総武高校2年F組女子会   作:やってやる!やぁ~ってやるぜ!

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二人の始まり

 

 

 

八幡たちが中学二年生のころ

 

「ふっ、我が乖離剣の切れ味。星をも切り裂くわ」

 

俺はその辺の棒をもって散歩していた。周りの奴らは

 

『うわっ、ヒキタニまたなんかやってるww』

『厨二病患者だww』

 

とか言っているが、それは全くの嘘だ。俺は選ばれし人間だ。

 

そう、思っていた時期がありました。俺は中学一年の頃に少し早い厨二病を迎え、入学と同時に人が離れていき友達が全くできなかったのである。それでも世界再生計画ノートを作ったり、スチロールトレイとアルミホイルで最強の武器を錬成したりして楽しんでいたのだが......

 

『我が必勝剣(セイント)カリバーの一撃を......』

『お兄ちゃんキモイ』

『はい』

 

あの時、俺の厨二病は止まった。まあ友達が出来ないのに変わりはないが。

そんな俺はなんとなーく出かけて、これまたなんとなーくマッ缶が飲みたくなって、なんとなーく裏路地の自販機で買おうとわき道に入ると......

 

「あ?」

「すいません。すぐどきますので......ッ!」

 

自販機の前で女子が蹲っていた。って

 

「おい!お前足でもくじいたのか!?」

「はい、ですが心配はいりません。この程度でしたらすぐに治りますので」

「いや顔色悪いぞ!?」

 

お嬢様学校の制服のようなものを着ている彼女は下はスカート、なので足首は多少見えるのだが......紫色に変色している。

 

「あんま無理すんな、それにこのままお前を見過ごしてマッ缶買えるような精神構造してねぇよ。後それ、大分痛いだろ」

「............」

「沈黙は肯定と取るぞ。はぁ......こんなになるまで放置しとくかね普通」

 

俺は自販機で水を買い、持っていたタオルにそれをしみこませて患部に巻いた。後は下手に動かすと逆効果なので、最低限安定するように持ってきていた鞄に足を掛けさせる。

すると、少しの間声を出さなかっただったそいつが口を開いた。

 

「どうして......ここまでしてくれるのですか?見ず知らずの私に」

「どうしてっていわれてもなぁ......」

 

『どうして』と聞かれても、このまま見捨てたら寝覚めが悪いとかそれくらいなものだ。

と、いうより俺はもっと気になることがあった。

 

「なんでお前はこんなところに居たんだ?格好から見るにいいトコのお嬢様だろうけど」

「これは私が自分で解決するべき事、貴方に話すわけにはいきません」

「.....解決出来てねぇからこんなとこに居んだろうが」

「...........」

 

コイツの表情は全く変わらないので読み取ることはできないが状況と身分の推測からなんとなく予想はつく。

 

「いじめか」

「......!何故それを?」

「そうか、いじめなんだな。それも上流階級の中での更にやっかみ......いや遺物の排除ってとこか」

「............ええ、その通りです。なればこそ私が、一代で日本最大勢力を築いた佐藤コーポレーションの娘たる私が屈してはいけないものなのです」

 

成程......規模は予想以上だったが概ねは予想通りだな。出る杭は打たれる......それを体現してた奴らがいたってとこか。そう考えると金持ちも意外とバカだな、そんな事すれば敵を作るだけって分かってるだろうに。

それに屈しないコイツの考えは親かそれとも周囲の環境から植え付けられた帝王学に寄るものだろう。確かに立派な志だが......

 

 

「それは関係ないだろ。お前はお前だ、佐藤コーポレーションの娘とかいう以前に一人の女の子としてのお前が居んだろ。周りに頼らないなんてのは悪手だぞ?一人で抱え込んでもいつか爆発するだけだ。会社だって一人で回っているわけじゃない、一人じゃできないことを代わりにやってもらう奴を集めたもの......それが会社だ。企業だ。そんなとこの娘のお前が他人の力を使わないなんて馬鹿げてるだろ?」

 

「......貴方は、変わっているんですね。その捻くれた思考、そして私が佐藤コーポレーションの娘だと知っても態度を変えないところなど普通ではありません」

 

「普通じゃないの何が悪いんだ?英語で言えばスペシャルだぞ」

 

そういうと彼女は——

 

「そう、ですか......私は、誰かに頼っても良いんですか?」

「だからそういって———っておい!?お前——」

「え......?」

 

