目の前にいる超が神機の形体を変えてこちらに銃口を向ける。
「しゃがめ!」
「ハイ!」
空中であるため俺はゴッドイーター本来の高速での戦闘を行うことができない。だが、一撃あてればいい。一撃で超を止めることができる。死なない程度の攻撃を加えてそれから超自身に何か捕喰させればいい。だが、それは向うにも言える事。俺たちは神機の一撃で簡単に戦闘不能になってしまう。ネギ君が喰らえば死ぬだろうし、俺が喰らったらおそらくは飛行ユニットがもたない。
「形態変化。銃形態」
ガシャッと音が鳴ると同時に神機の形が変わり、剣が引き、銃が表に飛び出してくる。
「ラスト・テイル・マイ・マジック・スキル・マギステル」
!? 呪文詠唱のための起動キー!
「っく」
俺の下にいたネギ君が俺の前まで来て障壁を張る。
「契約に従い我に従え炎の覇王
来たれ浄化の炎燃え盛る大剣」
「呪文! しかもこの詠唱は!!」
「ほとばしれソドムを焼きし
火と硫黄罪ありし者を死の塵に」
『燃える天空』
凄まじいまでの火炎が超が構えていた神機の銃口から出て俺たちを襲い、ネギ君の障壁によって防がれる。
「ネギ君!」
「大丈夫です!!」
それだけ聞くと俺は神機からコアを選択する。先ほど捕喰した鬼神の力ならアラガミパレットを作り出すことも可能だからだ。
選択したのはサリエルのコア。そして生成したアラガミパレットは、
「ホーミングレイ」
威力はいらない。命中率を重視して選択した弾丸だったが腕を変形させて作った盾に防がれる。
「ラス・テル・マ・スキルマギステル 光の精霊37柱集い来たりて敵を討て 魔法の射手連弾・光の三十七矢」
追撃の一撃。ネギ君が繰り出した魔法は確実に超に当たり、動きを止めさせた。その一瞬の隙を突くために俺は飛行ユニットが出せる最高速で近づきながら神機を剣形態に戻す。
「せいや!!」
しかし、振り下ろした一撃は超には当たらなかった。
「残念だけど、それは当たらないよ。バスターはアラガミには有効でもショートと違って取り回しづらい。貴方の神機より私の神機の方が人を相手にするなら確実に勝る」
その言葉通り、俺の神機は超の神機によって外され、超の神機は返す一撃で俺の左腕を切り落としていた。
「さようなら」
動けなかった。その隙を突かれて飛行ユニットを切り裂かれて落ちていく。
血が脈動する度に切られた腕から噴き出していくのを見ながら俺は何もできなかった。
「酒呑さん!!」
ネギ君の声が聞こえる。すまない、ネギ君。あとは頑張ってくれ。どうやらこの戦いではもはや俺は参戦できないようだ。死にはしないだろうがこの感覚から考えるとしばらく動けないだろうからな……。
「GGGGGAAAAAAAAAAAA!!」
そのあとに覚えているのは口から出されるアラガミの声。それが最後だった。
「酒呑さん!!」
落ちていく。人がこの高さから落ちたのなら助からない。
「彼には悪いことをした。けれども、ゴッドイーターなら無事ではないとしても生き残れるだろう。なにせ古いゴッドイーターには核融合の暴走したエネルギーすら耐えられる猛者がいるのだから」
その言葉に僕は超さんを見る。
「それが、それが本当に超さんがしたかったことなんですか?」
「……どういう意味ね?」
「酒呑さんを救いたかったんじゃないんですか! だから、こうやって過去に来て未来を変えようとしたんじゃないですか!?」
「違うね。私が救おうとしているのは世界そのもの。あの人ではない」
「嘘です! もしそうだとしたらなんで貴方はそんなに苦しそうなんですか?」
さっきから泣きそうな顔をしている超さん。貴方は今自分がどんな顔をしているかわかっているんですか?
