煽り強めの魔女のお話   作:るてにうむ

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油断(いつもしてる)

 

「……ま、じょ?」

 

 《魔女》。魔の神に見初められた、そう、言うなれば現人神に近い存在。

 

 しかしその性質は最悪だ。

 

 最も有名な《赤の魔女》は、吸血鬼も恐れ慄く血の楽園を作り出し、安住の地にした。

 

 《(むすび)の魔女》は、言葉通りに生物と生物を結び、繋ぎ。異形の化け物を作り出した。

 

 十八体いるとされる魔女の、二人だけでこの被害だ。他の魔女にも幾つか逸話はあったが、リィアが覚えているのはこのくらいだ。

 

 だが心当たりがある。《蓑の魔女》を筆頭にした『何をしているのかよく分からない』グループに属する魔女。

 そういう、情報のない魔女の中でも凄惨な『何か』を起こしていることだけが分かっている魔女。

 

 名付けの理由は知っている。赤の魔女に次いで、単純な理由だ。

 だから、すぐにそれはそうであると分かった。

 

 

「なら、貴女は──《黒の魔女》、ね?」

 

 

 そして怯えながらそう聞いたとき、リィアは返ってきた返答にある意味安堵してしまった。

 

「おや、正解です。素晴らしいですね。拍手をしてあげます」

 

 パチ、パチと静かに響く音。それを聞いて、リィアは──。

 

「……ぐすっ、ぐすっ──うわぁぁぁああん!!!」

 

 ──泣き出した。

 

「…………え?」

 

 残った魔女は、呆然としていた。

 

 

 ◆◇

 

 

「…………だ、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫なわけないでしょ!! 無理に決まってるじゃない!! どうやって勇者パーティーを倒せって言うのよ!! お父様のクソバカ!!」

 

「……そうですね、なるほど」

 

 どうすれば良いか分からなくなり、途中で慰めていたら、自身に泣きつきながら愚痴を絶叫し続ける吸血鬼の少女が出来上がった。

 それの背中を撫でながら、ぼんやりとどうしようか、なんて考えていると──腹を突き破る一撃が入った。

 

「おまけに魔女って何よ!! どうしろってのよ!!」

 

「っ……なるほど、なるほど」

 

 どうやら彼女は魔王軍、というより彼女の親から絶縁されたらしい、という事までクロイロは理解した。

 力の及ばない試練を課され、それを乗り越えようと出来うる限りの努力する。諦めずに挑み続ける。

 

 クロイロが嫌いな者は、すぐに諦める者と、努力をしない者。そして己の能力を認めない者。

 

 そういう意味で、この少女はクロイロにとって──いつもの口から次いで出る茶化しではなく──少なからず好意的に見えた。

 

 そこで、今度は泣きながら抱きつき始めた彼女を前に、クロイロは数分考える。鼻をかまれた気がするが、服は濡れた先から乾いていくし、鼻水が付いても()()()()()から問題ない。

 

 そうして、そろそろ少女の感情が落ち着いてきたと感じる頃合いになると、赤く泣き腫らした目を見詰める。しかし、結論は出ない。

 

 さて、どうしようかとクロイロは悩む。

 

 好意的に見えると言っても、正直、身を挺して助けたい程ではない。しかし、ここで見捨てるのもなんだかな、と思っていた。

 

 だから、ぼんやりとしていたクロイロは見逃していた。目の前の少女の目が、少し強く光った事を。

 少女はのろのろと動くと、クロイロの首に顔をくっつけるように移動する。

 

「……おや?」

 

 そして、何度か擦りつけるように顔を動かす。

 クロイロは柔い唇が何度か触れるのを感じ、こそばゆい感覚に襲われた。

 

「赤ん坊ですか、貴女は。流石に、少しくすぐったいのですが──」

 

 ──グサッ、と。

 

 次の瞬間何かが首筋に突き刺さる感覚が、クロイロの体を震わした。




【魔女紹介コーナー】
《灯》の魔女
見た者に希望を抱かせる性質。
性格は明朗快活で、その性質と合わさりかつてはある国で聖女とすら呼ばれていた。
だが、彼女が与えるその希望は大きすぎた。

「みんな! ぼくを信じて、前に進もう!!」
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