始めて表情の変化を見せた。それは涙、彼女が今まで抑え込んできた弱音、泣き言、恨み言。それらをすべて洗い流すかのようにとめどなくあふれる涙であった。

 

「な、なんで......私、涙なんか」

「それがお前の“本物”ってことだろ、お前も一人の女の子。抱え込みすぎなんだよ」

 

そう言って俺が頭をポンポンと撫でるとそいつは顔を俺の胸にうずめて泣きじゃくった。

 

「う、うあぁぁ......!!わ、私!ずっと......普通に過ごしたかった!みんなと一緒にお人形遊びとかおままごととかしたかった!人並みの恋愛がしたかった!でも、でもそれを、そんなことをしていたら取り残されちゃうから!!」

「そうか、そうか......今までよく頑張ったな」

 

俺はそいつが泣き止むまで頭をなで続けた。

 

 

 

 

 

 

「お、お見苦しいところをお見せしました。もう大丈夫です//」

「分かった」

「あ......」

 

顔を赤くしてもう大丈夫だと告げる彼女から手を放すと少し寂しそうな顔をする。やめて?なんかすっごい悪いことしたみたいになるからやめて?

 

するといきなりサングラスをかけた黒服の集団に囲まれてしまった。え?脈絡なさすぎない?何でいきなりマのつくご職業の方に囲まれてるの?

 

「あ......と、どなたでしょうか?」

 

俺が聞くと真ん中に居た黒服のサングラスの男性が一歩前に出て言った。

 

「一部始終拝見させてもらっておりました。我々は佐藤コーポレーションという光から生まれた影を消すために生まれた存在、日本の経済界を裏から監視する佐藤コーポレーション専属諜報機関第七特殊班......」

 

そこまで言うとその人は少しめんどくさそうに頭を掻いてからおもむろに懐から銃(見たことないけど恐らくそうであろうと思う......日本で!?)を取り出して言った。

 

「長いですね、マフィアで覚えていただいて支障ありません」

「やっぱマフィアなの!?」

「宮前......」

「すみません、冗談です」

 

そう言うと宮前さん?は引き金を引き銃身から旗を出した。いや心臓に悪い冗談止めてくんない?

まあ、どうやら彼女の護衛という訳らしい。本人曰くマフィアだけど。すると宮前さん(仮)はお嬢様を黒いワゴンに乗せた。

 

「み、宮前。私もう少しこの人と......」

「行けませんお嬢様、もうあなたが失踪してから二時間。これ以上長引きますとご両親が心配なされます。その上週刊誌も嗅ぎつけてくる可能性がありこれ以上の接触は彼にとっても危険なのです」

「でも......」

「分かってやれ、お嬢様。その人は多分俺を思って言ってくれてるんだ」

 

恐らくだと俺の予想ではこのままだと俺は......

 

「はい、ここまで知ってしまったからにはあなたを返すわけにはいきません。だからこそのこの措置なのです。二時間ならば少し迷子になっていたで誤魔化せる......精一杯の特例なのです」

「だとよ......で、どうする?」

「............」

 

彼女は俯いてしまった。すると宮前さんはコホンと咳払いをして言った。

 

「ですがまたの機会であればできないこともありません」

「ホント......?」

 

この人デキル人だな。八幡分かっちゃった。一瞬にしてお嬢様が顔をあげたぞ。

 

「はい、ですので今回は比企谷様の為にもここまでということで......」

「まあ俺は別にいいんですけど......あれ?俺の名前言いましたっけ?」

「執事ですから」

 

それで通るってマジかよ......

 

「差し支えなければお嬢様の次の休養日は来週の土曜日となりますのでその日の10時に最寄り駅の前で待ち合わせしていただけませんか?」

「わ、私からもお願いします。貴方ともう少し話してみたくなりました」

「まあそれくらいなら......」

 

俺に断る理由もないし何より乗り掛かった舟だ、とことんまで付き合ってやろうじゃねーか。

 

「では我々はこれにて......」

「あ、私の名前は佐藤泉です。貴方のお名前は?」

 

宮前さんが車を出そうとするとお嬢様......いや佐藤が少し止めて自己紹介をする。そういや俺たち互いの名前も知らねぇじゃねーか。

 

「俺の名前は比企谷八幡だ。よろしくな佐藤」

「はい、ではまた土曜日に。は、八幡さん//」

 

そして車は走り去っていった。それと同時に俺の意識も異空間へ走り去っていった。

え?何あれ?顔を赤らめて名前で呼ばれるとか、神かよ.......いや天使みたいな完成された表情だったな。でもそれだと......

