後ろで銃弾を喰らっているのを無視してから、一時間たった。麻帆良を練り歩いていたら何か看板があった。こういったイベントは俺は見たことも参加したこともないしな。気になって五月に聞いてみた。
「五月、このイベントは何なんだ?」
-これですか? これはですね
「おっと、君たち興味があるのかい? ならぜひとも参加しなくちゃ」
「え?」
-え?
ちょ、いきなり筋肉ムキムキの大男に担がれて強制的に参加させられたんだが。
なんなんだ?
「皆様には」
お! この状況を説明してくれるようだ。
「これから、とある競技に出てもらいます。
その名も、愛を見せろ、カップル協同料理対決!!」
……ネーミングセンス半端なく悪くねえか、それ。
はぁ、さっさと不参加するか。
「五月」
-優勝しましょう! 酒呑さん!!
え? 何この子。すっごい乗り気なんだけど。
目に火があるし。
「ルールは簡単。男女ペアで料理を作る。ただそれだけです。
作る際のコンビネーションと作られた料理の味で得点が決まります。
そして、優勝者にはアベックのこのシルバーアクセサリーをプレゼントします」
って、説明を終わったらすぐにコンテスト会場に行かされたんだけど、俺、料理できないよ?
-酒呑さん、そこの寸胴に一杯の水を入れてください。
「あ、ああ、分かった」
慌てて、水を寸胴に入れ、五月のいるキッチンに持ってくる。
-酒呑さんは私が下準備した食材をどんどんお玉で回しながら煮込んでいってください。
「ああ、分かった。そういった力仕事くらいしかできないからな、俺は」
五月が切っていく食材を俺が言われた通りにどんどん煮込んでいく。
まだ、だしをとっている段階なのだろう。昆布やシイタケ、鰹節などのだしをとれる食材が投入されていく。
「お~と!! 三番テーブル、早い。すでにだしを取り始めている。ほかのカップルはまだ、何を作るか相談しているというのに。女性が調理して男性が力仕事をしてサポートして効率よく調理が進んでいるぞ!!」
司会の人間が騒ぐが俺は五月の動きに精一杯で聞いてる余裕がない。
ぐるぐると回す鍋には今五月がついて灰汁を取り除いている。
「何を作っているんだ? 五月」
-煮物を作ろうかと
煮物か。そこまで詳しくはないが五月はなんか中華風なイメージが強かったからな。超包子で働いていることといい、どちらかというと中かが好きなのかと思っていたんだが。
「五月は中華以外も得意なのか?」
-はい、中華以外にも和食は得意です
だからこうやって煮物を作っているわけか。
っと、どうやら灰汁取りも終わったようだし、次はどうすればいいか五月に聞かなくては。
「五月-」
-酒呑さん。そこにある調味料を確認して、指定された調味料を探してください。種類は……
早い、早すぎる。俺の能力でも完全についていけないってどれだけ早く料理を作っているの?
日本酒、塩、醤油……。
よし、とにかく持った。指定された者は全部持ってきたぞ。
「五月、持ってきた」
-全部キッチンにおいて、次は
まだ、あるの!! 調理をなめていた。そう思うしかない量の仕事をこの後五月にさせられて、結局俺は何が何だか分からない内に調理時間が終わっていた。今の俺の周りにいるやつらは、俺と同じように女子の小間使いとなっていた同士だ。
「お前もか! 薄口しょうゆじゃないって言われてもわかるか。醤油は醤油だろう」
「そうだ! 味噌だって、赤味噌? 白味噌? どっちも同じだろう」
周りの男も泣きながら同意していく。
そんな俺たちを置いて審査が始まった。
一番は子供たちが作ったので簡単なサンドイッチで、審査員からも頑張ったなと褒められている。
二番は味噌汁。きっと、赤や白といっていた男のチームだな。
三番は俺たち。煮っ転がしで、審査員からも高評価だった。
四番はうどん。なぜうどん? いや、悪くはないんだけど。審査員も疑問に思いながらすすっていた。
五番は、
「なあ、五月。料理ってうめき声が聞こえたっけ?」
-い、いえ。普通はしないです。いや、普通じゃなくてもしませんが
「俺の勘違いだといいんだが、料理からうめき声や禍々しい力が出てるんだが。あれっていわゆる妖力じゃ?」
-そんなことありませんよ。大丈夫です。……きっと
結局五番の料理を何とか食べた審査員が全員病院に担ぎ込まれたので中止になってしまった。
あの謎の料理がでてきたコンテストに参加してから時間がたち、そろそろ一日目の学園祭が終わる。
-酒呑さん。今日はありがとうございました
「いや、別にかまわないよ。五月が来たかったんだろう?」
どこか顔を赤くしている五月だったがしっかりと受け答えができているから問題はないと判断して話を進める。
-酒呑さん、あの、その
「どうした? 何か言いたいことでもあるのか?」
なんだ? 少しこっちも緊張してきたな。
-す、す、すっごく楽しかったです
「あ? ああ、そうか。こっちも楽しんでもらえたようでよかったよ」
? いったいなんだったんだろう。まだ俺もドキドキしているし。
-おやすみなさい
「ああ、お休み。その、なんだ明日からもがんばれ」
これが俺と五月の、今から思い浮かべるとデートだったんだろう。デートの最後だった。
この時にはまだ知らなかった。別れの時が近づいているなんて。