リコリコへようこそ   作:NEET0Tk

2 / 2
花火

「花火!!」

「……」

「花火!!」

「……」

「はなびぃいいいいいいいいいいいいい」

「はぁ……どうした千束」

「よくぞ聞いてくれました!!」

 

 千束はくるみに無理矢理携帯を見せる。

 

「残念なことに今年の花火大会は中止になちゃったみたい」

「そうか。それは残念だったな」

 

 くるみはカタカタとパソコンを叩く。

 

「うんうん、気になるよね、どうしてこのことをくるみに伝えたか気になるよね!!」

「僕達で花火大会をするのか?」

「excellent!」

「既に幾つかの花火を注文しといた」

「さっすがくるみー」

「暑苦しい」

 

 千束はくるみを抱えたまま宣言する。

 

「今年の夏も、楽しくいこー!」

「離せ」

 

 ◇◆◇◆

 

「てなわけで今日の夜は花火をします。拒否権はありますが、基本無いと思って下さい」

「花火、ですか」

「どうしたの? たきな」

「いえ、花火に見せかけた銃を作ればカモフラージュになると思いまして」

「発想が怖いよたきな!! それむしろ犯罪者の考え方だよ?」

「リコリスがあるからこそ、平和は守られていますよ」

「そうだけど、そうじゃなくってー」

「たきな、つまり千束はこう言いたいんだ。そんなものより消音にすればいいと」

「なるほど、さすが千束です」

「うんうんそうそう、音が無ければってちがーう!!」

 

 千束はテーブルを叩く。

 

「花火はもっと楽しく、元気で、落ち着いてやるものなの。花火is平和。ok?」

「あんたが居る花火なんて騒がしい以外ないでしょ」

「そこのミズキ! うるさいよ!」

「うっさいのはあんたよ!」

「どんぐりの背比べだな」

「ところで千束」

「あぁにぃ?」

 

 ミズキと頬を引っ張り合う千束。

 

「どこで花火をするのでしょうか」

「ああ」

「痛い痛い! ギブギブ!」

 

 ドラゴンスリーパーを決める千束。

 

「橋の下の河川敷があるでしょ。あそこでしようよ。ちょうど栄え〜な感じがするし」

「栄え〜ですか」

「そう、栄え〜」

「私が居れば栄えなんて気にしなくていいのに」

 

 腰をさすりながら酒を飲むミズキ。

 

「あれが栄えですか?」

「あれは栄えから最も離れたもの。いわゆる化け〜ってやつ」

「化粧の落ちたミズキにぴったりだな」

「あんたら一編大人の女ってのを見せてやるわ!」

 

 喧嘩し、いつの間にかボードゲームを用意し始める一向。

 

「たきなもする?」

 

 千束が手招きする。

 

「いえ」

「あれ?」

 

 千束は不思議に思う。

 

 以前のたきなならまだしも、最近のたきなは参加してくれてたのにと。

 

「だってまだ営業中ですよ?」

 

 シンジが笑顔で手を振る。

 

「シンジさんもする?」

「いや、私はこれから少し用事があってね」

「シンジさんいつも忙しいね」

「それじゃあ」

 

 シンジが店を出るのを、たきなはなんとなく見送った。

 

「先生、お客さんいなくなってけどどうする?」

「そろそろ店じまいだな」

「ほらたきな。すっべすっべ」

「やんの? やんないの?」

「たきな」

 

 たきなは笑い

 

「します」

 

 ◇◆◇◆

 

「ついにこの日がきた!」

「一日しか待ってないのによくそんなオーバーリアクションできるわね」

「千束は生き急いでるのでしょうか?」

「そうなんじゃない」

「私は生き急いでるが、死ぬ気もないね。私は今を全力で楽しむ。それだけだ!」

「千束、お前が準備しろ」

「あ、はーい」

「私も手伝います」

 

 千束とたきなで花火を出す。

 

「花火ですか……」

「まーた変なことでも考えてるの?」

「いえ、初めてするので」

「花火を?」

「はい」

「そっか」

 

 ゆっくりと、堪能するように花火を開ける千束。

 

「なら、楽しい思い出にしないとね」

「そんなに面白いものなのですか?」

「そりゃお前」

 

