総武高校2年F組女子会   作:やってやる!やぁ~ってやるぜ!

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第2回

只今、土曜日午前九時。特別なイベントでもない限り教室はもぬけの殻のはずであるがそのドアには“男子禁制!”の張り紙がしてあった。

 

そして教室内には机を細長くつなげて並べてあり、その一番黒板に近いところはいわゆる“お誕生日席”のような形にしており、そこには腕を組み顎を乗せる某司令のポーズをした女子が座っている。黒板には“女死会”という文字がやけにデコレーションされて描かれており室内は異様な緊張感に包まれていた。

 

そしてその司令ポーズの女子が口を開いた。

 

「私たちが!反響を受けて!!さらにこのpixivでの息抜きSS大会というのを言い訳にして!!帰ってきたぞ~!!!」

「「「「わーい!!!」」」」

「いやまず自己紹介しないと分かんないから!!」

 

相変わらずの体たらく、議長を務めるはずのオリキャラ佐藤は川崎沙希にする同ツッコミを浴びせられる。

彼女たちは作者の陰謀により闇に葬られるはずだった。しかし、何の因果か運命か。彼女は、彼女たちは戻ってきた!そう彼女たちは

 

「2年F組~!」

「「「は~ちま~んせんせー!!」」」

「いや比企谷の奴はこのssにほとんど出てこないじゃん!!しかも金八先生なんて世代じゃない上に銀八先生しか知らないのに無理に使うな!ボロが出るよ!!」

 

彼女たちは総武高校2年F組、その中で最大派閥たる組織M(マジで)H(八幡様を)A(愛する会)、通称MHAである。

 

「いやそんな設定聞いたことないけど!?」

 

 

 

「まあまあそんなのは今いいじゃない!大事なのは私たち跡形もなくなるはずだったオリキャラが八幡様とくっつける機会を得たってことよ!」

「ちょっと待って、結局あの後の時間軸で比企谷たちはどうなったの?」

「............知りたい?」

 

あの後、とは前回葉山の陰謀により八幡が貶められていたことに気が付いた彼女たちは知恵をふり絞り“依頼の内容に沿うように八幡へのいじめの改善”を目標として会議をした。その結末はまだ誰も知らない者であり見方によっては終局点を読者に委ねた作品としては禁忌でもある。しかしそれでもこれを明かさねば話は進まない。それを分かっているからこそ彼女は真剣な表情で川崎に聞き返したのである。

 

「あいつの結末は私たちが変える。比企谷......いや八幡だけが傷ついて他の皆はハッピーエンドなんて世界望んでない。私は......!」

「もういい、十分わかったよ川崎さんの気持ちは。なら話そうか、宇佐美」

「はい」

 

議長である佐藤に振られて情報通の宇佐美が語りだす。

 

「まず第一に、私たちの目標は“依頼の内容に沿うようにしつつ、八幡様の安全を確保できる状況”にすることです。これの達成の為には三つの障害がありました」

「三つの障害?」

 

川崎が聞き返すと宇佐美は自らの黒ぶち眼鏡をくいっと上げていった。

 

「一つ目の障害、それは今までの先入観でございます。先の相模さんへの暴言を理由にしたいじめも八幡様に対する目や元来の性格に由来するろくなことをしないという先入観、そして被害者側の大げさの証言がありあそこまで過激化したものと考えられます」

「う......すいませんでした」

 

当の本人である相模がばつの悪そうな顔をするが気にせず宇佐美は続ける。

 

「いえ、相模さんはあの後の謝罪により八幡様からのお許しを得ております。彼のお方の決定とあらば私たちに覆す権利もありませんし相模さんはすでに我々の同志、そんなことをする理由もありません」

「う、宇佐美ぃ~!!」

 

感極まって宇佐美に抱き着く相模。しかし無情にもぺいっと引きはがされてしまう。

 

「な、何すんのよ!!」

「私のカラダは全て八幡様に捧ぐと決めておりますので」

「悪かったわね!!」

「............コホン」

 

川崎は脱線した会話を戻すように咳払いをする。すると宇佐美も少し恥ずかしそうにして続ける。

 

「し、失礼しました//......では二つ目の障害、それは雪ノ下家の介入の可能性ですがこれに関してはもう対処する必要性すらありません」

「なんで?むしろ一番の難関だったじゃん!」

「そ~だよね!だって雪ノ下さんのおうち金持ちなんでしょ?」

「私、会社の社長やってるって聞いたことあるよ!」

 

