目を閉じるだけ閉じて時間が過ぎるのを待つ。背中に感じるラミアの温かさは私をなんとも言えない気持ちにさせるがこれは
「...ラミア」
「...なぁに?」
「そろそろ離して。」
「ダメだよ...シアは勝手に私の櫛に触ったんだから今日1日抱き枕なの。」
「ダキマクラ...?」
聞いたことない単語が出てきた。
「そう。...こぉやって...」
「ぅえ...?」
「...後ろから抱きしめられる気持ちはどう?ふぅ〜...」
「ひっ...!な、何、これ...?」
耳に息を吹きかけられ、私の背筋をゾワゾワっとした何かが駆け抜ける。
「離し、て!」
「あっ...力強いね...さっきは力抜いてたのかな?」
「...。」
無理やり拘束から抜け出してベッドを降りる。私を拘束し続けたラミアの方を見てみるとそこには目の下に黒い何かがある黒髪の女がいた。この女がラミアか。なんだか眠そうなヒジムみたいな顔をしている。
「...ニンギョって聞いた。」
「ん?あぁ下半身は何にでも変形させられるよ。今は尾びれだけだけど。ほら、こうやって機械の足を生やすことだってできちゃうんだから。」
「ふぅん。」
「露骨に興味無さそうだね。」
「パニシングを操ってる所だけは興味ある。」
「じゃあ私が教えようか?」
「ルシアから教わってるからいい。今はそっちに集中したい。」
「ちぇー...。」
頬の部位を膨らませて目を細めるラミア。何が彼女の機嫌を損ねたのか分からないがまずは目の前のことからしっかりやっていきたいのだ。
「じゃ、じゃあ練習の成果を私にも見せて!」
「...わかった。」
それなら練習にもなっていいかもしれない。私とラミアは互いに手を取り合ってギュッと握った。
───パタ、ン...
「なんで...?」
「お話は終わったでしょう?続き。」
私は再びベッドに引きずり込まれた。
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黒い雲に隠れて月すら見えない夜。崩壊したビルのとある階層にて2人の人影があった。両方共に白髪の少女であり、彼女たちは姉妹の関係であった。
「ルナ」
「...姉さん。どうしたのこんな夜更けに。」
「...あの子...シアについてよ。」
「...まぁそうよね。」
「ルナはシアをどう思った?」
「...別にどうも思わないわ。同じ代行者として...興味はあるし力比べもしてみたいけれど...」
「けれど?」
「...あの子...シアと言ったわね。シアは代行者としての仕事を全く理解してないように見受けられるわ。」
「...そうね。」
「昇格ネットワークの更なる進化のため...私たちの領域に入ったからには身を粉にしてでも働いてもらうわ。」
「...ルナが好きなようにすればいいと思うわ。」
「えぇ。...それと姉さん。」
「何?」
「シアの過去データ、調べられるかしら。」
「...華胥を手に入れられればあるいは。」
「ふふっ...人間って愚かよねぇ...。」
普段笑わないルナという少女の口角が上がる。それを見たルナから姉さんと呼ばれる少女も顔を少しだけ緩める。
「姉さんの次の目的地は北だったかしら。」
「そうね。...キカイイッカクに興味があるわ。」
「たしかイッカククジラの見た目の機械生物よね?...計画に直接関係はないけど戦闘に役立ちそうね。」
「えぇ。しばらくここを空けるわ。」
「...気をつけてね。」
「分かってるわ。...それとついでと言ってはあれだけどシアの戦闘訓練...私の代わりに頼んでもいいかしら?」
「別にいいわよ。ガブリエルよりも強くするわ。」
「ふふっ...期待してるわ。」
そう微笑むと少女はビルから飛び降り、壁を蹴ってどこかに消えていった。ルナと呼ばれた少女はそれを無表情で見つめた後、踵を翻した。
「──私は代行者として貴女を認めない...シア...。」
キカイイッカク:イッカククジラのような見た目をした特殊で超巨大な機械生物。火力武器システムが多数導入されており防衛に優れている。キカイイッカクの存在は意識海の研究に直結している。
華胥:人類のインフラを支えるAI。九龍商会が巨額の資金と労力を投入して創り出した独自のAIがこの華胥システム。同規模なAIとしてゲシュタルトが挙げられるが、こちらは現在空中庭園の公共サービス全般を請け負っている。