「・・・何で疑問形なんだ?」
相手の返答に俺は笑いながら答えた
「いやー、ニュージーランドで君をぶん殴った張本人だし?君にとっては殴り返したい相手だろうからね。あぁ、保護しようとした子を横から漁夫った人間と言ったほうが良いかな?」
「つっ・・・!!」
相手の息を呑む声が聞こえる、怒ってるなーと思いながら話を続ける
「君のいる地点から北東へ3.5km地点に軍事施設がある。俺はソコにいる」
「来いと、言ってるのか?」
「その通り、守衛には話をつけてあるから普通に入ってきたまえ、客人としてもてなそう」
そう言うと、サンマを焼いている七輪から炭のはねる音がして火花が少しだけ空を舞う
その音が相手にも聞こえたのか聞いてきた
「何をしているんだ・・・?」
「サンマ焼いてるだけだよー?
「なんで急に英語・・・」
「わりと長い時期アメリカに居たんでね。時たま混じっちまうけど気にしないでくれたまえ」
相手と会話しつつ、ちらっと手伝ってくれている子を見るとノートを見せてくる
そこには、あと1分!!と残りの通信可能時間が書かれていた
「名前を言っておこう。俺の名前は森谷闘真だ。先に行っておくが仲間と一緒に来るように。来なかった場合はそれなりに酷い目にあってもらうよ?」
「交渉か恐喝。アンタは一体どちらがしたいんだ?」
「交渉も恐喝もその個人の見方の違いに過ぎないが?そろそろ時間だし通信は切らせてもらうけど、全員監視していることだけは忘れるなよ。青年」
そう言って通信を切り、端末の電源を落とす
横にいた子は緊張していた肩を落とした
「危なかったですよ・・・後数秒遅かったら逆探されていました」
「ギリギリまで耐えてくれて助かった。済まないね」
「構いません、いつものことですし」
「その代わり焼きたてのサンマをプレゼントだ」
そういって、俺用に焼いていたサンマをプレゼントして新たに焼く
招き入れた人物たちの分は基地のスタッフに焼いてもらっているので問題無い
「しっかし、よくサンマを入手できましたね?」
「好漁場が新たに見つかって予測値よりたくさん捕れたんだと。で、軍関連に繋がりを得たい漁連の方々が無料でおすそ分けしてくれたんだわ」
「なるほど・・・美味しいですね」
「あぁ、旬の一番良い物をくれたからな」
それから1時間後、通信の相手は全員で俺のいる基地に現れた
それを屋上から眺め、通信端末の着信に出る
「司令、例の方々が来られました」
「うむ、いま屋上から見ているよ。応接室に案内してくれ、俺も向かう。彼らのディナーの用意もしてくれ」
「了解しました」
俺が着く頃には相手は椅子に座っていた。全員を一度見て、壁に貼られた国旗の前にある俺の席に座る
「全員集まってくれてありがとう。もし1人でも欠けていたら、その子を人質にしなければならない所だった。面倒な事にならなくて助かるよ」
言った瞬間、怒りの感情が俺に向けられた。それをスルーして更に続ける
「君のところから来てる第二陣については現在、こちらの保有する空港に着陸するよう管制を行っている。危害は加えないので安心してくれ。ちなみに着陸地はセントレアか関西国際空港のどちらかで予定している」
「なんで一般空港なんだ?」
「俺の政敵が手出しできない場所だからだ。そしてそいつは君達の敵にもなる」
緊張させたところで指を鳴らす。すぐに出てくるのはディナーの配膳係だった
「話すことは山のようにある。だが、先に食事をしよう。時間はあるのだから」
配膳が完了したのでそう言うが相手は俺を不審がる顔で見ていた
そこで俺は気づく、自分の分がないことに
「あれ?俺の分は?」
「藍澤様から"クソ師匠の分は抜きで用意してくれ"との伝言でしたので用意しておりませんよ。あと、"経費無駄遣いした罰だ、甘んじて受けろクソ師匠"と追加の伝言を受けております」
「あんにゃろう、後で一番キチィ仕事押し付けてやる」
伝言を言った配膳係はそのまま帰っていった、本当に俺の分はないようである
「あぁ、安心してくれ。食事に毒を盛るほど愚かではないよ」
そう言ってコップを手に取りウォーターサーバーから注いでチビチビ飲む。うまい飯を食べてるシーンを生で見るのは案外辛いものがあった
食事が終わったので配膳係を再度呼んで片付けてもらい本題に入る
「単刀直入に言わせてもらう。我々に協力して欲しい」
発言と同時に空間投影ディスプレイを起動しデータを出す
「君達が確保を目指してる少女、俺達が治療を施してもいた子が政敵に身柄を拘束された。現状はまだ所在地を包囲されているだけだがいつ実力行使されるか分かったものではない」
ディスプレイに表示されているのは軍部に包囲された病院の映像である。現状では既に厳戒態勢であり報道規制も入れられており報じている機関はない
「治療だと?」
「そうだ、君を殴ってあの子を連れ帰ったのは彼女を治療できる人間と施設をこちらが有していたことが理由でもある。少々強引だったが時間もあまりなかったのであの行動をさせてもらった」
「・・・」
相手が俺を睨んでいるが言ったことは事実であり、嘘はない。一部を除いては、だが
「協力してもらえるならそれなりの報酬も用意してある。時価総額で1億ドルの金塊にこちらの軍隊で正式採用している自動小銃の一式と交換部品、そのライセンス生産を格安で行う契約書が主なものだ」
「随分と大盤振る舞いだな?」
