とあるオタク女の受難(ジョジョの奇妙な冒険編)。 作:SUN'S
「今すぐ攻め込むべきだ!」
「俺は反対だって言ってるだろうが!」
俺は柄にもなくジョジョと本気の口論を繰り返し、カーズの逃げ込んだホテルへ攻めいるべきだと訴える。ジョジョ、メッシーナとロギンズ、リサリサ先生も臆している訳ではないのは分かっている。
しかし、俺は知っている!
ジョジョの心臓に埋め込まれたリングの溶解へのタイムリミットが、あと数日しかないのを、アシュリーはリングのことを知ってか知らずか、俺の提案に賛同してくれている。いつもジョジョを無意識に贔屓していたアシュリーがだ。
「もういい、俺ひとりでも行くぞ!」
「ああもう、アタシも着いていく…」
リサリサ先生の制止を振りきって、その場から走り出した俺に着いてくるアシュリーに心の中で感謝する。じいさんツェペリの時もアシュリーの祖母が手伝ったとスピードワゴンさんに聞いた。
おそらく、そういう危険に対する察知能力が人一倍鋭いのだろう。現に俺がホテルへ踏み込もうとした瞬間、カーズやワムウへ波紋を使えないという決定的なデメリットを抱えながら、俺と共に来てくれた彼女が独りでに開いたドアを凝視したのだ。
「見えてるわよ、ワムウ!!」
正しく一瞬、ほんの一瞬の出来事だ。彼女は真上を向き、腕を突き出す。すると、アシュリーの手のひら、手首から
その能力を俺は知っている。だが、こんなだだっ広いところで使ったとしてワムウを捕らえることが出来るとは思えない。
俺の考えとは裏腹に彼女はまるでハンマー投げをするオリンピック選手のように回転し、ワムウを捕らえたであろう糸をホテルの壁に叩きつけたのだ。
「シーザー、アタシは無茶するけどさ。それは、あんたがいるから出来るってこと理解してよ?」
アシュリーが、そう俺に言った。
次の瞬間、アシュリーは糸に引きずられるようにホテルへと吸い込まれた。あまりにも愚策だ。しかし、彼女は知っているのだ!俺のやろうとしたシャボン玉の応用編を、だからこそ彼女は自らを俺の作戦のために囮にしたのだ。
「ワムウウゥ!俺のシャボンは、あの時とはひと味もふた味も違うぜ!!」
両手を擦り合わせてシャボン玉を作る。むろん、ホテルに投げ込むのではなく、真正面に居るワムウへ向けて放つためだ。アシュリーの付けた血染めの目印は見えている。
「食らえ、シャボン・カッターッ!!」
ワムウに絡まった糸を巻き込み、本体へ向かって突き進むシャボン・カッターから逃れる術はない。無数のシャボン・カッターがワムウを切り裂く。
いま、ハッキリと見えたぞ。
シャボン・カッターを受け、ワムウは驚愕していた。俺の波紋が強くなっているのを理解したのだ。外では分が悪いと判断したのか、ホテルへ逃げるワムウを追ってホテルに入る。
ワムウの気配を探りながら地面に傷一つなく寝かされているアシュリーを見て安堵する。おそらくアシュリーも確信していたのだろう。
この「柱の男」は、ワムウは女子供を殺さないと信頼していたのだ。ゆっくりと踊り場で踞る傷だらけのワムウを睨み付ける。
ついに、ついに父さんの仇を討てる。
「このワムウを追い詰めるとは、些か過小評価していたぞ、若き波紋の戦士よ」
「俺の名は波紋の戦士じゃあないぜ!俺はシーザー、シーザー・アントニオ・ツェペリ、貴様らを倒すために生きてきたものだ!」
ジョジョのためにリングを奪う。アシュリーを守りながら戦う。そして、この手でワムウを倒す。容易に出来ることじゃあないのは分かっている。だが、俺もツェペリ家の男だ。
じいさん、父さん、俺に勇気を!