上から下半身にジンときた佐々木、階段から落ちた時に支えてもらった加藤、おじいちゃんが危篤だった八重樫が矢継ぎ早に聞く。

 

「ええ、皆さんの反論は最もですが......」

「宇佐美、そのことは私から言おうか。良いか?組織ってのはなデカくなればなるほど末端は脆くなるもんだ。しかも今回は中核たる雪ノ下家の次女、そしてお抱えの弁護士である葉山家の嫡男の失態。これは週刊誌やらなんやらがほっとかないだろう。放っておいても自壊するさ。まあしないならしないで手もあるしね」

「「「............」」」

「どうした?そんな大口開けて」

 

一同絶句、当然である。いきなりポンコツ議長がまともなことを言い出したのだから無理もない。

そしてその中でいち早く我に返った地下アイドルの顔を持つ黒瀬が聞く。

 

「す、すごいね佐藤さん!どうしてそんなに詳しいの!!」

「ん~?言ってなかったっけ?私の家も実は結構お金持ちなんだよ」

「え?」

「え~と......佐藤コーポレーションって言っても分かんないか。うちの会社もまだまだだね」

 

再び教室の空気は凍る。そして五秒後——

 

「「「えぇぇぇぇ!!!???」」」

 

教室は佐藤と宇佐美以外の絶叫がこだまする。

 

 

「佐藤コーポレーションってあの!?」

 

「とんでもない財力を持ってるけど企業目標はめちゃくちゃ高くて地球にやさしいあの!?」

 

「東京の離れ小島を買ってそこにアメリカ軍基地を移転させることによって沖縄の騒音問題やらなんやらを解決させたあの!?」

 

「それが原因で環境保全団体に訴えられそうになったけど、アメリカ軍と交渉してその基地から開発したオゾン層再生装置を積載した輸送機を大気圏に飛ばして今もオゾン層を再生させ続けているから手を引かせたあの!?」

 

「アフリカの砂漠化した大地をを大きい花壇と言って大規模な工事で地中深くをコーティングしてその上に赤土を強いてサトウキビを栽培してエネルギー問題も一挙に解決しようとしてるあの!?」

 

「リアル中川家とかリアルカプセルコーポレーションとかいってたらいつの間にか値段はとんでもなく高いけど最近原作で見ないホイポイカプセルを作ったあの!?」

 

「ちょ、アニマルタイプの住民が減ったのと一緒でしょ!?鳥山先生の都合も考えなさいよ!」

 

「最後に見たのはキングキャッスルの国王だよね~」

 

 

最後二人は違うとして皆佐藤の家の規模に驚きを隠せなかった。するともともと知っていた宇佐美がその流れをいったん切る。

 

 

「まあ私は知っていたので今更驚きもしませんが。三つ目の障害に入りましょうか」

 

「宇佐美の情報収集能力って引くほど凄いよね~。執事の宮前さんが是非諜報部隊に欲しいって言ってたよ」

 

「いえ、これだけ調べても八幡様の性癖の欠片も入手できていないのでまだまだです。それで三つ目の障害というか条件でしょうか、それは八幡様本人の依頼を達成するという意思です。修学旅行で告白を失敗したくない、このまま環境を変えたくない、この相反する依頼、そしてそれを言い渡されたのが告白の三十分前ですでに呼び出したようなものという最悪の状況のせいで八幡様は嘘告白という手段を取らざるを得ませんでした。この時に修学旅行で告白を失敗したくないという戸部君の依頼は解消しましたがもう一つの海老名さんからの依頼“この環境を変えたくない”はあの時点でもまだ終わっていませんでした。」

 

「え!?どういうこと!?」

 

 

宇佐美のまだ終わっていないという発言に相模は混乱し意味を問う。当然だ、どちらの依頼もあの時八幡が『解消』したはずなのだから。

 

 

「告白を失敗したくないという依頼に関しましては“修学旅行での告白”という一度のイベントで失敗しなければいいのですからそこで終わりです。しかし“関係の継続”となるとその関係を修学旅行後も変えないで継続するというのが依頼だったのですからその後のケアがむしろ本題になってくるわけです」

 

「え~と、八幡くんは葉山君たちのグループがつぶれないように見張ってなきゃいけないってこと?」

 

「概ねそのような理解で大丈夫です。この3つの障害を崩し八幡様に平穏を取り戻してもらうことは決して簡単ではございませんでした。しかし我々は八幡様のお姿、そしてその華麗なる手腕をこの両目に焼き付けてきました。ならば不可能な事でも可能にできるくらいの道理は通りましょう」

