「...私はシア。貴女がルナ?」
「えぇ。貴女がシアね?姉さんから聞いてるわ。」
「ん。よろしく」
「えぇ」
握手しながら挨拶を交わすルナとシア。互いに無表情だが悪感情は抱いていないようだ。...とはいえ会って早々にパニシングをぶつけ合うのはどうかと思うけど。
「...それじゃあガブリエルのところに案内するわ。」
「ん。」
後ろから小走りでついてくる彼女の歩幅に合わせて私もゆっくり歩く。ガブリエルのところまでは少し時間が掛かるため彼女の観察ができる。
「...貴女も失敗作なのね。」
「...シッパイサク?」
「いいえなんでもないわ。」
私の妹であるルナと一緒。構造体になるための空中庭園で手術を受け、失敗の後パニシングに呑まれ、それを制し生き残った代行者。
「...シッパイサクってなに?」
「覚えていないのね。」
どうやら記憶もないみたい。意図的に記憶を削除されたか...ただの事故か...どちらにせよあんな【削除済み】共は記憶の容量を圧迫するだけ無駄。
「...貴女も空中庭園には気をつけなさい。」
「はぁ?」
こてんと首を傾げるシア。実験体になる前はどう生活していたのだろうか。私たちと同じような生活をしていたのか?それとも裕福だった?
「...施設、どんなとこ?」
「...そうね。色々整ってるわよ。空中庭園の人間共が残した全てがそこにあるわ。」
「ふぅん...いいね。」
「もうすぐ着くわよ。」
───プシュゥゥゥッッ...!
重い扉が横に開き、もう1枚の扉が現れる。その扉を抜けた先に彼は居た。
「...。姉君がこちらへ何の御用でしょう?」
「この子、シアを預けに来たわ。」
「...貴方がガブリエル?」
「...左様ですか。ム?もしや自分自身を改造したのですか。これは素晴らしい...」
白仮面の上に丸いメガネを掛けた黒いコートと中折れハットを被った長身の男、ガブリエル。機械に詳しい彼にシアを預けるならふさわしいだろう。
「気に入ったようね。」
「ふむ。...貴女の腕は見て分かる通り...ならば受け入れましょう。」
「ありがとうガブリエル。」
「それではシア様。ついてきてください。」
「頼んだわよ。」
「勿論でございます。」
私から離れ、虚ろだった目に僅かな光を宿しながらガブリエルについて行くシア。彼女は機械弄りが好きなのかもしれない。
「ルシアありがと。またね。」
「......えぇ。」
またね。何度その言葉を聞いてきたか。何度その言葉を発した人物が死んでいったか。だけど昇格者たるシアならいくらでも会う機会はある。
「...まるで妹が1人増えたみたいね。」
「へぇ?君もそういう気持ちになるんだねぇ?」
「...ロラン斬るわよ。」
「相変わらず物騒だねぇ?...ところであの子は誰だい?」
「...昇格者にして代行者のシア。ルナと似て非なる力を持つ者よ。」
「ふぅん...ルナ様の白髪とあの子の灰色の髪。背丈も同じぐらい...似てるところは多いみたいだね。」
「...そうね。」
凄まじいパニシング濃度を持つ彼女はルナのそれに匹敵する。力のベクトルが違うみたいだけどそれは造られた機体が支援方向に寄っているからだろう。
「あの子...裏切らないと良いね?」
「...さぁ?どうでもいいわ。」
「...君さっき妹みたいって言わなかったっけ...?」
「耳腐ってるんじゃないかしら?」
「そんな訳ないからね?もしかして──」
「そろそろ黙らないと首吹っ飛ばすわよ。」
「おー怖い怖い...分かりましたよーだ。」
感情をあまり感じ取りにくいシアという人物。貴女の心の中には何があるのかしら?
昇格ネットワークに認められ、接続した者達。通称:昇格者。パニシングを制し、圧倒的な力を誇る陣営。代行者とは昇格ネットワークの意思を代行する者である。
それとは別に昇格ネットワークの選別に合格したが接続していない...言わば昇格ネットワークの恩恵を受けていない昇格者予備要員のことを授格者と呼ぶがこれはまた別のお話。