ヴァンプスレイヤー・ダンピール   作:龍崎操真

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Extra EPISODE1
ある男の手記


 魔術や魔法とは、その名の通り魔の理に従って起こる事象を指す言葉である。

 呪文を唱えて手から火球を放つ、念じる事で風を操り空を飛ぶなど一般的に思い起こすのはこの辺りだろうか?

 同時に、今これを読んでいる皆様はおそらく、このような疑問を浮かべると思う。

 

 “それは超能力と何が違うんだ?”……と。

 

 呪文の有無? おそらく私は違うと思う。なぜなら、呪文は脳へ目覚めを促す一種の命令(コマンド)と解釈できるからだ。そう考えると発火能力(パイロキネシス)は炎を操る魔法、念動力(サイコキネシス)は重力を操る魔法とも言える。小声で呪文を唱えて、あたかも無言でこれらの力を使用したと見せかけたのならば、それこそ発火能力者(パイロキネシスト)念動力者(サイコキネシスト)と区別がつかない物のように思えてくる事だろう。

 

 ならば、何をもって魔法や魔術と定義するか?

 それは、魔の存在が関係しているかどうか、だと私は思う。

 断っておくが、ここで言う魔の存在とは精霊を指す言葉では無い。精霊は古来より聖なる物とされているからだ。

 私が言う、魔の存在とはすなわち魔神、いわゆる悪魔の事である。

 世界を作った神と対局の存在とされる地獄の主サタン、神によって堕天させられて悪魔として生きていく事を選んだルシファー、指輪によって強制的に従わせられるソロモン72柱、サバトによって降臨されられて知識をせがまれるバフォメット、代表的な物を列挙していけば枚挙に暇がない。

 このような存在の助けを借りて起こされる事象こそ魔法や魔術と呼ぶにふさわしいのではないだろうか。

 人間の内に秘められた特殊な力をエネルギーに能力を発揮する事は、人間という種の一つの枷が外れた末に到達した境地であって、まだ人間が起こす事象の範疇に留めた物のように私は思う。つまり、この世で産声を上げたその時から通常では到達できない領域まで、たまたま脳の使用領域が開拓されていたとは考えられないだろうか。そして、大衆向けに作られたファンタジー作品によく登場する魔法を生業とする人達は、そこまで脳が拓かれているのが普通なのではと考える事はできないだろうか。

 

 と、以上の理由から私は悪魔が手を貸して起こされた事象こそが、魔法や魔術と呼ぶにふさわしいのではと考える。

 

 何かを得るためには同等の何かを捨てなければならない。等価交換はこの世の真理だ。

 ならば、この世界に呼び出された悪魔が手を貸す代わりに要求する物はなんだろうか?

 それは魂。子供でも知ってる事だ。では、悪魔はなぜ魂を差し出すように要求するのだろうか?

 おそらく神の陣営と戦争するための手駒集めのため、魂を差し出す事が魔の存在、悪魔へと成る一歩目だからではと私は考える。

 しかし、人間という生き物とはある時、自らを省みて後悔する生き物だ。悪魔に乗せられるまま、魂を差し出したその瞬間に自らの過ちに気付いて涙する。悪魔からすると、そのような者は神の陣営との戦争に連れていく事ができない役立たずだ。囲っておく意味はない。よって、悪魔達は魂を差し出して魔の道へ踏み込んだまま、入口で立ち止まってしまった者を人間の世界へ置いていく事にした。

 そうして、失った魂を求めてこの世をさまよい、人の血を吸うことで失った魂を補填しようとする悪魔のなり損ない。それこそが始まりの吸血鬼、真祖なのではないのかと私は考えた。

 だからこそ、彼らは神の代行者を名乗るエクソシスト達によって討伐される運命にあるのではないだろうか。

 悪魔と吸血鬼を結び付ける資料はまだない。だが、私は邪悪の化身であった伯爵と対決し、生き残った。杭によって地面に縛り付けられ、日光によって身を焼かれてもなお生きていた彼は、私に一言だけ言葉を残した。

 

「私はただ……悪魔に魂を売ってでも幸せが欲しかったのだ……」

 

 たった一言だけ。このたった一言だけの言葉で、私には彼がごく普通の、平穏な幸せを求める一人の子供にしか見えなくなってしまった……。だからこそ、彼はその血のような目で惑わし、服従させ、幸福へ向かって進んでいく乙女の血を啜っていたのだろうか。そうして眠りについた彼は、私が深い眠りへ誘われようとしている今もなお、目覚める事がない。願わくば彼が次に目覚める時、誰の魂を奪う事なく幸せが訪れる事を祈って独白を締めくくろうと思う。

 

 それではここまで読んでくれた皆様さようなら、またいつか。

 

                            

エイブラハム・ヴァン・ヘルシング

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