 千束は隠していたライターを取り出し、一気に複数の花火を点ける。

 

「おりゃぁあああああああああああああああああああああ」

 

 グルグルと回転し、綺麗な線を描く。

 

「凄い」

「ただ回ってるだけだろ」

 

 くるみも花火を一本だけ点ける。

 

「僕にはあれだけの原動力がないよ」

「私もー」

 

 ミズキは酒を飲む。

 

「使い終わったらこれでも使いなさい」

「ミズキ飲み過ぎー!」

 

 花火が切れた千束が帰ってくる。

 

「どう?」

「綺麗でした」

「でしょ!」

 

 千束はたきなの手を取り

 

「ほい」

 

 花火を渡す。

 

「花火も、大切な時間も、終わるには一瞬。でも、それは一生ものの思い出になる」

 

 千束は一本の花火を点け、たきなが手に持つ花火に近付ける。

 

「こうやって、楽しい思い出は次の楽しい思い出になる」

「……」

 

 二つの花火が重なり、勢いは強くなる。

 

「楽しさも二倍になる」

「そうですね」

「よし!」

 

 手を掴む。

 

「踊ろう!」

「何故!」

「なんとなーく」

 

 千束は動き、たきなが引っ張られる。

 

 そして花火は綺麗に二つの線が生まれる。

 

「元気そうね」

「ミカも来たらよかったのにな」

「用事なんだから」

 

 くるみが座りながら花火をジッと見つめる。

 

「いつか終わりがくるのにな」

「あんたホントに捻くれてるわね」

「僕は元来こういう性格なんだ」

「はぁ」

 

 くるみの花火にもう一つの花火がくっつく。

 

「終わりがあるなら足すだけよ。お酒のようにね」

「発想がオッサンだな。だから男が寄らない」

「んだとコラ!」

 

 ミズキがくるみに襲い掛かる。

 

「二人も楽しそうだね」

「はい」

「ほら! 私達も負けてらんない。今度は夢の10本二刀流でいこう!」

「危ないですよ、千束」

 

 ◇◆◇◆

 

「終わっちゃったー」

「あんたがバカみたい一気に使うからでしょ」

「だってそっちの方が楽しそうだったからーk

「まだ残っていますよ」

 

 たきなが指をさす。

 

「締めだね」

 

 千束は線香花火を手に取る。

 

「ほい」

「これは見た目が他と違うんですね」

「これは派手なわけじゃないから」

 

 千束が火を点ける。

 

「赤く、光りましたね」

「まぁ見ててよ」

 

 パチ

 

「?」

 

 パチパチ

 

「わぁ」

 

 パチパチパチパチ

 

「どう?」

「何だか……いい感じです」

「お! たきなも分かるようになってきたねー」

「毒されてんのよ」

「そこ! うるさい!」

 

 そして線香花火は静かに地面に落ちた。

 

「あ……」

「まだ残ってるよ」

 

 千束が手渡す。

 

「ん」

「ありがとうございます」

 

 線香花火は静かに、だけど激しく燃える。

 

「綺麗」

 

 パシャリ

 

「うん、いいね」

「急に撮らないで下さい。訴えますよ」

「ごめんー、でもほら」

 

 千束はたきなに写真を見せる。

 

「よく撮れてるでしょ?」

「確かにそうですが、勝手に撮るのは許しませんよ?」

「えへへー」

 

 そしてたきなの線香花火はポタリと落ちる。

 

「……」

「さて、シンミリするのもここまでだ! ほいミズキ、ほいくるみ、そして」

 

 千束はたきなに線香花火を渡す。

 

「こいつは最後まで生き残ったものを讃える遊びだ。グヘヘ、最後まで血で血を洗おうじゃないか」

「何後でしょうか?」

「辛うじて日本語」

「つまり千束は線香花火が最後に落ちた者が優勝するゲームをしたいそうだ」

「なるほど」

「ほらほら、ズルはなし。同時に点けるからね」

 

 四人で輪になる。

 

「楽しいですね」

「よかった」

 

 千束は火を点ける。

 

 それと同時に

 

「チクショー!」

 

 千束の叫び声が夜の街に響いた。

 

「あ、勝ちました」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。