「まさかあなたに会うとは思わなかったわぁ…」
「それはこっちも同じだけどね。えっと、真理掌握だっけ?」
「心理掌握よぉ! 気分の悪い間違え方をしないで頂戴」
「いいんじゃん真理。なんか探偵みたいでさ」
にしてもよく気付いたな。読み方は同じだろうに。
「あなた私とリンク繋げたままじゃなぁい。駄々漏れよぉ?」
「あ、そっか。すっかり忘れていたよ」
プツン…とまるでテレビの電源を切った時の音みたぁい、とはこの目の前の少女の言葉である。
少女、心理掌握。食蜂操折。常盤台に7人しか居ないレベル5の一人。気まぐれで悪戯好き。まだ可愛い悪戯程度ならマシなんだけど、たまにとんでもない事をしでかすので油断出来ない。
そんな彼女とはそれなりの付き合いだ。会えばこうして店で涼みながらお茶をするくらいには。ここ最近は忙しくて随分会っていなかったけど。
「そういえば今日は能力測定の日だと思うけど、いいのかい? こんな所で油を売っていて」
「それならメンドくさいから抜けてきちゃったわぁ~」
「相変らずだね。キミも」
「それはぁ。あなたには言われたくないーって感じぃ?」
ずいっと近付きジト目で呟く食蜂は実に胡散臭げにこちらを睨む。相変らずキラキラで綺麗な目だなぁと少し場違いな感想を抱く。
「それは心外だよ。僕は何時だって真面目だぜ?」
「あら。私は一度も不真面目なんて言ってないけどぉ?」
「………」
「自覚はあるのねぇ」
「………」
「それはそうと。昨日御坂に会ったんだけどなんか機嫌悪そうだからつい聞きそびれちゃったんだよね。―――今って何時?」
「…7月…26日よ」
7月といえば……丁度御坂と彼が出合う日か。
「あれから随分経ったんだね。そりゃあキミや御坂の背が高くなるのも頷けるわけだ」
まぁ、最も。胸の辺りはあまり成長しなかったようだけど。その辺りは食蜂の方が分があったようだ。もはや中学生らしからぬスタイルになりつつある。僕はもう成長することがないから正直羨ましい。別の意味でもね。
「なによ。いきなりぃ。なんか視線がエロいんですけどぉ~?」
「食蜂の胸を見ていたよ。中学生の平均胸囲サイズを大きく上回ったそれっていったいどういう科学物質が詰まってるんだろうね」
例えば男のロマン、とか。
「…なんか目が怖いんですけどぉ~」
失礼な事を言うやつだ。
「というかあなたの方が白くて、細くて可愛いと思うけどぉ? 男の癖に」
「…なんか目が怖いよ食蜂」
閑話休題。
「ともあれ、さておき、さ。食蜂のとこに来たのは他でもない。僕の"体"を取りに来たんだ。もう"できている"のかい?」
「ええ。既にだいーぶ前から出来ていたわよ。随分とお寝坊さんなのねぇ」
食蜂はジト目で非難するように睨んでくる。悪かったと謝罪の意思表明として両手をあげ降参のポーズを取る。恐らくこんなんじゃ約束をおざなりにされた彼女は許してくれないだろう。埋め合わせをしないと何時まで経っても機嫌を直してくれない。食蜂はそういうヤツだ。
「今回の体はどれだけ持ってくれるか、だけど。まぁ、ギリギリなラインかな」
「あなたが何をしようとしているのかわからないけどぉ、せっかく作った体を早々に潰してたらぁー、お仕置きしちゃうゾ☆」
うん。久々に見たよそれ。☆ってやつ。やっぱり美人は何をやっても様になるね。特に食蜂みたいなスタイルの良い子が前屈みになると。その形の良い胸が揺れてなかなかに眼福だよ。もっともお仕置き(精神)とかはご遠慮したい所だけどね。まぁ、悪戯程度なら簡単に許してしまいそうだ。
「わかってるさ。男は女と結んだ約束は命に代えても守るもんなんだぜ?」
まぁ最も、『僕が』守るなんていう保障なんてどこにもないけれど。
「じゃあまたいつか。もしかしたら道端でばったり、なんて事もあり得るかもしれないね」
「嫌よ。御坂サンに殺されちゃうじゃない」
食蜂は悪戯っぽく笑う。なんだか危険な言葉を割と楽しそうに言うね。
「ああ、そろそろ時間みたいだよ」
「――…そう」
「じゃあ、またいつか」
―――プツン…ッ
「悪戯、大成功☆」