「勇次郎に会った?」
「あぁ、あいつもコッチの世界に来ていたようだな」
「俺も見ました」
「ふむ、どう出ると思う?」
その発言があったのは極東から戻ってすぐだった。
元々峰島勇次郎がいるか確認のために向かったのもあるらしいのでその報告を彼の娘である由宇さんにしていたのだ
「おそらく何もできん、干渉の触媒はもうないし、作るにしても技術自体が不足している」
「技術不足だと?」
「というより失われている、と言ったほうが良いだろうな。あの男も忸怩たる思いをしている頃だろう」
「俺からもいいですか?」
そこで俺は疑問を感じた。由宇さんや指揮官から聞いての考えで、自分でもありえないと思いたいことだ
「なんだ?」
「触媒がないなら、あの手の奴なら自前で用意するより手頃の良い奴を利用すると思います。例えば、俺のように異世界から精神だけ転生したような奴とかは利用価値が高いと思うんです」
「・・・」
そこで指揮官と由宇さんが驚愕の目をする
考えてなかったという目だ
「たしかに、考えられるな」
「それは考えてなかった、たしかにそうだな」
それに、もう一つの懸念事項がある
「それにここ最近、漏れてないはずの技術が色んな所で見つかってます。これの裏にはあの男の介入も考えられるかと」
「それは心外だ、私は介入などしていないよ」
「「「つっ・・・!?」」」
男の声が聞こえた瞬間、白服に白のハット帽の男が現れた
極東で見た姿そのまま・・・
「峰島勇次郎!!」
「ふむ、実験は成功だな。あの場にいるのも窮屈だったので、少しばかり利用させてもらった」
「俺の予測どおりかよ」
「それでも限定的だ。この場に入れるのも僅かな時間なのだよ」
「とっとと失せろ、危険人物」
この男、俺を土台代わりに現れやがった
しかし声ははっきり聞こえても姿は微妙に霞んで見える。限界値はそのあたりか
「じっとしていろ、いずれこちらから出向いてやる」
「それは楽しみだ。待っているよ、由宇」
そう言うと姿が消えた、やはり限界だったようだ
「ふん、あの男なりの挨拶のつもりか?」
「以外にも子煩悩かもしれないですね。別の意味も含めて」
「ぞっとしたぞ、今の発言」
「毛嫌いしているのは分かってますよ?」
俺が思ったことを口にしたら由宇さんは凄まじく嫌そうな顔をしていた、思わずフォローを入れるとため息まで吐いていた
「時折恐ろしいことを言うな」
「考えなしに言うもんでタチ悪いんですけどね」
俺はそう言ってため息をついてからお茶を飲む
最近、こっちでも日本茶が飲めるようになったのでよく飲んでいる
「武装の件だが」
「出来ました?」
「あぁ、備品室に預けてある」
「了解です、今度の任務で使ってみます」
「使用感とか細かい事も伝えてくれ、改善しよう」
なんだかんだ由宇さんは世話焼きだ、本人は否定するだろうけど・・・
「しかし私も驚いた、得手が二刀だったとはな」
「一刀でもやれるっちゃやれるんですけどやっぱ本気は二刀でないと出せないですね」
そう、俺は二刀流が本来の戦い方だ
一刀でも十分に戦えはするが本気は二刀でないと出せない
「それにあまり二刀で戦いたくないってのもありますし」
「材質的に持つ奴がないし、まだ感覚と経験がチグハグだからか?」
「えぇ、まぁ。そのうちすり合わせも終わるのでそうなったら無双してやりますよ」
そう言って立ち上がり、俺は部屋を出て息を吐く
「ま、実はもう終わってるんだけどな」
そう、擦り合わせはすでに終わっている
あとはそれを実戦で大胆に見せるだけだ
「今、ひま・・・?」
「あ、ICEYさん。ちょうど暇してますね」
「模擬戦、する?」
「俺で良ければぜひ!!」
それから二時間ほどICEYさんと模擬戦で汗を流した
ICEYさんの剣の扱いは最速最短最大効率という無駄の一切ない技巧だ
俺のように力づくがない分、一切の容赦もない
「それでは俺はこれで」
「うん、また明日」
それぞれ分かれて部屋に戻る
部屋は4人一部屋で自分の他には今のところルシアさんとLAFIさん、マホーレンさんがいる
剣に電子戦に精神攻撃のプロというイロモノだ
なお部屋はLAFIさんの都合で指揮官の部屋のすぐ近くである
「さて、と」
今はまだ夕方なので時間が空いている。
近くの市場はまだ空いている時間帯なので・・・
「モリドーさん、グリクさん手伝ってもらっていいですか?」
「え、や」
「なにか入り用か?」
「えぇ、そろそろ嗜好品が切れそうなので補充に行こうかと思いまして」
話しかけたときモリドーさんは嫌そうな顔をしたが嗜好品=菓子と気づいて飛びついてきた
「買い物行きましょう!!」
「ふむ、私もそろそろ欲しいと思っていた頃だ。近くの市場か?」
「えぇ、時間的にはそこら辺が限界だと思うので」
指揮官から車を使う許可を得る
鍵を持たされて行った先には・・・
「なんでこんな骨董品があるのだ?」
「ZC31S…!!」
そこにあったのは俺の親が乗っていた車と同じ車種、スズキのスイフトスポーツだった
しかもZC31Sというタイプだ。ご丁寧にカラーも純正の黄色(チャンピオンイエロー)というから驚きだ
「私が運転しよう」
「えー、グリクがするの?」
「お前はそもそも運転できないだろうが」
「うっ・・・」
「俺はできますよ。指揮官主催の運転技能講習で優秀貰いましたからね」
そう、少し前に本格的に車両所有が可能になったので金が余りまくってた子達は率先して指揮官主催の講習を受講した
ちなみにこの講習、筆記と実技の双方がかなりハイレベルのモノになっており、日本における運転免許の取得より高難度だ
まぁ、日本の免許試験問題はマジで出題者の顔を全力でぶん殴りたくなるほどクソなので難しいだけで遥かに・・・いや、圧倒的にマシだ
「なんで私は合格できないんです?」
「無免でバイク盗んだ上に売り払った過去があるからだろう?」
そう、モリドーさんは敵だった頃に指揮官の眼の前でバイクを盗み、そのまま売り払った過去がある
それ故、指揮官いわく満点でなければ許さん。とのことだ
「あのクソムズ問題を満点とか無理ですからぁ!!」
「そうか?私は99だったぞ」
「おれは97っすね」
「なぁんでぇぇぇぇ!?」
そんなこんなで車は動き始めた
これから数十分でとんでもない事態になるとはこのとき誰も考えていなかったのである
次話
Deja vu !!
(これだけで壮大なネタバレ)