「...?」
重すぎる体をなんとか起こして座る。そこで私は体が変なことに気がついた。
「こんな手じゃなかった...。」
いつも傷だらけだった白い手は真っ黒なモノに。両手どころか私の体の至る所にその硬いモノがくっついている。
「ゴホッ...硬い...。」
手をにぎにぎしてちゃんと動くかどうかも確認する。うん。ちゃんと動くね。...まるで人形というモノみたい。人間ができる動きは全部できそう。
「動くならいっか...。」
特に痛い訳でもないし動かせない訳でもない。ただ体が重くなっていること以外は問題ない。
「ここどこだろ。」
次に気になったのは今いる場所。今までの記憶の中にないキレイな世界とは真逆のグチャグチャの世界。キレイなキやクサは無く、ソラも真っ黒。キレイな建物も無く、その全てが崩れている。
「テレビでも見たことない。」
父と母が出かけている時に見ていたテレビというもの。ニュースというものを見ていてもこの景色は見たことがない。まぁ父と母がいる朝や夜、あとはドヨウビとニチヨウビ以外のお昼にしか見れないからもしかしたら他の時間に見るとあったのかもしれない。
「広い...なぁ...。」
そんなキレイとは無縁な世界でも私の知る世界よりも広い。立ち上がって見ても果てしなく広く、先が見えない。あの先には何があるんだろう...。
「この世界にもキレイなモノがあるのかな?」
「ギシャァァァッッ!!!!」
「っ!?」
──ドスンッ!!
何かの叫び声?が聞こえた瞬間私はそれに押されて転んでしまう。背中にのっている何かは私の首に何かしているようだがあんまり...というか痛くない。
───ブチッ!ギャリギャリッ...
頭に響くような気持ち悪い音。首から血が流れ出すのを感じる。どうやら私の首も硬い何かでできてるみたい。
「はァッ!!!」
──ズドンッ!!!
「ギャァァァァッッ!?!!?」
またもや首元で叫ばれたと思いきやその謎の何かは私の背中から居なくなった。
「大丈夫か?」
「ダイジョウブ...?ダイジョウブってなに?」
「はぁ?首噛まれてたろ?」
「...カマレテ...?」
「まさかお前言葉が分かんねぇのか...?」
「ん。」
聞きなれない言葉達。その意味を尋ねると変な顔をされる。何か変なことを言ったかな?
「はぁ...生き残りの構造体みたいだったから助けてみたが、まさか廃棄されたやつだとはな...。忌々しい空中庭園め...。」
「廃棄...」
コーゾータイ。タスケテミタガ。ハイキ。クーチューテーエン。ハイキは廃棄だろう。廃棄物って聞いたことがあるもん。ゴミって意味だよね?私と一緒。
「...おい。」
「?」
「俺についてくる気はあるか?」
「...?」
「あー...つまり一緒に来るか?」
「一緒...?なんで...?」
「...あーもう良いからついてこい!」
「あっ...。」
私の黒い手を握って引っ張る目の前の人間。父と母以外に初めて触られた。私の手と違って...なんだか...ポカポカする。
────────────
「...ここが今日から暮らすお前の家だ。そういえば聞いてなかったな。お前の名前は分かるか?名前。」
「ナマエ?」
「あー...なんて呼ばれ...んー...俺の名前はヒジムだ。」
「ヒジム...?」
自分を指さしてヒジムと言う人間。ナマエ...つまり私の名前は「ゴミ」ってことかな?父と母からはゴミってよく言われてたから。次に多かったのがお前とかそこらへん。
「私はゴミって言われてた。あとお前とか。」
「お、おう...。相当やべぇな...。」
変な顔をする人間...じゃなくてヒジムは私より大きい。顔があるのが高くて見ずらい。父も同じぐらいだったが怖いという感情はなかった。
「そうだなぁ...じゃあ今日からお前はシアだ。単純だが『幸せ』から取ってみた。...なんだか大変そうな人生だったらしいからな。」
「シア...。私のナマエ...シア...。」
シア、シア...。うん。いい響き。
「ヒジム。」
「なんだ?」
「ありがとう。」
「...おう。」
こうして私は「ゴミ」から「シア」になった。
「そうと決まればまずは勉強だな。」
「ベンキョー?」
「そう。お前にh──」
「シア」
「...シアには常識がない。これから一緒に暮らすにしても意思疎通できないと互いにキツいだけだからな。おま...シアには知識を付けてもらう。俺の知る全てを教えてやろう。」
「...?」
よく分からないけど頭を手でぽんぽんされた。
・ヒジム
ヒジム→逆から読むと無慈悲(ムジヒ)
ヒジムは無慈悲とは真逆な人間
銀髪オールバックのダンディーで筋骨隆々な男。いつも煙草を咥えており左目はとある事故により失明。構造体について少しだけ詳しいただの人間だが戦闘において構造体に引けを取らなかったりする。現在は侵蝕体が蔓延る地球で生臭い食料を食べながら生活中。今日は名も無き構造体、命名:シアを拾った。シアは常識を知らないようで1から教えていこう、この子を娘のように大事にしよう、と決心した...らしい。