蒼の彼方のフォーリズム IF NEXT GENERATIONS 作:我が翼に、蒼の祝福を
大歓声の中、試合終了を告げるホーンが鳴る。
5対4。
どちらが勝ってもおかしくない接戦だった。
傍目にはそう見えるだろうし、内容としても実際にコーチからもそう言われるような試合だっただろう。
でも、俺は納得できなかった。
正直今でもなんで負けたのか完璧には理解できない。
ローヨーヨーも。
ハイヨーヨーも。
シザースも。
精度は俺の方が上だったと思う。
彼女ができなかったのかやらなかったのか知らないが出さなかったエアキックターンだって、俺は完璧にコントロールして繰り出した。
……それでも、負けたのは俺なのだ。
試合を決める決定的なチャンスは作れず、相手に逃げ切りを許した。
俺のやっていたことが全て崩れていった気がした。
俺が練習してきた技術が無駄だと言われた気がした。
俺はもうここより上には行けないような気がした。
そんなことを考えていたのが災いしたか、中学2年で全国準優勝を果たした「天才」様は、3年の夏には激戦区の四島とはいえ地区大会の突破すら叶わなかった。
何度もFCをやめようと思った。
……そんな俺が「四島BIG3」の2人を擁した久奈浜に進学したのは、プライドみたいなものだったのかもしれない。
彼女達が3学年上であり、俺と入れ替わりで卒業するというのも丁度良かった。
そんな存在を直視したら俺は今度こそ壊れてしまう気がしたから。
「……ここが、久奈浜学院か」
校門の前で呟く。
まあ受験の時来たことはあるから初めて見たわけではないけれども。
様式美は大事だと思う。
今日は入学式、午後からはレクリエーションや各部活の紹介などが任意参加で行われる。
自分のクラスやこれから通うことになる教室を確認する。
今日行くわけではないが、なんとなく確認しておきたかった。
大会などで見知った名前がないことに安堵し……多少の違和感を覚える。
あまり詳しく調べず考えずに決めてしまった進学先だが、あの「大空の魔術師」と「面上の守護神」のいた学校だぞ?
スポーツ推薦などに力を入れているわけではないようだが、FC部目当てで入学する人間はもっといてもおかしくないんじゃないか……?
そんなことを考えているうちに入学式はあっという間に終わってしまった。
午後は……部活紹介だけ見よう。
そう思い、部活紹介の開始時刻をチェックし、体育館を一旦後にする。
新入生は慣れるために校内を自由に歩き回って良いと言われていたためとりあえず自分の教室の位置を確認しそれから校内を散策する。
この時間はレクリエーションに参加している人と既に帰った人が多いらしく、校内は閑散としていた。
ふと廊下の窓を見る。外にはグラウンドがあり、傍らに……なんだあれ、廃バス?え?本当に何あれ?
よくわからないものが鎮座していた。
……気になる、見に行ってみるか。
「バス……だな、どう見ても」
近くに寄ってみてもその印象は変わらなかった。
え……なんで?
しかも見た感じ到底動かせるような状態じゃない。どうしてこんなものが放置されているんだ……?
俺が一人でオロオロと困惑していると、突如として声をかけられる。
「おーい、うちの部室になにか用ですか?」
「え、あ、すみません。特にそういうわけでは……部室!?」
振り返ると同時に驚き……声をかけてきた相手を見てさらに驚いた。
その相手はフライングスーツを着た小柄な女の子だったのだ。
「はい、これはフライングサーカス部の部室です」
「フライングサーカス部!?」
……いや、ノリと勢いで言ったけどここは驚くとこではないだろ。
「え、えーと、FC部の方……ですか?」
「はい、見ての通りです」
フライングスーツを着ているのだから当たり前だろ、と自分に突っ込む。
ってことは……先輩か。
「自己紹介もせず失礼しました。新入生の
「あ、新入生ですか。私はFC部三年、部長の
部長さんだったのか。
「えーと……アップ中でしたか?」
「いえ、逆です。丁度練習が終わったところでした。着替えて帰ろうかと」
「あ、そうなんですか。
今日これからの部活紹介は有坂さんでなく他の方が出るんですか?」
「部活紹介?あー、そんなものもありましたね。
期待していたなら申し訳ないですが、うちは出ませんよ」
意外だ。
久奈浜学院では力を入れたFC部強化に乗り出しているのかと思っていた。
いや、そんなもん出なくても新入部員はたくさん来るってことなのかな?
「出たところでどうせ誰も入部しませんから」
「……え?」
言葉を失う。
この人は今何を言ったんだ?
「誰も入部しないですよ。去年は明日香センパイやみさきセンパイ、不本意ながら晶也センパイに釣られて入部した子達も少しいましたけど、みんなもう辞めちゃいましたし……って、ごめんなさい、興味を持ってくれてるかもしれない新入生に言うことじゃないですよね」
謝りながらもあまり申し訳なくは思ってなさそうに有坂さんは言う。
……他の二人は知ってるけど、晶也センパイって誰だ?
到底そんなことを聞ける雰囲気ではない。
しかし、久奈浜は少数精鋭の部活だったはずだ。
なんなら一昨年までは同好会だったなんて話も聞いたことがある。
……そんな状態で、彼女が言っていることがもし本当なら。
「あの……今、FC部ってもしかして」
「はい、私一人です。
……今の久奈浜学院FC部には、部長である私、有坂真白以外の部員は一人もいません」
「……えっ」
「ええええええええええええ!?」
悲しげなような、そうでもないようななんとも言えない表情で有坂さんはそう言った。
……どういうことなんだ。
朝から積み重なっていた小さな違和感が今解け、その代わりにもっともっと大きな、甚大な違和感が俺にのしかかった。
どうして、あの久奈浜のFC部がこんな状況に追い込まれているんだよ……?
答えなんて当然わからない。
知っているであろう有坂さんは何も言わずにこちらを見た。
「……すみません、退いていただかないと着替えられないんですが」
「あっ、ごめんなさい」
俺が横にそれると有坂さんは軽く会釈をして部室と称されたバスの中に入っていった。
……俺はしばらく、そこに立ち尽くすしかなかった。
設定だけ色々考えてみたけど続く気がしない
色々と原作既読前提なのは勘弁