とあるオタク女の受難(ジョジョの奇妙な冒険編)。 作:SUN'S
あたしの目の前に現れた〈ホワイトスネイク〉の本体を見下ろす。確かアイツの名前はエンリコ・プッチだ。この距離でアイツに『指鉄砲』が当たるなんて思えないが、あたしに出来た初めての友だちの徐倫の父親を助けるためだ。
ゆっくりと呼吸を整えろ。
あたしの隣に座っているツミキも弾道の補助をしてくれているんだ。この一発は絶対に外れることはない。そう確信して放った、あたしの欠片が〈ホワイトスネイク〉に弾かれた。落ち着け、落ち着くんだ。まだ、あたしたちの居場所はバレていない。
「ツミキ、あれに変装するぞ」
「おや、名案だね。それなら私が〈ホワイトスネイク〉を引き付ける『もの』を演じよう」
そうツミキが告げる。
すると、どういう訳なのか。さっきの赤ん坊が樹木の中から生まれてきたところを本当に再現していく。ツミキのスタンドは『重力』を操作する能力じゃないのか?と考えながら救急隊員を殴って、そいつの服を奪い取る。
これならDアンGを殺せる。あたしの存在に気づいていない〈ホワイトスネイク〉を無視して、無音の一撃をDアンGに撃ち込む。よし、これでツミキも逃げられるはず────。
「その能力から察するに君が私を裏切って空条徐倫に寝返った〈フー・ファイターズ〉か?」
いったい、どういうことだ。さっきまで樹木の中を動く『もの』を見ていたじゃあないか。それなのに、なんであたしを見ずにコイツは後ろのあたしをブッ飛ばせるんだ!?
「なるほど、君の『DISC』も使い方によっては三人称の視点を得るわけだ。ずいぶんと器用な能力のようだが、私の親友には勝てないよ」
〈私の友達を殴ったやつは殺す!〉
「おやおや、彼女も怒っているよ。尤も私だって友達を傷つけるやつは許さないと決めているんだ。とりあえず、テメーは宇宙でも行ってろ」
くるりと〈ホワイトスネイク〉に背中を向け、あたしのところへ歩いてくるツミキを見上げる。もう『皮』のないあたしを見てほしくないと思う反面、彼女たちに抱き締められている今の状況を幸福に思ってしまう自分がいることに驚いた。
あたしの『知性』は人間と変わることなく、こうして友情を感じて幸福だと思えるまでに『進化』している。それが嬉しくて堪らない。
「あたしの『皮』を取ってくれる?」
〈すでにツミキが治しているぞ〉
「ふふっ、私も〈ベイビー〉もフー・ファイターズを死なせるつもりはないよ。ほら、私が『戻して』おいたから入るといい」
そう言って微笑みを浮かべる。二人に抱きついて感謝の言葉を繰り返す。おそらく、あたしだけだったら負けていた。
あいつはスタンド能力を与えてくれた『親』のようなものだ。いくら人間よりも学習するスピードがあっても『DISC』を奪われたら、あたしは何も知らない水の中を漂うだけの『知性』を失ったプランクトンに戻ってしまう。
〈ほら、一緒に行こう〉
「そう急かす必要もないさ。こうして〈ホワイトスネイク〉から空条承太郎の『DISC』も取り返して……なぜ二枚あるんだ?」
〈そいつは、こうするためだ〉
あたしの後ろから現れた〈ホワイトスネイク〉がツミキの頭に『DISC』を差し込み。そして、忽然と最初から居なかったかのように消えた。
「おい、しっかりしろ!テメーが死んだら徐倫が悲しむだろうがよぉーっ!?エルメェスやグェスだって悲しんで泣くぞコラァ!!」
〈これは予想外のピンチだが、ツミキは無理やり『戻る』ようにママに『書き込まれて』いる。だからフー・ファイターズも安心しろ〉
「ふむ、さっきの『DISC』は驚きだね」
ツミキは何事もなかったかように起き上がり、あたしの手を借りて普通に立った。どうなってるんだ、こいつの身体?なんて考えながらツミキの後を追う。ひょっとして、あたしと同じ『知性』溢れる〈ベイビー〉のおかげなのか?