「君達にはそれだけの魅力と価値がある。そう判断したまでだよ、フェンリルの諸君?」
その瞬間、相手が同時に立ち上がり銃を構えていた。それに笑みを浮かべて俺は話を続ける
「良い部下を持ってるじゃないか、素晴らしい動きだ。俄然味方にしたくなった」
「俺達の正体を最初から知っていたのか?」
「最初とはいつかな?ニュージーランド?それとも君達が不法入国した時?」
「とぼけるな!!」
その発言に笑顔を崩さず返答する
「いやなに、勢いの良い武装組織はPMCだろうとテロ屋だろとある程度情報は収集していてるものでね」
そう言って、俺はその代表である青年に目を向けて告げる
「君だろう?代表は」
「・・・」
返答はない。だが、既に目を向けている青年が代表である情報を掴んでいる。
ただ、ちょっとだけアドバイスしよう
「顔を狙うのはあまりよろしくないぞ?」
そう言って俺は自分の心臓の上を叩きながら告げる
「狙うなら、ここを狙え。頭狙ったら当たる弾も当たらねぇぞ?」
「余裕の笑みか、それは?」
「君が撃つより俺のパンチが早いな。やってみてもいいが?」
そう言って立ち上がり、額に触れる数センチ前まで移動する
完全なる挑発であり、絶対の自信を持っての発言に相手は俺を強く睨み・・・数秒で手を引いた
「賢明な判断だ」
「条件を出しても構わないか?」
「良いとも、元よりそちらからも出して貰う予定だ」
「彼女の身柄をこちらに渡して欲しい」
「それに関しては逆にこちらから依頼する、この子の身柄を君達に渡すよ」
そうして書類を出す、相手はそれに書かれている全ての文章を注意深く確認しサインして捺印して返してきた
「確かに確認した、感謝しよう」
「それで、いつ決行する予定だ?」
「君達の第二陣の到着後に作戦開始予定だ。作戦内容は各員にデータ端末を渡すのでそれを確認して欲しい」
ウォーターサーバーの水をコップに注いで飲み干し、俺は代表の青年に声をかける
「ちょっと来てくれるかな?君には俺個人からの謝罪かわりにプレゼントしたいものがあるんでね」
「・・・?」
俺の発言に疑問を感じたようだが、一応ついてきてくれた
基地内併設の別棟に向かい、とあるコンテナの前に案内する
「この中に何があるんだ?」
「それをこれから紹介するよ」
青年の質問に答え、観音開きの扉を開ける。自動的に庫内の照明が点灯して中の物を照らす
「これは・・・!?」
「ガンダム[ケストレル]。俺が開発した、モビルスーツを人間が纏うレベルまでダウンサイジングしたパワードスーツだ。コレはその中でも特に、ガンダムと呼ばれた機体群の小型化をしたモノになる。別の人間が開発し使用したものを君もニュージーランドで見ただろう?」
「クアンタフルセイバーか!?」
「そう、あれもこの基地で開発されたものだ」
そう言い、機体に触れながら俺は彼に振り返り告げる
「この機体を、特殊装備を全搭載したフルアーマー仕様で君にプレゼントしよう」
「・・・理由は?」
「さっきも言っただろう?個人的な謝罪だよ。最初の謝罪は軍人としての謝罪で、こちらは軍人ではない立場での謝罪だ」
「だが、使いきれるか分からないぞ?」
「それに関しては問題ない。この機体には運用支援装置としてシャーマンフレームという機能が組み込んである。別機体で試した結果ではあるが、初心者であっても空中を自在に飛び、作戦行動のほぼ全項目において優秀な結果になっている。ま、適正は必須になっているがね」
一枚の紙を出し、それを見せる。相手は俺をドン引きした目で見返してきた
「いつの間にとったんだ、このデータを・・・」
「ゲートで通ってもらった物があるだろ?あれ実は遠隔で正確に測定できる脳波測定器が隠してある特別製」
ケロットした顔でそう言い放ち、俺は告げる
「君の適正であれば自由自在に使いこなせる。受け取ってくれ」
「そこまで言うなら・・・」
受け取ってくれたのを確認して、俺は部屋を見渡す。ちょうど開いた扉から、俺に飯抜きの刑をしてくれやがった奴が入ってきた
「おうカズマ、テメェ良くも飯抜きにしてくれやがったな?」
「経費無駄遣いしたお前が悪いぞクソ師匠。ちっとくらい反省しやがれ」
「その人は?」
青年・・・いや、ヒロ・スメラギの質問にカズマより先に俺が答える
「クアンタフルセイバーの開発者で運用した張本人だ」
「は・・・?その人物は女性だろ?」
「あぁ・・・その人物は」
今度は俺より先にカズマが発言する。発言しながら一度バインダーで顔を隠し、数秒後バインダーを話しながら言い放った
「こんな顔ではなかったかな?」
身体も女性のものに変わり、声も女性だ。相変わらず早い変化である
「なっ・・・!?」
「手品でもマジックでもない。そういう身体なのだ、気にはなるだろうが話題にしないでくれると助かる」
そう言ってまた男性の体つきに戻る。声も戻っている
「で、渡したのかクソ師匠」
「あぁ、ついさっきな。
「
「一回の発言で二か国語とかありえねー」
「ド変態発言するクソ野郎に比べれば可愛いものだ」
そう言って俺を一瞬睨んでからカズマは相手に向き直して話し始める
「こんな変人だが、契約と約束は何が何でも守り抜く律儀な人ではある。それだけは信じてくれると幸いだ」
「おま・・・それ言われると弱いって分かってて言ってるだろ・・・」
俺のつぶやきは2人に聞こえなかったようだ・・・
なんと4000字オーバー!!(通常は2000字程度)