「何?」
「泣きそうな、苦しそうな顔をしているあなたの言葉はとても信じられません! 確かにあなたは世界を救いたいんでしょう。けど、それと同じくらい酒呑さんを救いたいんじゃないんですか!」
でなければ酒呑さんを落とした時のあの表情は納得いかない。大切なものを自分の手で壊してしまった顔なんてしない。
「超さん。僕は止めます。正義でもなく悪でもなく、ただ、自分が止めたいと思ったからあなたを止めます」
正義で超さんは止まらない。悪でも超さんは止まらない。超さんを支えているのは信念だ。絶対に叶えるという信念。それを打ち破るのは正義でも悪でもない。そんな陳腐なものでは一瞬で超さんに壊されてしまう。だから、僕は我儘を言います。今まで考えていた悪になって貴方を止めるなんてもう言いません。僕の我儘、信念で貴方の信念を真っ向から否定して止めます。
「ラス・テル・マ・スキルマギステル」
「ラスト・テイル・マイ・マジック・スキル・マギステル」
詠唱が重なる。お互いの呪文が魔法となりそれぞれが放たれようとした瞬間、
「GGGGGAAAAAAAAAAAA!!」
聞いたこともないような声が響いてきた。
僕と超さんはそれに気を取られて一斉にそちらを振り向いた。
「何だと!!? なぜアラガミがこの時代にいる!!」
そこにいたのは黒い体を持ち、人より二回りほど大きく額から二本の角をはやした修学旅行に見た鬼に近い存在がいた。ただその背中には白い翼のようなものが張り付いていた。
「GGGGAAAAA!」
その何か、超さんが言うアラガミは腕を振り回してこちらを攻撃してきた。大振りだけどその威圧感は凄まじくわずかに後ずさってしまった。そしてそれが功を奏した。
「な!?」
障壁どころじゃない。魔法を使うために集まっていた精霊が消えていた。
「逃げろ! これは魔法なんかでどうにかなる相手じゃない。魔法も既存の兵器もすべて効果がない!!」
それは酒呑さんが言っていたアラガミの性質。どんな攻撃もアラガミの前では一切無駄だと。たった一つを除いては。
「葉加瀬! 逃げろ! 儀式は中止だ。アラガミが出てきたのならエネルギーの多い方に向かう。葉加瀬のいる地点は魔力が豊富に存在している。すぐにそちらに向かうはずだ。今すぐに逃げろ!」
「で、ですが超さん」
「くどい! 早く逃げろ! 目的を達成するのは確かに大切だがそれで葉加瀬を犠牲にするつもりはない」
「……分かりました」
超さんはそれだけ言い残すと腕の神機を構え直す。それが超さんたちゴッドイーターの戦いの始まりだった。
―酒呑さん!!
私が空に浮かぶモニターを見ていたら酒呑さんが落とされた。左腕を切り落とされながら。ゴッドイーターにとってはそれほど酷い怪我ではないはずだけど、酒呑さんの体を考えると楽観はできなかった。酒呑さんの記憶を見た時、酒呑さんの世界の学者の人が言ってた。酒呑さんのオラクル細胞は
そのままその黒い何かは、いえ、オラクル細胞は後ろに会った飛行補助用に存在する機械を飲み込み新しい白い翼を作り咆哮をあげていた。そのままネギ先生と超さんを攻撃していく。何もできない自分の無力が悔しい。争うことは嫌いだ。それでも時には争うことが必要なのはわかっている。力が無いから自分には何もできない。
―……酒呑さん
ボト
隣に響いた音に驚きそちらを見ると酒呑さんの左腕が落ちてきていた。それを見て思い出した。この左腕はかつて酒呑さんのアラガミ化を防いだことがあったのを。今からでもこの腕を酒呑さんに届けられれば酒呑さんのアラガミ化を止められるかもしれないと。
それだけ考えたら体が勝手に動いていた。落ちてきた左腕を抱えて超包子にむかう。超包子の屋台は空を飛べる。それを使えば酒呑さんに届けられる。
―待っていてください。それまでアラガミに心を渡さないで酒呑さん
どくりと抱えていた酒呑さんの左腕が脈動したような気がした。
アラガミ登場。主人公ですが。