 

「笑顔だとどうなんのかな......」

 

もっと上が気になるわけで。まあそれはそれとして俺は帰ってからあの痛いセリフの数々に頭を抱えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなあって俺たちは決まって毎週の土曜日に会うようになった。ららぽへ行ったり、ゲームセンターに行ったり、サイゼやなるたけで佐藤が新感覚を発見したり、そして決まって帰り際。別れるときには.....

 

「ではまた来週の土曜日にここで」

「ああ、楽しみにしてる」

 

来週の予定を組んで帰宅していた。俺たちは佐藤の立場の関係で連絡先を交換していなかったので口頭で約束をするしかなかったのだ。

 

そうして何度逢瀬を重ねても、佐藤の笑顔を見ることは出来ずにいた。彼女の怒った顔や驚いた顔、泣き顔を見たことはあっても笑顔だけは見ることは叶わなかった。

一度だけ本人に聞いてみると

 

「もしかしたら今までその感情を持ったことがないからかもしれません。あの環境ではまず私は笑顔を自ら手放してしまいましたから......」

 

と、言うことらしい。まだまだ道は長そうだ。まあ彼女も俺が名前呼びしないことが不満なのだそうだが......人生で小町以外の女子とほぼほぼ喋ってないヘタレには難しい話だ。

まあ色々ありつつも土曜日の10時からの彼女とのひと時は俺にとって週に一度の楽しみとまでなっていた。自惚れかも知れないが恐らくは彼女も。しかしそれは唐突に終わってしまった。

 

 

午後5時、駅前にて

いつもなら彼女の方から来週の予定を切り出すはずなのだがその日はそうではなかった。代わりに彼女は

 

「あの......今日はもう少し歩きませんか?」

 

夕日をバックにそう言った。その姿が俺にはとても美しく見えて、それと同時にどこか寂しそうだった。

 

そうして歩いて行った先、そこは

 

「ここは、あの時の」

「はい、私と八幡くんが初めて出会った路地裏です」

 

俺と彼女の関係が始まった場所だった。それにしても一体何故......?

 

「何でこんなとこに......?」

「このすべてが始まった場所で......終わらせなければならない、そう思って来ていただきました」

「終わり......?」

 

どういうことだ?この関係が、終わる?

 

「はい。私は両親の仕事の都合上海外に行かなくてはなりません。そうなれば八幡くんと会うことは不可能となってしまう。だから、終わりなのです」

「............」

 

そう言った彼女の表情は、今まで見たことがないほど悲しそうで、寂しそうで、儚げだった。

俺が彼女にその顔をさせてしまっている......その事実が俺の胸を締め付けた。

 

「もうすぐ宮前が来ます。そうすれば......もう会うことはないでしょう」

「............」

 

考えろ。何か、何か一つでも。そうしなければ彼女は行ってしまう、このまま。俺が笑顔を取り戻してやれないまま、それどころかもっと強い傷を植え付けて行ってしまう。彼女を......

 

「八幡くん......?」

 

俺の顔を心配そうに見つめる佐藤......それを見ると考えるのが馬鹿らしくなった。俺は、俺の気持ちをそのままぶつけてやればいいじゃないか。それで彼女が笑顔を取り戻せば万々歳だ。

俺はもともとこんなエゴイストなのだから。

するとあの日見た、いつも帰る時に佐藤が乗る黒いワゴンが来てドアが開く。そして悲しそうな顔をしながら乗り込もうと背を向ける佐藤の腕を掴んで言った。

 

 

「八幡くん?」

「こんな事言うのは酷かもしれんが」

「......?」

「俺はお前のことを多分忘れる。いつかな」

「そう...ですか」

 

彼女は俯く。しかし俺は構わず続けた。

 

「だからこそ、今この瞬間を大事にしたい。佐藤......いや泉!お前と、一緒に居られる時間を............」

「は、八幡くん...今、名前で......」

 

すると泉は身をひるがえし俺に抱き着いて

 

「ん......」

「......!?」

 

その柔らかい唇を俺の唇に押し付けた。一瞬だったか永遠だったか分からないようなキスの後、泉は後ろに腕を組んで一歩下がって言った。

 

「私......結構駿念深いんですよ?私は八幡くんの事絶対忘れません。八幡くんにも忘れさせません。だからもう会えないことなんてない、もう一度会いに行くから」

 

そう、キスの恥ずかしさから耳を真っ赤にして別れの寂しさから涙を流していた彼女は確かに笑っていた。ニコっと少し顔を傾けて笑う彼女は今まで見てきたどんな姿より魅力的で、どうしようもなく愛おしい。

 

「やっぱり、お前の笑顔は可愛いな。泉」

「そう、ですか。私今笑えていたんでしょうか。実感がわきませんが......」

 

彼女は最後に微笑んで

 

「貴方と......八幡くんとこうして居られるなら。いくらでも笑える気がします」

 

そういい残し、去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

最後の逢瀬から一年が過ぎ......

