魔法がとけて、全員の精神が戻ってきた。
「俺があなた方にお願いしたいのは元の世界に帰る方法の発見の協力です」
そうして俺は、頼み込む。自分の手ではどうしようもないのだから、ほかの手を借りる。
「こんな、そんな!」
この場にいた多くの人間が顔を真っ青にしている。
当たり前だ。遠くない未来に発生する可能性が高い、それも確実に発生する惨劇を見せられたようなものだ。
かつて恐竜を滅ぼし、新たな生命のサイクルを作り上げたノヴァによる終末捕喰。
それを回避する手段はない。それが分かってしまうからの絶望だったが俺は希望を提示する。
「おそらくここは俺のいた世界と違います。ここには魔法が存在する。
俺のいた世界では魔法なんて存在しませんでした。もし魔法があったなら必ずゴッドイーターである俺の耳に届かないはずがないんです。なのに俺は知らない。このことから俺のいた世界とこの世界はにいていて違う世界だと思うんです」
俺の推測はおそらく正しいはず。魔法に詳しくないが、もはや物理的なあらゆる現象でほとんど影響を受けなくなった俺の身に変化を与えた魔法が存在するなら、魔法はアラガミにも効果があったはずなのだ。たとえ、最後にはオラクル細胞の学習で効果がなくなったとしても。
それなら、フェンリルの資料に存在したはずだ。けれど存在していなかったことから考えるに、ここはやはり違う世界なのだろう。
「おぬしがいた世界とは違う?」
「ええ、推測ですが可能性は高いです。ただ、ノヴァの終末捕喰はあくまで地球の現象ですから発生する可能性は残っています。」
「つまり、何らかの対策を練らねば、これが実際に起きると?」
「ええ、可能性は」
俺とて、この世界があの世界のようになってほしくない。
だからこそ、
「この世界の技術力でどこまで再現できるかどうかわかりませんがP53偏喰因子、アラガミ防壁の製造方法の探索くらいはしておいた方がよいでしょう」
「しかし、たとえ見つかったとしてもそれが本当にアラガミに対して有効かなんて」
「まて、ジジイ。目の前にいるじゃないか。アラガミを殺すためにアラガミになった存在が」
「ええ、防壁の技術は神機にも存在するシールドなどに使われている技術でもあります。それを参考にしていけば作れるでしょう。試作品は神機で攻撃し防ぎ切れるかどうかで完成したかどうかわかります」
俺はこれにより関東魔法協会への利益となることができる。
向こうも俺の記憶を見た後なら断ることはできないだろう。こんなことはしたくなかったが。
「ふむ、ではおぬしの協力があれば、防壁がつくれると?」
「ええ。ただオラクル細胞の発生に間に合わなくても、ノウハウを利用すれば神機の製造などアラガミに有効な道具の製造も比較的に簡単になるでしょう」
「対価としてはおぬしが自分の世界へ帰る方法じゃな」
「はい」
存在するかどうかわからないがそれでも探し続けなければならない。
「必ず見つけられる訳ではないが協力することは約束しよう」
俺と関東魔法協会の間でこうして協力関係が生まれた。
あの後俺たちはいろいろな決まり事などを教えられた。
魔法ばれを防ぐためのルールや決まり事。それらを守り続ける限り俺たちの記憶はなにもされないようだ。
「協力感謝します。魔法協会の長」
「いや、こちらこそ我らが今すぐ取り掛かるべきことが見つかった。
この美しい世界で生きるためにも何らかの方法を発見することと、もしものための研究を今すぐする必要ができた。
今からわしらはおぬしの協力の代わりにおぬしの知っているすべての知識と技術を教えてもらうぞ」
「わかっています。俺は人類を守るためなど一度も考えたことはありません。けど、五月に超、超包子のみんなが住むこの世界を守りたい。この世界はまだ滅びゆく世界になどなっていないですから」
こうして俺と関東魔法協会の話し合いが終わった。
俺と五月が五月の寮への道を歩いているが俺は彼女に謝らないといけない。
「五月。その、すまなかったな。あんなものを見せて」
-そんなことないですよ、私が見たかったんです。
それに酒呑さん。あんなものなんて言っちゃダメです。酒呑さんが精一杯生きて、苦しんで、がんばって、 積み上げてきたことなんですから
そんな考えを一度も持てたことはなかった。
俺にとってあの記憶は大切な大切な人を失っただけの記憶なのだから。
けれど、なぜだろう。
彼女に言われるだけで、少し心が軽くなったような気がする。
-今まで頑張った分酒呑さんは笑わなきゃいけません。ですからそんな悲しそうな顔しないでください。
「・・・ありがとう」
この言葉で俺は茨木を失ってから久しく感じなかったうれしさを感じた。
そうしておれたちは星空の下、ゆっくりと歩き続けていった。
これからのことは分からないがそれでも俺はこんな風に今が続けばいいと思ったんだ。