 

 

そう、彼女たちは八幡を見てきた。その姿、やり方を全て。さらに佐藤コーポレーションという権力もある。ならば多少の不可能など彼の攻略難易度に比べれば物の数ではない。

 

 

「そう!この3つ!!これをすべて解決しようとしていたんだよ私たちは!!」

「そ、そのはずだよね。佐藤さん......って普通に呼んでも大丈夫?」

「大丈夫だよ黒瀬ちゃん♪で、話戻すけどぶっちゃけ先入観ってのは八幡くんがいじめられている理由の一つであって改善する必要はないんだ」

「え!?」

 

 

黒瀬は動揺の色をあらわにする。いきなり前提条件を覆されて改善しなくてもよいと言われたのだからそれはそうだろう。

 

「確かに先入観は人を動かすには重要な要素だ。でも葉山君の悪事を公表してもいいとなれば話は別。彼らは所詮確固たる意志無しに“葉山君が言ってるから”という単純な理由で行動してる。ならその指針が間違ってたとなれば逆に虐げられていた方はヒーローと呼ばれることになるのさ」

「ほぇぇ......ってあれ?でも葉山君の悪事が暴ければってそれが出来ないから悩んでるんじゃないの?」

 

と相模が聞き返すと佐藤はニヤリと不敵に笑って言った。

 

「大切なのは“何を”するかではなくて“何故”それをするかだよ。ね?海老名さん」

「え...と、こんにちは」

「「「「......!?」」」」

 

教室の扉が開き海老名が入るとみんなの空気が凍り付く。するとそれを察してか海老名は気まずそうに言った。

 

「お邪魔だった......かな?」

「いや別にそんなことないけど......」

「はいはい!挨拶終わったらそれ以上はちょ~っと待ってね?海老名さんは“葉山グループ”にこだわってたんじゃなくて、“自分が落ち着いていられる場所”にこだわってたんだよ。それで今回の件の葉山君たちの行動を見たらどうすると思う?一人は自分に告白しようとしてきた、それだけならまだいいかも知れないけどわざわざ人の手を借りてまで告白しようとしてきた。その時点でもう愛想は尽きてたんじゃない?」

 

そういう佐藤に海老名も続く。

 

「“腐ってる”って言葉を免罪符に使ってきた私が言うことじゃないけど、もうあそこは嫌。結衣も隼人くんも私がそういうこと嫌がってるってことは知ってたはずなのに真面目に向き合ってくれてたのは優美子だけ。その優美子も隼人くんが雪ノ下さんとくっついたせいで今じゃすっかり元気をなくしちゃってる。だから私は比企谷くんに今度は真正面から依頼したの。“この関係を壊してほしい”って、そしたら彼は承諾してくれたから......」

「それは虫が良すぎる......って言いたいところだけど私も人のこと言えるような立派な行動をし続けてたわけじゃないし、それにアンタも比企谷助けるのに協力してくれたんでしょ?」

「それはもちろん......」

「ならそれでいいじゃん!ここでこの話は終わり!最終的にどうしたの?」

 

相模のその言葉に海老名に集まっていた視線はまた佐藤の元に戻る。そして佐藤はまた話し出した。

 

「この海老名さんの依頼で八幡くんが動かない理由はすべて消えた。葉山君の依頼は“グループが壊れるのを止めてくれ”、一回止めたんだからもう依頼は達成してる。そして海老名さんの依頼も変更......とくれば三つ目の条件も達成だよね」

「そ、そしたら......」

「うん!我らが神(八幡の写真を持ってきてくれる)、平塚教論の協力を得て私たちは三浦さん、海老名さんを抜いた葉山グループ。そして金の力で比企谷夫妻の職場の上司に圧力をかけ入学式の日の事故を無理やり示談にした雪ノ下建設も丸ッと潰すことにした私たちは—」

「って、ちょっと待って!?事故を無理やり示談にしたって何!?聞いてないんだけど!!」

 

口調的に相模と混ざりやすいので分かりにくいが今まで作者に忘れ去られていた川崎が事故の件で反応する。

 

「あ~......宇佐美がうちの情報部と協力して調べたんだけど一年前の事故、由比ヶ浜さんの愛犬サブレを八幡くんが救出したら雪ノ下家のリムジンに轢かれた奴なんだけど、あの時議員である雪ノ下さんの父はそれでクリーンなイメージの自分に悪評が付いたら困るって八幡くんのご両親の会社の上司に賄賂渡してたんだよね。馬鹿だよね~うちならむしろ包み隠さず公表して、それでお詫びに娘を嫁に差し出すくらいするよ。まあ八幡くんを轢くなんて、人を轢くなんて真似をする運転手はいないけどね。万が一だよ万が一」

