただけなんだけど…?」

ルビーに意気地無さを見透かされ、てっきり咎められると思っていた雪乃は…。

「あ…ああっ、そうでしたね…!

大丈夫です。予定通り17時から始めましょう。」

「ホントに? 雪乃ちゃん、元気なさそうだけど…」

「…いえ、時間通りで。お待ちしてます。」

 

……

 

しゃあ……っ…

(琴音さまは…)

雪乃は自室でシャワーを浴び、頭をもたげる悔恨を振り払おうと試みる。

(神代家では、いつも眼差しを落として…。

何もかも受け身で、何をも望まず、ただご主人様の意を汲んで…。)

その琴音が。

闘志を振り絞り、歯を食いしばり、理不尽に屈さず、敵を見据えていた。

 

(本当に、変わろうとなされているのですね…。)

……

 

「…いないんだって。」

「琴音さま…?」

 

昨夜のこと。

 

「トキサダくんに聞いたの。こちらの世界に神代家、あるいはそれに近い一族や存在は…あるのかなって。」

「それは…。」

「トキサダくんは上弦衆の頭領…この国の政財界や裏社会まで調べるよう、命じてくれたわ。

でも…お父さまや莉々子はもちろん、私たちの同位存在も…近しい出自の有力者や一族は、見つからなかったって。」

「…それでは…!」

「歴史のどこかで…お父さまか、そのご先祖様が生業をしくじられ…没落したか、地位を奪われたのかもしれない。

お母さまとも結ばれず、私は村娘のまま。雪乃も他の誰かを主として仕えて…。」

「それじゃ…(あっ…!)」

「…いいの。護のことでしょう?

神代家と関わらず、お父さまとも出逢わず、庶民として平穏に生きてる…はずよ。」

「そんな…!」

それは…雪乃も、琴音や紗夜や莉々子や護と接点を持たない、孤独の世界線。たとえ同位存在が自分とは別の存在であっても…。

雪乃はその事実を、喪失感として受け止めた。

 

「全てを神代の娘の宿命だと諦める私を、護は諦めなかった。ずっと寄り添って、私を解き放とうとしてくれた。

皮肉なものね。その思いに応える決意をしたとき、私はもう護のそばにいない…。」

「琴音さま…?」

 

「…でもね、雪乃。」

「はい…。」

「どうしてかな…?

私ね、いつか必ず…護にまた逢える。

そんな気がするの。」

(!!)

 

恐る恐る覗き込む雪乃に、琴音は…

悔恨の嘆きではなく、微笑みを返す。

 

「だから私、もう諦めない。

護にまた逢えたとき、胸を張れるように。

護が押してくれた背中で…この世界で…特別じゃなくなった私を、見せられるように…ね。」

 

家の宿命に押し潰されない生き方を教えてくれたエリー。

媚香のたぶらかしに屈さず、ありのままの琴音を見てくれたトキサダ。

異世界の2人が琴音にくれた勇気。

 

屋敷ではずっと、鳥籠の雛鳥だった琴音。

もう、あの日の物憂げな、諦観の表情はそこに無い。

この世界で手にした翼で、令嬢は凛と羽ばたこうとしていた。

 

……

きゅっ。

「私も…変わらなきゃ。」

シャワーの蛇口を締め、戦闘服をメイド服に着替え、雪乃は誇りを備えた使用人の顔に戻る。

 

……

ぴんぽーん。

「アカリさんですね。お入り下さい。」

「はい! おじゃまします!」

部屋の扉のロックが解除され、エプロン片手のアカリが入室。

「雪乃先生、今日もよろしくお願いします!」

「…ふふっ。」

「あ…あれっ?」

「いえ、何だか不思議な気持ちで。」

さっき窮地を救ってくれたルビーが…アカリが、一転今度は生徒役。

そのギャップにこそばゆさを覚える雪乃だった。

 

「今日は実践です。空腹で帰っていらした未来の旦那様に、サンドイッチを作ってください。

食材は、冷蔵庫と貯蔵庫のものを使ってください。特に具材は指定しません。」

「は…はいっ!」

……

 

「できました! 先生、お願いします!」

10分で、アカリが出した2種類のサンドイッチは…

「こちらはハムとレタスに、チーズですね。」

「うん、すぐ使える具材を選んで、腹持ちが良くなるようにお肉やチーズも挟んで…。」

「でも、ちょっと時間がかかりましたね。」

「あっ…バターを塗るのに手間取っちゃって…。切り分けてレンチンして溶かしたんだけど…。」

 

すっ。

「ちょっとお待ちくださいね。」

雪乃がキッチンに立ち、3分後に出した、同じ具材のサンドイッチ。

「違い、わかりますか?」

「えっ? …う~ん…。」

アカリは見比べて、一口ずつかじり、咀嚼する。

「あっ。こっちのは、バター無し?」

「そうです。元々バターは、野菜の水気をパンに吸わせない工夫。水気の無い具材をいちばん上といちばん下に挟めば、同じことですから。」

「…なるほど…!」

「他にも、溶かしバターの代わりに、オリーブオイルやマヨネーズを塗っても時短になります。」

 

