それでも僕らは生き延びたい   作:膳乙

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連休が明けたので初投稿です


代表候補生

「──で、なんで集まってんの?」

 

 時間は経過して昼休み、男子三人がひとかたまりになった所での会話である。

 

「なんでって、そりゃ男だろ?」

 

「今までの交流で集まろうと思えるのははっきり言って異常だ。いやマジで」

 

 一夏のふんわりした理由に、シルヴィオは棘のあるツッコミを入れる。実際あれだけの罵声を浴びせられて交流を図ろうとするのは異常かもしれないが、それが出来るほど一夏が善人という事なのだろうか。それとも単純に鈍感なのか。

 

「だって、男同士仲良くしたいし……」

 

「やっぱお前はおかしい……いや、そんな話をする場合じゃない。クラス代表決定戦の事だ」

 

 そう言うとシルヴィオはテーブルを軽く叩く。叩かれた事で、空気が引き締まる。

 

「まず織斑、お前手加減しようなんざ言いやがって、勝てると思ってんの?」

 

「そんなの、やってみなくちゃ分からないだろ」

 

 この発言にはさすがの一夏もカチンときてしまったようで、反論する。

 だがそれは逆効果だったらしく、シルヴィオからため息が返ってきた。

 

「あのなぁ、相手はイギリスの代表候補生セシリア・オルコット。勝てる試合じゃねぇよ」

 

「……代表候補生って、なんだ?」

 

「……もう俺は驚かねぇぞ」

 

 シルヴィオは一夏の質問に呆れ、目頭を抑えた。多分説明するかどうかも悩んでるだろう。それをフォローする形でグリフが話に入る。

 

「ええと、代表候補生っていうのは読んで字の如く。ISの世界大会の出場選手の候補だよ」

 

「へぇ~、そんなのがあるのか」

 

「うん、それでオルコットさんはイギリスを代表する選手の一人。だから、その実力はかなり高いはずだよ」

「ふぅん、強いんだな」

 

 一夏はあまりピンとは来ていないようだが、シルヴィオから補足が入る。

 

「代表候補生ってのは、最大でも10も行かない。更にその中から一つだけの席を奪い合っている。勝ち取って尚上を目指す奴が弱い筈がねぇし、稼働経験も桁から違う。場合によっちゃハイエンドな専用機を持って、死角なしだ」

 

「そっか……でも、今更負けるなんてできねぇよ」

 

「……そうだな、俺たちに敗北は許されない」

 

 シルヴィオは持っていた栄養ブロックを齧り、スマホを起動し操作を始めた。グリフが眉を顰めて質問する。

 

「何をしているの?」

 

「定期投稿」

 

「何の?」

 

「SNSの。今の時代、人気者じゃなきゃやってられないからな」

 

 と言ってシルヴィオが見せてくれたのはSNSの画面だった。確かにそこには、彼の写真が掲載されていた。かなりの人気らしく、先程呟いたらしい投稿には優に100万を超える反応があった。

 

「うおぉ! すげぇ!」

 

「すごいね……」

 

 一夏とグリフは感嘆の声を上げる。そして同時に思う。こいつもしかしてカリスマがあるのではないか、と。

 

「たった3人の男性だ、注目されるのは……ッ、誰か来るな」

 

 突然シルヴィオが警戒態勢に入ったので、二人も姿勢を整える。食堂の入り口の方を見ると、見慣れない女子生徒二人が立っていた。彼女達は暫く辺りを見回した後、僕らと目線が合うと近寄ってきた。

 

「ねえ、君たちが噂の男子生徒?」

 

 先頭にいた茶髪の少女が僕たちに話しかけてきた。後ろには黒髪の少女がいる。

 

「そうですけど、何か用ですか?」

 

「君たち来週、代表候補生と試合やるんでしょう?」

 

「ええ、まあ……」

 

 その返答を聞いて少女は口元を緩ませながら、グリフ達に詰め寄る。

 

「でも君たち、素人だよね?」

 

「はぁ、そうですが」

 

 一夏の返事を聞いた瞬間、彼女の表情が変わった。ニヤリとした笑みを浮かべた後、彼女はこう言った。

 

「なら、私たちが教えてあげようか? ISについて」

 

 話を聞いた途端シルヴィオの目が細くなったのをグリフは見た。

 直感的にグリフは悟った。この話には何か裏があると。

 

「えっ、本当で──」

 

「結構です。間に合ってますので」

 

 一夏が飛び付きそうなのを咄嗟にグリフがその申し出を断ったが、相手はそれを許さなかった。

 

「遠慮しないでいいわよ。私達、三年生だし。先輩として、色々教えられる事はあると思うの」

 

「いや本当に大丈夫なんで……」

 

「そんな事言わずにさー」

 

 グリフの拒否にも全くめげる様子はなく、尚も食い下がってくる。

 グリフはこの間、断る理由を探すと同時に、裏があるとすれば何があるか考えていた。しかし判断材料も少なく、相手がやろうとしていることはISを教えるだけ。一見して悪いことが起きる事は無いはずだ。

 しかし──シルヴィオが発端の──自分の感じた直感に間違いがあるとは思えない。何か、見落としか予期しない落とし穴か……思考が沼に落ちそうになった所に投げられた、次の一言が止めなければならない懸念が表層に現れた。

 

「それに、仲良くした方が色々得すると思うよ?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、シルヴィオの纏っていた雰囲気が一変したのが分かった。

 

「──いいや、結構だ。教えてもらう相手もアテがある。確か……篠ノ之博士の妹、だったか?」

 

 感情が見えない平坦な声だった。だがそれは確実に相手を威圧していた。

 

「そ、そうなんだ。じゃあいいわ。ごめんね、無理言って」

 

「いえ、こちらこそすいません」

 

 一夏は頭を下げる。それを見た先輩二人は逃げるように去っていった。

 

「……ねえシルヴィオ、初めから分かってたの?」

 

「近付いてくる相手が人脈目当てなのは、あって当然の話だが? むしろ今までよく何もなかったものだ」

 

「えっ……どういうことだ?」

 

 一夏はいまいち理解できていないようで、グリフとシルヴィオは顔を合わせてため息をつく。

 

「あのな、お前は有名人なんだぞ。男で初めてISを動かして、姉は世界最強。懐柔して言いなりに出来ればどれだけの影響力を持つだろうな?」

 

「あっ……」

 

「だからこういう誘いも珍しくなくなるし、簡単に飛びつくのは自覚が足りない。という事だよね?」

 

「そういう事だ」

 

 二人から注意を受け、少し落ち込む一夏に、グリフが慰めるように言う。

 

「まあ、今回は上手く断れたんだから良かったじゃないか」

 

「うん……そうだな。ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 すると、タイミングを見計らったかのようにシルヴィオが立ち上がる。

 

「さて、そろそろ動かないとな」

 

「動くって、訓練?」

 

 グリフの質問にシルヴィオは首を縦に振って肯定する。

 そして彼は口角を吊り上げながら静かに宣言した。

 

「戦いはもう始まってるのさ」




師事とは教えとは師弟間の信頼によって成される

次回「ティーチング・スカイ」

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