「さて、ここでの仕事は終わりだな」
「あぁ、本隊も合流して現地政府と合同で支援を開始したしな」
「あの子は?」
「応急救護は終わった、本格なのは日本に戻ってからでないと難しいな」
あれから約1週間、俺達は被災民の支援をしつつ現地に残存した
途中、G&Kの戦術人形とも遭遇したが別動部隊だったのか俺達には気づかなかった
「で、お迎えが何で政府専用機なん?」
「お姫様からだよ、全く突拍子もない行動をされる方だ・・・」
そう、迎えに来ていたのはチャーター機ではなく政府専用機だった
一応建前上では震災支援のスペシャリスト達を乗せて来たということになってるしあながち嘘でもないが、本題は俺達にあるだろう
行かせた姫様本人も来てるのに降りてきてない・・・
「乗るか・・・乗る気しねぇが」
「乗るしか無いだろ。見ろよ姫様、満面の笑みでこっち見てんぞ?」
「厄ネタ確定だな」
そう言って政府専用機に乗り、姫様の待つ部屋に入る
すぐ後にクソ師匠が仕事のことでの報告モードに入った
「本日20:00(マルフタマルマル)を持って、被災状況確認の先遣隊としての任を完遂いたしました!!」
「えぇ、ありがとうございます。おまけに重要参考人を確保してくれた件も感謝いたします。っていう堅苦しいのは辞めにしましょうか?」
そう言って姫様はお付きの人たちに目配せすると、その人物たちは部屋の外に出た
俺達とオフレコで何か話したいようだ
既に報告モードから普段のダラけたチャラいおっさんになったクソ師匠はすぐ横の一人がけソファーに座り込むと、俺にも座るように促してきた
立ってる理由もないので壊さないように座ると姫様が俺を見て微笑む
「どうせ退役間近なのに、丁寧に扱うんですね?」
「当たり前でしょう、中古で流す際に値段釣り上げれるんですし」
「貴方らしいですね」
そう言って、彼女はモニターに電源を入れる
映し出されたのは漁夫って拐ってきた女の子の姿だ、現在は体を低温にして行う治療で強制的に眠らせたまま安静にしている
「こんな治療法は初めて知りました。医学生だった頃が懐かしいですね」
「たいして新しくはないぜ?低体温療法の応用でしか無いからな」
「あぁ、低体温療法でしたか・・・90年代に実用化に漕ぎつけたものですね。しかし彼女にどうしてそれを?」
「体全体の代謝を落とすのが目的だ、それに今しているのにも役立つんでな」
映像の彼女は点滴を受けている、その点滴は俺が行なったものだ
これは彼女に対する治療で最も重要なものである
「あの点滴が終わればひとまずは安心だ。後はあの子次第というところかな」
「なるほど・・・」
そこで俺から切り出すことにした、面倒事はさっさと解決するに限るからだ
「単刀直入に聞く、厄介事だな?」
「えぇ、それもかなり厄介です」
そう言いつつ、彼女はモニターの表示を変える
そこに映るのは政府要人。黒縁にオレンジレンズの眼鏡をかけたスキンヘッドに僅かに顎鬚を生やしている男・・・
「うへぇ・・・将軍閣下かよ」
「彼は一議員ですよ、将軍も閣下も余計です」
「政敵潰しか?」
「いえ、貴方がたが保護したあの子を利用してなにかしでかそうとしているのを諜報部長が掴みました」
「姫様?ひとの彼女をしれっとこき使ってません?」
それを言うと目をそらした、やっぱこき使ったなこの人?
「交換条件にはなに出された?」
「ケーキをワンホールですね!!」
「うわぁ、明らかに高そうなの頼んだんだろうなぁ・・・」
そして今後の動きについて確認する事にした
「ということは俺達で奴らの一派をおさえろ。ってことか?」
「えぇ、ですがこちらの裏、私との関係を悟らせてはいけません」
「はいはーい、それなら俺に良い案がありまぁす!!」
そこで師匠が面白おかしく言ってくるので目線を向けると、師匠は笑いながら言ってきた
「スケープゴートたてればいいと思います!!」
「阿呆か?そんな相手がまず居ねぇだろうが」
「彼女を確保する前、グリフィンの方を止めようとした奴らいるじゃん?アイツラどうせ俺等追ってくるからお出迎えしちまおう」
「今度は戦力整えてくるぞ?」
「むしろ好都合じゃね?だって俺達でやったら後で確実に探られてボロが出ちまうし」
言われてみればたしかにそうだ、俺達は国内では手の内を知られている
だが、知られてない派閥が向こうから来てくれるなら・・・たしかに好都合だ
「その案、採用ですね。報酬はどうされます?」
「金のインゴットと現用小銃を予備部品込みで譲渡。で良いんじゃないっすかね表向きは」
「あの子も引き取ってもらおう。国内ではコイツの残党や後継が生まれた際に狙われかねん」
「なるほど、身の安全は大事ですからね」
そして話し合った結果・・・師匠が代表として行動することになった
・・・何故に?
日本国内 某所
「・・・くだらん」
通信を切った後、俺はそう呟いていた。会話では余裕を見せたが、それすらも飾りだ
自分の目的、計画は既に最終局面に差し掛かっている。一人の少女がトリガーになるなどこれっぽちも思ってない
むしろ邪魔になるなら処理するまでにしか考えていない。それらを思う自分自身が、何よりもくだらない
「・・・」
だが、少女をおさえた二人が問題だ
軍内ではあの二人のことを"人類の守護者"、"歴史の転換点に現れる者"などと持て囃す声すらあがり始めている
馬鹿馬鹿しい、こんなことを考えるのはやめよう
なぜなら、俺は過去にすでに死んでいる。他ならない人の悪意によって、死んだのだ
「そうだ、だからこそ」
テーブルに置かれた、今はなき妻と子の写真を眺めてつぶやく
心に誓ったのは復讐、そのためだけに何年も時間を費やした。そしてやっと、それが叶う
「神罰のメイスは絶対に成功させる。たとえ神であろうとも、俺を止めることなど出来はしない・・・!!」
そのためだけに、生きてきたのだから