指摘を口にしながら、雪乃がもう一つのサンドイッチを吟味する。

「こちらは…スクランブルエッグですか。」

「うん、ゆで卵は作る時間が無いし、野菜サンドが冷たいから、アツアツのサンドイッチもあると嬉しいだろうなあ、って。」

ぱくっ。

「ケチャップも塗っていますね。少し甘めなのは…砂糖と牛乳、塩も強めですね。」

「疲れているはずだから、食欲が出るように…って。私のお母さんも、部活帰りの私に軽食を作ってくれたときは、こんな工夫をしてくれたのを思い出したんだ。」

 

食べる人のことを考え、そのための技を磨く。

その繰り返しの日々に備えて、下地を作るのが花嫁修業である。

 

(…アカリさんは、誰を思って作られているのでしょうかね…?)

「…雪乃ちゃん?」

自然にほころぶ表情。

「…あ、すみません。それで…」

「こっちのサンドイッチはどうでしょう、先生?」

少し仰々しく、アカリが判定を要求。

 

「…う~ん…これならいっそ、パンもトーストしてホットサンドにする手もありましたね。」

「…ああーーーっ!! そうだ、なんで私、思いつかなかったんだろーー!!」

「ふふっ。でも、ちょうど特訓で疲れた私には、体に染み渡る美味しさと心遣いでしたよ。」

「うう…ありがとうございました…。」

 

「明日は衣類整頓とベッドメイクを練習しましょう。」

「うん! 雪乃ちゃん、毎日ありがとう!」

サンドイッチを2人で食べ比べ、片付けを終えてアカリが自室に戻る。

(アカリさんの花嫁修業…本当によく続くものです。)

心地よい静寂の中、雪乃は回想する。昨日は掃除に洗濯、その前は裁縫…。楽しさとは程遠い地道な練習を、愚直にこなすアカリの姿。

(そういえばアカリさんは、街の困り事を放っておけない方でしたね。)

そんな人だから、私たちのことも…。

 

 (雪乃ちゃん…逃げて…!)

 《この非処女がああっ!!》

 どぐうっ!

 〔あ…アカリさん…!!〕

 

雪乃は藪井をおびき出すも…怪人と化し肥大化した藪井になすすべ無く、襲われる。

その雪乃を庇い、自らが傷ついても護ろうとしてくれたエスカルビー。

自分の非力さと情けなさに打ちひしがれるも…雪乃はルビーの勇気と挺身に心打たれ、そして…

その姿の向こうに、理想の自分を見いだす。

〔私も…変わりたい。

 この身に代えても誰かを護る。

 そのための、力と覚悟を…!〕

……

 (ユキノちゃん! 決めるよ!)

 〔もう…私は泣いているだけじゃない!

  私たちの世界の穢れ…この世界から、私が消す!〕

 こうして閃忍ユキノは誕生し、この世界で戦いを始めた。

 

(…アカリさんが紡ぐ日々のお側に、私もいられたら…きっと素敵な生活でしょうね…!)

 

雪乃がこの世界で描く、新たな夢。それは…

主と見込んだトキサダに生涯お仕えし、この身を捧げてご活躍を支えること。

そして…その妻となったアカリを、良妻賢母となるよう陰から支えること。

 

(まずは…トキサダ様の胃袋を掴んでいただきましょうね、アカリさん。…ふふっ。)

 

 




筆者の環です。たいっへん遅くなりました!
2023年4月開催コラボイベントネタ…なのに2ヶ月も遅れての投稿。
…いや、もう本業のデスマがね…(読者様には「知らんがな」な言い訳)
タイミングって大事なのは重々承知ですが…季節外れですが、どうか笑ってお納めくださいませ。

元ネタは当然、変身どころか戦闘ナシのアリスゲー。なのに召喚したら変身しちゃった…。
こんな破天荒シナリオなのに、きちんとハマって…プロのシナリオ書きさんってすげえ(小波感)。

琴音(コトネーゼ)はキャラ性能でお迎えしましたが、神騎のわりに変身フォームがプラグスーツっぽかったり、いろんなギャップがいい意味で気になる子です…キャラストーリーも良かったです。
雪乃はメイドさんの忠誠心と…背徳感(おい!)。そう言えば原作「母娘乱館」はNTRゲーでしたっけ…あれ?
…ええ、アカリ推しの環が補正をかけました結果、妻妾同衾エンドを夢見る雪乃ちゃんができました、とさ。(これが今回のSS執筆に至ったモチベーションでございます。うわあ。)

さて、次に目指すは6月ネタ…なのですが…。
折しもブライダルイベントは再来週まで…。
7月5日まで…あと12日…。
普通なら間に合うのですが、空前絶後のデスマ(4ヶ月目)真っ最中。
うまく投稿できますことを祈念して。今回もお読みいただき、ありがとうございました!
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