 

「案外早く会えそうですね、八幡くん」

 

私、佐藤泉はまた千葉の地に立っていた。

両親の仕事は無事成功し、海外での地盤もゆるぎないものとなりつつある。なので両親たちは後一月ほどは様子見で日本には戻らないが私だけは千葉にある支社に宮前たちと一緒に行かせてもらえることになった。

 

「八幡くんは今何をしているのでしょうか......」

 

彼に会うために私は向こうで何とかこうにか両親を説得し、この千葉に戻ることが出来た。

そして笑顔の練習もたくさんした、でも彼のことを想像すると自然と口角が上がるのでその必要はなかったのかもしれない。

 

いきなり会って、驚かせるためにとびっきりのオシャレをしてあの駅前に行こう。宮前から通りそうな時間は聞ける。

鏡を見て身だしなみをチェックする。

 

彼は私の事を覚えているだろうか?

 

彼と会ったらうまくしゃべれるだろうか?

 

彼といたらうまく笑えるだろうか?

 

笑顔を見せたら、彼はまた可愛いと言ってくれるだろうか?

 

考えても考えても答えは出ないが私の心は高ぶっていった。彼にまた会える、その事実だけで私は自然と笑みを浮かべていた。

 

 

そしてようやく待ちに待ったその時がやってきた。

宮前たちは何処かに行き、八幡くんが姿を現す。私は白いワンピースをなびかせながら彼に駆け寄った。

 

「は、八幡くん!久しぶりですね!」

「邪魔......つーかあんた誰?」

「......え?」

 

今まで見たことがない怖い目つきで彼は私を睨む。それと同時に今まで浮足立っていた心音は別の意味でうるさいくらいに響き始め、足元がガラガラと音を立てて崩れ落ちていくような感覚を感じた。

私はショックで一歩、二歩ほど下がると彼は歩き出した。

その彼の顔を私は見ることが出来なかった。

 

その日、私は泣いた。もう二度と流れないはずだった冷たい涙は私の頬を静かに伝っていった。

 

 

 

 

 

 

 

次の日から私は、仮面をかぶることにした。今までかぶっていた表情の変わらない鉄の仮面ではない、彼が可愛いと言ってくれたはずの笑顔が張り付いた仮面だ。

彼から笑顔を奪ったのは私だ、私が勝手に遠くに行ったから彼は怒ったのだ。私が、私に魅力が無かったから彼は私を忘れてしまったのだ。

ならば次はもっと魅力的な人間になろう、明るく笑顔を絶やさない。そんな自分になるんだ。

 

そうすればきっと彼も振り向いてくれる。もう一度彼の隣に立てる、彼の隣で笑える。

それだけを胸に私は笑い続ける人生を選んだ。仮面では彼の隣には絶対に立てないことは分かっているのに......彼は理由もなくあんなことはしない、だから私の何かが彼の逆鱗に触れてしまったのだ。今のままでは彼に近づくことすらできない。あの目に、愛おしいあの顔に、大好きな彼の体に。そんな私の人生なら、砕け散ってしまってもかまわない。

 

だから今度こそ、彼の隣で笑える佐藤泉になる。そんなすべてを照らしてしまえるような太陽のような笑みを浮かべる少女に......

 

 

 

 

 

 

「......これは」

「はい、これじゃああんまりです!」

 

川崎と黒瀬は佐藤に訴えかける。そして相模が佐藤の胸ぐらをつかむ。

 

「あんたそれでいいの!?ずっと......ずっと好きだったんでしょ!私たちの誰より先から!!あいつが意味もなくアンタを無視するはずがない......そしてその理由はアンタにはないことなんてアンタが一番分かってるはずでしょ!?」

「じゃあ、他に何があるんですか」

 

彼女の顔から仮面がはがれて代わりに涙が目からあふれる。

 

「私はあの時逃げてしまった。他の理由があったとしても逃げてしまったんです!そしてここまでやってしまったんです!!もう彼は私の事なんて覚えているはずがない!なら、もう......こうするしかないじゃないですか............あの時の私の判断が無ければまだ関係が続いてたかも、なんて希望はあったら苦しくなるだけなんですよ。それにあの時、葉山君たちの件で動いたときも私に気が付かなかった。それが証拠です。」

 

その佐藤の初めてともいえる本気の叫びに一同は静まり返る。

すると教室の扉が開いて男子禁制のはずの教室に二人の男性が入ってくる。

一人は佐藤の執事である宮前、そしてもう一人は......

