俺が超包子で働き始めて半月が過ぎた。
周りの子たちからも信頼、主に力仕事に、され倉庫から下ごしらえ分の食料品を取出し店を掃除していく。
そうして、五月をはじめとしたほかの料理研究会のメンバーが店の料理を作っていく。
俺はここに来た時を思い返しながら備品の点検をし始める。
「初めまして酒呑一鬼と申します。これからお世話になりますがよろしくお願いします」
俺は超包子のメンバーに挨拶をする。
「「「初めまして」」」
元気に返してくれ良かった。
これで警戒されていたら俺泣くぞ。絶対に。こういう経験ないんだ俺。
「それじゃ、頼むネ。酒呑さんにお願いしたいのは、皆が持てないような食材が詰まった箱や、備品の点検、店の掃除ネ。ここ飲食店だから舐められるくらいピカピカにするとヨロシイヨ」
そう言われ、慣れない仕事をこなしながら俺は図書館島とよばれる図書館、あれは図書館ではないと思いながら、そこでいろいろな本を借り日々を過ごしてきた。
『多世界への可能性』
『ワームホールによる世界の崩壊による接続』
『時空間のゆがみによる影響』
ありとあらゆる資料となりうるものを探して考察を深めてきたが、どれもやはり俺が陥っている状況では役に立たない本ばかりだった。
何らかの手段を取らなければならないのにその手段が分からない。
まるで、リンドウさんの時のようだと思いながらも俺は帰る手段を探し続けていた。
しかし、半月たっても何も見つからないままだった。
そうして今俺は備品を点検しているのだ。
-だいじょうぶですか?
「五月か、大丈夫だよ」
-難しい顔をしています。これでも食べて元気出してください。
そう言って彼女が差し出したのは温かいスープだった。
「俺に?」
-ええ、賄の時に普段もおいしそうに食べていましたが、このスープの時にはうれしそうな顔をしていましたから。
「よく見ていたな。確かにこのスープは俺の好物だよ」
俺は彼女の厚意に感謝しスープをありがたく飲む。
「うまかったよ。ありがとう」
-やっと笑いましたね。
「えっ」
-今日は一度も笑っていませんでしたよ。食べているときには楽しく笑って食べたほうが楽しいですよ。
そんなこと考えたことは一度もなかった。俺たちにとって食事は喰うか喰われるかただそれだけだったから。
「あの二人いい雰囲気ですね。超さん」
「確かにネ、あの五月がああなるなんてネ」
俺は気づかなかったがこの会話が俺の閉じていた道を切り開く鍵になったんだ。
「五月、上がっていいヨ。ただし、もう遅いネ。一鬼に送ってもらうといいネ」
「それもそうだな。俺が送っていくよ」
-そうですか。ありがとうございます。
薄暗い夜道の中、俺たちは五月の寮めがけて歩いていく。
-そういえば、酒呑さん。何でアタッシュケースなんて持っているんですか?
「ああ、これか。癖でな、外へ行くときはつい持ってきてしまうんだ」
そう、俺のいた世界では外はただ、死が存在していただけだった。
だからこそ、神機を手にしなければ外へ行くことなど出来なかった。
今も外へ行くときには神機を持ち出してしまう。
そう思いながら歩き、俺は違和感を覚え立ち止まった。
-どうしたんですか?
「シッ!少し静かにしてくれ」
このにおい、鉄の錆びたにおいだ。
それに何か重い物の動く音と軽い、人か?それくらいの重さの物が動き回っている音だ。
「五月、悪い。少しここで待っていてくれるか」
-わかりました
俺の危機感を感じ取ってくれたのかわからないが五月は納得してくれた。
道に五月一人残すのは心配だが、俺についてこさせるよりは安全だろう。
そう判断し、俺はにおいと音のした方へ足音を立てずに近寄っていく。
そこで見たのは
「なっ、オウガテイル!?」
顔つきはまさしくそう言ってもよかったが体つきは大違いだった。
人間の体に近いがその大きさは人をはるかに超えている。
「く、愛衣無事ですか?」
「お、お姉さま。私の所為で」
声のした方を向くと二人の少女がいた。
最悪なことに片方は目の上を切ってしまったのか、流れ出る血で視界が半分ほどなくなっているようだ。
俺が状況を把握しきる前にそのアラガミに似た何かは口を開いた。
「嬢ちゃんたち。これでおしまいや。言い残したことはあるか?」
俺がアラガミ(偽)がしゃべったことに驚いているとそれを聞いた彼女のうち血を流している少女は強気に言い返した。
「黙りなさい。私たちは貴方に勝って生き残る。愛衣しっかりしなさい。
この傷は貴方の所為ではありません。私の油断です。貴方が私に指示しなさい。それに合わせ黒衣の夜想曲を使います」
「そ、そんな自信ないです。私には無理です」
「いいえ、あなたならできるはず。私はそう信じている」
俺は彼女たちを無視し、アラガミ(偽)の前に立つ。
「なんや、小僧。死ぬ気か?」
「な、民間人?逃げてください」
「愛衣、彼を連れて逃げ出しなさい早く」
周りが騒ぐが俺は気にしない。
なぜなら今の俺はただ
「フェンリル極東支部第一部隊隊長酒呑一鬼中尉」
「何を言っているんですか!早く避難を」
「安心しろ、この程度あと百体いても問題にならない」
「ほう、たいそうな自信やな。ならば鬼である我の一撃で死ぬがよい」
「神を喰らえ!!」
パスワードと同時に解放された神機をつかみ、鬼とやらの殴りかかってきた腕をぶった切る。
「なぜなら、俺は神を喰らう者。ゴッドイーターだ」
俺はそのまま振り切った神機を横凪にふり今度は鬼の体を両断する。
「ば、馬鹿な。鬼の体を気も魔力もいいや、何の術も行わず切り裂いただと?」
そう言た鬼めがけて最後を決める。
「コンボ捕喰」
俺の神機なら三振り目をしない代わりに
「なんですか、今の?」
後ろにいた少女たちは唖然とし俺を警戒している。
彼女たちの誤解を解くために話しかけようとした瞬間
キャアアアアアアアアア
悲鳴が響いた。
俺はこの声の主を知っていた。先ほどまでいた少女。俺が置いて行ってしまった少女だ。
それを脳が理解する前に俺は|神機解放≪バーストモード≫で上がった身体能力で五月のもとへ走る。
手遅れではないことを祈りながら。