とあるオタク女の受難(ジョジョの奇妙な冒険編)。   作:SUN'S

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第48話(川尻浩作(吉良吉影))

私の名前は吉良吉影────。

 

いたって普通の会社員だ。もっとも、それは少なくとも数日前までの話だがね。あの忌々しい空条承太郎と東方仗助のせいで、私の人生は滅茶苦茶だ。

 

しかし、私はモナリザ(四宮詠月)に出会えた。

 

彼女の『手』は素晴らしい。ほんのり漂うボディーソープの香り。綺麗に整えられた爪、汚れ一つない色白の肌、そのどれもが愛おしい。

 

「あなた、お弁当忘れてるわよ!」

 

「ああ、すまない」

 

ゆっくりと後ろに振り返ると、そこにいるのは私が成り代わった川尻浩作の妻である川尻しのぶだ。いつも気だるそうにしているが、私のためにお弁当を作り、ごく稀に夫婦の営みをする。

 

しかし、最近の私は可笑しい。

 

この時期になると必ず起こっていた『衝動』が出てこないのだ。ひょっとして、私は、あの『衝動』から解放されたのか。

 

そう何度か考えた。

 

だが、それは違うと分かった。

 

私の『衝動』は彼女だけに、そうモナリザ(四宮詠月)に、その一人のみに向いているのだ。だから、私は普通に静かに暮らせている。

 

多少の息苦しさはあるが、私は川尻しのぶと川尻早人との生活は悪くないと思っている。私はモナリザのおかげで変わりつつある。

 

しのぶのお弁当をカバンに入れて仕事へ向かう。この川尻浩作は出世意欲の高さ、それと他人を惹き付けるセンスを持ち合わせていた。私ならば上手く使えるステータスばかりだ。

 

「パパ、どうしたの?」

 

「うん?いいや、なんでもないよ。それより早人も急いだ方がいい。そろそろバスが来る時間だ」

 

「えっ、あ、やばい!?」

 

トタトタと軽やかにバス停へ走っていく早人を見送り、私は歩いて職場へと向かう。通勤時のルートは変えず、少し体力をつけるために歩いて向かう。

 

あの時の失敗は努力で補える。

 

ふふっ、なんだか、とても気分が良い。私が川尻浩作と出会ったのは運命だ。しかし、空条承太郎たちと出会う可能性を考えると引っ越しを検討したほうが良いかもしれない。

 

私の名前は川尻浩作────。

 

いたって普通の会社員だ。大切な妻子を持ち、成績優秀で営業部の稼ぎ頭。今日も妻子の幸せを願って仕事へ向かう。

 

今の幸せを奪わせるつもりはない。

 

たとえ私が凶悪な殺人鬼に戻ろうとも川尻浩作として、私はモナリザ(四宮詠月)を心に仕舞って生き続ける。私は静かに植物のように家族と暮らす。

 

私の細やかな願い。

 

それを奪うものは絶対に許しはしない。

 

どんな相手だろうと私の〈キラークイーン〉で、粉々に吹っ飛ばす。私は川尻浩作として家族と幸福な暮らしをしたい。

 

それが今の私の望みだ。

 

 

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