 

「佐藤、ちょっといいか」

「え、ええ!?ちょ、なんでここに......比企谷くん!?」

 

その話の渦中の人間、比企谷八幡だった。

八幡は佐藤の腕をつかんで教室の外へと引っ張っていく。

その事実に唖然とする一同に宮前が語り始めた。

 

「皆様我々の登場に何故?と首をかしげてらっしゃることかと存じ上げますが、お嬢様のあの話には彼女が知りえない続きが存在するのです」

「つ、続き......?」

「はい、あの時比企谷様は学校でいじめられておりました。女子の嘘告白を断わった件で」

「はぁ!?そんなの嘘告白した方の奴が悪いんじゃん!!」

 

その話に相模をはじめ、全員が憤慨する。

 

「ええ、普通ならばそうです。ですが比企谷様はすでに軽くいじめられておりその火を煽る形でいじめがエスカレートしていってしまったのです。そしてあの時もまたその真っ最中だった」

「も、もしかしてつけられてたってこと!?」

 

そうくればおのずと最悪の思考も浮かぶ。

 

「はい、彼に親しい人をさらにいじめの対象として比企谷様にさらなる絶望を与えようと......ね。首謀者はその嘘告白をした女子の彼氏である座間という人物です。それに気づいていた彼はわざと妹である小町さんにも冷たい態度を取らせて遠ざけていたそうです」

「なるほどね、分かったよ。てことは比企谷は......」

「はい、比企谷様はお嬢様を守るためにあのような態度を取ったのです。私はその後彼に声を掛けて持ち掛けました。自分ですべてを守れるほど強くなる気は有るかと」

 

そして、宮前は語りを終えた。すると何か気になったのか黒瀬が聞いた。

 

「あの~どうして宮前さん?は八幡くんがいじめられてるって分かったんですか?」

「はい、10m後方から比企谷様に悪意をもった視線を浴びせるものがいたというのもありますが......比企谷様がすれ違う時、とても寂しげな、今にも泣き出してしまいそうな視線をお嬢様に向けていたからですね」

 

 

 

 

 

俺たちは20分ほど何も言わずに歩き、あの場所についた。そこは......

 

「あの、路地裏......」

 

そう、俺たちの全てが始まり終わった場所。俺はそこで泉に向き合った。

 

「俺はお前に迷惑を掛けたくなかった。だから二年間、お前を巻き込まないように何も言わずに宮前さんに色々教えてもらったんだ。もう二度と再会したあの日のようなことは起こしたくなかったから」

 

本当はあの時、俺は今すぐにでも泉を抱きしめたかった。また色々遊びに行きたかった。二人で笑い合って見たかった。久々に見た彼女は笑いながら駆け寄ってきてくれて、その姿が本当にうれしかった。

だがここで彼女を受け止めてしまえば彼女が壊されてしまう。たとえ俺が嫌われたとしてももう二度と隣に居られなくなるにしても、それだけは絶対に嫌だった。

その結果がアレだ。もう泉の絶望した顔なんて見たくない。

すると泉は何も言わずに俺に抱き着いてきた。

 

「お、おい?」

「なら......こっそり言ってくれればよかったじゃないですか。私は八幡くんに嫌われたと思ってたんですよ?」

「わ、悪かった」

「許しません......私とずっと一緒に居てくれないと、今度こそ離れないって約束してくれないと、私は貴方を許しません」

 

俺は自分より少し背の低い彼女の頭を宥めるように撫でる。

ひとしきり撫でた後、俺は彼女から少しだけ離れていった。

 

「泉、お前の怒りも苦しみも悲しみも全部俺が受け止める。喜びも楽しさも愛しさも全部お前に伝える。だから......お前の人生を一番近くで見続ける権利を、お前の人生をゆがめる権利を俺にくれ」

「はい......代わりに、貴方の人生は私の物なんですからね?」

 

そして俺たちは何とはなしに見つめ合い......そっと口づけを交わした。

 

 

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