見渡す限りはどこかのスラムのようなその風景。
行きかう人々は様々な人種で、その誰もが疲れ切っている顔だった。
-ここが酒呑さんの過去ですか?
「そうみたいだね。しかし、ここは」
「中世のような風景だな。人種はそのころより多そうだが」
エヴァが言った通りここには日本人以外にも中国、韓国、インドネシア、ロシアなど様々な人種が見れる。
そんな時風景が動いていく。記憶の主である酒呑が指をさし、
「あれが俺だ」
全員がその指の先を向くとそこには店にある商品を盗み出している十歳くらいの酒呑がいた。
「盗みかい?よくないよ」
「ええ、店主の人も困っているでしょう」
高畑と高音の忠告も平和な日本なら正しいがこの世界では違う。
「待て、この野郎! 貴重な商品を」
店主と思われる男が走って酒呑を追いかける。
その隙を付き酒呑より多くの商品を盗み出した少女に気づかずに。
そのまま酒呑は細い道を伝い、子供がようやく通れる道をうまく使い店主から逃げていく。
そして、先ほどの少女と合流した。
「酒呑、早く食べよ」
「茨木、こっちは全力で走ったんだ。少し落ち着かせてくれ」
「酒呑と茨木か。何とも皮肉的な運命だな」
エヴァが口にだし、皮肉げに彼らを見る。
二人は誰もいない路地裏で座り込み、盗み出したパンをむさぼりだした。
その様子は飢えていた子供が食事を与えられ、そのこと以外考えられないように食べ続けるように。
そしてこの場に新たな存在が加わる。
「逃げろ! アラガミが、う、うわーーー!!」
男の逃げることを促す声と同時に響く悲鳴。
酒呑と茨木という名の少女は今まで一心に食べていたパンを放り投げ、恐怖に彩られた顔をして、逃げ出していく。
路地裏から表通りへ駆け出し、周りの人間が逃げ出した方角へ二人もかけていく。
-アラガミってなんでしょう
「見てれば分かるさ。奴らがどういう存在かも」
五月の質問に酒呑は短く答え、その答えを示す。
「こ、こっちにも、ぎゃあああああ!!」
「ひ! きゃああああ」
あちらこちらで響く悲鳴。そしてその原因が彼らの前に姿を見せる。
鬼の様な顔、二足歩行で歩くオオカミのような、そしてどんな動物とも違う存在が来たのだ。
「なんだ、あれは?」
エヴァの声はここにいるすべての人間の声を代弁していた。
「『オウガテイル』!」
記憶の中の酒呑はそう叫び自身の後ろにとっさに茨木を隠す。
「う、ううううう」
どうすれば逃げられるか。それだけを考え酒呑は苦しい声を上げる。
突然化け物はその尻尾で立ち上がったかと思うと高く跳躍した。
それを見た二人はすぐさまその場を離れ、避けることに成功した。
「喰らえ、化け物」
そんなとき、一人の男が恐怖で錯乱でもしたのか自衛のために用意していた拳銃で化け物を撃ち始めた。そんな攻撃が通用しないとわかっているのに。
拳銃の弾は確かに化け物にあたったが、何の効果も見せずただ、化け物の注意をひいてしまっただけだった。
「ひ、ひひひひ」
狂ったように男は笑い、化け物が襲いかかりそして、
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
悲鳴が響き喰われていく。一人の人間が化け物に。
その隙を付き酒呑たちは逃げ出そうとし、囲まれた。
卵のようなものに女性の体をくっつけたザイゴート。
突然地面から現れたコクーンメイデン。
そして先ほどのオウガテイル。
「く、くそ。死んでたまるか」
「しゅ、酒呑。どうするの!? このままじゃ」
「生きる。何をしてもここから生き延びて。絶対に生きて二人で腹がいっぱいになるほど食べ物を食うって約束を守る」
そしてアラガミが一斉に襲い掛かってきた。
「う、ううううおおおおおおおおおお!!」
近くにあった角材でアラガミを殴ろうとし、
「少年、よく頑張ったな」
一人の女性が現れた。
その女性は手にしている銃を片手にアラガミに立ち向かう。
「よくもまあ、ここまでアラガミが侵入できたものだ。だが、悪いがここでお前たちが喰った分だけ私たちが食わせてもらうぞ」
その女性は怒りをこめ、アラガミと戦い始めた。手にした銃から輝きとともに弾丸のようなものが射出され、アラガミを射ち殺していく。
「あの銃は?」
先ほどの拳銃が聞かなかったのに大きさはこちらの方がはるかに大きいとはいえ、簡単に化け物を駆逐していく様を見て、高音が疑問を口にする。
「それも後でわかるさ」
ここにいる酒呑が返事をし、向うの酒呑たちは突然現れた女性に驚きつぶやく。
「ゴッドイーター」
神を喰らう者。アラガミを喰らい、人々を助ける存在として、ゴッドイーターは存在する。だからこそ、守る存在が後ろにいる女性はアラガミを一匹も逃がさず駆逐していく。
「もう大丈夫だ」
あれほどいた化け物がすべて死に絶え、周りに転がる中女性が酒呑たちに話しかける。
「よく、持ちこたえてくれたな。君が彼女を守ろうとしたのは勇敢だった」
彼女は彼らをやさしく抱きしめ、
「君たちが生きてて良かった」
その言葉に酒呑と茨木は涙を流し抱き着き返し泣き出す。
その光景は輝いていた。このくそったれな世界の中でもいつまでも、いつまでも輝き続けていた。
こんな感じです。しばらくは過去編です。