「いやそれアンタの願望も入ってない?」

 

相模に図星を指されるが無視して佐藤は続ける。

 

「それでクビにされたくなければ示談にしろってなってそうなったら八幡くんが示談にしないはずないでしょ?あ、因みに比企谷夫妻は今うちの会社に居るよ」

「あ、あの裏でそんなことがあったの......?」

「ていうかそんな事故があったことすら知らなかった......」

 

川崎と相模が驚愕をあらわにする。しかしそんな二人を前にしてもあっけらかんとした風に佐藤は言った。

 

「広めるのも八幡くんの本意じゃないじゃなかったわけだし、知らなくて当然だと思うよ。まあ今となっては公然の事実だけどね。じゃ、話戻すね~?悪いけど、理由はどうあれ八幡くんとその家族を傷つけた雪ノ下家は許さない。だからまずは後々の布石の為にマスコミにこれらの情報を比企谷家同意の元流したんだよね。この時信じてもらえなかったんだけど八幡くんの説得がかっこよかったな~......♪」

「え、羨ましい......」

「その情報は初耳なのですが」

 

黒瀬が真顔で羨ましがり、宇佐美でさえ興味ありげに追求しようとする。

 

 

「だ~め、アレは私だけが見た横顔なんだから。それで肝心なのはその後!信用が武器の議員である父は当然懲戒免職を余儀なくされて、会社の方も株価が大暴落の末に倒産。雪ノ下一家はギリギリで私たちが株を買い占めたから普通に生活できるくらいの余裕は出来た」

 

「そんな救いの手を差し伸べるような......」

「救いの手?いやいや、むしろ悪魔の右手だよ。私たちの作戦はむしろここから。雪ノ下家が倒産して雪ノ下さんは晴れて自由の身になった。そういう解釈を雪ノ下さんがするように葉山君は仕向けた......それもさも自分の手柄のようにね。そして自由になってそのまま......って感じだね。その流れのまま由比ヶ浜さんとも付き合いだして、すべてを手に入れてから彼は周りを見ることを止めた。結果、すべてを失った。それにしても人前で学校で致す相談とか女子の聞き耳ネットワーク舐めんなよって話だよね」

 

要約すると、“葉山のおかげで家柄という枷から逃れられた“と葉山隼人は雪ノ下雪乃に思わせ付き合うことに成功した、副産物として由比ヶ浜結衣さえも。しかし、そこから何もかもうまくいって有頂天になり大きな気持ちになった葉山がスキャンダルを晒すところまでが彼女たちが計画した作戦なのである。

 

「その後は葉山グループの男子+由比ヶ浜さんと雪ノ下さんは戸部君以外一旦施設に入れられることになったよ。で、大和くんと大岡くんに精神鑑定をした結果かれらは異様に葉山君に妄信しすぎていた。まだ軽い戸部君でさえ葉山君が言っていたからという理由で八幡くんの名字を“ヒキタニ”って言ってた時点で程度がうかがえるよね。奉仕部の二人はまだ葉山君を信用したままみたいだよ。ぜひとも葉山君には頑張ってほしいものだね、せっかく壊れないグループをプレゼントしてあげたんだからさ」

「............なんていうか、ここまで行くと許せないけど若干同情するよね。まあ主に施設の人に」

 

こんな問題児を抱え込んでいる施設は佐藤グループの系列なのだが横柄な態度で困っているようだ。家柄に縛られたくないけど家の力は利用してきた。そんな彼女が横柄な態度を取るのは必然か。あるいは彼女がもっと八幡と向き合っていたのなら、向き合えていたのならまた別の選択肢もあったのかもしれない、親から逃げ、自立からも逃げた彼女がとれたかもしれない第三の選択肢......しかしそれはまた別のお話である。

 

「はい!この話はここで終わり!早速今日の本題に入るよ!!」

「ああ、これ本題じゃないんだっけ?」

「今日の本題、それは......」

 

佐藤は先ほどまでの十倍ぐらいイキイキして言った。

 

「みんなで決めろ!最強シチュ決定戦!!!」

「「「「イエーイ!!!!」」」」

「はぁ......なんかシリアスっぽかったのにまたこのノリ、まあこっちの方がアンタたちらしいっていえばアンタたちらしいか」

 

そういう川崎もまんざらでもない顔であった。

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