アラガミという存在の基となるオラクル細胞について説明したがあまりの内容にこの場にいるすべての人間が驚愕を隠せないようだ。
俺はここまでで、いったん止めてお茶を飲む。
「最初に発見されたオラクル細胞がだんだんと成長した結果、あるときアラガミは生まれた。
小動物サイズのアラガミであり、その程度のアラガミに人類は滅びへと追い込まれた」
「え!? 滅びって?」
「言葉通りだよ。小型犬程度に俺たち人類は滅亡まで追い込まれたんだよ。
小型犬からアラガミはどんどんと大きくなっていった。それにアラガミに存在するある特性から俺たちは抵抗することすらできなかった」
アラガミの最大の特徴にして最悪の特徴。
「特性?」
「アラガミには一切の兵器が効かなかった。結合が固すぎるのと触れた物質をそれぞれのオラクルが喰うために一切の攻撃が効かなかったんだ」
「攻撃が?」
「そう。既存の兵器はダメだった。次にはユーラシア大陸中のアラガミを集めて核融合のエネルギーでのせん滅作戦を行ったが、そのエネルギーすらも喰われた」
ありとあらゆる攻撃は無駄。この言葉が最もアラガミに対して本質をついていると思う。
「ばかな! いくらなんでもそんなこと」
「それがアラガミだ。中型のアラガミだけで今のこの世界の軍隊なら、壊滅できる。
ヴァジュラやクアドリガ、ボルグカムランもいらないくらいのな。
そんな中とある製薬会社がアラガミに対して有効な武器を作った。それでも小型のアラガミにしか通用しなかったらしいがな。その武器により倒されたアラガミのコアを基に神機が作られた」
「神機?」
木乃香が疑問に思ったのか尋ねる。
「そう。生きたアラガミを機械で制御したものだ。目には目をの言葉通り、アラガミにはアラガミをぶつけるのが正しい戦い方だ。そして、ゴッドイーターとは神機を手にアラガミと戦い続ける存在だ」
神を殺すために神を使う。
矛盾し続けた結果、俺たちはここまで来た。
「ゴッドイーターには生活の保障がされる。簡単に死んでしまうような職業だし、ゴッドイーターになることによりある危険ができるからな」
「死ぬ危険というのは分かりますが、ゴッドイーターの危険とは?」
「神器はある特徴を持っている。適合した人間以外が持つと神機に喰われるという特徴を。たとえ適合できてもP53偏喰因子を投与されなければやはり神機に喰われる。それにゴッドイーターになるとき俺たちは体の中にオラクル細胞を投与する。それにより、人間をかけ離れた身体能力と防御性などを手に入れる。ただそれはアラガミに近づくというであり、アラガミに近づきすぎることにより起きる危険もある。それがアラガミ化だ。
この言葉は言葉通りに神機使いが神機に喰われたことによりアラガミになる。めったにないが時折起きる現象であり、部隊長にはアラガミ化が起きた際にはアラガミ化した隊員を処分することと、秘匿する義務が発生する。
アラガミ化の結果が第一種接触禁忌アラガミ スサノオ。こいつは神機に喰われたゴッドイーターのなれの果てと言われている」
俺が言った危険にこの場のだれもが顔から色が抜け落ちている。
「なによ、それ。
なんでそこまで」
「そうしなければ生き残れないんだよ。もう人類は絶滅する瀬戸際だったからな」
絶句。
顔色を失うところか言葉すら出なくなっている。
「確かにあれは絶滅と言っても良かったな。
正しくは滅ぶことが決まっている世界だがな」
エヴァが横から口を出す。
かつてエヴァが見たのは彼がいった事よりもはるかにひどい惨状だった。
「子供は飢えて死に、大人はアラガミに喰われて死にゆく。そんなことが続いている世界。
その世界での唯一の希望にして最大の絶望ですらある神喰らい」
エヴァが話す内容に彼らは引き込まれる。
「彼らは他者のために戦えば自己のためもに戦う。そこにあるのは使命感、義務感はたまた親しきものを殺されたことによる復讐心。そこにはこびる感情は私を含めだれも理解できないものだ。私たちは体験していないのだからな」
俺はこの世界を知るまで平和の意味は知らなかった。それと同じようにこの世界の人間は俺の世界を知らないのだから理解することはできない。
エヴァですらも俺の世界に対して信じることができなかったのだ。
「お前たちの気持ちは分からんでもない。ただそれは真実こいつの世界が迎えている危機であり、その危機を防ぐためにこいつらは戦っているということだけ覚えていればいい」
それだけ告げるとエヴァはこの場から立ち上がり、去っていく。
「それではすいませんが長さん。俺の話はここまでにしてもらいます。
もしそれ以上を聞きたいなら刹那にでも聞いてください。刹那はもっと詳しい話を知っていますから」
俺はそこまで言うとこの家から出る。
普段は吸わないが懐のポケットから先ほど詠春にもらった煙草を取り出して火をつける。
「やるせねえよな。世界が滅ぶだけなんてさ」
青くどこまでも広がる世界を俺は見上げ、煙を吐きながらつぶやいた。
この世界と違う俺の世界のことを想いながら。