とあるオタク女の受難(ジョジョの奇妙な冒険編)。 作:SUN'S
「なあ、兄貴…」
「なんだ、余計なもんは買わんぞ」
「いや、そういう訳じゃねえけどよ。兄貴のときみたいに詠月の姉ちゃんなら親父のこと治せたんじゃねえかと思っちまったんだ」
ふと晩飯の材料を買った日の帰り道───。
俺は兄貴と並んで歩きながら思ったことを告げる。少し悩んだような表情を浮かべる兄貴を見る。バカの俺でも考えつくことだ、兄貴のことだし、とっくに詠月の姉ちゃんと聞いてるか。
「ああ、試してみる価値はある。億泰、この材料を置いたら直ぐに空条承太郎のところへ行くぞ」
「お、おう。わかった」
「その考えは俺も思い付かなかった。ずっと『治す』能力か『殺す』能力を探していたからな、少しばかり考え方が偏ってやがる」
そう言いながら俺の肩に手を置き、ようやく一筋の希望を見つけた。本当に詠月の姉ちゃんのスタンドで親父を戻せたら、俺は何を親父に話そうか。
〈数日後〉
詠月の姉ちゃんが旦那と一緒に来た。この前より少し痩せているように見えたが、俺が考えても仕方ないので静かに兄貴や承太郎さんと着いていく。
そこは真っ白な病室の真ん中、鎖やらベルトやらで拘束された親父を見る。詠月の姉ちゃんと旦那が部屋に入り、スタンドを出現させる。
ここまで来るのに十年も掛かった。
「〈In My Time of Dying〉」
ほんの一瞬だけ親父の身体が元に戻った。そして、親父を化け物に変えた元凶の『肉の芽』らしきものが額にあるのも見えた。
今度は承太郎さんが部屋に入る。また、詠月の姉ちゃんの能力で人間に戻る親父を見る。しかし、さっきと違って化け物には戻らなかった。
「二人とも終わったぞ」
コツコツと靴を鳴らす承太郎さんの後ろから半裸の親父が恐る恐ると出てくる。どこか夢を見ているような表情だったが、ゆっくりと俺たちに手を伸ばしてくる。
「本当に形兆と億泰なのか…」
「お…おや…じぃ…っ!…」
昔は、ずっと怖かった。
それでもたった一人の親父だ。
俺たちは親父が化け物に成り果ててから、ずっと親父を救うために生きてきた。それが、ようやく終わったんだ。今日から親父と兄貴と俺で、昔のように三人で飯が食えるんだ。
「空条承太郎、今回も助かった」
「いや、気にする必要はねえぜ。今は親父さんと一緒にいてやりな」
まともに喋れるようになった親父に、この十年のことを話していると兄貴と承太郎さんの話し声が聞こえてきた。そう言えばそうだ。俺も兄貴も承太郎さんと詠月のお姉ちゃんに助けられるのは二度目だ。
「形兆、大きくなったなあ……」
「ああ、十年も経ったからな」
「ごめんな、俺が……」
「なあ、親父も久しぶりに飯食いてえよな?」
俺と同じように兄貴も親父と話すのに照れているのか。親父に顔を背けながら一緒に飯を食べようと誘っている。